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フォルクスワーゲンが世界に誇る“実用車のベンチマーク”のすべて

【徹底解説】新型フォルクスワーゲン・ゴルフ 2022.03.30 ニューモデルSHOWCASE 佐野 弘宗 長年にわたり“実用車の水準器”と評されてきた、ドイツのCセグメントハッチバック「フォルクスワーゲン・ゴルフ」。その新型にあたる8代目を徹底解剖。輸入車における定番の一台を、走りや装備、燃費、価格と、多角的な観点から解説する。

ドイツが生んだ世界的ベストセラー

地元の欧州では2019年末、日本では2021年6月に発売となったフォルクスワーゲン(VW)の新しいゴルフは、通算で8代目のモデルとなる。そのため、ファンの間では他の世代と区別するために「ゴルフ8」などと呼ばれることも多い。

ゴルフの初代モデルは1974年に発売された。VWの礎となった“ビートル”の世代交代を試行錯誤するなかで、次世代VWのデザインを依頼されたのが、当時イタルデザインを創業したばかりのジョルジェット・ジウジアーロだった。横置きエンジンのFFハッチバック、乗員を高めに座らせるレイアウト、リアのトーションビームサスペンション……と、初代ゴルフはその後のコンパクトカーの基本形となった。そんな理知的なパッケージを、普遍的でスマートなデザインで包み込んだのがジウジアーロの功績である。

そんなゴルフは初代から世界ベストセラー争いの常連となり、先代にあたる7代目までの約35年間で、世界中で3500万台以上が販売された。日本でも長らく不動の輸入車No.1というべき存在だったのはご承知のとおりで、1988年から2015年まで、28年連続で「外国メーカー車モデル別新車販売台数1位」に輝いた。

新しいゴルフ8も、パッケージレイアウトやエクステリアデザインの伝統を受け継ぐ正常進化版といっていい。そのうえで、今回の大テーマとなったのは“電動化”と“デジタル化”だという。

日本を含む成熟市場でゴルフ8の主力となるのは、110~150PSのガソリンエンジンに48Vハイブリッドを組み合わせた「eTSI」である。さらに本国では先代同様にプラグインハイブリッドも用意されるいっぽうで、電気自動車の「e-ゴルフ」の姿はない。今後、このサイズの電気自動車はニューモデルの「ID.3」にまかせる戦略らしい。インテリアはデジタル化が進められており、全車にフル液晶メーターやバイ・ワイヤ式のシフトセレクターが標準装備されるほか、インストゥルメントパネルのスイッチにも静電タッチセンサーが大胆に導入された。

今も昔も実用コンパクトの“お手本”とされる「フォルクスワーゲン・ゴルフ」。新型は8代目のモデルにあたる。
今も昔も実用コンパクトの“お手本”とされる「フォルクスワーゲン・ゴルフ」。新型は8代目のモデルにあたる。拡大
インテリアでは、大幅にデジタル化されたインターフェイスが特徴。メーターは全車フル液晶となり、操作系も大部分がタッチパネル式となった。
インテリアでは、大幅にデジタル化されたインターフェイスが特徴。メーターは全車フル液晶となり、操作系も大部分がタッチパネル式となった。拡大
ダッシュボード中央に備わるタッチスクリーン。インフォテインメントシステムや空調、ドライブモードセレクター、各種車載機能の設定などの操作は、いずれもここに統合されている。(写真:向後一宏)
ダッシュボード中央に備わるタッチスクリーン。インフォテインメントシステムや空調、ドライブモードセレクター、各種車載機能の設定などの操作は、いずれもここに統合されている。(写真:向後一宏)拡大
ステーションワゴンの「ゴルフヴァリアント」。ゴルフに初めてワゴンモデルが設定されたのは3代目のときで、そこから数えると、新型ヴァリアントは6代目のモデルとなる。(写真:田村 弥)
ステーションワゴンの「ゴルフヴァリアント」。ゴルフに初めてワゴンモデルが設定されたのは3代目のときで、そこから数えると、新型ヴァリアントは6代目のモデルとなる。(写真:田村 弥)拡大
フォルクスワーゲン の中古車

【ラインナップ】
モデル展開の速さに感じられる人気車種の誇り

先述のとおり、ゴルフ8の日本発売は2021年6月だった。最初に上陸したのはハッチバックで、まずは主力となるガソリンエンジン+48VマイルドハイブリッドのeTSIが取りそろえられた。1リッター直3ターボ搭載車(110PS)と1.5リッター直4搭載車(150PS)がそれぞれ2グレードずつ、計4グレードでのスタートである。

さすが輸入車ベストセラーを自負する商品だけに、その後のバリエーション展開も速やかで、ハッチバックの約1カ月後にはステーションワゴンの「ヴァリアント」も上陸。搭載されるパワートレインはハッチバックと共通のeTSIで、4種のグレード構成も同様だった。

続いて2リッターディーゼルの「TDI」と、2リッターガソリンターボを積む伝統のスポーツモデル「GTI」も2021年中に上陸している(発売は2022年1月)。ちなみに2022年中の追加が期待されるバリエーションとしては、ディーゼルワゴンの「TDIヴァリアント」や、GTIよりさらに高性能な4WDの「ゴルフR」がある。

【主要諸元】

グレード名   ゴルフ
eTSIアクティブベーシック
ゴルフ
eTSIアクティブ
ゴルフ
eTSIスタイル
ゴルフ
eTSI Rライン
ゴルフ
TDIアクティブベーシック
ゴルフ
TDIアクティブアドバンス
ゴルフ
TDIスタイル
ゴルフ
TDI Rライン
ゴルフ
GTI
ゴルフヴァリアント
eTSIアクティブベーシック
ゴルフヴァリアント
eTSIアクティブ
ゴルフヴァリアント
eTSIスタイル
ゴルフヴァリアント
eTSI Rライン
基本情報 新車価格 295万9000円 317万1000円 376万円 381万1000円 344万4000円 398万円 403万8000円 408万8000円 466万円 310万1000円 331万3000円 390万3000円 395万3000円
駆動方式 FF FF FF FF FF FF FF FF FF FF FF FF FF
動力分類 マイルドハイブリッド マイルドハイブリッド マイルドハイブリッド マイルドハイブリッド エンジン エンジン エンジン エンジン エンジン マイルドハイブリッド マイルドハイブリッド マイルドハイブリッド マイルドハイブリッド
トランスミッション 7AT 7AT 7AT 7AT 7AT 7AT 7AT 7AT 7AT 7AT 7AT 7AT 7AT
乗車定員 5名 5名 5名 5名 5名 5名 5名 5名 5名 5名 5名 5名 5名
WLTCモード燃費(km/リッター) 18.6 18.6 17.3 17.3 20.0 20.0 20.0 20.0 12.8 18.0 18.0 17.0 17.0
最小回転半径 5.1m 5.1m 5.1m 5.1m 5.1m 5.1m 5.1m 5.1m 5.1m 5.1m 5.1m 5.1m 5.1m
エンジン 形式 直列3気筒DOHC 直列3気筒DOHC 直列4気筒DOHC 直列4気筒DOHC 直列4気筒DOHC 直列4気筒DOHC 直列4気筒DOHC 直列4気筒DOHC 直列4気筒DOHC 直列3気筒DOHC 直列3気筒DOHC 直列4気筒DOHC 直列4気筒DOHC
排気量 999cc 999cc 1497cc 1497cc 1968cc 1968cc 1968cc 1968cc 1984cc 999cc 999cc 1497cc 1497cc
最高出力 (kW[PS]/rpm) 81[110]/5500 81[110]/5500 110[150]/5000-6000 110[150]/5000-6000 110[150]/3000-4200 110[150]/3000-4200 110[150]/3000-4200 110[150]/3000-4200 180[245]/5000-6500 81[110]/5500 81[110]/5500 110[150]/5000-6000 110[150]/5000-6000
最高トルク (N・m[kgf・m]/rpm) 200[20.4]/2000-3000 200[20.4]/2000-3000 250[25.5]/1500-3500 250[25.5]/1500-3500 360[36.7]/1600-2750 360[36.7]/1600-2750 360[36.7]/1600-2750 360[36.7]/1600-2750 370[37.7]/1600-4300 200[20.4]/2000-3000 200[20.4]/2000-3000 250[25.5]/1500-3500 250[25.5]/1500-3500
過給機 ターボチャージャー ターボチャージャー ターボチャージャー ターボチャージャー ターボチャージャー ターボチャージャー ターボチャージャー ターボチャージャー ターボチャージャー ターボチャージャー ターボチャージャー ターボチャージャー ターボチャージャー
燃料 ハイオク ハイオク ハイオク ハイオク ディーゼル ディーゼル ディーゼル ディーゼル ハイオク ハイオク ハイオク ハイオク ハイオク
モーター 最高出力 (kW[PS]) 9.4[13] 9.4[13] 9.4[13] 9.4[13]           9.4[13] 9.4[13] 9.4[13] 9.4[13]
最高トルク (N・m[kgf・m]) 62[6.3] 62[6.3] 62[6.3] 62[6.3]           62[6.3] 62[6.3] 62[6.3] 62[6.3]
寸法・重量 全長 4295mm 4295mm 4295mm 4295mm 4295mm 4295mm 4295mm 4295mm 4295mm 4640mm 4640mm 4640mm 4640mm
全幅 1790mm 1790mm 1790mm 1790mm 1790mm 1790mm 1790mm 1790mm 1790mm 1790mm 1790mm 1790mm 1790mm
全高 1475mm 1475mm 1475mm 1475mm 1475mm 1475mm 1475mm 1475mm 1465mm 1485mm 1485mm 1485mm 1485mm
ホイールベース 2620mm 2620mm 2620mm 2620mm 2620mm 2620mm 2620mm 2620mm 2620mm 2670mm 2670mm 2670mm 2670mm
車両重量 1310kg 1310kg 1360kg 1360kg 1460kg 1460kg 1460kg 1460kg 1430kg 1360kg 1360kg 1430kg 1430kg
タイヤ 前輪サイズ 205/55R16 205/55R16 225/45R17 225/45R17 225/45R17 225/45R17 225/45R17 225/45R17 225/40R18 205/55R16 205/55R16 225/45R17 225/45R17
後輪サイズ 205/55R16 205/55R16 225/45R17 225/45R17 225/45R17 225/45R17 225/45R17 225/45R17 225/40R18 205/55R16 205/55R16 225/45R17 225/45R17

 

2021年6月に行われた日本導入発表会の様子。世界的なコロナウイルス感染症の広がりもあり、通常より“遅れ気味”での日本導入となった。
2021年6月に行われた日本導入発表会の様子。世界的なコロナウイルス感染症の広がりもあり、通常より“遅れ気味”での日本導入となった。拡大
パワートレインの電動化が大きなテーマとされる新型「ゴルフ」だが、日本仕様では1リッターと1.5リッターのガソリン車にマイルドハイブリッド機構が組み合わされるのみ。他のエンジンに電動ユニットの組み合わせはなく、またフルハイブリッドやプラグインハイブリッドの設定もない。
パワートレインの電動化が大きなテーマとされる新型「ゴルフ」だが、日本仕様では1リッターと1.5リッターのガソリン車にマイルドハイブリッド機構が組み合わされるのみ。他のエンジンに電動ユニットの組み合わせはなく、またフルハイブリッドやプラグインハイブリッドの設定もない。拡大
新型「ゴルフヴァリアント」の日本発売は2022年7月下旬のこと。「ゴルフ」導入から、およそひと月半後のことだった。(写真:田村 弥)
新型「ゴルフヴァリアント」の日本発売は2022年7月下旬のこと。「ゴルフ」導入から、およそひと月半後のことだった。(写真:田村 弥)拡大
2021年12月に日本導入が発表された「TDI」。トルク豊かな走りと燃費性能のよさが特徴のディーゼルモデルだ。(写真:向後一宏)
2021年12月に日本導入が発表された「TDI」。トルク豊かな走りと燃費性能のよさが特徴のディーゼルモデルだ。(写真:向後一宏)拡大
「TDI」とほぼ同時に日本導入が発表された「GTI」。初代の頃から設定される、「ゴルフ」伝統のスポーツグレードだ。
「TDI」とほぼ同時に日本導入が発表された「GTI」。初代の頃から設定される、「ゴルフ」伝統のスポーツグレードだ。拡大
「GTI」を超えるハイパフォーマンスモデルにあたる「ゴルフR」。欧州ではすでに新型が発売済みで、最高出力320PS、最大トルク420N・mを発生する2リッターターボエンジンと、電子制御4WDシステムが採用されている。
「GTI」を超えるハイパフォーマンスモデルにあたる「ゴルフR」。欧州ではすでに新型が発売済みで、最高出力320PS、最大トルク420N・mを発生する2リッターターボエンジンと、電子制御4WDシステムが採用されている。拡大

【パワートレイン/ドライブトレイン】
パワーユニットは従来型からいずれも全面刷新

日本で販売されるゴルフのパワートレインは、現時点で4種類ある。主力となるのはeTSIと名づけられた直噴ガソリンターボで、同エンジン車にはすべてベルト駆動のスターターアシストモーター兼発電機(最高出力13PS、最大トルク62N・m)およびリチウムイオン電池による48Vマイルドハイブリッドが組み合わせられる。核となるエンジンには、最高出力110PS、最大トルク200N・mの1リッター3気筒アトキンソンサイクルユニットと、最高出力150PS、最大トルク250N・mの1.5リッター4気筒アクティブシリンダーマネジメント(気筒休止)ユニットがある。ハッチバックには、このほかに後述するGTIやTDIもラインナップされるが、ヴァリアントのパワートレインは、今のところeTSIのみだ。

eTSIは低燃費なのも特徴で、1リッターはハッチバックで18.6km/リッター、ヴァリアントで18.0km/リッター(ともにWLTCモード、以下同様)をうたう。1.5リッターはそれぞれ17.3km/リッターと17.0km/リッターである。先代の1.2リッターや1.4リッターのTSIと比較すると、燃費も1割以上改善している(旧表記のJC08モード同士で比較した場合)。

さらに、ゴルフ7ではモデル末期の追加で人気となったTDIも、今回はゴルフ8自体の発売からわずか半年での導入となった。搭載される2リッターディーゼルの「EA288evo」型は、表面上の型式こそ従来の「EA288」と同じものの、細部にいたるまで別物のように進化している。NOxの浄化システムも、排気系の2カ所からAdBlueを噴射するツインドージング方式の尿素SCRに刷新。150PSという最高出力は変わらないものの、最大トルクは360N・mと先代より20N・m増大させつつ、同時に燃費も改善しており、日本仕様のゴルフ8では最良の20.0km/リッターとなっている。

245PSの高出力を発生するGTIの2リッターターボも、「EA888」という基本型式は従来どおりだが、末尾に「evo4」が付く最新世代。実際はブロックまでもが新設計だ。従来はポート噴射を併用していた燃料噴射も、完全な直噴としたうえで噴射圧を350bar(従来は200bar)まで高圧化。さらに指定オイルの低粘度化、ガソリンパティキュレートフィルターの追加など、スミズミまで手が入っている。

変速機はすべてVWでいう「DSG」、すなわち2ペダルの7段デュアルクラッチトランスミッションだ。現状ではeTSIが乾式クラッチ、TDIとGTIが湿式クラッチとなる。

「eTSIアクティブベーシック/アクティブ」に搭載される1リッター直3ガソリンターボエンジン。48Vマイルドハイブリッド機構と組み合わされ、WLTCモードによる燃費は「ゴルフ」で18.6km/リッター、「ゴルフヴァリアント」で18.0km/リッターとなっている。(写真:荒川正幸)
「eTSIアクティブベーシック/アクティブ」に搭載される1リッター直3ガソリンターボエンジン。48Vマイルドハイブリッド機構と組み合わされ、WLTCモードによる燃費は「ゴルフ」で18.6km/リッター、「ゴルフヴァリアント」で18.0km/リッターとなっている。(写真:荒川正幸)拡大
ガソリン仕様の上級グレードに搭載される、1.5リッター直4ガソリンターボエンジン。良好な燃費性能と、最大トルク250N・mというトルクフルなエンジン特性を両立している。(写真:荒川正幸)
ガソリン仕様の上級グレードに搭載される、1.5リッター直4ガソリンターボエンジン。良好な燃費性能と、最大トルク250N・mというトルクフルなエンジン特性を両立している。(写真:荒川正幸)拡大
「TDI」に搭載される2リッター直4ディーゼルターボエンジン。360N・mという最大トルクは、自然吸気のガソリンエンジンなら3.5リッターV6ユニットに匹敵するものだ。(写真:荒川正幸)
「TDI」に搭載される2リッター直4ディーゼルターボエンジン。360N・mという最大トルクは、自然吸気のガソリンエンジンなら3.5リッターV6ユニットに匹敵するものだ。(写真:荒川正幸)拡大
新型ディーゼルエンジンの排気系には、ターボと酸化触媒の間、酸化触媒とサイレンサーの間の2カ所に尿素SCRを設置。排気の温度にかかわらず、高い効率でNOxを処理できるという。
新型ディーゼルエンジンの排気系には、ターボと酸化触媒の間、酸化触媒とサイレンサーの間の2カ所に尿素SCRを設置。排気の温度にかかわらず、高い効率でNOxを処理できるという。拡大
「GTI」に搭載される2リッターガソリンターボエンジン。最高出力245PS、最大トルク370N・mというアウトプットは、先代における「GTIパフォーマンス」のそれと同等である。
「GTI」に搭載される2リッターガソリンターボエンジン。最高出力245PS、最大トルク370N・mというアウトプットは、先代における「GTIパフォーマンス」のそれと同等である。拡大

【ボディーサイズ/デザイン】
ハッチバックとワゴンでホイールベースを使い分け

ゴルフ8は先代に続いて「MQB」と呼ばれる骨格モジュールを土台としている。厳密にいうと、先代のMQBを強化・軽量化した「MQBエボ」だそうだが、エンジンルームとキャビンの位置関係など、基本的なパッケージレイアウトに変化はない。シャシーのハードウエアも7代目から継承されており、フロントサスペンションは全車がマクファーソンストラットで、リアを動力性能や車重によって使い分けるのも先代同様。ゴルフ8の場合は1リッターeTSIのみがそこに半独立トーションビームを使い、それ以外はVWが「4リンク」と呼ぶ独立マルチリンクとなる。

ゴルフ8の外寸は、ハッチバックで全長×全幅×全高=4295×1790×1475mm、ホイールベース=2620mmだ。全長が30mm伸びたほかは、全幅は10mm、全高は5mm、ホイールベースは15mm小さくなった。世代を経るごとに巨大化する“クルマの拡大傾向”にも、ついに歯止めがかかりつつあるのか。

ヴァリアントのスリーサイズは4640×1790×1485mmと、ハッチバック比で345mm長い。注目すべきは、ゴルフヴァリアント史上初めて、ホイールベースがハッチバックより延ばされていることだ。ヴァリアントのホイールベースは2670mmだから、ハッチバックのそれより50mmの拡大となる。さすがにこれだけ違うと後席の居住性もはっきり異なり、ヴァリアントのほうが明らかに広い。

エクステリアデザインはハッチバック、ヴァリアントともに特徴的なプロポーションや極太のCピラー、横長のテールランプなど、長年の歴史で培われてきたモチーフを厳格に守っており、「ゴルフにしか見えない」のが最大の特徴といえるだろう。それでも、なだらかにカーブして伸びるボンネットのフロントオーバーハング部と、それに合わせた上下に薄いグリルや切れ長のヘッドランプが、新しいゴルフ8ならでは。このノーズのデザインは、Cd=0.275(先代は0.29)と大幅に改善された空力性能を最大の目的としているそうだ。

「ゴルフヴァリアント」の全長は「ゴルフ」より345mm長い。そのほとんどはリアオーバーハングの延長によるものだが、新型ではホイールベースも50mm拡大している。
「ゴルフヴァリアント」の全長は「ゴルフ」より345mm長い。そのほとんどはリアオーバーハングの延長によるものだが、新型ではホイールベースも50mm拡大している。拡大
新型「ゴルフ」のパッケージレイアウトは、プラットフォームを受け継いだ7代目とほぼ共通。前後席ともに、十分な乗車スペースを確保している。写真は表皮にマイクロフリースが用いられた「ゴルフeTSIスタイル」のフロントシート。(写真:向後一宏)
新型「ゴルフ」のパッケージレイアウトは、プラットフォームを受け継いだ7代目とほぼ共通。前後席ともに、十分な乗車スペースを確保している。写真は表皮にマイクロフリースが用いられた「ゴルフeTSIスタイル」のフロントシート。(写真:向後一宏)拡大
「ゴルフeTSIスタイル」のリアシート。新型「ゴルフ/ゴルフヴァリアント」の後席には、6:4の分割可倒機構とアームレストスルー機構が備わる。(写真:向後一宏)
「ゴルフeTSIスタイル」のリアシート。新型「ゴルフ/ゴルフヴァリアント」の後席には、6:4の分割可倒機構とアームレストスルー機構が備わる。(写真:向後一宏)拡大
「ゴルフヴァリアントeTSIアクティブ」のリアシート。ホイールベースの拡大に伴い、後席のレッグルームも38mm広がっているという。(写真:花村英典)
「ゴルフヴァリアントeTSIアクティブ」のリアシート。ホイールベースの拡大に伴い、後席のレッグルームも38mm広がっているという。(写真:花村英典)拡大
インストゥルメントパネルに残された機械式スイッチは、ハザードランプのボタンぐらい。また車内の各所にUSB Type-Cポートやワイヤレスチャージャー、12Vソケットを備えており、前席でも後席でも携帯端末の充電が可能だ。
インストゥルメントパネルに残された機械式スイッチは、ハザードランプのボタンぐらい。また車内の各所にUSB Type-Cポートやワイヤレスチャージャー、12Vソケットを備えており、前席でも後席でも携帯端末の充電が可能だ。拡大
空調の温度設定やオーディオの音量調整などは、スクリーンの下に備わるタッチスライダーで操作する。(写真:向後一宏)
空調の温度設定やオーディオの音量調整などは、スクリーンの下に備わるタッチスライダーで操作する。(写真:向後一宏)拡大
新型「ゴルフ」の荷室容量は、5人乗車時で380リッター。後席をたたんだ状態で1237リッター。可動式のフロアボードにより、床面の高さは2段階で調整可能となっている。(写真:向後一宏)
新型「ゴルフ」の荷室容量は、5人乗車時で380リッター。後席をたたんだ状態で1237リッター。可動式のフロアボードにより、床面の高さは2段階で調整可能となっている。(写真:向後一宏)拡大
新型「ゴルフヴァリアント」の荷室容量は、5人乗車時で611リッター、後席をたたんだ状態で1642リッター。「eTSIアクティブベーシック」をのぞく3グレードには、オプションでキックセンサー付きの電動テールゲートが用意される。(写真:田村 弥)
新型「ゴルフヴァリアント」の荷室容量は、5人乗車時で611リッター、後席をたたんだ状態で1642リッター。「eTSIアクティブベーシック」をのぞく3グレードには、オプションでキックセンサー付きの電動テールゲートが用意される。(写真:田村 弥)拡大
駐車支援機能の充実度をのぞくと、予防安全・運転支援システムの設定にグレードによる差異はない。いずれの仕様にも、自動緊急ブレーキやアダプティブクルーズコントロール、レーンキープアシストなどが標準で装備される。
駐車支援機能の充実度をのぞくと、予防安全・運転支援システムの設定にグレードによる差異はない。いずれの仕様にも、自動緊急ブレーキやアダプティブクルーズコントロール、レーンキープアシストなどが標準で装備される。拡大

【インテリア/荷室/装備】
受け継がれる実用車としての高い機能性

ゴルフ8の大きな開発テーマとなったのはパワートレインの“電動化”に加えて、内外装備の“デジタル化”だった。それはドアを開ければ即座に実感できる。

先代ではオプションだったカラー液晶メーターは、ゴルフ8では10インチのそれが全車標準となり、さらにセンターの10インチタッチパネルも標準装備で、多様な機能がそこに集約されるようなった。

インストゥルメントパネルに残されたハードスイッチはハザードボタンのみで、エアコンやオーディオなどの最低限の調整機能もタッチスライダーとなった。より複雑なエアコンとオーディオの操作、ドライブモードや運転支援システム(ADAS)の設定などは、インパネのタッチセンサーで操作画面を呼び出して、センターのタッチパネルで操作する。またステアリングスイッチやヘッドライトパネルもすべて静電センサーによるタッチ式となる(1リッター車のステアリングスイッチのみ古典的なハードボタンとなる)。

さらにはシフトセレクターもバイ・ワイヤ式の小さなトグルスイッチ型となり、センターコンソールは非常にシンプルに小型化された。シートポジションなどは先述のとおりほぼ変わっていないが、インパネのセンターパネルやセンターコンソールが小型化されたことで、フロントの左右席は少し中央に寄せられ、外側のショルダールームが拡大している。

先代からの全長拡大分は大半がフロントオーバーハングにあてられており、室内空間や荷室の広さ、使い勝手は(ヴァリアントの後席をのぞいて)よくも悪くも先代と選ぶところはない。ハッチバックは全高が5mm、ホイールベースが15mm、それぞれ先代より小さくなっているが、シートその他の工夫によって、後席の実質的な広さも先代同様である。つまり新型ゴルフの車内には、大人4人が常用できる実用性が変わらず確保されているということだ。

ADASは、現在普通に考えられる機能はすべて用意されている。日本では宝の持ち腐れかもしれないが、アダプティブクルーズコントロールやレーンキープコントロールは、最大210km/hという高速域まで設定可能だ。

【バイヤーズガイド】
価格重視なら1リッターTSI、装備&走り重視ならTDIがオススメ

主力となるeTSIは、ハッチバック、ヴァリアントともに1リッターが「eTSIアクティブベーシック」と「eTSIアクティブ」、1.5リッターが「eTSIスタイル」と「eTSI Rデザイン」と、各エンジン2グレードずつの計4グレードの設定となる。

このセグメントで1リッターという排気量に不安を感じるかもしれないが、200N・mという最大トルクは、ひと昔前の自然吸気ユニットで換算すると2リッター強のエンジン相当なので、動力性能にはなんら不満はない。実際に乗ってみても、小排気量ターボ特有の中低速域でのピーキーさはまるで感じられない。1.5リッターにいたっては、250N・mという最大トルクは2.5リッターの自然吸気エンジン相当で、ちょっとしたスポーツモデルといっていいくらいのパンチ力がある。

1リッター車のトーションビーム式リアサスペンションも、直接乗り比べれば後席の乗り心地に差はあるものの、そのギャップも先代より縮まっている。個人的に決定的な差はないと思うが、気になるなら試乗してほしい。

最安価グレードとなる1リッターのeTSIアクティブベーシックは、装備を絞った戦略価格商品で、「ハイビームアシスト」や「パークディスタンスコントロール」、さらにスマートキーや左右後席独立調整エアコンなど一部の装備が省かれるものの、16インチアルミホイールやインフォテインメント関連の装備は上級グレードと同等だから、現実的な納期で手に入るようなら注目だ。ただ、1リッター車にはシートヒーターやステアリングヒーターがオプションでも装備できないので、これらをご所望なら選外である。

先ほども述べたとおり、純粋な燃費性能ではディーゼルのTDIが現時点でゴルフ8最良である。とはいえ、最安価な「TDIアクティブベーシック」でも1リッターeTSIより20万~40万円以上高価なので、経済的にモトを取るのは簡単ではない。ただ、走りはガソリンより明らかにパワフルで、最安価なTDIアクティブベーシックでも17インチアルミホイールにステアリングヒーター、シートヒーターは標準装備。予算が許せば買い得だろう。

(文=佐野弘宗/写真=フォルクスワーゲン、向後一宏、荒川正幸、田村 弥、花村英典/編集=堀田剛資)

コストパフォーマンスを重視するなら、1リッターの「eTSI」モデルがオススメ。エントリーモデルとはいえ、走りや乗り心地に不満はない。(写真:荒川正幸)
コストパフォーマンスを重視するなら、1リッターの「eTSI」モデルがオススメ。エントリーモデルとはいえ、走りや乗り心地に不満はない。(写真:荒川正幸)拡大
「eTSIアクティブベーシック/アクティブ」「TDIアクティブベーシック/アクティブアドバンス」に装備されるシート。表皮はファブリックで、左右の張り出しが控えめなところが特徴だ。(写真:荒川正幸)
「eTSIアクティブベーシック/アクティブ」「TDIアクティブベーシック/アクティブアドバンス」に装備されるシート。表皮はファブリックで、左右の張り出しが控えめなところが特徴だ。(写真:荒川正幸)拡大
「eTSI Rライン」「TDI Rライン」に装備される、ファブリックとマイクロフリースのコンビシート。ヘッドレスト一体型で、乗員の体を保持する左右の張り出しも目立つものとなっている。(写真:向後一宏)
「eTSI Rライン」「TDI Rライン」に装備される、ファブリックとマイクロフリースのコンビシート。ヘッドレスト一体型で、乗員の体を保持する左右の張り出しも目立つものとなっている。(写真:向後一宏)拡大
ホイールの仕様はグレードによって細かく使い分けられている。上段は、左から「eTSIアクティブベーシック/アクティブ」「TDIアクティブベーシック/アクティブアドバンス」「eTSIスタイル/TDIスタイル」「eTSI Rライン/TDI Rライン」のホイール。下段左はeTSI Rライン/TDI Rラインにオプションで用意される18インチホイールで、同中央は「GTI」の、同右はGTIにオプションで用意される19インチホイール。
ホイールの仕様はグレードによって細かく使い分けられている。上段は、左から「eTSIアクティブベーシック/アクティブ」「TDIアクティブベーシック/アクティブアドバンス」「eTSIスタイル/TDIスタイル」「eTSI Rライン/TDI Rライン」のホイール。下段左はeTSI Rライン/TDI Rラインにオプションで用意される18インチホイールで、同中央は「GTI」の、同右はGTIにオプションで用意される19インチホイール。拡大
日本仕様の「ゴルフ」では最高の燃費性能を誇る「TDI」。燃料も安価な軽油だが、車両価格が高いので「燃料代でモトを取る」のは難しい。力強い走りと充実した装備が自慢の上級グレードと考えるのがいいだろう。(写真:荒川正幸)
日本仕様の「ゴルフ」では最高の燃費性能を誇る「TDI」。燃料も安価な軽油だが、車両価格が高いので「燃料代でモトを取る」のは難しい。力強い走りと充実した装備が自慢の上級グレードと考えるのがいいだろう。(写真:荒川正幸)拡大
佐野 弘宗

佐野 弘宗

自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。

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