ボルボV90リチャージプラグインハイブリッドT8 AWDインスクリプション(4WD/8AT)/BMW 745eラグジュアリー(FR/8AT)/アウディe-tron 50クワトロSライン(4WD)
電化の波にのまれてみる 2022.02.24 JAIA輸入車試乗会2022 最新のインポートカーが一堂に会するJAIA輸入車試乗会。webCG編集部 神戸はイケイケな最新EVモデルではなく、熟成の進んだ(!?)「ボルボV90リチャージプラグインハイブリッドT8 AWDインスクリプション」「BMW 745e」「アウディe-tron」の魅力を再度確かめた。どこでもドア
ボルボV90リチャージプラグインハイブリッドT8 AWDインスクリプション……1034万円
大磯の海風に逆らうように、どっしりと重みのあるドアを開けて車内に乗り込む。あれ? ここはどこだ? クルマに乗ったはずが、気がつくと私は自宅のソファに座っていた。そんなまか不思議なことが、V90に乗り込むと起こるのである。
このクルマの魅力は、なんといってもその居心地のいい室内空間にある。上質なレザーや木材、リアルなマテリアルがふんだんに使われ、車内にいることを忘れるほどに居心地がいい。スウェーデンなど北欧の国々は、高緯度に位置し、冬の日照時間が短い。家の中で過ごす時間が自然と増えるので、居心地のいい空間をつくることにたけている。
「家にいる感」をより強く感じるのは、新たに搭載されていたAndroidベースのインフォテインメントシステムと「Bowers&Wilkinsプレミアムサウンドオーディオシステム」の組み合わせによるところも大きいかもしれない。インポーターの広報担当が、親切にもこのスピーカーで聞くのに適したミュージックプレイリストを「Google Play」にセットしてくれていた。マッサージ機能の付いたシートに身を委ね、最上のサウンドシステムが奏でるサウンドに浸っていると、このまま何時間でも座っていたいと思えてくる。
直列4気筒2リッターエンジンと電気モーターの組み合わせは、追い越しでの加速こそ強力だが、終始控えめなサウンドを奏でるボルボらしいパワーユニットである。モーターのみで走る「ピュア」モードに切り替えれば、車内はよりいっそうの静寂に包まれる。
どんな場所にいても、ひとたびドアを開ければ、ぜいたくな時間が待っている。取材の持ち時間が迫り、クルマから降りなければいけない時の名残惜しさは相当であった。
【スペック】
ボディーサイズ=全長×全幅×全高=4945×1890×1475mm/ホイールベース=2940mm/車重=2130kg/駆動方式=4WD/エンジン=2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ+スーパーチャージャー(最高出力:317PS/6000rpm、最大トルク:400N・m/3000-5400rpm)/フロントモーター=交流同期電動機(最高出力:71PS/3000-4500rpm、最大トルク:165N・m/0-3000rpm)/リアモーター=交流同期電動機(最高出力:146PS/3280-5900rpm、最大トルク:309N・m/0-3280rpm)/トランスミッション=8AT/燃費=--km/リッター/価格=1034万円
温故知新
BMW 745eラグジュアリー……1241万円
試乗会場に並ぶ車両の多くがEV専用モデルとなり、空力を意識したデザインが目立つ。そんななか、「BMW 7シリーズ」を見つけるのは簡単だ。王道のセダンスタイル。昭和生まれとしては、それだけでなんだかうれしくなってしまうが、「セダン」という言葉が死語になる日もそう遠くないかもしれない。渋谷のギャル(これもすでに古い)に「セダン」=「エンジン車」でしょ、と言われるのだ。
今回試乗した745eは「セダン」+「電気」、いや「ガソリンエンジン」+「電気」のプラグインハイブリッド車。電動化迷宮期にしか乗ることのできない、貴重なクルマなのである。
冗談はさて置き、7シリーズの熟成された車体が、モーターのみで静かに滑り出し、加速していく感覚は格別である。エンジンが始動しても、意識していないと気づかないほど滑らかに切り替わる。そこからさらにアクセルを踏み込むと、直6エンジンの快音が響く。積極的にエンジンを始動したくなるあたり、さすがのBMWである。前回のビッグマイナーチェンジでエンジンが直4ターボから直6ターボに代わり、プラグインハイブリッドであることの価値がいっそう増したと思う。
エンジン車のよさを再認識し、電気自動車の世界観も垣間見える745eは、電気とエンジンで悩んでいる方にこそぜひ乗ってもらいたい。このクルマに乗ると、もしかしたらプラグインハイブリッドこそが人類の最善の選択なのではとも思えてくるのである。
インテリアについてあまり触れなかったが、「メルセデス・ベンツSクラス」や「アウディA8」などのライバル車のインターフェイスがタッチパネルに置き換わるなか、7シリーズの物理的なスイッチはあらためていいなとも感じた中年おじさんなのでした。
【スペック】
ボディーサイズ=全長×全幅×全高=5125×1900×1480mm/ホイールベース=3070mm/車重=2070kg/駆動方式=FR/エンジン=3リッター直6 DOHC 24バルブ ターボ(最高出力:286PS/5000rpm、最大トルク:450N・m/1500-3500rpm)/モーター=交流同期電動機(最高出力:113PS/3170rpm、最大トルク:265N・m/1500rpm)/トランスミッション=8AT/ハイブリッド燃料消費率=12.0km/リッター(WLTCモード)/価格=1241万円
君の名は?
アウディe-tron 50クワトロSライン……1108万円
アウディもピュアEVのラインナップが充実してきたが、ネット上ではそのネーミングが分かりづらいと話題になることがある。個人的にはシンプルで分かりやすいのになと思っていたのだが……。思っていたのにやってしまった。実際に乗りたかったのは「e-tron GT」だったが、後ろに数字が何も付いていない「e-tron」を、SUVタイプではないなと思い込み、試乗希望のリストに印を付けてしまったのだ。
そんなハプニングもありつつお借りすることになったe-tron。アウディがピュアEVシリーズ第1弾として送り出してきたクルマなだけに「バーチャルエクステリアミラー」が採用されているなど、相当気合の入ったものになっている。
乗り味は、車重が2.4t以上あるだけに、重量級SUVというよりも戦車のごとく、荒れた路面を踏み固めながら進んでいくような感覚である。もちろんアダプティブエアサスペンションの恩恵が大きいかもしれないが、驚くほどスムーズに路面をいなしていく。個人的にいいなと思ったのは、シフトパドルを使って回生ブレーキの強さをコントロールできること。長い下り坂などで速度を落としたい時にありがたい装備である。EVはガソリン車に比べてブレーキパッドの減りが遅いというが、それにも納得できる。
進化のスピードが著しいEV業界であり、アウディからもBEV専用の「MEBプラットフォーム」が与えられた「Q4 e-tron」と「Q4 e-tronスポーツバック」がすでにデビューしている。それでもゆとりあるおおらかな乗り味は、e-tronならではの魅力的であり、アウディのピュアEVの第1弾にふさわしいものであった。もうこれで君の名前を間違えることもないだろう。
【スペック】
ボディーサイズ=全長×全幅×全高=4900×1935×1630mm/ホイールベース=2930mm/車重=2420kg/駆動方式=4WD/フロントモーター=非同期モーター(最高出力:--PS、最大トルク:--N・m)/リアモーター=非同期モーター(最高出力:--PS、最大トルク:--N・m)/交流電力量消費率=237Wh/km(WLTPモード)/価格=1108万円
(文=神戸良行/写真=田村 弥、峰 昌宏/編集=藤沢 勝)

神戸 良行
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