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ホンダGB350(5MT)

優等生もいいけれど 2021.05.19 試乗記 田村 十七男 空冷単気筒エンジンのシンプルなネイキッドモデル「ホンダGB350」。優等生的な出来栄えとリーズナブルな価格を実現したニューモデルに、リポーターが感じたモヤモヤとは? 趣味の乗り物だからこそバイクに求められる+αの魅力について考えた。
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“趣味的単気筒”とは別物

総論から述べますが、車体からエンジンに至るまで、すべてを新設計したというGB350は、学校の先生や同級生はもちろん、近所にお住まいの顔なじみを含め、誰からも優等生と認められるような製品でした。いやまったく、よくできている。

パワーユニットは空冷4ストローク単気筒の348ccで、最高出力は20PS。エンジンの種類や排気量に鑑みれば、これ以上を望むほうがヤボってもんの至極まっとうな力量だ。開発にあたっては、単気筒らしい鼓動感を引き立たせたうえで、雑味と捉えられる不快な振動の除去に腐心したらしい。その二律背反的な課題の解決に向け、「振動を抑制するためのバランサーを、クランクシャフト前方に加え、メインシャフトにも装備」したメインシャフト同軸バランサーなるシステムを用意したそうな。カタログには「特許出願中」と記されているので、ホンダはまさしくこの製品のために新機軸を用意したのだろう。なんとまあ生真面目なこと。

とはいえ、うたい文句の通りに鼓動感が引き立っているかと問われれば、個人的には雑味を取り過ぎた感が強く、ただアイドリング時から存在を示すマフラーの「パッパッ」という乾いたサウンドによって、それとなく単気筒らしさを覚える程度と答えておく。走りだせばマフラーの音は聞こえなくなるし、なにより“不快”と背中合わせにかつてのシングルが発していたパンチ力は、ほとんど伝わってこない。まあ、これが「鼓動」ではなく「鼓動“感”」と表するあんばいなのかもしれないが。

それよりもスムーズさが勝っているのだ。市街地走行で扱いやすくなるよう、ピークトルクの発生回転域は3000rpm付近に設定したというし、徹底的な最適化を図ったとされるライディングポジションとも相まって、GB350はいわゆる“趣味的単気筒”とは別物と評していいバイクとなっている。もちろん、資料のどこを探しても「趣味」を「雑味」とは書いていないが。

以上はさておき、自分の試乗メモには汚い字で「これ“が”と、これ“で”では、全然違う」と記されていて、試乗記を書いている今、私はとても困っているのである。

インドにおける基幹車種「ハイネスCB350」の日本仕様として登場した「GB350」。GBといえば、かつてはクラシックな趣のロードスポーツだったが、今回の新型はややキャラクターの異なるモデルとなっていた。
インドにおける基幹車種「ハイネスCB350」の日本仕様として登場した「GB350」。GBといえば、かつてはクラシックな趣のロードスポーツだったが、今回の新型はややキャラクターの異なるモデルとなっていた。拡大
348ccの空冷単気筒エンジンは、ボア×ストローク=70×90.5mmのロングストローク型。普段使いでの扱いやすさや力強さを重視した設計となっている。
348ccの空冷単気筒エンジンは、ボア×ストローク=70×90.5mmのロングストローク型。普段使いでの扱いやすさや力強さを重視した設計となっている。拡大
トランスミッションのシフトペダルはシーソー型で、前のレバーをつま先でけり上げるだけでなく、後ろのレバーをカカトで踏むことでもシフトアップできる。
トランスミッションのシフトペダルはシーソー型で、前のレバーをつま先でけり上げるだけでなく、後ろのレバーをカカトで踏むことでもシフトアップできる。拡大
クラシックなスタイルに対し、ヘッドランプのイメージはモダン。すべての灯火器に長寿命のLEDを採用している。
クラシックなスタイルに対し、ヘッドランプのイメージはモダン。すべての灯火器に長寿命のLEDを採用している。拡大
シート高は800mm。スリムな車体とも相まって、足つき性は非常によい。
シート高は800mm。スリムな車体とも相まって、足つき性は非常によい。拡大
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「GB350」と「GB350 S」ではハンドルやステップの位置が異なり、今回試乗したGB350は、シートにまっすぐ腰を下ろす、コンフォート寄りのライディングポジションとなっている。
「GB350」と「GB350 S」ではハンドルやステップの位置が異なり、今回試乗したGB350は、シートにまっすぐ腰を下ろす、コンフォート寄りのライディングポジションとなっている。拡大
メーターはシンプルな単眼の機械式。路面状況に応じてエンジントルクを制御する「Hondaセレクタブルトルクコントロール」のON/OFFは、メーター脇のスイッチで操作する。
メーターはシンプルな単眼の機械式。路面状況に応じてエンジントルクを制御する「Hondaセレクタブルトルクコントロール」のON/OFFは、メーター脇のスイッチで操作する。拡大
燃料タンクの容量は15リッター。WMTCモードで41.0km/リッターという燃費とも相まって、十分な航続距離を実現している。
燃料タンクの容量は15リッター。WMTCモードで41.0km/リッターという燃費とも相まって、十分な航続距離を実現している。拡大
タイヤサイズはフロントが100/90-19、リアが130/70-18。「GB350 S」のリアには、よりワイドな150/70R17サイズのラジアルタイヤが装着される。
タイヤサイズはフロントが100/90-19、リアが130/70-18。「GB350 S」のリアには、よりワイドな150/70R17サイズのラジアルタイヤが装着される。拡大
「GB350」に備わるクローム仕上げのマフラー。スポーティー寄りなキャラクターの「GB350 S」もいいが、全体がクラシックなイメージでまとめられたGB350も捨てがたい。
「GB350」に備わるクローム仕上げのマフラー。スポーティー寄りなキャラクターの「GB350 S」もいいが、全体がクラシックなイメージでまとめられたGB350も捨てがたい。拡大

安心番長が55万円“で”買える

GB350をどう語るべきか迷っている最中に、某大手国産ビールメーカーの社長のインタビュー記事を見た。まず問われたのは、ジャンルが増え過ぎて買うのに迷う最近の商品構成について。これに社長は、「現状のニーズを突き詰めれば、プレミアムとリーズナブルの2つに絞られる」と答えた。プレミアムとリーズナブルの違いは、こうだ。

「前者はこれ“が”いい。後者はこれ“で”いい」

さすがは、自分が毎晩飲むビールをつくってくれる会社の社長。私が言いたかったことを見事に代弁してくれたと思って、うれしくなった。いや実際は、インタビュー記事を都合よく解釈しただけなのですが。

果たしてGB350は、“が”か? “で”か? そのあたりは、この製品の出自もあわせて考えなければならないだろう。

もとをただせばGB350は、インド市場で販売される「ハイネスCB350」というモデルの日本仕様だ。中途半端に感じる350ccという排気量は、インドの車両区分に則した設定らしい。なおかつエンジンを新設計したのは、ユーロ5に相当するインドの排出ガス規制をクリアするのが目的でもあったようだ。そのうえで、円換算で30万円以下の値づけをした。

対する日本での販売価格は、400ccクラスより安く、250ccクラスに匹敵する税込み55万円。優等生で生真面目で、破たんの兆候などどこにも見当たらない安心番長たる乗り味の製品がこれ“で”買えるとなれば、ニトリじゃないけれど「お、ねだん以上」の価値を感じられるかもしれない。例えば、初めてオートバイに乗る人や、あるいは久しぶりに乗ってみようと思った人にはうってつけ……といったように。しかし、これを自分事として考えた場合はどうか。

ここで伏線を回収します。“が”と“で”のメモでなぜ私は困ったかというと、「○○な人にはうってつけ」とか言っておきながら、自分はというと、一日を〆るのに飲むものはプレミアム“が”いいと思っているからだ。あくまで個人的な趣味嗜好(しこう)においては、「これのために働いてるなあ」と思えるものをいただきたい。多少ぜいたくでも“我(が)”を通したいのです。……って、〆がダジャレかよ。

(文=田村十七男/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)

ホンダGB350
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ホンダGB350(5MT)【レビュー】の画像拡大

【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2180×800×1105mm
ホイールベース:1440mm
シート高:800mm
重量:180kg
エンジン:348cc 空冷4ストローク単気筒 SOHC 2バルブ
最高出力:20PS(15kW)/5500rpm
最大トルク:29N・m(3.0kgf・m)/3000rpm
トランスミッション:5段MT
燃費:41.0km/リッター(WMTCモード)/49.5km/リッター(国土交通省届出値)
価格:55万円

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