第39回:タイヤ交換と今後の施工計画
2021.04.13 バイパーほったの ヘビの毒にやられまして![]() |
怪力の「ダッジ・バイパー」はタイヤが減るのも超高速。数少ない選択肢の中から、金欠オーナーが選んだ“次なる一品”とは? タイヤ交換と同時に依頼した定期点検では、どのような問題が検出されるのか? 久々のメンテナンス回、いざ開幕。
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みんなちがって、みんないい
前回のあらすじ。タイヤが寿命を迎えた、南無。
そんなわけで今回は「もう何度目だよ?」なタイヤ交換の話なわけだが、すでにネタバラししている通り、次の品は「ニットー・インヴォ」である。
選定の理由についても、実は前回ちょこっと触れている。「ことによっては、リアタイヤは1年でダメになる」というアレだ。もちろんそれはSタイヤ(「トーヨー・プロクセスR888R」のことね)でのことだったが、たとえ公道用であっても、ゴムのやわいハイグリップタイヤで今みたいに遊んでいたら、そう長持ちはしないと思うのだ。
そうなるとやはり、ミシュランのアレみたいな高級品を付けるというのは、武蔵野の小市民的にチョットあり得ない。1、2年で履き替えとなっても「まあいいか」と思えるくらいのものがちょうどいいと、そう考えたのである。
しかし、この流れで「ミシュランよりお手ごろなインヴォを選んだんですよ」などと言うと、なんだか卑下しているように受け取られそうだが、むろんそんなつもりはない。ベンツもカローラも等しく尊いのと一緒。大事なのは性能や価格の違いではなく、合目的性がどれだけあるかだ。願わくはインヴォには、スズキ車並みの合目的性とコストパフォーマンスを持っていてほしいところである。
最近だと、このタイヤ交換が記者&バイパーにとって喫緊の課題であった。あとはサーキット走行後の点検&1年点検といったところだが、これまでに散々あれこれ直してきたのだから、こちらについては大した問題は起きないだろう。……と思いたい。
今回はそんな風に考えながら、毎度おなじみ“バイパー乗りの駆け込み寺”こと、相模原のコレクションズさんに赴いたのである。
21年前のクルマだと思えば
既述の通り、車両の状態について特に心配はしていなかったワタクシだが、そんなものは素人の経験則。大事なのはあくまでプロの判断である。お店に到着後、早速本多代表&いつもお世話になっているメカさんたちがチェックしたところ、検出されたトラブルおよび今後の施工プランは以下の通りだった。
(1)ラジエーターの冷却水のにじみ
普段は大丈夫だけれど、走行時に水圧が高くなるとドレンまわりから漏れが発生している様子。バイパーではGen2(日欧車風に言うと初代の後期型)まではラジエーターが真鍮(しんちゅう)製なので、オーバーホールや改造が可能。修理に加え、コア増しして3層にしてはいかが? お値段は12~13万円ほど。
(2)デフオイルの交換
デファレンシャルギアボックスまわりにオイルのにじみを発見。オイル自体もそろそろ交換しておくべきだが、どうしたわけかGen2までのバイパーには、デフ玉にドレンがなく(Gen3以降のモデルにはある)、ギアボックスをおろさないとオイル交換ができない。点検整備&オイル交換に加え、今後のことを考えると加工してドレンを開けておくべき。
(3)タイヤのガタ
左前後輪に多少のガタつきあり。後輪についてはハブではなくトーリンクが原因の様子。この辺の整備は、記者のもとに来てからは一度もやったことがないので、はっきり言って発生して当然の症状である。むしろカチっとしている右前後輪のほうがヘンなわけで、前オーナーの時代に手が入っていたと思われる。
……以上である。
感想? 感想ですか。うーん。一通り手を入れてきたとはいえ、よわい20年を超えた老兵である。「何もないといいな」というのは、さすがに虫がよすぎたか。
ただ、それじゃあ理不尽を感じるかといえばそうでもない。21年前に工場を出たスポーツカーとしては、相応といったところでしょう。ターボだヨンクだ高回転だといったよそさまと比べたら、むしろ手当てすべきところは少ないくらいだ。ラジエーターに関する予算感をみればお分かりの通り、部品代や施工費用も至極まっとう。コンベンショナルなFR車さまさまである。誰だ? アメ車は壊れやすいから維持が大変なんて言ってたやつは(笑)。
それはさておき、本多氏いわく優先順位は(2)→(1)→(3)とのこと。当方としては、準備が整い次第、施工を進めていくつもりである。
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原因不明の高速消耗
続いて、ようやく今回の本題たるタイヤ交換である。まずは世話になってきたトーヨー・プロクセスR888Rにお別れを。今回もリアタイヤはベルトが見えるまで削れており、もっと早くに交換しておくべきだったことは自明。毎度のことながら、読者諸兄姉のお手本となれるような記事にできず、申し訳ない。
ただ、今回のタイヤ騒動における一番の注目点は、記者の不養生ではなく、くだんの高速摩耗……前回も触れた「同じR888Rにもかかわらず、なぜ前のタイヤは2年以上もったのに、今回のタイヤは1年ちょっとでダメになってしまったのか?」という謎だ。一同、取り外したリアタイヤを凝視する。
「……なんか、普通にすり減ってった感じですね」
「空気圧がおかしかったり、アライメントが狂っていたりということはないのでは?」
メカさんたちの意見に、素人ながら記者も同意。トレッド面のやや内側が最もすり減っている点は(ベルトが出てしまっているので分かりやすい)、若干のネガティブキャンバーがついたアライメントを思えばまっとう。そうした摩耗の仕方も、摩耗の進行度合いも左右輪で違いはない。要するに、変な風にすり減った感じがしないのだ。帰宅後に、2年以上もった前回のリアタイヤと写真を比較してみたが、薄学の記者に特段気づくところはなかった。
それともうひとつ。メカさんや本多氏の見解によると、このタイヤの摩耗の仕方は「一度の激しい走行(=筑波・コース1000での一日走行会のこと)で削られたものには見えない」とのこと。もしそれがホントだとしたら、前のタイヤと同様、普段使いやら度重なるイベントへの参加やらで、少しずつ削られていったことになるが……。
結局のところ、このリアタイヤがなぜ前回の2倍の速さで摩耗したのかについては、分からずじまいだった。またしてもバイパーは、宇宙に新しい謎を残してしまったようだ。
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14年前のタイヤの実力はいかほどか
一方、新しく装着するニットー・インヴォであるが、まずは装着した姿をご覧いただきたい(写真A参照)。
タイヤの特徴を説明するのは難しいので、日本版オフィシャルサイトから解説文を引用させていただくと、「優れた存在感を放つ独特のトレッドパターンを持ち、最新のテクノロジーと最適なパターン設計によって、快適な乗り心地と静粛性を実現したラグジュアリースポーツUHP(ウルトラ・ハイ・パフォーマンス)タイヤ」とのこと。走り志向なんだか快適志向なんだか、ビミョーによく分からん解説である。とにかく「両方頑張りました」ということなのだろう。
サイズについては、これまでフロントは295/30R19だったが、該当するサイズがなかったことと、295幅だとややぶかぶか感があったことから、285/30R19にサイズダウンさせた。必然的にタイヤの厚み・外径も小さくなってしまうので、見た目が貧相になってしまわないか心配だったが……皆さん、いかがだろう?
もうひとつルックスに関する話をすると、アグレッシブすぎるトレッドパターンはともかく、サイドウォールのデザインは至ってシンプル。ぶっちゃけ簡素な「INVO」のロゴが入っているだけで、横からの見た目は意外にクラシックである。それもそのはず、実はこのタイヤ、デビューは2006年11月なのだ。2006年11月といえばアナタ、先代にあたるV36型「日産スカイライン」がデビューした月ですよ。まだ日産のCMキャラクターが、イチローだった時代ですよ!
登場から14年、よそのタイヤだと2世代くらい代替わりしていてもおかしくないほどの間、ニットー・インヴォは現役として活躍してきたのだ。その性能はいまだ第一線か、それともポンコツなのか。次回は注目の使用感をお届けしたい。
(webCGほった)
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堀田 剛資
猫とバイクと文庫本、そして東京多摩地区をこよなく愛するwebCG編集者。好きな言葉は反骨、嫌いな言葉は権威主義。今日もダッジとトライアンフで、奥多摩かいわいをお散歩する。
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