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第426回:これってもしや自動車サブプライム? もはや待ったなしのニッポングローバル化論

2011.04.08 小沢コージの勢いまかせ! 小沢 コージ
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第426回:これってもしや自動車サブプライム?もはや待ったなしのニッポングローバル化論

世界のメーカーを襲う「時限爆弾」

いやはやビックリしました、今回の災害にからむ、一連の工場操業ストップ問題。
というのも、自動車メーカーって、まずは工場ありき、というか工場=メーカーの魂! みたいな部分があるので、工場が止まると宣伝広告や広報活動はもちろん、販促イベントなどみな止まる。
当然、俺なんかの弱小モータージャーナリスト(『webCG』もか?)には影響デカくて、メシの種である発表/試乗会はすべからくぶっとび、せっかくホンダの「フィットシャトル」が出たら、トヨタの「プリウススペース」かなんかと比べて、これからのスペース系とかコラムでも書こうかと思ってたのに、すべてパー。

でもまあ、その分書くことがありましたぜ。肝心の自動車メーカーの運命というか、工場操業ストップ問題よ。コイツはデカい!

ざっと振り返ると、最初にマスコミにリークされたのは地震から3日後の3月14日前後。まずはトラックメーカーを含む、全国内12社が完成車工場をイッキに停止。当然原因は東北圏内のパーツメーカーが止まったからで、一部報道には「国内パーツの4割が東北」という報道もあり、ホンダなんかも110社のサプライヤーがこの地にあるとかで、ぶっちゃけ東北ってそんなに凄かったんだ〜という素朴な感想を抱いたわけですけど、本当の問題はこの次。
3月18日にはGMがルイジアナ工場を、27日にはフォードがベルギー工場をそれぞれ数日間停止すると発表したわけだ。

この時不肖・小沢はハッと気づいてしまったわけですな。これはある意味、自動車サブプライム問題になりかねないと。「サブプライム」ってのはご存じ2008年末のリーマンショックのきっかけとなった、信用度の低いアメリカの住宅ローンのことで、コイツが知らぬ間に世界各国のありとあらゆる金融商品の中に時限爆弾のように食い込み、破綻が破綻を招いた。
2007年にサブプライムローンが破綻し、2008年にドイツ銀行にまで飛び火した時には驚いたわけで、今回も恐ろしく考えればそれくらいの危険性はある……ような気がする。というのも、いまの自動車パーツメーカーは下請けのそのまた下請けの孫請けメーカーがあるくらいで、ひとつのパーツは、さらにまた数多くのサプライヤーが作る“パーツの集合体”。どこでどの部分が作られているかは、当の自動車メーカーですら正確に把握できてない。

この点、日本メーカーが有利なのは、いざというときの反応が早いくらいで、一部ヨーロッパメーカーなどは、パーツをまとめて日本などに発注しているから、逆にある程度のストックを持っており、すぐさま生産には影響が出ない、な〜んてこともありうるらしい。

とはいえ、例えばドイツなんかは、世界最大のサプライヤー・ボッシュ様があるからいざとなったらどんな部品でも肩代わりして作っちゃいそうだけど、それはそれとして製作コスト的に厳しくなる可能性はある。
もちろん、今回の俺の勝手な予想が杞憂に終わればそれに越したことはないわけだけど、まだまだこの操業ストップ問題は終わらないと思われる。

2011年3月17日の発売が予定されていた、ホンダの新型車「フィットシャトル」。地震の影響で生産に影響が出たため、まだ店頭に並んではいない。
2011年3月17日の発売が予定されていた、ホンダの新型車「フィットシャトル」。地震の影響で生産に影響が出たため、まだ店頭に並んではいない。 拡大
4月末のデビューといわれた“7人乗りプリウス”(写真)も、発売は延期に。
4月末のデビューといわれた“7人乗りプリウス”(写真)も、発売は延期に。 拡大
上記、“7人乗りプリウス”を運転する筆者。(写真=小沢コージ)
上記、“7人乗りプリウス”を運転する筆者。(写真=小沢コージ) 拡大

震災を成長のきっかけに

でもまあ、今回の問題はある意味、今の自動車産業が非常にリーンかつ開発/製造競争が激化していることによる。世界的命題は「イイモノを安く速く」。となると、できるだけ能力の高いところに生産は集中する。そして発注個数が多ければ多いほど量産効果でコストも安くなるわけだから、これまた一部に集中する。

思い返せば4年前の新潟地震の際、一部メーカーでピストンリングの生産ができなくなって、数多くのメーカーが生産中止に追い込まれたのは記憶に新しいが、ぶっちゃけそれの拡大版なわけだ。もちろん4年前の反省から、ある程度はリスクを分散させているはずだが、今回の災害規模はそれをはるかに上回ったということだろう。

だから、本当の問題は今後だ。おそらく日本が一部パーツの製造を東北なり国内で生産することにこだわっていたら、海外のメーカーはそれをリスクととらえ、日本以外でも生産しはじめるだろう。
それでも客を捕らえ続けるためには、日本のパーツメーカーの更なる海外進出しかない。俺は漠然と、今の時点でも自動車メーカーの組み立て工場はもちろん、デンソーやカルソニックなど大手サプライヤーもかなり海外に出ていたと認識していたが、さらにやらなくてはいけないのだ。

となると、弱小サプライヤーも含め、日本は更なるチャレンジになるわけで、そのほか、技術流出のリスクなどとも戦わなければいけない。いろんな意味で、今回の災害は、日本自動車界にとって本当にキツイ試練になると思う。

とはいえ、不肖・小沢はあえてコレを前向きに捉えたい。これは日本がもっとワンランクもツーランクもグローバル化し、成長するための重要なターニングポイントなのだと。

既にかなりの工場が海外進出してるとはいうものの、現時点での日本は“一部鎖国”とも言われ、若い人たちの海外留学が減っていたり、勤労意欲が落ちていたり、閉じこもっているフシがある。ファイティングスピリットを表に出さず、グチをこぼしているイメージもある。

確かに現状、日本国内は厳しい。でも、生活の質を落とし、あらゆるところでコストダウンを図り、デフレ経済に頼っていけば何とか生活できる、いやコレまではできていた。
だが、これからはそうもいかない。真の意味で、一人ひとりの日本人が自立し、海外でもやっていける力を持っていかなければならないのだ。具体的には少なくとも英語と中国語は十分話せるべきであろう。かくいう俺は、まだまだ英語も力が足りないのだが。
だが、とにかくこれからの数年がまた今後の人生を激しく変えていく気がする。
東北復興も含め、頑張ろうではないか、諸君! そして東北や一部関東以外の北海道、関西、四国、九州の諸君! 東北の分まで外に出ようぜ!!

(文=小沢コージ)

日産自動車 栃木工場(写真=日産自動車)
日産自動車 栃木工場(写真=日産自動車) 拡大
小沢 コージ

小沢 コージ

神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』

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