ポルシェ・タイカン4クロスツーリスモ(4WD)
いつでも気持ちいい 2021.08.27 試乗記 ピュアEV「タイカン」をベースとするポルシェのニューモデル「タイカン クロスツーリスモ」に試乗。これを、隙間商法のバリエーションモデルと思うなかれ、見て触れて乗るほどに、その商品力の高さに驚かされることだろう。新ジャンルの開拓者
ポルシェ初の電動スポーツカーに新しい仲間が加わった。その名もタイカン クロスツーリスモ。タイカンの4ドアサルーンのルーフラインを仕立て直して、ボディー後端にガバチョと開閉するドアを設け、ちょっぴり最低地上高をアップしてオフロード走行にも備えた、ポルシェ言うところのCUV(Cross Utility Vehicle)第1弾である。
CUVという名前をつくったぐらいだから、CUVの第2弾の可能性は大だろう。次にありそうなのは「パナメーラ」だけれど、ピュアスポーツカーの「911」や「ケイマン」のCUVもワイルドな魅力を放ちそうだ。
話を戻して、2021年3月に発表されたタイカン クロスツーリスモには最初から、「4」「4S」「ターボ」の3モデルの設定がある。すでにタイカン4ドアサルーンのラインナップが出そろっているからだろう……。と思ったら、興味深いことに、タイカンは「タイカン」とだけ名乗る後輪駆動のモデルが一番“下”で、「タイカン4クロスツーリスモ」に対応するサルーンの「タイカン4」というのは、いまのところ存在しない。なるほど、こうした差異をつくり出すことで、クロスツーリスモ=4WDという存在感を押し出しているわけだ。
クロスツーリスモは、第一にいわゆるライフスタイル商品と位置づけられる。でもって、価格も魅力的で、これぞタイカンの本命、と申し上げても過言ではない。例えば、タイカンが1203万円、タイカン4クロスツーリスモは1341万円で、その価格差は138万円。
前者は1モーターの後輪駆動で、最高出力は326PS、0-100km/h加速は5.4秒。後者のクロスツーリスモは前後アクスル上にそれぞれモーターを搭載する2モーターの4WDで、380PSと5.1秒である。機構面、性能面から言っても、この価格の違いは納得できる。
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差別化はぬかりなし
そもそもタイカン クロスツーリスモは5番目のドアを持っていて、通常の状態で446リッター、後席の背もたれを倒せば1212リッターという大容量の荷室が現れる。対してサルーンのタイカンは407リッター。フロントに84リッターのラゲッジコンパートメントを備えているのは両者に共通し、サルーンでも十分広いラゲッジスペースがある。
とはいえ、トビラがリアにもうひとつあって、そこからサルーンのトランクでは入らないような何かを出し入れすることに、私たちは人生の可能性の広がり、日々の生活の充実というものを感じる。そこにワゴンというものの利便性と「ライフスタイル」ということばで表されるプラスαを見いだすのだ。
おまけにクロスツーリスモは、最低地上高がサルーンより20mm高い。試乗車のようにオプションの「オフロードデザインパッケージ」を装着すると、さらに10mm増して30mm高くなる。
加えて「グラベル」という、クロスツーリスモならではのドライビングプログラムも標準で備わっている。センターコンソールに設けられたボタンを押すと、標準装備のエアサスが最低地上高をさらに30mm自動的に上げる。同時に、サスペンションやトラクション、スロットル特性などの電子制御関連がオフロード走行専用に切り替わる。
さらにタイカンではオプションのパフォーマンスバッテリープラスとエアサスペンションを、タイカン4クロスツーリスモは標準装備する。タイカンの場合、電池が95万3000円、エアサスが36万円で、両方足すと131万3000円。そうすると、前者は1334万3000円となり、後者との価格差は6万7000円に縮まる。
ちなみに、「パフォーマンスバッテリー」と「パフォーマンスバッテリープラス」の違いは大きい。かたや79.2kWh、こなた93.4kWhと容量が異なり、タイカンの場合、最高出力が326PSから380PSに、航続距離が最長431kmから484kmにアップする。スマホとかパソコンのメモリー同様、ぜひとも大容量のほうを選びたくなるオプションである。
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体感的には狭くない
つまり、タイカン4クロスツーリスモは、タイカンより実質6万7000円高いだけでリアゲートとオフロード性能が得られるのだから、大変お得なモデルだということができる。
試みに、ひとつ上のモデルのタイカン4S(サルーン)と同4Sクロスツーリスモを比べてみたら、なんとビックリ! 前者は1462万円、後者は1534万円で、価格差たったの72万円。エアサスはどちらも標準装備するけれど、バッテリーは前者の場合、パフォーマンスバッテリープラスはオプションで、91万9000円の追加が求められる。クロスツーリスモは標準装備するから、19万9000円もお値打ちということになる。
おまけに、もうひとつ。クロスツーリスモは後席のヘッドルームがサルーンより47mm高くなっている。今回の取材時、筆者が運転席にいて、後席にカメラマンの郡さんが乗り込んできた時に、「後ろ、狭いでしょ」と尋ねたら、「いや、そんなことないですよ」という答えが返ってきた。タイカン(サルーン)の後席は着座位置が低くて、押し入れの中に入っているみたいな薄暗さがあったから、そう聞いたのだけれど、クロスツーリスモは意外や、そうではない。試乗車が固定式パノラミックガラスルーフを装備していたこともあって、47mmの違いで狭苦しさを感じない後席空間がつくられているのだ。
その謎を探るべく、サルーンとクロスツーリスモの真横の写真を比べてみると、ルーフとサイドウィンドウとの間のパネル部分がクロスツーリスモのほうが微妙に厚くなっている。前後のドア部分を共有しつつ、ルーフラインを全体に持ち上げることで、リアの居住空間に余裕をつくり出していることになる。
前述のごとく、タイカン4は存在していないので、同じ4S同士でスペック表を眺めてみると、クロスツーリスモは、11mm長くて1mm幅広く、30mm背が高い。最低地上高はサルーンより20mm高と発表されているので、ということはルーフラインのアップはたったの10mmにすぎない。う~む。これぞデザインのマジックである。
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走ればあふれる未来感
運転しては、クロスツーリスモの4Sにもターボにも乗っていないけれど、4で十分だと私は思った。ひゅううううううううん、というエレクトリックなサウンドを控えめに発しながら、静かに、大変気持ちよく走る。
標準は19インチだけれど、試乗車は20インチのタイヤ&ホイールを履いている。前:245/45R20、後ろ:285/40R20という極太偏平サイズなのにZR規格ではないのは、最高速度が220km/hに抑えられているからだ。そのことも、トタントタンと高速道路の目地段差を乗り越えていく、しなやかな乗り心地に好影響を与えている。
タイカンは、内燃機関の自動車はもちろん、EVのほとんどでさえ、時代遅れに感じさせる。アクセルペダルを踏み込めば、内燃機関のノイズ、バイブレーションとは無縁の静かさと振動のなさを保ちつつ、胸のすく加速を披露する。バッティングセンターで来る球、来る球、全部ホームランにできちゃうような気持ちよさ。いつでも気持ちがよいので、気持ちがよいことが当たり前になり、こんなにいつでも気持ちがよいと、気持ちがよいという感覚がマヒしちゃうのでは……と心配になる。果たしてそれが杞憂(きゆう)にすぎないのかどうかは、長く乗ってみないとわからない。
タイカンCUV、ああ、もっと体感したい!
(文=今尾直樹/写真=郡大二郎/編集=関 顕也)
テスト車のデータ
ポルシェ・タイカン4クロスツーリスモ
ボディーサイズ:4974×1967×1409mm
ホイールベース:2904mm
車重:2245kg(DIN)
駆動方式:4WD
フロントモーター:永久磁石同期式電動モーター
リアモーター:永久磁石同期式電動モーター
フロントモーター最高出力:280PS(175kW)
フロントモーター最大トルク:300N・m(30.6kgf・m)
リアモーター最高出力:435PS(320kW)
リアモーター最大トルク:340N・m(34.7kgf・m)
システム最高出力:380PS(280kW)※オーバーブースト時は476PS
システム最大トルク:500N・m(66.3kgf・m)
タイヤ:(前)245/45R20/(後)285/40R20(ミシュラン・パイロットスポーツ4)
一充電最大走行可能距離:456km(WLTPモード)
電力量消費率:26.4~22.4kWh/100km(約3.7~4.4km/kWh、WLTPモード)
価格:1341万円/テスト車=1861万4000円
オプション装備:ボディーカラー<ゲンチアンブルーメタリック>(18万3000円)/ツートンレザーインテリア<スムースレザー、ブラック/クレヨン>(67万7000円)/パワーステアリングプラス(4万8000円)/カラークレストホイールセンターキャップ(2万7000円)/オフロードデザインパッケージ(27万4000円)/イオナイザー(4万8000円)/電動充電ポートカバー(10万4000円)/ラゲッジコンパートメントパーテーションネット(4万円)/固定式パノラミックガラスルーフ(26万8000円)/アルミニウムルーフレール(9万8000円)/シートヒーター<前後席>(14万5000円)/マッサージ機能+シートベンチレーション<フロント>(33万5000円)/グレーバンドフロントウィンドウ(1万9000円)/リアシート用サイドエアバッグ(6万9000円)/4+1シート(8万円)/ダークパルダオ インテリアパッケージ<オープンポア>(27万2000円)/ポルシェクレスト エンボスヘッドレスト<前席および後席左右>(7万6000円)/LEDヘッドライト<PDLS含む>(19万3000円)/スポーツクロノパッケージ(18万6000円)/BOSEサラウンドサウンドシステム(22万5000円)/レザーエッジング付きフロアマット(9万1000円)/リバーシブルラゲッジコンパートメントマット<レザーエッジング付き>(3万6000円)/20インチオフロードデザインホイール(35万9000円)/エレクトリックスポーツサウンド(8万4000円)/パッセンジャーディスプレイ(17万1000円)/22kWオンボードチャージャー(27万8000円)/4ゾーンクライメートコントロール(13万7000円)/トラフィックジャムアシスト(9万6000円)/アクティブパーキングサポート(15万9000円)/14Way電動コンフォートシート<前席メモリー機能付き>(21万5000円)/サイドウィンドウトリム<ハイグロスシルバーカラー>(5万8000円)/アンビエントライト(7万1000円)/PORSCHEロゴ LEDドアカーテシライト(4万8000円)/プライバシーガラス(8万4000円)
テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:2006km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:352.4km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:5.0km/kWh

今尾 直樹
1960年岐阜県生まれ。1983年秋、就職活動中にCG誌で、「新雑誌創刊につき編集部員募集」を知り、郵送では間に合わなかったため、締め切り日に水道橋にあった二玄社まで履歴書を持参する。筆記試験の会場は忘れたけれど、監督官のひとりが下野康史さんで、もうひとりの見知らぬひとが鈴木正文さんだった。合格通知が届いたのは11月23日勤労感謝の日。あれからはや幾年。少年老い易く学成り難し。つづく。
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