アウディA1 1.4 TFSI スポーツパッケージ(FF/7AT)【ブリーフテスト】
アウディA1 1.4 TFSI スポーツパッケージ(FF/7AT) 2011.03.29 試乗記 ……383万円総合評価……★★★★
最もコンパクトなアウディ「A1」に試乗。気になる燃費や走り、使い勝手など細かくチェックした。
底力が試される
「アウディA2」以来、空白になっていたBセグメントに投入される新しいコンパクト「A1」には、皆がアウディと聞いて想像するもの、期待するものがあふれている。いかにも「造り込み」という言葉が似合う、こってりとした面質のエクステリア、素材にごまかしがなくカッチリ作り込まれたインテリア、あるいはTFSIエンジンやSトロニックトランスミッションに代表される先進技術など、アウディの上級モデルと同じ世界観が惜しげもなく展開されており、「小さな高級車」が体現されている。
もっとも、ビジネスを考えたら3ドアしか用意されないのは微妙なところだ。日本のマーケットではこのクラスとて実用性が重要視されており、3ドアのヒット作は「MINI」など一部の例外しか存在しない。また、日本では実用車のコモディティ化が進む傾向にあり、特に小型車は価格競争力が重視されている。この時代、消費者を「高価でちょっと使いづらいかもしれないけど、それでも欲しい」という気にさせられるかどうか。アウディブランドの底力が試されそうだ。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
「A1」はアウディの新しいエントリーモデルとして2011年1月に日本上陸を果たした、3ドア4人乗りのプレミアムコンパクトカー。コンポーネントの多くを「フォルクスワーゲン・ポロ」と共用している。
エンジンはアイドリングストップ機能付きの1.4リッター直噴ターボを採用。7段のSトロニックトランスミッションと組み合わされ、19.4km/リッター(10・15モード)の燃費を達成している。お家芸の「クワトロ」は用意されず、FF車のみの展開となる。
アンダーステア軽減のため、コーナリング時にフロント内輪に軽くブレーキをかける電子制御アクスルディファレンシャルロック付きのESPも標準装着される。
(グレード概要)
テスト車はベースグレードの15万円アップで選ぶことができる「スポーツパッケージ」装着車。スポーツシートやスポーツサスペンションに加え、16インチタイヤ&ホイールも与えられ(テスト車はオプションの17インチタイヤを装着)、よりスポーティな走りを楽しむことができるという内容だ。
ルーフアーチ部分をボディカラーと別色にペイントする「コントラストルーフ」は、スポーツパッケージ以上で選べるオプション。エアコン吹き出し口にカラーリングをはめ込む「カラードスリーブ」も4色用意され、自分好みの飾り付けを楽しむことができる。
オーディオとHDDナビゲーションを統合した「MMI(マルチメディアインターフェイス)」は、全グレードに標準装着される。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
インストゥルメントパネルは造形自体はシンプルで、嫌みのないもの。エアコンの丸い吹き出し口が効果的に配置されているおかげで、視覚的に退屈になっていないばかりか、スポーティなイメージも演出されている。樹脂の素材感の高さもさることながら、各所がきっちり造り込まれており、小型車=チープという方程式がここでは打ち破られている。
本革巻きステアリング、ナビゲーションシステム、リアサブウーファー付10スピーカーシステムなどが標準と、装備は非常に充実している。さらにボディカラーが10色選べるほか、エアコン吹き出し口のスリーブやシートの色などの選択肢が多く、自分なりの個性が押し出せるBTOプログラムが用意されている。
(前席)……★★★★
テスト車はスポーツパッケージ装着車だったために、サイドサポートの抑揚が強いスポーツシートが装着されていたが、着座感はそれほど窮屈ではない。前後スライドと高さの調整代が大きく、これと併せてステアリングのチルトとテレスコピックの両調整機構を使えば、小柄な女性から大柄な男性まで適切なドライビングポジションがとれるだろう。
(後席)……★★
背もたれが直立気味で、リラックスした姿勢がとりづらい。それ以前に居住スペースが広くなく、快適な空間とはいいづらい。身長180cmクラスの乗員だとヘッドルームの余裕がほとんどなく、ボディの側面がこちらに迫ってきていて側頭部にそれなりの圧迫感がある。また膝まわりの余裕も少ない。「2プラス2」とまでは言わないにしても、大人2人が長時間くつろげる空間ではない。
(荷室)……★★
リアウィンドウが寝かされたデザインであるため、トランク容量はそのぶん制約を受けている。また、開口部もそれほど広くなく、使い勝手はそれなりといった感じ。ちなみにフロアは完全にはフラットにならず(後席はダブルフォールディングタイプではない)、その長さは後席バックレストを立てた状態で60cmあまり、倒した状態で120cm以上あった。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
1.4リッターターボエンジンは、より大きく重い「A3」で何ら不満がなかったことからも想像できるように、「A1」では十分な速さを披露する。十分ではダメ、ビュンビュン速い「A1」が欲しいというなら、2010年秋のパリモーターショーで欧州デビューした185psの1.4リッターツインチャージャー搭載車の上陸を待つべきだろう。
7段のSトロニックトランスミッションはシフトスピードが速く、乗っていてあいかわらず気持ちがいい。しかし細かいことを言うと、発進時や、街中のストップ・アンド・ゴーで若干ギクシャクする時がある。
スタートストップシステム(アイドリングストップ機構)によって止まっていたエンジンの再スタートは素早い。ただし、ここで運悪くトランスミッションのギクシャクが加わると、期せずして車両がクッと前に出てしまうことがある。トルコンからの乗換え組にとって、違和感は小さくないかもしれない。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
スポーツサスペンションが組まれた仕様であったことに加え、215/40R17という立派なサイズのタイヤ(オプション)が装着されていたこともあり、かなりハードな乗り心地であった。路面の突起を通過すると芯のある突き上げを伝え、ロードノイズも大きめ。ボディ剛性の高さに助けられて、ドライバーなら「スポーティな乗り心地」で済むかもしれないが、他の乗員にとってはちょっとつらそうである。ノーマルがどれぐらいしなやかなのか試してみたいところ。
もっとも、そのぶんフットワークは良い。ステアリングは正確で、回頭性も非常に良く、切ったら切っただけノーズがスッと気持ちよくコーナーの内側を向く。だからといって中立付近が過敏すぎないので、直進はどしっと腰が落ち着いている。「MINI」の良きライバルである。
(写真=郡大二郎)
【テストデータ】
報告者:竹下元太郎
テスト日:2010年12月10日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2010年
テスト車の走行距離:433km
タイヤ:(前)215/40R17(後)同じ(いずれも、コンチネンタル・コンチスポーツコンタクト2)
オプション装備:バイキセノンパッケージ(12万円)/レザーパッケージ(28万円)/スポーツパッケージ(15万円)/オプションカラー(3万円)/コントラストルーフ(6万円)/5スポークVデザインアルミホイール&215/40R17タイヤ(12万円)/クルーズコントロール+APS(15万円)/エアコン吹き出し口カラードスリーブ(3万円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(6):高速道路(4)
テスト距離:128.9km
使用燃料:12.8リッター
参考燃費:10.1km/リッター

竹下 元太郎
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