トヨタbZ4Xプロトタイプ(4WD)/bZ4Xプロトタイプ(FWD)
待たせたな! 2022.02.28 試乗記 電気自動車(BEV)嫌いと思われていたのが一転、2030年までに30車種を投入するとぶち上げたトヨタ。その第1弾となるのが「bZ4X」であり、スバルと共同開発したBEV専用シャシーを使う最初のモデルでもある。プロトタイプでその仕上がりを試した。BEVの最激戦区
この1~2年、新聞を広げてみれば業界面のみならず、社会面でも生活面でもBEVにまつわるニュースが途切れることはない日々が続いてきた。あわせて本体の側も手に触れることのできる車種やレンジが広がったことで、次の買い替えはいよいよBEVも検討するかと考えるユーザーも増えていると聞く。
と、日本においてはそんな気分かなという2022年に登場するのがこのクルマ、トヨタのbZ4Xだ。既報のとおり、トヨタとスバルとでBEV専用のアーキテクチャーを共同開発し共有する、「GR86/スバルBRZ」に次ぐアライアンスの、トヨタ版の成果となる。臆測は一般紙上でも飛び交うが、発売は2022年年央が予定されており、価格や販売方式は未定。今回は取りあえずプロトタイプという状態だったが、短時間ながら試乗もかなった。
bZ4Xの車格は従来的な分割で言えば、C~Dセグメント級SUVのそれに該当する。既存のBEVで言えば「メルセデス・ベンツEQA」や「アウディQ4 e-tron」「BMW iX3」といった独御三家銘柄にほど近く、ほかにも「ボルボC40リチャージ」「フォルクスワーゲンID.4」「ヒョンデ・アイオニック5」「日産アリア」なども同級の車格に入ってくる。間違いなく世界のBEVのど真ん中、激戦区中の激戦区だ。航続距離から導かれるバッテリー容量やその体積、実用性やコスパなどを勘案すると現在のバランスの最適点がここ。そう世界中のメーカーが考えての現象だろう。
新しいBEV専用アーキテクチャーの「e-TNGA」は、トヨタの社内カンパニーとなるZEVファクトリーにスバルのエンジニアが出向するかたちで共同開発された。バッテリーはフロアに平積みを前提としており、フロントアクスルからフロントカウルにかけてをフィクス化することで多面展開を容易にする技術は既出の「TNGA」の思想を受け継いだ。
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徹底したバッテリー管理
駆動モーターは前置きが基本で、後ろにもモーターを追加する4WD化も前提としている。eアクスルつまり駆動モーターは前側用が前後長を短くして室内空間の拡大に、後ろ側用は天地高を低くして荷室空間の確保に努めている。出力はFWD用の前軸が150kW(204PS)、4WD用は前後軸が各80kW(109PS)の計160kW(218PS)となり、0-100km/h加速はFWDが8.4秒、4WDが7.7秒と発表されている。モーター本体はデンソーとアイシン、トヨタの共同出資となるブルーイーネクサスで開発され、ギア等の補機類はZEVファクトリーで設計された。
エレクトリシティーサプライユニット=ESUは電力変換、電力分配、充電の各機能をワンユニットにしてコンパクト化を果たしたbZ4Xの心臓部だ。家庭用普通充電は最大7kWまで、CHAdeMOの急速充電は最大150kWまでの入力に対応している。
リチウムイオンバッテリーは出力や密度はもとより、搭載性も考慮した大型セルを用いる専用品を新たに開発。バッテリーパックは95のセルで構成され、71.4kWhの電力容量を備えている。ともあれトヨタがこだわっているのはバッテリーの安全性や耐久性の確保で、冷却システムは密閉されたバッテリーパックの下部に独立した水冷式のジャケットを密接させ、衝突時には冷却液とバッテリーが触れない別室構造としたうえで、冷却水も導電しにくい高抵抗のクーラントを使用。その色も通常のクーラントとは異なるオレンジ色として識別しやすくなっている。また、電圧管理を多重化して常時管理し、故障のシグナルとなる変位を素早く察知するほか、高負荷時や急速充電時等の電池温度の管理も細密に行っており、低温環境では水加熱ヒーターを介して充電時間の短縮をサポートしている。
年間1750kmを生み出すソーラーパネル
この適切なサーマルマネジメントに加えて材料選定やパックの構造、制御プログラムの最適化などバッテリーの劣化を緩やかに推移させる工夫は随所に施されており、当然ながら乗り方や使い方にはよるものの、10万km経過時でも90%近い性能が維持できるという。ちなみに日本仕様のバッテリーのセルはトヨタとパナソニックの合弁会社、プライムプラネットエナジーソリューションズが生産。パッケージングは元町工場で施される。
さらにbZ4Xにはソーラーパネルをルーフに用いた独立型の充電システムも用意されている。定格出力は225Wで、静止時は駆動用バッテリーを直接充電するほか、走行時は12Vバッテリーを充電し、駆動用バッテリーの消費を抑える仕組みだ。面積あたりの効率は「プリウスPHV」のそれより高く、名古屋の日射データをもとにしたトヨタの試算では、走行距離に換算すると年間にして1750km相当をソーラーパネルで賄える能力があるという。
内装のデザインやインターフェイスは従来のクルマの延長線上にあって、新しいものを扱っているという特異さはない。親切ではあるが退屈でもある。ドライブモードの切り替えやワンペダル的なドライブを実現する回生ブーストモードのオンオフは、ロータリー式のシフトノブの左右に均等な大きさで振り分けられるが、使用頻度に応じた強弱をつけてもよかったような気がする。
遠視点のメーターパネルは見やすく、視界に入る車線の延長線をイメージさせるフード形状も乗りやすさにつながっているが、従来の円形ステアリングでは液晶の表示領域下部がリムで蹴られてしまうところはトヨタらしからぬもったいなさだ。すなわち、運転席まわりの造形は後に投入予定のステアバイワイヤ仕様に装着される操縦桿(かん)的なステアリングをもって完結する形状ということだろう。
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まだまだ奥がある
前席の着座環境は至って自然だったが、気になったのは後席の着座姿勢だ。床面にバッテリーを敷く関係もあってヒールヒップの段差が小さく、座面から大腿(だいたい)部が持ち上がり気味になるうえ、前席下には側突対応のレインフォースがあるため、つま先が入れにくい。せっかくの広大な前後席間距離が後席のくつろぎにフルに生かせていないのは、これまたもったいないと思った。室内高を高めてアップライトな姿勢で座らせれば解決するはずだが、前面投影面積を少しでも減らして高速巡航時の電費を稼ぎたいという、そのせめぎ合いの痕跡ということだろう。
その電費の関係もあって、試乗はクローズドコース3周と短く、走りの印象のすべてがつかめたわけではない。が、総じて言えるのはトヨタが手がけるBEVらしく至って自然に、中立的に振る舞えるようにしつけが行き届いていることだ。発進時のトルクのなましや微減速時の回生による減衰感、中間域ではずしんと重くも余計な刺激を丸めた加速フィール、回生ブースト時のアクセルオン/オフに対する柔らかな反応と、BEVの癖を取捨選択し、丁寧にならしていったことが伝わってくる。唯一、急減速時の回生とメカニカルなブレーキの協調性にややアラがみられたが、市販仕様までには改善できる余地があるだろう。
FWDモデルはBEVで発生しがちなトルクステアがよく抑えられた、素直で上質なドライバビリティーが印象的だ。が、bZ4Xの本領はやはりスバルの駆動配分の知見が生かされた4WDモデルの側に強く表れる。親しんだ内燃機のメカ四駆に比べればはるかに駆動配分を緻密に制御するその旋回感は、身をよじらせてでも路面に張り付き放さないという執念めいたものさえ感じられる。重量配分や重心高で利があるとはいえ、その食いつきっぷりはタイヤの限界を見失いそうになるほどだ。そういう意味では自制心が求められる特異な運動性能は、恐らく悪路的環境でもとんでもないものをみせてくれるのではないか。この予感は当たることになるわけだが、それは数週間後にお披露目できる話だ。取りあえずbZ4Xの潜在能力をフルに引き出すだろう、ステアバイワイヤのモデルが披露する未来がちょっとおっかなくも楽しみになってきた。
(文=渡辺敏史/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝)
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テスト車のデータ
トヨタbZ4Xプロトタイプ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4690×1860×1650mm
ホイールベース:2850mm
車重:2005kg
駆動方式:4WD
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
フロントモーター最高出力:109PS(80kW)
フロントモーター最大トルク:--N・m(--kgf・m)
リアモーター最高出力:109PS(80kW)
リアモーター最大トルク:--N・m(--kgf・m)
システム最高出力:218PS(160kW)
タイヤ:(前)235/50R20 104V XL/(後)235/50R20 104V XL(ブリヂストン・アレンザ001)
一充電最大走行可能距離:460km前後(WLTCモード)
価格:--万円/テスト車=--万円
オプション装備:--
テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:639km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:--km/kWh
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トヨタbZ4Xプロトタイプ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4690×1860×1650mm
ホイールベース:2850mm
車重:1920kg
駆動方式:FWD
モーター:交流同期電動機
モーター最高出力:204PS(150kW)
モーター最大トルク:--N・m(--kgf・m)
タイヤ:(前)235/60R18 103H XL/(後)235/60R18 103H XL(ブリヂストン・アレンザ001)
一充電最大走行可能距離:530km前後(WLTCモード)
価格:--万円/テスト車=--万円
オプション装備:--
テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:265km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:--km/kWh

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
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