BMW M440i xDriveグランクーペ(4WD/8AT)
ガソリン車ばんざい 2022.01.18 試乗記 実用的な5ドアボディーにダイナミックなデザイン、そして高性能なエンジンとシャシー。いかにも万能そうなミドルクラスクーペは、ステアリングを握ったドライバーに大いなる満足を与えてくれた。これぞビーエムダブリュー
2020年10月に国内で発表になった「BMW M440i xDriveクーペ」に、そのちょっとあと箱根で試乗したとき、たまげた記憶がある。これぞ、ビーエムダブリュー。フロイデ・アム・ファーレン、シーア・ドライビング・プレジャー、アルティメット・ドライビング・マシン、そして、「駆けぬける歓び」! そのM440iの4ドア、より正確には4ドア+リアゲートバージョンが「グランクーペ」である。
M440iは、BMWの高性能車専門部隊であるM社が開発を担ったわけだけれど、“Mカー”には「サーキットでの走行を可能としたMハイパフォーマンスモデル」と、「サーキットで培われた技術を余すところなく取り入れ走行性能を高めたMパフォーマンスモデル」という2つのカテゴリーがあり、M440iは後者、つまり、一般公道向けに仕立てられたモデルである。
筆者は未試乗ながら、前者の「M3」「M4」もきっとものすごくよいでしょう。でも、M440iもスポーティブネスとエレガンスがうまいことブレンドされていて、これはこれで、これぞ、ビーエムダブリュー。フロイデ・アム・ファーレン、シーア・ドライビング・プレジャー、アルティメット・ドライビング・マシン、そして、「駆けぬける歓び」! あ、コピペで文字数を稼いでしまいました。オホン。つまりはバイエルンの青い空と白い雲を思わせる、爽快な運転感覚を味わうことができる。
意外なほど快適
まずもってM440i xDriveグランクーペで印象的なのは、乗り心地のよさだ。タイヤは前245/40、後ろ255/40という前後異サイズの19インチで、「ピレリPゼロ」のランフラットを履いている。
19インチでヨンマルでランフラットで、快適なのだ。やや硬めだけれど、マイルド。硬マイルドである。硬いマイルドって、どういうこと?
例えば、首都高速3号線の六本木あたりの高架の目地段差を60km/hぐらいで走行していて、軽くいなしていく。ボボムッ、ボボムッと、ショックは伝わってくるけれど、ごく軽微で、う~む、こんなに乗り心地のよい高性能車も珍しい。「アダプティブMサスペンション」という可変ダンピングを備えた電子制御のセッティングとかに秘伝があるにちがいない。実はM440iの2ドアクーペも、3シリーズ セダンの「M340i」も前225/45、後ろ255/35で、ともに19インチが標準である。M440iグランクーペにはタイヤサイズにしても、独自のレシピが用いられている。
でもって、エンジンがすばらしい。これぞ、ビーエムダブリュー。フロイデ・アム・ファーレン、シーア・ドライビング・プレジャー、アルティメット・ドライビング・マシン、そして、「駆けぬける歓び」! いや、コピペですけど、手を抜いているわけではなくて、ほんとうに。
空を飛んでしまいそう
スターターのボタンを押すと、一拍おいてグオンッとひと声ほえてから目覚める、このB58B30Bユニットは、すでに「Z4 M40i」でも「X4 xDrive M40i」でも、もちろんM440i xDriveクーペでもおなじみの、Mチューンの直列6気筒DOHCである。これぞビ……コピペはやめて、バイエルンの伝家の宝刀。排気量2997cc、ボア94.6mm×ストローク82.0mmのショートストロークで、ダイレクトインジェクション、ツインスクロールターボチャージャーとバルブトロニックを組み合わせた「BMWツインパワー・ターボ・テクノロジー」によって、最高出力387PS/5800rpm、最大トルク500N・m/1800-5000rpmを発生する。
普段は静かだけれど、3000rpmを超えるあたりから、まろやかな、だけどスポーティーな音色のエンジン音を発しつつ、シルキースムーズに加速して、こころに羽が生えて飛び立つような、そういう気持ちにさせてくれる。天下無双。ストレートシックスの傑作だ。
「4シリーズ グランクーペ」という観点から見ると、2014年に本国でデビューした初代から7年ぶりに全面改良を受けた、キープコンセプトの2代目の旗艦、ということになる。
2代目4シリーズ グランクーペの見どころは、その流麗なスタイリングと居住&荷室空間の両立にある。全長×全幅×全高は、4785×1850×1450mm、ホイールベースは2855mm。初代よりホイールベースは45mm延びており、そのぶん、2代目は大きくなり、居住空間は広がっている。
2ドアクーペのM440iと比べてみると、グランクーペは10mm長くて、全幅は同じで、55mm背が高い。ホイールベースは5mm違うだけだから、プラットフォームは事実上、同じと考えてよいだろう。すべての源である「3シリーズ」のセダンのM340i xDriveと寸法を比べると、グランクーペは65mm長くて、25mmワイドで、5mm高い。ちなみに、セダンのホイールベースは4シリーズのクーペと同じ2850mmである。
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気晴らしにも 実用にも
つまりグランクーペというのは、3シリーズのセダンと比べると、前後のオーバーハングをほんの小指ほどの65mm、4シリーズ クーペと比べると、小指のツメほどの10mmだけうまいこと使って、独自のスタイルを構築しているのである。
パッケージングはよく考えられており、後席も頭上空間は最小限ながら、膝まわりには余裕がある。大人でも2人なら十分イケるだろう。ファストバックにもかかわらず、トランク容量は470リッターと、3シリーズ セダンより10リッター少ないだけで、後席を倒せば、1290リッターという広大な荷室空間が現れる。
スタイリングの犠牲になっているものがあるとすれば、車両感覚がつかみにくいことだ。実際のサイズよりひとまわり大きなクルマに乗っているみたいで、中央車線がないような狭い道とか路地とかではご用心である。
今回は山道を試していないけれど、M440iクーペとほとんど同サイズだから、ハンドリングもすばらしいにちがいない。電子制御4WDのxDriveは4WDをまったく意識させないし、可変ギアの「バリアブル・スポーツ・ステアリング」はクイックで、ステアリングフィールは最上の部類に属する。
いわゆるドライブモードの「ドライビング・パフォーマンス・コントロール」をスポーツプラスにして、8段ATのシフターをSにすれば、赤信号で減速するときにもブリッピングを入れてダウンシフトして、ドライバーを有頂天にさせる。気晴らしにも、実用にも使える。これぞ(中略)「駆けぬける歓び」!
人類がつくりえたミドル級ガソリンエンジン車のベストの一台。と総括できるのではあるまいか。実用的かつスタイリッシュなのに、「M340i xDriveツーリング」より価格が20万円安いのは、大きな決め手ではないにしても、チャーミングだと筆者は思う。
(文=今尾直樹/写真=郡大二郎/編集=関 顕也)
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テスト車のデータ
BMW M440i xDriveグランクーペ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4785×1850×1450mm
ホイールベース:2855mm
車重:1840kg
駆動方式:4WD
エンジン:3リッター直6 DOHC 24バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:387PS(285kW)/5800rpm
最大トルク:500N・m(51.0kgf・m)/1800-5000rpm
タイヤ:(前)245/40R19 98Y/(後)255/40R19 100Y(ピレリPゼロ)
燃費:10.8km/リッター(WLTCモード)/12.2km/リッター(JC08モード)
価格:1005万円/テスト車=1050万1000円
オプション装備:ボディーカラー<アヴェンチュリン・レッド>(26万7000円)/ヴァーネスカレザー ブラック<ブルーステッチ入り>(0円)/Mスポーツブレーキ<ハイグロスレッド>(4万8000円)/Mスポーツシート(13万6000円)
テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:3955km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(8)/山岳路(0)
テスト距離:158.2km
使用燃料:20.0リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:7.9km/リッター(満タン法)/8.0km/リッター(車載燃費計計測値)

今尾 直樹
1960年岐阜県生まれ。1983年秋、就職活動中にCG誌で、「新雑誌創刊につき編集部員募集」を知り、郵送では間に合わなかったため、締め切り日に水道橋にあった二玄社まで履歴書を持参する。筆記試験の会場は忘れたけれど、監督官のひとりが下野康史さんで、もうひとりの見知らぬひとが鈴木正文さんだった。合格通知が届いたのは11月23日勤労感謝の日。あれからはや幾年。少年老い易く学成り難し。つづく。
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