日本導入はわずか2車種だけど…… 韓国ヒョンデのフルラインナップを眺めてみる
2022.02.23 デイリーコラムホンダやフォードより売れている
“ついに”、ヒョンデ(旧ヒュンダイ)が日本市場に帰ってきた。
2021年から燃料電池車(FCEV)「ネッソ」の試乗車が一部のメディアに貸し出されていたこともあり、「もしかすると日本市場に復帰するのでは?」といううわさがモータージャーナリスト仲間の間で流れていたのだ。しかし、一方で「過去に失敗した日本に、いまさら復帰するのは難しいのではないか」という思いもあった。そのため、今回のヒョンデの日本復帰については、驚いたけれど、その半分以上は「困難に立ち向かうであろうヒョンデの決意の強さ」に対する驚きであったのだ。
とはいえ、ヒョンデの力は約10年前の日本撤退時よりも確実にアップしている。国内にいると、ヒョンデの存在感を感じることはほとんどないだろう。しかし、日本を一歩出ると、そこには大きなヒョンデが必ずいる。海外モーターショーを取材すれば、日系メーカーと遜色ない存在感を放っている。そもそもグループ企業であるキアを加えれば、近年のヒョンデグループの世界販売台数は700万台前後と、トヨタやフォルクスワーゲン、ルノー・日産・三菱の直後、ステランティスやゼネラルモーターズなどと並んで2番目のグループに属する。ホンダやフォードよりも上なのだ。
当然、そのラインナップは非常に多い。今回の日本復帰では「アイオニック5」とネッソのわずか2モデルしか用意されていなかったけれど、世界市場では数多くのヒョンデのクルマが販売されている。ヒョンデのグローバルサイトを見てみれば、そこには36ものモデルが紹介されている。なかでも世界で人気を集めている、ヒョンデの代表モデルを5車種ほど紹介しよう。
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注目度急上昇中のツーソン
まず、世界でも屈指の巨大市場となるアメリカ。そこで人気を集めるのが「Tucson(ツーソン)」「Santa Fe(サンタフェ)」「Elantra(エラントラ)」だ。
ツーソンは2020年に登場したばかりの最新SUVだ。ボディーの寸法は全長×全幅×全高=4630×1865×1665mmで、日本で言えば「トヨタRAV4」に近く、世界的な基準ではコンパクトSUVということになる。1.6リッターのガソリンターボや2リッターのディーゼルターボエンジンに加えて、ハイブリッドやプラグインハイブリッドなどの豊富なパワートレインを有する。アメリカ市場をはじめ欧州でも大人気の、いま最も注目度の高いヒョンデ車ではないだろうか。
サンタフェはツーソンよりも少し大きなSUVで、全長×全幅×全高=4785×1900×1685mm。エンジンは2.2リッターのディーゼルと2.5リッター、または3.5リッターのガソリンで、ハイブリッドとプラグインハイブリッドも用意する。アメリカでは売れ筋となるミドルサイズSUVに属する。SUVクーペ風のツーソンに対して、サンタフェはよりボックス的なデザインで、ファミリー層に向けたオーソドックスなイメージのSUVとなる。
エラントラはミドルサイズのスタンダードなセダンであり、本国韓国では「Avante(アバンテ)」を名乗る。現行モデルは2020年に登場し、2021年の北米カー・オブ・ザ・イヤーを獲得するなど、非常に高い評価を得ている。サイズは全長×全幅×全高=4675×1825×1430mmで、パワートレインは1.6リッターまたは2リッターのガソリンエンジン、そしてハイブリッドだ。ボディーサイドの彫刻刀で削ったようにシャープなプレスラインが強い印象を与える。日本車ではトヨタの「カムリ」や「カローラ」、ホンダの「アコード」や「シビック」の強力なライバルとして世界各地でしのぎを削る相手だ。
アイオニック5と並ぶEVの2本柱
続いて欧州で注目されているヒョンデのモデルが「Kona(コナ)」と「i20」だ。
コナは、全長×全幅×全高=4205×1800×1550mmのコンパクトSUVだ。1リッターまたは1.6リッターのエンジンを搭載。一部モデルにはマイルドハイブリッドも用意される。そして、派生モデルとしてEVの「コナ エレクトリック」が存在する。こちらは容量64kWhの駆動用電池が搭載されており、一充電あたりの最大航続距離は484㎞(WLTPモード)。欧州市場ではアイオニック5とともにヒョンデのEV販売を支えるモデルとなる。
最後に紹介するのがコンパクトハッチバックのi20だ。よりスポーティーな派生モデル「i20 N」がWRC参戦車両のベース車になっており、トヨタの「ヤリス」とライバル関係となる。近年のWRCにおいては、トヨタとヒョンデの2チームが頭ひとつ抜けており、激しいトップ争いを行っている。i20は最近のヒョンデ車らしい、シャープなプレスラインを伴うデザインが特徴。ヒョンデのスポーティーさを象徴する存在でもある。
日本におけるヒョンデの印象は、日本市場を撤退した約10年前のまま、あまり変わっていないだろう。しかし、世界市場においてヒョンデは、日系企業をはじめとする世界の自動車メーカーたちと戦い、研さんを続けてきた。洗練されたシャープなデザインと電動化への積極的な姿勢など、今のヒョンデは当時とは異なる姿となっている。新たな挑戦に注目したい。
(文=鈴木ケンイチ/写真=ヒョンデ モーター カンパニー/編集=藤沢 勝)

藤沢 勝
webCG編集部。会社員人生の振り出しはタバコの煙が立ち込める競馬専門紙の編集部。30代半ばにwebCG編集部へ。思い出の競走馬は2000年の皐月賞4着だったジョウテンブレーヴと、2011年、2012年と読売マイラーズカップを連覇したシルポート。
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