自動車ブランドがEV専業化を続々と宣言! 青写真通りに進むと10年後はどうなっている?
2021.08.11 デイリーコラムホンダは社内構造の変革に着手?
2021年8月5日、ホンダが55歳以上を対象に募集した早期退職に対して2000人超の応募があったとの報道が出た。公式発表ではないが、『日本経済新聞』と『読売新聞』が報じ、現時点で訂正が出されていないので、報道内容に大きな誤りはなかったということだろう。2紙とも、今回の背景には電気自動車(EV)と燃料電池車(FCV)へのシフトがあるとしている。
三部敏宏社長は4月の就任時のスピーチで「先進国全体でのEV、FCVの販売比率を2030年に40%、2035年には80%、2040年にはグローバルで100%」を宣言。日本市場に限れば、2024年に軽自動車のEVを投入、2030年にハイブリッドを含めて100%電動車にするという。これを実現するには社内体制を抜本から変えなければならないので、まずは早期退職でミドル以上の人員を削減し、社員の若返りを図っているとみられる。
海外ではすでにジャガーやアウディ、メルセデス・ベンツなどがFCVを含むEVに特化することを宣言している。さらに7月には欧州委員会(EU)が2035年の新車販売をすべてEVかFCVにする方針を示した。ホンダの計画では100%EV化の目標が2040年なので、EU域内は先んじて2035年までに対応することになるだろう。
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自動車産業のピラミッド構造はどう変わる?
EV専業化宣言は2021年のトレンドといえそうだ。今年に入ってから、ジャガーが2025年を、アウディが2026年を、ボルボ・カーとメルセデス・ベンツが2030年を、それぞれターゲット年としてEV専業化を表明している。米国勢もゼネラルモーターズが2035年を、フォードが欧州市場向け乗用車に限定して2030年を目標年に掲げた。
いずれも対象は原則、乗用車や小型車。商用車については方針を明確化していなかったり、PHVの可能性を残していたりと各社の対応は分かれるが、長期的に見れば、いずれ内燃機関と決別するときがくる。なぜなら、日本を含む先進諸国は2050年前後のカーボンニュートラルを宣言しており、そのためには個々の内燃機関で燃やす化石燃料を限りなくゼロに近づけなければならないからだ。現在の技術の延長線上で考えれば、乗用車はEVとFCVに、商用車はFCVにするのが合理的な判断といえるだろう。
メーカーとしては目下、EVの生産体制の整備が課題だ。内燃機関を扱ってきた工場は閉鎖もしくはEV関連拠点に転換する必要があり、それに伴って人員整理も必須となる。冒頭のホンダはまさにこの渦中にあるわけだが、これは自動車メーカーだけの話でない。自動車業界の産業ピラミッドを構成する協力会社も変化に対応しなければならないのだ。
危機感の強い企業ほど、すでに新規事業開発に尽力している。電動化や安全技術など従来とは違う分野に挑む企業もあれば、医療や製薬など自動車とは関係のない分野を目指す企業もある。考えてみれば、トヨタ自動車の源流は織機だし、スバルの前身は飛行機製作所だ。産業構造の転換期ならば大胆な方針転換で成功する可能性は多分にある。いずれ歴史はこの時代を、長らく業界の成長を支えてきた巨大ピラミッドの終焉(しゅうえん)と捉えるかもしれない。
いかにしてEV化とインフラ整備を進めるか
メーカー各社のEV化は目下のところ乗用車の新車がメインだ。当面は中古車も含め、内燃機関を持つクルマに乗ることができるが、いずれはEVやFCVのオーナーになるかもしれない。その際に一番の心配事はインフラではないだろうか。EVが進化したとはいえ、依然として航続距離に不安は残る。FCVにしても、水素ステーションが日本中くまなく普及しているとはいえない。メーカーがEV専業化を進めるのと並行して、政府や自治体にはインフラ整備の施策を推進してほしいところ。
米国カリフォルニア州のインフラ推進策はユニークだ。まず、水素ステーションの設置費用の半分は公的資金で賄われる。当地は世界一FCVが普及している地域だが、それでも利用者は少なく、最初は収益が上がらない。しかし、初期投資を半分に抑えられれば採算がとれる可能性が出てくる。
また、カリフォルニア州ではクレジット制を導入。水素ステーション事業者が水素を販売したり、併設の充電設備で電気を販売したりすると、クレジットが付与される。一方、ガソリンスタンド事業者はガソリンを販売するためにクレジットを購入しなければならず、このクレジットは市場を介して取引される。つまり、民間の事業者間で資金が回る仕組みなのだ。公的資金の投入と民間事業者間の取引促進という両輪で、インフラの整備を目指している。
日本には日本の交通事情や市場があり、カリフォルニア流の政策が最善とは思わない。しかし、何かしらのレバレッジを利かせなければ、インフラ整備が進まず、EVやFCVの利用者も増えない。民間企業がいかに動きやすくするか、そのための環境整備こそ政治の果たす役割だと思う。
(文=林 愛子/写真=本田技研工業、アウディ、ダイムラー、トヨタ自動車/編集=藤沢 勝)
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林 愛子
技術ジャーナリスト 東京理科大学理学部卒、事業構想大学院大学修了(事業構想修士)。先進サイエンス領域を中心に取材・原稿執筆を行っており、2006年の日経BP社『ECO JAPAN』の立ち上げ以降、環境問題やエコカーの分野にも活躍の幅を広げている。株式会社サイエンスデザイン代表。
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