フォルクスワーゲン・ティグアンeTSI Rライン(FF/7AT)
より快適に 味わい深く 2024.12.27 試乗記 フォルクスワーゲンの世界販売において、今や一番の人気車種となっているコンパクトSUV「ティグアン」。その新型が、いよいよ日本でも発売された。より大人のドライブフィールに進化したという、3代目の走りをリポートする。21世紀の主役
新型フォルクスワーゲン・ティグアンは、2024年11月19日に日本で正式に発売された(参照)。2007年に初代がデビュー(国内発売は翌2008年秋)したこのクルマのグローバル販売台数は、2世代・約16年で760万台にのぼるという。単純計算で年間47万~48万台だ。ちなみに、1974年からの約50年で3700万台を売り上げた「ゴルフ」の年間平均は74万台。それより1年早くデビューし、累計販売は3400万台を超える「パサート」は、同じく67万台となる。しかし、どちらも真の全盛期は20世紀といっていい。対してティグアンは完全に21世紀のクルマであり、2019年以降のフォルクスワーゲンのベストセラーは、ティグアンなのだという。
フォルクスワーゲンの日本法人は、この2024年から2025年にかけてを新車攻勢の期間としており、先日試乗記をお送りした新型パサート(参照)も、2024年11月25日に国内発売となっている。それもあって、東名高速の御殿場インター周辺を拠点としたティグアンのメディア向け試乗会は、パサートのそれと合同で開催された。本記事はそのメディア試乗会でのものだ。
新型ティグアンとパサートは、本国でのアンベールもほぼ同時期の2023年夏だった。さらにいえば、「MQB evo」という基本骨格構造も両車で共通。パワートレインのラインナップもほぼかぶっている。ホイールベースや全長はパサートのほうが明らかに長く、ひとクラス上の感が強いが、全高はSUVのティグアンのほうが大きい。全幅は両車でほぼ同じだ。
さらにいうと、同じパワートレインなら車重も同等なので、必然的に動力性能も非常に近い。日本仕様のティグアンに搭載されるパワートレインは、48Vマイルドハイブリッド機構付きの1.5リッターガソリンターボでFFの「eTSI」と、2リッターディーゼルターボで4WDの「TDI 4MOTION」の2種類。いずれもパサートと同じものだ。本国ではプラグインハイブリッドの「eHybird」もティグアンに用意されるものの、プラグインハイブリッドだけは、日本ではひとまずパサートのみの設定となる。
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一昔前から大きく改善した操作性
これまでのフォルクスワーゲンは、車体の各部に手が切れそうにシャープなプレスラインを通した、端正な直線基調のデザインが特徴だった。しかし新型ティグアンでは一転、柔らかな曲線基調のプロポーションで、前後のフェンダー上部にのみプレスラインを入れて、タイヤが張り出したスタンスを強調している。
前後エンドのデザインは、左右ランプ間に照明を埋め込んだ細いガーニッシュを配する。そのぶん、フロントバンパーグリルは大開口となり、落ち着き系の「エレガンス」では横ルーバー、スポーツ志向の「Rライン」ではひし形のメッシュがあしらわれて、それがグレードごとの印象を決定づけるキモにもなっている。いずれにしても、こうしたデザイン言語は現行の「ゴルフ8」からはじまり、この新型ティグアンや新型パサートでさらにアップデートされた新世代のそれだ。
15インチの巨大センターディスプレイ(上級のエレガントとRラインに標準装備)を核とした内装の仕立ては、素材レベルも含めて新型パサートと共通点が多い。コックピット周辺におけるスイッチの類いは最小限。とはいえ、ゴルフ8以来のタッチスライダーは残しつつもステアリングスイッチはすべてハードボタンとなり、センターディスプレイに操作頻度の高い機能を常駐させることで、初期のゴルフ8より使い勝手は大きく改善している。
そのなかで、センターコンソールのダイヤルだけはティグアンならではのものだ。中央にプッシュ/フリック操作ができるボタンを備えた、多機能なコントローラーなのだが、あてがわれるのはオーディオの音量調整とドライブモード(フォルクスワーゲンでの呼称は「ドライビングプロファイル」)、そしてアンビエント照明の選択のみ。デザインや技術的には面白いが、この一等地にわざわざ鎮座させるべき機能か……については疑問も残る。そもそも、音量調整はステアリングスイッチにもあるし、ドライビングプロファイルはセンターディスプレイでも設定できる。
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国産勢と比べても光る燃費性能
パサート同様、ディーゼルモデルの上陸は少し遅れるとのことで、今回試乗したのはマイルドハイブリッドの「eTSI」である。
直前に乗った新型パサートのプラグインハイブリッドと比較すると、過給ラグが皆無ではない。とはいえ、アイドリングストップからの再始動はさすがに滑らかだし、1.6t台の車重に対して250N・mというエンジンの最大トルクに、不足を感じるシーンは皆無といっていい。また静粛性や、変速マナーなどのショックに関する洗練性にも文句はない。
もっとも、スペックを見るかぎり、このマイルドハイブリッドの意図は、積極的な駆動アシストで動力性能を高めるというより、あくまで燃費重視のシステムと思われる。実際、ティグアンのeTSIはマイルドハイブリッドに加えて、エンジン本体もミラーサイクルに気筒休止……と入念な燃費対策が光る。結果として、WLTCモードによるカタログ燃費も15.6km/リッターを誇る。
この数値は「トヨタRAV4」や「マツダCX-5」と比較すると、ハイブリッドやディーゼルにはゆずるが、それぞれの純ガソリンエンジン車よりは明確に勝っている。さらに、「ホンダZR-V」はティグアンより全高が低く車重も100kg以上軽いが、同じ1.5リッターターボのFF車でもWLTCモード燃費は14.5~14.6km/リッターと、ティグアンにおよばない。
まあ、ZR-Vを含む国産各車の指定燃料はすべてレギュラーで、ティグアンのそれはハイオクである。現実的な燃料コストの比較でいえば、国産各車に逆転される可能性があるにしても、このティグアンの燃費性能は素直に評価すべきだろう。
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ライバルは身内にあり
新型ティグアンに用意される3種のトリムグレードのうち、今回の取材車は最上級となるRラインだった。その本体価格がエレガントより40万円以上高い最大の根拠は、電子制御連続可変ダンパーの「DCC Pro」に加えて、20インチタイヤ、そして「プログレッシブステアリング」が標準装備とされることにある。
また、Rラインには本来、ヘッドレスト一体型の専用スポーツシートも備わるのだが、試乗車のようにオプションの「レザーシートパッケージ」を選ぶと、そのかぎりではない。同パッケージでは本革表皮のほか、前席に電動調整機能やベンチレーションも追加される。
新型パサートとともに新採用されたDCC Proは、従来の「DCC」とは異なり、伸び側と縮み側で独立した減衰制御を可能とした2バルブ構造が自慢である。それによって揺り戻し方向の動きを緻密に制御できるようになったからか、縮み側もこれまでよりソフトな調律になっている。結果として、コンフォートモードでもスポーツモードでも、乗り心地が向上している。
また、先代では素直に引き締められていたスポーツモードも、よりしなやかな荷重移動を許容して、接地感もより濃厚となり、その味わいはより滋味深く大人っぽい。先代と比較すると、操縦安定性と快適性、高級感のレベルアップは明らかだ。
とはいえ、同日に試乗したDCC Pro付きの新型パサートの走りは、さらにしっとりとしなやかだった。とくに15段階ある減衰設定をもっとも高めた場合には、ティグアンの乗り心地はパサートより明らかにハードとなり、背の高いSUVの限界を感じさせるのも事実である。
もちろん、ジャンルも車格もちがうパサートとティグアンの間で迷う人は多くないだろう。しかし、同じeTSIの同じグレードで、DCC Proなどの主要装備内容をそろえると、その本体価格の差は10万円未満。こうなると、個人的にはパサートのコスパの高さが印象的で、ティグアンにとって最強の敵は意外にもパサートかも……とちょっと思った。
(文=佐野弘宗/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
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テスト車のデータ
フォルクスワーゲン・ティグアンeTSI Rライン
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4540×1860×1655mm
ホイールベース:2680mm
車重:1640kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
モーター:ベルト駆動式スタータージェネレーター
トランスミッション:7段AT
エンジン最高出力:150PS(110kW)/5000-6000rpm
エンジン最大トルク:250N・m(25.5kgf・m)/1500-3500rpm
モーター最高出力:18PS(13.5kW)
モーター最大トルク:56N・m(5.7kgf・m)
タイヤ:(前)255/40R20 101V XL/(後)255/40R20 101V XL(ピレリ・スコーピオン)
燃費:15.6km/リッター(WLTCモード)
価格:588万9000円/テスト車=641万1500円
オプション装備:レザーシートパッケージ(24万2000円)/ラグジュアリーパッケージ(24万2000円) ※以下、販売店オプション フロアマット<テキスタイル>(3万8500円)
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:535km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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