日産ノートX FOUR(4WD)
会心のヨンク 2021.06.14 試乗記 「日産ノート」に追加された4WDモデル「X FOUR」に試乗。自慢の「e-POWER」に最高出力68PSの後輪用モーターを組み合わせた最新パワートレインは、簡易的な四駆システムを用いた先代モデルとはまったく次元の異なる走りを味わわせてくれた。日産の決意表明
ニュースソースとしてその名を耳にすることはたびたびなれど、肝心の内容が明らかになるごとに「もしかしてこの会社、もうクルマをつくっている場合などではないのでは……」と、失礼ながらそんなことを連想させられるまでに至ってしまっていた、ここ数年の日産自動車。
特に、ちまたでささやかれる“日本軽視”という雰囲気は、現実問題として身につまされた印象。ベーシックカーの日本代表として一時は強い存在感を放った「マーチ」は、新興国向けモデルがあてがわれた結果、人々の興味の対象から脆(もろ)くも消え去り、「キューブ」や「ジューク」といった日本のユーザーの心をつかんだかに見えたヒット作も、放置プレーを迫られていつしか消滅という憂き目に。
そんなわけで、個人的にも「このブランドから日本に向けた魅力的なニューモデルが生まれてくるのは、もはや期待薄か」との思いが避けられなくなったタイミングで現れたからこそ驚かされることになったのが、丸8年ぶりとなるフルモデルチェンジを経て登場した新型ノートだった。
世代交代のたびにボディーサイズが拡大されるのが半ば常識と思われていたなかにあって、このモデルは5ナンバーサイズをキープするにとどまらず、全長やホイールベースを短縮するという文字通りのダウンサイジングも敢行。
しかも、ライバルを少しばかり上回っていたディメンションに対し、「ちょっと大きいとの声が上がったことを踏まえての軌道修正でもあった」という従来型に対する反省の弁を聞けば、そこにはここしばらくの日産には感じられなかった日本のユーザーに対しての真摯(しんし)な思いが強く感じられたものでもある。
全モデルがe-POWERというパワーユニットの設定にも、やはりこれまでの日産車では考えられなかった、並々ならぬ決意を覚える。なぜなら、バリエーションすべてにe-POWERを搭載するとなれば、スターティングプライスの上昇は避けられないからだ。すなわちそれは、台数稼ぎのためにはどうしても欲しいはずの法人需要を諦めてまで、自身が理想とするラインナップを構築したいという決意表明にほかならないと理解できたのだ。
かくして、さまざまな部分でこれまでの日産車とは一線を画した思いが感じられる新型に対面し、いざ走りだしてみると、これが何ともビックリの好印象! 「あれれ? これは『ヤリス』や『フィット』も何するものぞの一台ではないか!」という手応えは、乗れば乗るほどに強まっていくことになったのである。
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車格が上がった?
フロントシート下にレイアウトされたコンパクトなリチウムイオンバッテリーを用いるピュアEVとしての走行時はもとより、エンジンが稼働し始めた状態になっても、静かさの印象にやはり何らの変わりもない。エンジンが発するノイズをロードノイズなどの“暗騒音”というオブラートに包み、その存在感を巧みに隠すという新しいe-POWERならではの制御は天下一品。静粛性の高さは圧倒的だ。このノイズの隠し方こそが、従来型に対して第2世代をうたうe-POWERが、最も進歩したポイントだと実感できた部分だ。
オーソドックスなメータークラスターを廃し、2枚の大きなディスプレイを主役に構成されたダッシュボードが、未来感に富んでいるだけでなく実際の使い勝手が吟味されたものであることにも感心させられた。
この種のデジタルコックピットの場合、とかく目的とされがちなのがスイッチ数の削減。しかし新型ノートの場合そこには抑制が利いて、空調コントロール系やメーターの照度調節など、とっさのシーンで手を伸ばしたい機能には独立した物理スイッチが与えられ、デジタル化したがゆえに使い勝手が低下するという昨今ありがちな愚が、巧みに回避されている。
そして何よりも、新造された骨格が生み出す剛性感に富んだ乗り味が好印象。50km/h程度までの速度域で荒れた路面へと差しかかるとそれなりの揺すられ感は認められるものの、路面凹凸に対するあたりは優しい。総じて走りのフラット感は「日産車で一番ではないか」と思えた。
個人的には、減速時に停止寸前まで速度が下がるとクリープ現象が顔を出すようにセッティングが変更され、完全なワンペダル操作の“e-POWER Drive”ができなくなってしまったことは残念である。しかし走りの質感において、これまでより車格が上がったかのように受け取れたのが、新しいノートの走りの仕上がりだったのである。
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後輪モーターの存在は大きい
そうした経緯があった新型ノートゆえ、今回紹介する追加設定された4WDモデルに対する期待も、大いに高まることになったのは言うまでもない。しかも従来型の4WDモデルと同様にモーター駆動が行われる後輪はその出力が大幅に高められたことで、もはや“発進補助”にはとどまらない本格4WDとしての機能性を備えているという触れ込み。
実際、恐らく今後は「軽EVへの転用」も考慮して決定されたとおぼしき68PS(50kW)という新型の後輪用モーター最高出力は、従来型のおよそ14倍という文字通りケタ違いの大きさだ。いざとなれば後輪だけの駆動でも走れるポテンシャルを秘めたパワーユニットの搭載が、e-POWER 4WDならではのトピックであることは間違いない。
FWD(前輪駆動)モデルに対して120kgほど増した重量は気になるところだが、実際にアクセルペダルを踏み込んでみると、“加速力の劣化”はまるで気にならないという印象だった。
もっともドライブモードで「スポーツ」を選択した場合、稼働の機会が大幅に増えることから、エンジンの存在感がFWDモデルの場合以上に顕著になったのは事実だった。一方で、今回のテストドライブはそのすべての行程がドライの舗装路上であったものの、それでも時に「後ろでも蹴っている感」が得られたのは、やはり高出力化された後輪モーターの存在が大きい。
実際、ディスプレイの表示から教えられる限り後輪がトルクを発している領域は予想以上に幅広く、特に登り勾配のきついタイトなヘアピンコーナーなどでは、トラクション能力の余裕や必要となる舵角の小ささなどから「後輪もしっかり働いている」ことを実感することができた。
もちろん、そんな4WDならではの効用は、低ミュー路へと踏み入れればさらに大きく感じられるはずだ。実は、この4WDモデルの登場時に氷上試乗会が企画されていたのだが、昨今の新型コロナ騒動によって残念にも試乗のチャンスが流れてしまった。察するにそんな場面では、かなりダイナミックな走りを披露してくれたに違いない。
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ウイークポイントは2つ
しかし、かくも好印象が続いたこの4WDモデルも、ウイークポイントが皆無というわけではない。その1つ目は価格で、実はそもそもの本体価格が240万円強という今回取り上げたX FOURは、さまざまなオプション装備を加えた取材車の状態になると、340万円へと価格が大きく跳ね上がってしまうのだ。
もちろん、「オプションならば、自分好みの必要最小限のアイテムを選択すればOK」と言いたいところだが、新型ノートの場合はすべてのメーカーオプションがパッケージ化されていて、そうしたわがままが通用しない設定である。
例えば、日産が力を注ぐ高速道路上の同一車線運転支援技術「プロパイロット」は、移動物検知機能付きのアラウンドビューモニターやバーチャルルームミラー、ワイヤレス充電器などとのセットで42万円超という高価なオプション設定。しかも、それすらも注文できるのは上級グレードに限られるという、なかなかの敷居の高さである。
もうひとつ気になってしまったのが、125mmという最低地上高である。FWDモデルとの差は、わずかに+5mm。もちろん、SUVではないので特段大きな地上高を望むまでには至らないが、それでもせっかくの“本格4WD化”が図られたのに、これではいかにももったいなく感じられてしまう。
日常シーンでの踏破性を決定するのは、実は地上高の余裕である場合が多い。ましてや、カタログなどで積雪上を駆け抜けるシーンをアピールするモデルであれば、あえてオフロードへと踏み込むつもりなどはなくても、わだち路面に遭遇した場合のタフネスぶりなども踏まえ、最低でも150~160mm程度の最低地上高は欲しかったと思う。
とはいえ、全面刷新された新型ノートに加えられた4WDモデルが、単なる生活四駆のレベルから大きく踏み出したポテンシャルを有していることは確実。これからの“日本の日産”にも期待を持たせる、会心の内容の持ち主だ。
(文=河村康彦/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
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テスト車のデータ
日産ノートX FOUR
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4045×1695×1520mm
ホイールベース:2580mm
車重:1340kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.2リッター直3 DOHC 12バルブ
モーター:交流同期電動機
エンジン最高出力:82PS(60kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:103N・m(10.5kgf・m)/4800rpm
フロントモーター最高出力:116PS(85kW)/2900-1万0341rpm
フロントモーター最大トルク:280N・m(28.6kgf・m)/0-2900rpm
リアモーター最高出力:68PS(50kW)/2900-1万0024rpm
リアモーター最大トルク:100N・m(10.2kgf・m)/0-4775rpm
タイヤ:(前)185/60R16 86H/(後)185/60R16 86H(ブリヂストン・エコピアEP25)
燃費:23.8km/リッター(WLTCモード)
価格:244万5300円/テスト車=339万8440円
オプション装備:インテリジェントアラウンドビューモニター<移動物検知機能付き>+インテリジェントルームミラー+USB電源ソケット<タイプA×1、タイプC×1>+ワイヤレス充電器+日産コネクトナビゲーションシステム<地デジ内蔵>+日産コネクト専用車載通信ユニット+プロパイロット<ナビリンク機能付き>+SOSコール+インテリジェントBSI<後側方衝突防止支援システム>+BSW<後側方車両検知機能>+RCTA<後退時車両検知警報>(42万0200円)/185/60R16 86Hタイヤ&16インチホイール+LEDヘッドランプ<ハイ&ロービーム+オートレベライザー+シグネチャーLEDポジションランプ>+アダプティブLEDヘッドライトシステム+LEDフォグランプ+本革巻きステアリングホイール+ピアノブラック調フィニッシャー<インストロア>+シート地<本革>+リアセンターアームレスト<カップホルダー×2>(33万5500円)/クリアビューパッケージ<ワイパーデアイサー+リアLEDフォグランプ>(2万2000円) 以下、販売店オプション ETC2.0ユニット<BM19-D>ナビ連動モデル・ビルトインタイプ(3万8684円)/ウィンドウはっ水12カ月<フロントウィンドウ1面+フロントドアガラス2面>(1万0285円)/日産オリジナルドライブレコーダー<フロント+リア>(7万2571円)/フロアカーペット プレミアム<消臭機能付き>(2万9700円)/トノカバー(2万4200円)
テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:2174km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(6)/山岳路(1)
テスト距離:241.6km
使用燃料:13.3リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:18.1km/リッター(満タン法)/20.1km/リッター(車載燃費計計測値)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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