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BMW X6 xDrive35d Mスポーツ(4WD/8AT)

技術力に脱帽 2021.07.26 試乗記 下野 康史 電動化に対する考え方はそれぞれだが、ことBMWの場合は電気の力を環境対応に使いつつ、走りの楽しさにも活用している。マイルドハイブリッド化された直6エンジンを積む「X6」のあまりの出来栄えに感じ入ると同時に、味わえる残り時間を考えると寂しくなった。

あと付けターボ的ハイブリッド

BMWヘビー級SUVのビジュアル系(?)、X6に48Vマイルドハイブリッドのクリーンディーゼルが搭載された。

これまでの3リッター直6ディーゼルターボにベルト駆動のスタータージェネレーターをインストールし、小型の48Vバッテリーと組み合わせ、必要に応じて電動アシストや回生制動やエンジン始動を行う。加速をアシストするスタータージェネレーターのパワーは最高11PS。アイドリングストップやコースティングでエンジンが止まっても、パワーステアリングや空調には48Vのリチウムイオン電池から電気が供給される。

トヨタやホンダの2モーター+大型バッテリーによるストロングハイブリッドと比べると、“あと付けターボ”的なソリューションにも思えるが、ドイツメーカーは基本このやりかたでエンジンの延命を図ろうとしている。

エンジン本体のアウトプットも最高出力で21PS、最大トルクで30N・m増え、286PSと650N・mを得た。一方、燃費はWLTCモードで11.3km/リッターから12.4km/リッターへと向上している。

試乗したのは「xDrive35d Mスポーツ」。1081万円のクルマだが、従来モデルからは7万円高と、価格上昇はウルトラマイルドだ。

マイルドハイブリッド化された3リッター直6ディーゼルターボエンジンを搭載する「BMW X6」が国内導入されたのは2021年2月のこと。「X5」「X7」にも同様の改良が施された。
マイルドハイブリッド化された3リッター直6ディーゼルターボエンジンを搭載する「BMW X6」が国内導入されたのは2021年2月のこと。「X5」「X7」にも同様の改良が施された。拡大
「B57D」エンジン本体も改良され、21PSと30N・m強力な最高出力286PS、最大トルク650N・mというスペックに進化した。
「B57D」エンジン本体も改良され、21PSと30N・m強力な最高出力286PS、最大トルク650N・mというスペックに進化した。拡大
20インチの大径タイヤ&ホイールを標準装備。試乗車は「ピレリPゼロ」を履いていた。
20インチの大径タイヤ&ホイールを標準装備。試乗車は「ピレリPゼロ」を履いていた。拡大
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ひしひしと感じる電気の力

興味のハイライトは、電動化された3リッター直6ディーゼルである。筆者は元のX6・35dを知らないので、比較はできないが、結論を言うと、およそツッコミどころのない高級クリーンディーゼルという印象だった。

いや、聞いていなければ、ディーゼルだとは思わなかったかもしれない。それくらい静かである。車内はもちろん、車外騒音の低さも、ガソリンエンジンと区別がつかない。液晶計器パネルの燃料計にわざわざ“DIESEL”とただし書きを出しているのは親切だと思う。

しかし力強さは、電動アシストディーゼルならではだろう。発進時からEVのような大トルクを感じさせて、とにかく速い。ただのガソリン3リッターエンジンに、ここまでの迫力はないはずだ。

マイルドハイブリッドシステムがいまどんな仕事をしているかは、ダッシュボード中央の大型モニターで確認できる。エネルギーフローの動画だけでなく、「エンジン作動」「電気モーターサポート」「バッテリー充電中」と、日本語でも示されるが、それを見なければ、いま何がどうなっているかはまず体感できない。それもすべてが静かになめらかに行われるためである。

車重2.2t超にもかかわらず、前から引っ張られるような発進時の加速感は、おそらく電動アシストのたまものと思われる。赤信号に向けてブレーキを踏んでゆくと、十数km/hに落ちたあたりでエンジンは止まる。そのため回生制動感はそれほどない。停車中にブレーキペダルから足を離せばすぐにエンジンがかかるが、そのときのちょっと大きめの揺れだけがディーゼルを感じさせるところだ。

マイルドハイブリッドシステムは制動エネルギーを回生して発電するスタータージェネレーターと、その電気をためる48Vのリチウムイオンバッテリーで構成される。
マイルドハイブリッドシステムは制動エネルギーを回生して発電するスタータージェネレーターと、その電気をためる48Vのリチウムイオンバッテリーで構成される。拡大
試乗車のインテリアはアイボリーホワイトのレザーメリノがチョイスされていた。ダッシュボードやセンターコンソールまわりにはカーボンパネルが大胆に使われている。
試乗車のインテリアはアイボリーホワイトのレザーメリノがチョイスされていた。ダッシュボードやセンターコンソールまわりにはカーボンパネルが大胆に使われている。拡大
フロントにはスポーツシートを採用。ヒーターが標準装備で、試乗車にはオプションの「コンフォートパッケージ」によってランバーサポートとベンチレーター、マッサージ機能も備わっていた。
フロントにはスポーツシートを採用。ヒーターが標準装備で、試乗車にはオプションの「コンフォートパッケージ」によってランバーサポートとベンチレーター、マッサージ機能も備わっていた。拡大
リアシートにもヒーターが標準装備。足元空間は十分に広いが、クーペボディーのためヘッドレストは天井にほど近いところに位置している。
リアシートにもヒーターが標準装備。足元空間は十分に広いが、クーペボディーのためヘッドレストは天井にほど近いところに位置している。拡大

至れり尽くせりの装備品

2007年、SUVならぬSAV(スポーツ・アクティビティー・ビークル)をうたい文句に登場したX6の特徴は、デッカイことである。

2020年以来の現行3代目でもそれは変わらず、全長ほぼ5m、全幅2m。一方、クーペふうにつくった上屋のため、全高は1.7mと低めだ。ボディーのタテヨコは「ポルシェ・カイエン」なども似たようなものだが、乗り込むとライバルのなかでも大きなクルマに感じる。スポーティーなルックスにサイズの見当識が狂うせいだろうか。

1000万円超だから、装備は至れり尽くせりだ。なかでもイチゲンさんを驚かせるお金持ち演出は、「クラフテッドクリスタルフィニッシュ」というオプション(8万9000円)で、ATセレクターノブ、iDriveのコントローラー、スタート/ストップボタンの3点にスワロフスキーのようなクリスタル加工が施される。iDriveコントローラーにはときどき太陽光が反射して目に入り、メーワクだった。

車載装備を連係させて、ドライバーを癒やすような仕掛けもある。モニターで“エクスペリエンスモード”というのを試していたら、「リラックスした雰囲気に浸って、オフタイムを楽しんでください」というメッセージが出て、グラスサンルーフのブラインドが閉まり、アロマが出て、マッサージが始まった。

足まわりはフロントがダブルウイッシュボーン式でリアがマルチリンク式。減衰力可変式の「アダプティブMサスペンション」(コイルスプリング)が標準装備となっている。
足まわりはフロントがダブルウイッシュボーン式でリアがマルチリンク式。減衰力可変式の「アダプティブMサスペンション」(コイルスプリング)が標準装備となっている。拡大
オプションの「クラフテッドクリスタルフィニッシュ」によるATセレクターノブとiDriveコントローラー、そしてスタート/ストップボタン。
オプションの「クラフテッドクリスタルフィニッシュ」によるATセレクターノブとiDriveコントローラー、そしてスタート/ストップボタン。拡大
液晶メータークラスター「BMWライブコックピット」は12.3インチの大画面。タコメーターのレッドゾーンは5000rpmから。
液晶メータークラスター「BMWライブコックピット」は12.3インチの大画面。タコメーターのレッドゾーンは5000rpmから。拡大

とびきりぜいたくなBMW

これだけボディーが大きくても、リアシートの居住性はAクラスではない。ファストバックするルーフの頭上空間を稼ぐために、着座位置は低く、見晴らしがよくないのだ。前席に乗りたいクルマである。

荷室の奥行きはたっぷりしているが、意外に横幅は狭く、しかもフロアが高い。重量物の出し入れは大変だ。徹底的に使い倒すような実用SUVではない。そういう意味では、数あるBMWのなかでもとびきりぜいたくなクルマだと思う。

315kmを走って、燃費は8.2km/リッター(満タン法)だった。車載燃費計では9.6km/リッター。軽油は給油時の吹き返しが激しいので、なかなか満タンにしにくい。どちらかというと、車載燃費計のほうが正しいかもしれない。

ゾウのようにデッカイのに、ヒョウのように速いBMWが、X6である。その心臓である新しい3リッター直6電動クリーンディーゼルが、なにより印象的だった。48Vマイルドハイブリッドがどうのこうのというよりも、あのディーゼルエンジンをここまで磨き上げた技術力がスゴイ。こんなパワーソースをそうやすやすとフェードアウトさせていいものかとあらためて思った。

(文=下野康史<かばたやすし>/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝)

マイルドハイブリッド化によってWLTCモードの燃費値が11.3km/リッターから12.4km/リッターへと改善。燃料タンクは80リッターの大容量を誇る。
マイルドハイブリッド化によってWLTCモードの燃費値が11.3km/リッターから12.4km/リッターへと改善。燃料タンクは80リッターの大容量を誇る。拡大
荷室の容量は580~1525リッター。クーペスタイルのため上部が大きく開口する。
荷室の容量は580~1525リッター。クーペスタイルのため上部が大きく開口する。拡大
試乗車はオプションのカーボンリアスポイラーを装備していた。形状は標準装備品と変わらない。
試乗車はオプションのカーボンリアスポイラーを装備していた。形状は標準装備品と変わらない。拡大

テスト車のデータ

BMW X6 xDrive35d Mスポーツ

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4945×2005×1695mm
ホイールベース:2975mm
車重:2290kg
駆動方式:4WD
エンジン:3リッター直6 DOHC 24バルブ ディーゼル ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:286PS(210kW)/4000rpm
エンジン最大トルク:650N・m(66.3kgf・m)/1500-2500rpm
モーター最高出力:11PS(8kW)/1万rpm
モーター最大トルク:35N・m(3.6kgf・m)/2500rpm
タイヤ:(前)275/45R20 110Y/(後)305/40R20 112Y(ピレリPゼロ)
燃費:12.4km/リッター(WLTCモード)
価格:1081万円/テスト車=1287万5000円
オプション装備:メタリックカラー<カーボンブラック>(10万円)/BMWインディビジュアルエクステンデッドレザーメリノ<アイボリーホワイト>(17万1000円)/プラスパッケージ(15万円)/コンフォートパッケージ(43万7000円)/Mカーボンミラーキャップ(12万4000円)/Mカーボンリアスポイラー(13万5000円)/クラフテッドクリスタルフィニッシュ(8万9000円)/カーボンファイバーインテリアトリム(16万4000円)/アンビエントエアパッケージ(4万4000円)/スカイラウンジパノラマガラスサンルーフ(37万7000円)/リアサイドウィンドウローラーブラインド<手動>(4万1000円)/harman/kardonサラウンドサウンドシステム(6万9000円)/アルカンターラアンソラジットルーフライニング(16万4000円)

テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:1255km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(8)/山岳路(1)
テスト距離:315.4km
使用燃料:38.5リッター(軽油)
参考燃費:8.2km/リッター(満タン法)/9.6km/リッター(車載燃費計計測値)

BMW X6 xDrive35d Mスポーツ
BMW X6 xDrive35d Mスポーツ拡大
下野 康史

下野 康史

自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。

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