第222回:「e-tron GT」で宇宙へGO!
2021.12.20 カーマニア人間国宝への道100億円も払わなくてもいい
ポルシェのEV「タイカン」が猛烈な勢いで売れているという。2021年1月~9月のグローバル販売台数は、2万8640台。なんと「911」を抜いたそうだ。
旧世代のカーマニア的には世も末なニュースだが、以前、担当サクライ君に乗せてもらった「タイカン ターボ」は、確かに魅力的なEVだった。値段を無視すれば、今まで乗ったEVのなかで一番だったと断言したい。
まず加速のフィーリングがスバラシイ。テスラみたいなデリカシーのカケラもないムチ打ち誘発的な加速ではなく、「911ターボ」みたいな、クソ速いけどぬくもりのある加速をしてくれるから! さすがポルシェ。
ポルシェ得意の「スポーツ+」モードで全開を試すと、『スタートレック』のような人工音「ポルシェ・エレクトリックスポーツサウンド」が室内に響いて、気分はまさに宇宙船となる。インテリアの青い照明もまるで宇宙船で、タイカン ターボに乗れば、昭和なオッサンも宇宙へ旅立つことができた。前澤友作さんみたいに100億円払わなくても、たったの2000万円ちょいで宇宙へGOなのだ! タイカン ターボ最高!
そこへタイミングよく、アウディさまから試乗会の案内が届いた。タイカンの兄弟にあたる「e-tron GT」にお乗りになりませんか、とのお誘いだ。
うおおおお、今度はe-tron GTで宇宙へGOか。宇宙へ行くなら速いヤツがいいので、フツーのe-tron GTじゃなく、「RS e-tron GT」をリクエストしたら当選した。やった~! 費用ゼロ円で宇宙へGO GO!
拡大 |
拡大 |
拡大 |
節約モードでは電子音も節約
会場は羽田イノベーションシティなる、聞きなれない施設である。恐る恐る乗りつけると、宇宙基地っぽい雰囲気だ。敷地内を走る「自律走行バス停留所」もある。
これって完全自動運転なの!? ひょっとしてオリンピックの選手村で走ってたアレ!? と思ったら、猛烈な低速(10km/hくらい?)でやってきたのは、なんかすごくソレっぽい、前も後ろもどっちも前みたいな小型バスだった。カラーリングも“あしゅら男爵“みたいでコワイ。さすが宇宙基地だぜ! このバス、帰って調べたら、オリンピック選手村とはまったく無関係なフランス製だった。セボンセボン。
あしゅら男爵バスにドギモを抜かれている間に、RS e-tron GTの試乗の時間がやってきた。最高出力は475kW。タイカン ターボの500kWよりちょっとだけおとなしい。「ランボルギーニ・ウラカン」と「アウディR8」の関係そのままである。
ただ、e-tron GTも、「アウディドライブセレクト」で走行モードを変えることで、ステキな電子音を聞かせてくれるという。フル加速すると、果たしてどんなお星さまがキラキラするのか。うおおおお、出撃だ!
まずは「エフィシェント」モードで走る。節約モードだけに電子音も節約されており、まったくの無音だった。タイヤのパターンノイズもほとんど聞こえず、聞こえるのは高級オーディオから流れるNACK5(埼玉のFM局)だけ。なぜNACK5? と思ったが、他に聞きたいラジオも特になかったので、そのままにしておいた。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
e-tron GTは1年分が売り切れ
耳に響くのがNACK5だけの超静寂空間は、乗り心地も最高。サスペンションはウルトラしなやかだ。私は、最近のアウディの乗り心地は世界一だと思っているが、RS e-tron GTも例外ではなかった。平べったい車体は地面に張り付く一反木綿のように走る。
途中の「コンフォート」モードはすっ飛ばして、最強の「ダイナミック」モードへIN! さぁ、宇宙はどうなんだ。ポルシェがスタートレックならアウディは『スターウォーズ』なのか!?
「ずおおおおおおおおおおおおお~~~」
耳に届いてきたのは、遠くで聞こえる5.2リッターの自然吸気V10みたいな重低音だった。えっ、これだけ? なんかもっと飛び道具的な音はしないの!?
でも、アクセルを全開にしても、パドルを引いて回生ブレーキを強めにしても、何をしても遠くで聞こえるV10サウンドはそのままだった。父ちゃんのポーは聞こえるが、宇宙へ飛び立つのはちょっとムリ。これなら断然タイカンの勝ちだっぺ!
ところが会場に戻って広報さまに話を聞くと、e-tron GTは、すでにほぼ1年分が売り切れているという! えええ~~~っ!?
広報さま:台数としては200台ほどですが、今から注文されると、かなりお待ちいただくことになってしまいます。
オレ:いやぁ、この価格帯の200台は決して少なくないでしょう。フェラーリだって全モデル合計で(国内販売台数は)年間1000台くらいですから。
広報さま:ですよね。売れ行き的には、R8よりかなりいいんです(苦笑)。
タイカンといいe-tron GTといい、スーパーEV侮れず! フェラーリもそのうちスーパーEVを出すらしいけど、意外と全然抵抗なく売れてしまうんだろうなぁ。
でも、電子音だけはタイカンに負けないで! 音で負けたらフェラーリの立つ瀬がないから。高級EVはそこがキモ(私見です)!!
(文と写真=清水草一/編集=櫻井健一)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
-
第339回:駆けぬけるヨロコビは安くない 2026.7.6 清水草一の話題の連載。いつもの首都高で試乗した「BMW 120d Mスポーツ」の価格が540万円ってマジか! と思っていたら、本国ではなんと4万1750ユーロ(邦貨約770万円)⁉ 安かったころ、もっと小さかったころのBMWに思いをはせた。
-
第338回:古臭いほどイイに決まってる 2026.6.22 清水草一の話題の連載。マイナーチェンジを受けた最新の「シボレー・コルベットZ06」を夜の首都高に連れ出した。アメリカを代表するミドシップスーパーカーのステアリングを握ったフェラーリオーナーの印象やいかに。
-
第337回:「ルーチェ」に比べればタダ同然 2026.6.8 清水草一の話題の連載。フルモデルチェンジで3代目に進化した「日産リーフ」を夜の首都高に連れ出した。「非常に良くなった」「静かで快適」といった評判を耳にする量販・量産BEVのパイオニアに、カーマニアは何を感じた?
-
第336回:やっぱり絶交! 2026.5.25 清水草一の話題の連載。夜の首都高に200台の台数限定で販売される「マツダ スピリット レーシング・ロードスター12R」で出撃した。手作業で組まれた2リッター直4エンジンを搭載するマツダ入魂のスポーツモデルに、カーマニアは何を感じた?
-
第335回:水平尾翼が効いてるのかな 2026.5.11 清水草一の話題の連載。フルモデルチェンジで2代目となった「シトロエンC5エアクロス」で、夜の首都高に出撃した。最新のデザイン言語を用いて進化した内外装とマイルドハイブリッドの走りに、元シトロエンオーナーは何を感じた?
-
NEW
ポルシェ911カレラT(後編)
2026.7.19ミスター・スバル 辰己英治の目利きスバルとSTIでクルマの走りを鍛え、モータースポーツにも積極的に取り組んできた辰己英治さん。彼の目に、“スポーツカーの水準器”こと「ポルシェ911」はどのように映ったのだろう? 走りの楽しさを追求した「カレラT」グレードに乗っての印象を聞いた。 -
ホンダCB750ホーネット(6MT)【レビュー】
2026.7.18試乗記ホンダのスポーツネイキッド「CB750ホーネット」が、話題の「E-Clutch」を獲得。ライディングの幅を広げる自動クラッチシステムは、パンチの利いた2気筒のストリートファイターにどんな走りをもたらすのか? その仕上がりを確かめた。 -
人気沸騰「ランクル“FJ”」を手にするもうひとつの方法
2026.7.17サブスク「KINTO」で「ランドクルーザー“FJ”」に乗る<AD>2026年5月に発売されるやオーダーが集中し、受注停止となってしまった「ランドクルーザー“FJ”」。しかし、あきらめるのはまだ早い。“FJ”とのカーライフを実現できる、トヨタの新車サブスクリプションサービス「KINTO」という手段があるのだ。 -
新型「アルピーヌA110」はどんなクルマに? グッドウッドを駆けたテストカーから読み解く
2026.7.17デイリーコラムアルピーヌが次期型「A110」を示唆する「A110フューチャー」を初公開。グッドウッドで走る姿を披露した。そこから分かる未来のA110の姿とは? 電動化がアナウンスされているが、エンジン車の設定はあるのか? 公式発表とテストカーの姿から深掘りする。 -
ベントレー・ベンテイガ スピード(4WD/8AT)【試乗記】
2026.7.17試乗記「ベントレー・ベンテイガ」に最上級グレードの「スピード」が登場。ブランドの在り方をストレートに伝える名称のトップパフォーマンスモデルだが、従来型との最大の違いはその心臓部にV8エンジンが積まれていることだ。およそ不満のあろうはずもないが、最新モデルの仕上がりをリポートする。 -
写真で解説する新型「日産エルグランド」
2026.7.16画像・写真新型「日産エルグランド」は、日本伝統の美をデザインに生かしながら、同社独自の最新技術を組み合わせて“走りのよさ”も徹底追求したという意欲作。その見どころを写真とともに解説する。


























