BMW 745eラグジュアリー(FR/8AT)
高級車のお手本 2019.11.20 試乗記 「BMW 745eラグジュアリー」には、BMWの金看板“ストレートシックス”に電気モーターを組み合わせたぜいたくなパワートレインが搭載されている。スムーズかつパワフルなプラグインハイブリッドシステムを味わうとともに、高級車に求められる条件について思いをはせた。ラグジュアリーカーの条件
一世一代のイベントでもついクルマばかりに目が行くのは職業病のようなものだ。前後を固めるお供の供奉(ぐぶ)車が新旧内外バラバラだったのはちょっと残念だったが、「祝賀御列の儀」の(クルマの)主役たる「トヨタ・センチュリー」のオープンカーは実に堂々と重責を果たしたのではないだろうか。貴賓車に関するプロトコルに忠実に従えばボディー形状が違うという意見もあろうが、平成改元の際の「ロールス・ロイス・コーニッシュ」に比べればずっとふさわしい。もちろん、それはロールス・ロイスの責任ではない。とにかく開発に関わったトヨタ(というかトヨタ自動車東日本)の皆さんも、万人注視の中でコップの中の水をこぼすどころか、さざ波ひとつ立てないように滑らかに走り、曲がらなければならない緊張感に耐えて無事大役を務めた車馬課のドライバーの方も本当にお疲れさまでした。
テレビの画面越しではあるが、この種の本当の高級車にとって、しずしずと流れるように走る性能が重要であることを見ていてあらためて感じさせられた。リアシートに賓客を乗せることを考えれば、前後上下の揺動など論外であり、滑るように一定速を守らなければならない。そのためにはスロットルペダルの微妙なコントロールにも緻密に応えるレスポンスが欠かせない。まだ詳細は明らかにされてはいないが、あの特装オープンも3代目センチュリーベースということでパワートレインはハイブリッドのはず。V12の先代モデルに比べて操作は難しいのだろうか、あるいは極低速走行のために特別なチューンが施されているのだろうか、などとテレビのこちら側の庶民は想像をたくましくしていたものである。
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6気筒搭載で745eに
高速走行性能はもちろんだが、低速でのマナーが洗練されていてこその高級車であり、複雑な機械を精密に滑らかに動かすことにこそエンジニアリングの神髄がある。とりわけハイブリッド車の場合は、モーターとエンジンとの連携がスムーズでコントロールしやすいことが必須である。
その点、新しいBMW 7シリーズのプラグインハイブリッドモデル745eの挙動は、ラグジュアリーサルーンとして実に模範的であるというほかない。例によってバッテリー残量が十分で標準モードを選択している場合は、モーターのみで静かにデッドスムーズに滑り出し、穏やかに加速するだけならそのまま140km/h(電動走行の最高速)に達するという。必要に応じてエンジンが始動し、駆動を受け持つ瞬間の介入も非常に滑らかでエンジン音も気にならない上に、回してもスムーズでさらに健康的な快音を発するのだから、さすがはBMW自慢の6気筒である。そう、ビッグマイナーチェンジを受けた7シリーズのトピックのひとつは、プラグインハイブリッドモデルのエンジンが直4ターボから直6ターボに換装され、「740e」から745eへと進化したことである。
7シリーズにも大型グリル
現行型7シリーズは2015年にデビューした6代目。マイナーチェンジを受けた改良型では巨大化したキドニーグリルと薄くシャープになったヘッドライトが注目を集めている。ワンピースになったグリルは、エンジンフードまで回り込むように大きくなった(従来比で40%大型化されたらしい)。聞けば、現在の7シリーズの最大のお得意さまは中国(セールス全体の約4割)、続いて米国(約2割)であるらしく、そのためにも控えめであるより堂々とした存在感が必要という判断だったのだろう。新型は入念なエアロダイナミクス処理がいかにも現代的で、バンパーサイドのスプリッターからフロントホイールをカバーするように空気を流して“エアカーテン”を生成するという。ちなみに大きくなったグリルも上部3分の1ぐらいは最初からふさがれており、下部も必要に応じて「アクティブエアストリーム」と称する自動シャッターが閉まる(ほとんど閉じていたように思う)。現代のクルマは冷却性能よりも、いかに熱を無駄にしないかのサーマルマネジメントが効率向上の肝である。
インテリアも他の最新BMW車と同様、メーターは六角形を2分割したような形のフルデジタル式(回転計が反時計回りのあれ)となり、「OK、BMW」の呼びかけで起動する「BMWインテリジェントパーソナルアシスタント(IPA)」や高速道路上の渋滞で作動するハンズオフ機能も盛り込まれている。
6気筒の魅力
最新仕様オペレーティングシステムへのアップグレードもさることながら、中身で大きく変わったのが前述の通りプラグインハイブリッド745eのパワートレインである。先代モデルに当たる740eは2リッター直列4気筒ターボエンジン(最高出力258PS/最大トルク400N・m)にモーターを組み合わせていたが、745eでは新たに286PS/5000rpmと、450N・m/1500-3500rpmを生み出す直列6気筒ターボを搭載。113PSのモーター出力は変わらないものの、駆動用リチウムイオンバッテリーの容量は740eの9.2kWhから12kWhへと増やされ、満充電からの電動走行可能距離は42kmから58kmへ延びたという(国土交通省審査値は50.4km)。
全長5m超の大型プラグインハイブリッドサルーンゆえに車重は2070kgもあるが、それをまったく感じさせないほど優雅に縦横無尽に走るのは、増強されたパワートレインのおかげのみならず、ハイブリッドシステムの見事な調律のたまものだろう。そのいっぽうで、スポーツモードを選んで394PSと600N・mというシステムトータル出力(740eは326PSと500N・m)を解き放てば、これこれ! とうれしくなるパフォーマンスを見せつけてくれる。ちなみに0-100km/h加速は5.3秒という。現行型「330i」に試乗した時には、もう4気筒でも満足できると感じたものだが、6気筒の緻密で洗練されたパワーの奔流(+サウンド)に接すると、やはり6気筒だと前言を翻している自分にツッコミを入れたくもなるが、正直な気持ちである。
乗り心地もハンドリングもBMWのフラッグシップに対する期待を少しも裏切らない。PHVながらエレガントで駿足、安全運転支援システムも当然ながら抜かりなし。これで税込み本体価格1221万円というのだから「レクサスLS」も青くなるはずだ。乗り心地やノイズ面でも何度も改良を繰り返しているLSと直接対決させてみたいものである。
(文=高平高輝/写真=荒川正幸/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
BMW 745eラグジュアリー
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5125×1900×1480mm
ホイールベース:3070mm
車重:2070kg
駆動方式:FR
エンジン:3リッター直6 DOHC 24バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:286PS(210kW)/5000rpm
エンジン最大トルク:450N・m(45.9kgf・m)/1500-3500rpm
モーター最高出力:113PS(83kW)/3170rpm
モーター最大トルク:265N・m(27.0kgf・m)/1500rpm
システム最高出力:394PS(290kW)
システム最大トルク:600N・m(61.2kgf・m)
タイヤ:(前)245/40R20 99Y/(後)275/35R20 102Y(ブリヂストン・ポテンザS001 RFT)※ランフラットタイヤ
ハイブリッド燃料消費率:12.0km/リッター(WLTCモード)
価格:1221万円/テスト車=1529万5000円
オプション装備:ボディーカラー<ベルニーナグレー アンバーエフェクト>(0円)/エクステンドエクスクルーシブナッパレザー<コニャック/ブラック>(6万9000円)/リアコンフォートパッケージ(84万1000円)/ラグジュアリーコンフォート(62万3000円)/リアマッサージシート(16万4000円)/マッサージ機能<運転席&助手席>(16万4000円)/マルチスポーク スタイリング777ホイール(31万2000円)/Bowers & Wilkinsダイヤモンドサラウンドサウンドシステム(61万円)/BMWナイトビジョン(30万2000円)
テスト車の年式:2019年型
テスト開始時の走行距離:2243km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(8)/山岳路(1)
テスト距離:386.3km
使用燃料:36.1リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:10.7km/リッター(満タン法)/10.6km/リッター(車載燃費計計測値)

高平 高輝
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