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アウディe-tron GTクワトロ(4WD)/RS e-tron GT(4WD)

新しいフラッグシップ 2021.11.03 試乗記 2026年以降に投入する新型車はすべて電気自動車(BEV)とすることを明言しているアウディ。日本にも「e-tron/e-tronスポーツバック」に続いて「e-tron GT」を送り込んできた。ポルシェとの共同開発によって生み出された4ドアクーペの実力やいかに!?

低く幅広いシルエット

コロナウイルスの気配さえなかった3年前の夏、アムステルダムから北京まで古いボルボでシルクロードをたどる旅の途中で宿泊したトルファンのホテルの駐車場にはびっくりするような光景が広がっていた。中国メーカーだけでなく、さまざまなブランドのテスト車両がほとんど偽装もなしにびっしり止まっていたのだ。今やデスバレーではなく新疆(しんきょう)ウイグル自治区がヒートテストの中心地になっているのだという。アウディの各種「e-tron」も数多く止まっていたが、その奥に数台だけ厳重にカバーされた、明らかに低くワイドなシルエットのクルマがあった。その数カ月後、2018年末のロサンゼルスショーで初公開されることになるe-tron GTである。アウディの電動車ラインナップの頂点に位置するe-tron GTは2021年春に国内でも発表されていたが、ようやく実車を公道で試乗する機会が巡ってきた。

他のSUV系e-tronとは異なり、e-tron GTは「ポルシェ・タイカン」とともに「J1」と呼ばれる専用プラットフォームを採用したBEVスポーツカーである。ほとんど5mの全長はタイカンよりわずかに長いが、2900mmのホイールベースはタイカンと同一だ。低く幅広く、しかもアウディらしくパキッと折り目正しいスタイルは迫力満点、巨大なホイールを強調したデザインも相まっていかにもスーパースポーツカー然としている。タイカンは最近追加された後輪駆動のスタンダードモデルのほかに、前後アクスル各1基のモーターを備えた4WDの「4S」と「ターボ」、そして「ターボS」がラインナップされるが、e-tron GTと高性能版「RS e-tron GT」はどちらも前後2基のモーターによる「クワトロ」である。

2021年4月に国内初披露された「アウディe-tron GT」(写真は高性能版の「RS e-tron GT」)。車両本体価格1399万円~という高額車ながら、すでに150台以上のオーダーが入っているという。
2021年4月に国内初披露された「アウディe-tron GT」(写真は高性能版の「RS e-tron GT」)。車両本体価格1399万円~という高額車ながら、すでに150台以上のオーダーが入っているという。拡大
ホイールベースは2900mmにも達する。ボディーの高さはアダプティブエアサスペンションを装備する「RS e-tron GT」のほうが20mm低い(1395mm)。
ホイールベースは2900mmにも達する。ボディーの高さはアダプティブエアサスペンションを装備する「RS e-tron GT」のほうが20mm低い(1395mm)。拡大
ボディーの全幅は1965mm。リアエンドにはスポイラーが格納されている。
ボディーの全幅は1965mm。リアエンドにはスポイラーが格納されている。拡大
空気抵抗の指標となるCd値は0.24と公表されている。フロントには可変式のエアインテークが備わるほか、フロア下を覆うカバーにはディンプル加工が施される。
空気抵抗の指標となるCd値は0.24と公表されている。フロントには可変式のエアインテークが備わるほか、フロア下を覆うカバーにはディンプル加工が施される。拡大

タイカンとどこが違うか

e-tron GTは駆動用リチウムイオンバッテリーや800Vシステムをはじめとして、共同開発したポルシェのタイカンと基本的なランニングシャシーを共用するが、細部のスペックは当然ながら微妙に異なる。e-tron GTはどちらの仕様も駆動用バッテリーの総電力量は93.4kWhで、これはポルシェで言うところの「パフォーマンスバッテリープラス」と同一だ(タイカンの標準仕様「パフォーマンスバッテリー」は79.2kWh)。タイカン同様、左右フロントフェンダー部分にはCHAdeMO対応のDC急速充電ポートとAC普通充電ポートが設けられており、一充電当たりの航続距離はe-tron GT、RS e-tron GTともWLTCモードで534㎞と発表されている。車両は150kWまでの急速充電に対応しており、最近少しずつ増えてきた90kW器の場合は30分で約250km分を充電できるという。

2基のモーターを合わせた最高出力はRS e-tron GTで475kW(646PS)、e-tron GTは390kW(530PS)とされている。ちなみにこの数値はローンチコントロール使用のオーバーブースト時のもので、通常時の最高出力は440kWと350kWである。同じく最大トルクは830N・mと640N・mと発表されている。車重は2.3t前後だが、オーバーブースト時の0-100km/h加速はRS e-tron GTが3.3秒、e-tron GTは4.1秒、最高速はBEVとしては異例のそれぞれ250km/hと245km/hに達するという。参考までにタイカンの最高性能版ターボSの0-100km/h加速は2.8秒、最高速は260km/hである。e-tron GTもタイカンと同じくリアのみ2段ギアボックスを装備する。

こちらは標準モデルの「e-tron GTクワトロ」。アーミー調のボディーカラーは「タクティクスグリーン」。
こちらは標準モデルの「e-tron GTクワトロ」。アーミー調のボディーカラーは「タクティクスグリーン」。拡大
「レザーフリーパッケージ」は「e-tron GTクワトロ」のみで選べるオプション。レザーを使わず、漁網やペットボトルからの再生材で内装を仕立てている。
「レザーフリーパッケージ」は「e-tron GTクワトロ」のみで選べるオプション。レザーを使わず、漁網やペットボトルからの再生材で内装を仕立てている。拡大
スポーツシートの表皮はカスケードクロス(「レザーフリーパッケージ」非装着の場合はパーシャルレザー)。着座位置は極めて低い。
スポーツシートの表皮はカスケードクロス(「レザーフリーパッケージ」非装着の場合はパーシャルレザー)。着座位置は極めて低い。拡大
駆動用リチウムイオンバッテリーは後席足元を避けるように搭載される(座面の下には入っている)。自然な着座位置をとれるのはそのためだ。
駆動用リチウムイオンバッテリーは後席足元を避けるように搭載される(座面の下には入っている)。自然な着座位置をとれるのはそのためだ。拡大

こちらはシフトパドル付き

フルデジタルメーターのバーチャルコックピットをはじめ、インストゥルメントパネルやインテリアの仕立ては最新アウディと共通しており、簡潔で美しく隙がない。意図的なものか、あるいは設計年次のせいかは知らないが、他のアウディよりも空調コントロールなど物理スイッチが多く残されているように感じられたが、もちろんオヤジ世代にとってはそのほうが使いやすくありがたい。

特徴的なのは、シフトパドルの備えがないタイカンとは異なり、回生ブレーキのレベル(3段階)を変えるシフトパドルが装備されていること。タイカンの場合はドライブモードを「スポーツ」に切り替えるか、ステアリングホイールの左スポークに備わる小さなアクセラレーターボタンで選ぶようになっていた。とはいえGTを名乗るだけあって、e-tron GTもやはりコースティング優先のようで、基本的にはアクセルペダルを戻しても前方から見えない手に引っ張られるようにスーッと惰性走行する。減速したい場合はフットブレーキを使うのが原則というわけだが、実際にはペダルを踏んでもその9割を回生ブレーキで賄っているという。オプションでタングステンカーバイドコーティングのローターが設定されているのはそれを見越したさび止めのためでもあるのだろう。

e-tron GTのリアシートは3人掛けで定員は5人(タイカンは4人乗りが標準で4+1シートはオプション)となる。ルーフが低いせいで乗り降りする際にはかもいに頭をぶつけないように注意が必要だが、いったん収まってしまえば予想以上に快適だ。ヘッドルームの余裕はあまりなく、ルーミーというほどでもないが、バッテリーの形状を工夫してリアシートの足元がえぐれているおかげで、自然な着座姿勢をとることができる。

「RS e-tron GT」のインテリア。ディンプルレザーのステアリングホイールやカーボン仕立てのダッシュボードはオプションとなっている。
「RS e-tron GT」のインテリア。ディンプルレザーのステアリングホイールやカーボン仕立てのダッシュボードはオプションとなっている。拡大
レザーシートにはハニカムパターンのステッチがあしらわれる。エンジン車の「RS」モデルでは「RS」ロゴがステッチされるのに対し、「RS e-tron GT」ではプリントとなっている。
レザーシートにはハニカムパターンのステッチがあしらわれる。エンジン車の「RS」モデルでは「RS」ロゴがステッチされるのに対し、「RS e-tron GT」ではプリントとなっている。拡大
シフトセレクターは前後スライド式。操作するとカチッというフィードバックがある。
シフトセレクターは前後スライド式。操作するとカチッというフィードバックがある。拡大
メーターパネルはフル液晶タイプの「アウディバーチャルコックピット」。ノングレア加工が施されているが、小さなバイザーが備わっている。
メーターパネルはフル液晶タイプの「アウディバーチャルコックピット」。ノングレア加工が施されているが、小さなバイザーが備わっている。拡大

値段に見合う完成度

さすがに最近ではモーターとバッテリーさえあれば、誰でも自動車をつくれる時代がやって来たというような乱暴な意見は目にしなくなったが、このe-tron GTやタイカンに乗ると、むしろBEVのほうが完成度の違いが顕著に表れるのではないかという気がする。

BEVやプラグインハイブリッド車はどうしてもバッテリーの重さのせいで、荒れた路面ではブルブルとした振動やピッチングが残るクルマもあるが、e-tron GTはラフなそぶりは一切見せない。特にアダプティプエアサスペンションを備えるRS e-tron GTは、速度を問わず、路面を問わずほぼ完璧にしなやかでフラットな姿勢を保つ。金属スプリングに可変ダンパーを装備するスタンダードなe-tron GTも文句なしのレベルだが、さすがに舗装の荒れた一般道などでは明確な突き上げを感じることもあった。RS e-tron GTにはオプションのオールホイールステアリングも装備されていたが、山道でもまったく顎を出さないどころか、ぴたりと路面に張り付いて舗装面を削り取るように加速する。タイカンの4WDもそうだったが、4輪が個別に目いっぱい仕事をしているような、あるいは常にベクタリングが効いているような切れ味抜群のハンドリングは、人によっては違和感を覚えるかもしれないと思うほどだ。

これだけのタフなシャシーと緻密で洗練された制御を見せつけられると、高いなどとは決して口にできない。BEVでもエンジン車でも自動車としての完成度は千差万別、と当たり前のことをあらためて突き付けられた思いである。

(文=高平高輝/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)

カーナビゲーションには電気自動車の充電器の位置が優先的に表示される。充電出力も分かるようになっているのがさすがだ。
カーナビゲーションには電気自動車の充電器の位置が優先的に表示される。充電出力も分かるようになっているのがさすがだ。拡大
トランクルームの容量は「e-tron GTクワトロ」(写真)が405リッターで「RS e-tron GT」が350リッター。
トランクルームの容量は「e-tron GTクワトロ」(写真)が405リッターで「RS e-tron GT」が350リッター。拡大
フロントフード下にも収納スペースが用意されている。普通充電用のケーブルがぴったり収まる。
フロントフード下にも収納スペースが用意されている。普通充電用のケーブルがぴったり収まる。拡大
ボディーの右側には急速充電用ポートが、左側には普通充電用ポートが搭載されている。
ボディーの右側には急速充電用ポートが、左側には普通充電用ポートが搭載されている。拡大
アウディe-tron GTクワトロ
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アウディe-tron GTクワトロ(4WD)/RS e-tron GT(4WD)【試乗記】の画像拡大

テスト車のデータ

アウディe-tron GTクワトロ

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4990×1965×1415mm
ホイールベース:2900mm
車重:2290kg
駆動方式:4WD
モーター:永久磁石同期式電動モーター
フロントモーター最高出力:238PS(175kW)
フロントモーター最大トルク:--N・m(--kgf・m)
リアモーター最高出力:435PS(320kW)
リアモーター最大トルク:--N・m(--kgf・m)
システム最高出力:530PS(390kW)
システム最大トルク:640N・m(65.3kgf・m)
タイヤ:(前)245/45R20 130Y XL/(後)285/40R20 108Y XL(ピレリ・チントゥラートP7)
一充電最大走行可能距離:534km(WLTCモード)
価格:1399万円/テスト車=1557万円
オプション装備:レザーフリーパッケージ<インテリアエレメンツ[アーティフィシャルレザー×ダイナミカ]+カスケードクロス×アーティフィシャルレザー+スポーツシートプラス[フロント]+フラットボトムステアリングホイール[アルカンターラ]>(30万円)/5スポークエアロモジュールブラックアルミホイール<フロント9.0J×20、リア11.0J×20>+フロント245/45R20&リア285/40R20タイヤ(16万円)/ウォールナットデコラティブパネル<ナチュラルグレーブラウン>(10万円)/タングステンカーバイドコーティングブレーキ<レッドブレーキキャリパー>(35万円)/テクノロジーパッケージ<マトリクスLEDヘッドライト+アウディレーザーライト+Bang & Olufsenプレミアムサウンドシステム[16スピーカー]+アコースティックガラス+プライバシーガラス+e-tronスポーツサウンド+フロントシートヒーター+ワイヤレスチャージング>(67万円)

テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:854km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:--km/kWh

アウディRS e-tron GT
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アウディe-tron GTクワトロ(4WD)/RS e-tron GT(4WD)【試乗記】の画像拡大

アウディRS e-tron GT

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4990×1965×1395mm
ホイールベース:2900mm
車重:2290kg
駆動方式:4WD
モーター:永久磁石同期式電動モーター
フロントモーター最高出力:238PS(175kW)
フロントモーター最大トルク:--N・m(--kgf・m)
リアモーター最高出力:455PS(335kW)
リアモーター最大トルク:--N・m(--kgf・m)
システム最高出力:646PS(475kW)
システム最大トルク:830N・m(84.6kgf・m)
タイヤ:(前)265/35R21 101Y/(後)305/30R21 104Y XL(グッドイヤー・イーグルF1アシメトリック5)
一充電最大走行可能距離:534km(WLTCモード)
価格:1799万円/テスト車=2063万円
オプション装備:RSレッドデザインパッケージ<スポーツシートプロ[フロント]+パーフォレーテッドレザー×ファインナッパレザー+インテリアエレメンツ[ファインナッパレザー×ダイナミカ]+ステアリングホイール[エクスプレスレッドステッチ]+レッドシートベルト+フロアマット[エクスプレスレッドステッチ]+シートベンチレーション[フロント]>(40万円)/5スポークコンケーブモジュールブラックアルミホイール<フロント9.5J×21、リア11.5J×21>+フロント265/35R21&リア305/30R21タイヤ(26万円)/カーボンパッケージ<カーボンルーフ+カーボン×ブラックスタイリングパッケージ+カーボンエクステリアミラーハウジング+ブラックAudiリングス+カーボンツイルマットデコラティブパネル+カーボンドアシルトリム>(129万円)/ダイナミックパッケージプラス<オールホイールステアリング+プログレッシブステアリングプラス>(21万円)/タングステンカーバイドコーティングブレーキ<レッドブレーキキャリパー>(7万円)/テクノロジーパッケージ<アウディレーザーライト+アコースティックガラス+プライバシーガラス+e-tronスポーツサウンド+ワイヤレスチャージング>(41万円)

テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:1250km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:--km/kWh

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