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高級車の概念を打ち砕け! トヨタが放つプレミアムコンパクトSUV

【徹底解説】レクサスLBX 2024.04.02 ニューモデルSHOWCASE 佐野 弘宗 レクサスから、全長4.2mを切るコンパクトSUV「LBX」が登場。「高級車の概念をブレイクスルーする」ことを目指して開発された新時代のプレミアムカーを、デザインやカラーバリエーション、価格や装備、グレード構成など、多角的な視点で徹底解剖する。
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レクサスが挑む“小さな高級車”というジャンル

レクサスLBXは、高級車専業ブランドのレクサスが初めて手がけるBセグメントのSUVで、ありていにいえば“小さな高級車”である。車名の由来は公式には「Lexus Breakthrough X(cross)-over」だそうだが、真ん中の「B」にはこのクルマが属するクラス=Bセグメントを想起させる意図もあるのだろう。

小さな高級車を標榜した商品は、それこそ1960年代の英国「ヴァンデンプラ・プリンセス」のほか、歴史的にはいくつかの例があるが、明確な成功例は意外なほど少ない。近年において、だれもが認める大成功をおさめた例といえば、BMWが手がけた「MINI」だけだろう。

その後、フランスの「DS 3」や独アウディの「Q2」「A1」がMINIを強く意識して開発されたが、正直なところ、MINIに匹敵する業績とはいいがたい。……といった意味でも、LBXは野心的な商品といえるが、そもそもはトヨタの豊田章男会長(発言当時は社長)の「上質で毎日履き倒せるスニーカーみたいなクルマができないか」という“鶴のひと声”がすべての端緒だったとか。

LBXの基本骨格となるのは、トヨタでも最小クラスのプラットフォームとなる「GA-B」。トヨタブランドでいうと「ヤリス」や「GRヤリス」「アクア」「シエンタ」「ヤリス クロス」に使われているが、レクサスブランドではLBXが現時点で唯一の商品となる。

小さな高級車の成功例が少ない理由はいくつかあるが、世界的に「高級車=ゆったりしたサイズ」という固定観念が根強いほか、世界の高級車の大量消費地である北米では、Bセグメントサイズは小さすぎて売れにくいという現実も大きい。そんな現実に配慮して、LBXも主たる市場を日本と欧州というコンパクトカー激戦地域に定めており、レクサスの圧倒的最大消費地である北米市場での販売予定はない。

レクサス初のBセグメントモデルである、コンパクトSUVの「LBX」。2023年6月にイタリア・ミラノで世界初公開された。(写真:向後一宏)
レクサス初のBセグメントモデルである、コンパクトSUVの「LBX」。2023年6月にイタリア・ミラノで世界初公開された。(写真:向後一宏)拡大
メーターパネルは12.3インチのフル液晶。操作系の設計には、ヘッドアップディスプレイ(HUD)とステアリングスイッチを連携させ、大きな視線移動なしに各種機器の操作を可能にする「Tazuna」コンセプトが取り入れられている。しかし、肝心のHUDは「ビスポークビルド」以外ではオプションあつかいである……。(写真:向後一宏)
メーターパネルは12.3インチのフル液晶。操作系の設計には、ヘッドアップディスプレイ(HUD)とステアリングスイッチを連携させ、大きな視線移動なしに各種機器の操作を可能にする「Tazuna」コンセプトが取り入れられている。しかし、肝心のHUDは「ビスポークビルド」以外ではオプションあつかいである……。(写真:向後一宏)拡大
シートについては、コーナリング時にもドライバーの姿勢を安定して支え、頭部の揺れを軽減して視線を落ち着かせるよう配慮して開発されている。(写真:向後一宏)
シートについては、コーナリング時にもドライバーの姿勢を安定して支え、頭部の揺れを軽減して視線を落ち着かせるよう配慮して開発されている。(写真:向後一宏)拡大
過去を振り返ってみても、「MINI」を除くとなかなか成功例を見つけられない“小さな高級車”。「レクサスLBX」は、その難しいジャンルに挑戦する一台なのだ。
過去を振り返ってみても、「MINI」を除くとなかなか成功例を見つけられない“小さな高級車”。「レクサスLBX」は、その難しいジャンルに挑戦する一台なのだ。拡大
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【ラインナップ】
趣の異なる3つのグレードを用意

LBXのパワートレインは、現状では1.5リッターのシリーズパラレルハイブリッド1種類で、駆動方式はFFと4WDが選べる。基本グレードは「クール」と「リラックス」の2種類。FFで460万円、4WDで486万円という本体価格は両グレードで同じだ。つまり、グレードの差異はあくまで内外装の雰囲気や素材の肌ざわりだけで、上下関係はない。

それぞれ6色ずつ選べる外板色のラインナップは両グレードで異なり、またホイールのデザインもちがう。ただグレード差がより際立つのはインテリアだ。クールでは内装各部が基本的にスエード調になるのに対して、リラックスではスムーズレザーとなる。

そして、これらの基本グレードの上に位置づけられるのが、2023年11月のLBX国内デビュー(参照)に合わせ、一足お先に100台限定で抽選販売された「ビスポークビルド」。その名のとおり、内外装の各部をオーダーメイド感覚で仕立てられるのが特徴だ。本体価格が基本グレードより90万円高だったのは、クールやリラックスではオプションあつかいの先進運転支援システム(ADAS)の拡張機能=「レクサスチームメイト・アドバンストドライブ」や「レクサスチームメイト・アドバンストパーク」、そして「おくだけ充電」などが標準で搭載されるからでもある。

【主要諸元】

グレード名   LBX
“クール”
LBX
“クール”
LBX
“リラックス”
LBX
“リラックス”
LBX
“ビスポークビルド”
LBX
“ビスポークビルド”
基本情報 新車価格 460万円 486万円 460万円 486万円 550万円 576万円
駆動方式 FF 4WD FF 4WD FF 4WD
動力分類 ハイブリッド ハイブリッド ハイブリッド ハイブリッド ハイブリッド ハイブリッド
トランスミッション CVT CVT CVT CVT CVT CVT
乗車定員 5名 5名 5名 5名 5名 5名
WLTCモード燃費(km/リッター) 27.7 26.2 27.7 26.2 27.7 26.2
最小回転半径 5.2m 5.2m 5.2m 5.2m 5.2m 5.2m
エンジン 形式 直列3気筒DOHC 直列3気筒DOHC 直列3気筒DOHC 直列3気筒DOHC 直列3気筒DOHC 直列3気筒DOHC
排気量 1490cc 1490cc 1490cc 1490cc 1490cc 1490cc
最高出力 (kW[PS]/rpm) 67[91]/5500 67[91]/5500 67[91]/5500 67[91]/5500 67[91]/5500 67[91]/5500
最高トルク (N・m[kgf・m]/rpm) 120[12.2]/3800-4800 120[12.2]/3800-4800 120[12.2]/3800-4800 120[12.2]/3800-4800 120[12.2]/3800-4800 120[12.2]/3800-4800
過給機 なし なし なし なし なし なし
燃料 レギュラー レギュラー レギュラー レギュラー レギュラー レギュラー
フロントモーター 最高出力 (kW[PS]) 69[94] 69[94] 69[94] 69[94] 69[94] 69[94]
最高トルク (N・m[kgf・m]) 185[18.9] 185[18.9] 185[18.9] 185[18.9] 185[18.9] 185[18.9]
リアモーター 最高出力 (kW[PS])   5[6]   5[6]   5[6]
最高トルク (N・m[kgf・m])   52[5.3]   52[5.3]   52[5.3]
寸法・重量 全長 4190mm 4190mm 4190mm 4190mm 4190mm 4190mm
全幅 1825mm 1825mm 1825mm 1825mm 1825mm 1825mm
全高 1545mm 1545mm 1545mm 1545mm 1545mm 1545mm
ホイールベース 2580mm 2580mm 2580mm 2580mm 2580mm 2580mm
車両重量 1310kg 1390kg 1310kg 1390kg 1310kg 1390kg
タイヤ 前輪サイズ 225/55R18 225/55R18 225/55R18 225/55R18 225/55R18 225/55R18
後輪サイズ 225/55R18 225/55R18 225/55R18 225/55R18 225/55R18 225/55R18

 

グレードは「クール」(写真)と「リラックス」「ビスポークビルド」の3種類。外装については、ホイールや車体色の設定を除くと、グレード間で大きなちがいはない。
グレードは「クール」(写真)と「リラックス」「ビスポークビルド」の3種類。外装については、ホイールや車体色の設定を除くと、グレード間で大きなちがいはない。拡大
各所にスエード調表皮が用いられた「クール」のインテリア。各部の仕立ては「リラックス」と大きく異なるものの、装備の設定は共通だ。ディスプレイオーディオや「レクサスLBXプレミアムサウンドシステム」、計4つのUSB Type-Cポートなどが標準で採用されている。
各所にスエード調表皮が用いられた「クール」のインテリア。各部の仕立ては「リラックス」と大きく異なるものの、装備の設定は共通だ。ディスプレイオーディオや「レクサスLBXプレミアムサウンドシステム」、計4つのUSB Type-Cポートなどが標準で採用されている。拡大
こちらは「リラックス」のリアビュー。大きく張り出したリアフェンダーは、デザインにおける「LBX」の特徴だ。
こちらは「リラックス」のリアビュー。大きく張り出したリアフェンダーは、デザインにおける「LBX」の特徴だ。拡大
「リラックス」では内装の各所に合成皮革を採用(シート表皮はセミアニリン本革)。遊び心のあるステッチも特徴だった「クール」に対し、こちらは落ち着きや上質感を重視した仕立てである。
「リラックス」では内装の各所に合成皮革を採用(シート表皮はセミアニリン本革)。遊び心のあるステッチも特徴だった「クール」に対し、こちらは落ち着きや上質感を重視した仕立てである。拡大
「リラックス」には「サドルタン」(左)と「ブラック」(右)の2種類の内装色が用意される。
「リラックス」には「サドルタン」(左)と「ブラック」(右)の2種類の内装色が用意される。拡大
「ビスポークビルド」では、外装にシルバー塗装のフロントバンパーロアモールやリアバンパーロアモール、フィルム加飾のリアピラーガーニッシュを採用。
「ビスポークビルド」では、外装にシルバー塗装のフロントバンパーロアモールやリアバンパーロアモール、フィルム加飾のリアピラーガーニッシュを採用。拡大
内装色はセミアニリン本革仕様で7種類(写真上段)、「L-ANILINE」(レクサス独自の高級本革)仕様で5種類(中段)、「ウルトラスエード」仕様で2種類(下段)と、全14種類ものコーディネートが用意される。
内装色はセミアニリン本革仕様で7種類(写真上段)、「L-ANILINE」(レクサス独自の高級本革)仕様で5種類(中段)、「ウルトラスエード」仕様で2種類(下段)と、全14種類ものコーディネートが用意される。拡大
大まかな内装色に加え、ステアリングホイールやシフトセレクターの色、各所のステッチの色や模様、シートベルトの色なども選択可能だ。
大まかな内装色に加え、ステアリングホイールやシフトセレクターの色、各所のステッチの色や模様、シートベルトの色なども選択可能だ。拡大

【シャシー/パワートレイン/ドライブトレイン】
レクサスならではの手の込んだ変更点

前項で触れたとおり、パワートレインは1.5リッターハイブリッドの1種類のみ。駆動方式はFFのほか、最高出力6PS、最大トルク52N・mのリアモーターで後輪を駆動する4WDも用意する。

パワートレインの構成はトヨタブランドのアクア、ヤリス、ヤリス クロス、シエンタのそれと基本的に共通だ。ただ、最高出力94PS、最大トルク185N・mの専用フロントモーター(トヨタ各車のそれは80PSと141N・m)を使っており、136PSのシステム出力はヤリス系やアクア、シエンタ(すべて116PS)より高い。ハイブリッドシステムの電池は、アクアの中・上級グレードと同じくバイポーラ型ニッケル水素。ヤリス系のリチウムイオン電池より大容量で、素早い充放電にも強い。

パワーの源泉となる1.5リッター3気筒エンジンは、最高出力91PS、最大トルク120N・mというピーク性能はトヨタ各車と同じなものの、LBX専用にバランスシャフトを内蔵。これはレクサス伝統の“源流対策”(騒音・振動を原因から断つ設計思想)の一環だ。また、アクセル特性や路面勾配に応じたアダプティブ制御なども、同車の専用チューンとなっている。カタログ燃費(WLTCモード)はFFが27.7km/リッター、4WDが26.2km/リッターと、ヤリス クロスのハイブリッドと比べても遜色ない。指定燃料がレギュラーガソリンなのもうれしい。

骨格設計はご想像のとおり、ヤリス クロスに似ている。しかしスポット溶接点の増加や構造用接着剤の採用部位拡大、フロントストラットタワー間やインパネ内部構造の剛性強化、新開発(にしてGRヤリスと共通)の3点締結入力分離型アッパーサポートなど、レクサスブランドの車両ゆえか、車体は徹底的に強化されている。

さらに、バネやダンパーのチューニングは当然同車専用となる。ただそれ以上に目につくのは、専用大径タイヤの採用や、薄板ルーフやアルミフードなどによる低重心化、フロントキャスター角を増大させた専用のジオメトリー、オンデマンド加圧式ブレーキシステムの採用、アルミ鍛造フロントナックルの採用、ホイールのスタッドボルト締結化……などなど、レクサスならではの手間とコストをかけた専用仕立ての数々である。

パワートレインは1.5リッター直3エンジンとモーターを組み合わせたフルハイブリッド。バイポーラ型ニッケル水素電池の採用により、EV走行可能領域の拡大と、加速初期の力強い電動アシストを実現した。
パワートレインは1.5リッター直3エンジンとモーターを組み合わせたフルハイブリッド。バイポーラ型ニッケル水素電池の採用により、EV走行可能領域の拡大と、加速初期の力強い電動アシストを実現した。拡大
より運転に集中できるよう、ドライビングポジションも変更。着座位置は「ヤリス クロス」より15mm低められ、ステアリングホイールの角度や位置も見直された。ペダルはつり下げ式ではなく、「GA-B」採用車では唯一のオルガン式である。
より運転に集中できるよう、ドライビングポジションも変更。着座位置は「ヤリス クロス」より15mm低められ、ステアリングホイールの角度や位置も見直された。ペダルはつり下げ式ではなく、「GA-B」採用車では唯一のオルガン式である。拡大
ボディーについては剛性の強化と各部の軽量化がトピック。低級な振動の抑制や、低重心化、たて付け部分の高剛性化による機敏な操舵応答性などを実現した。
ボディーについては剛性の強化と各部の軽量化がトピック。低級な振動の抑制や、低重心化、たて付け部分の高剛性化による機敏な操舵応答性などを実現した。拡大
「レクサスLBX」は「トヨタ・ヤリス クロス」よりホイールベースが延びているが、これは大径タイヤをおさめるべく、フロントサスペンションのキャスター角を大きくしたためだ。またフロントでは、軽量化のためにアルミ製のナックルが採用された。
「レクサスLBX」は「トヨタ・ヤリス クロス」よりホイールベースが延びているが、これは大径タイヤをおさめるべく、フロントサスペンションのキャスター角を大きくしたためだ。またフロントでは、軽量化のためにアルミ製のナックルが採用された。拡大
写真は左列が「クール」、中央列が「リラックス」の18インチホイール。「ビスポークビルド」ではこれら4本に加え、右列の17インチアルミホイールも選択できる。タイヤサイズは18インチ仕様が225/55R18、71インチ仕様が225/60R17だ。
写真は左列が「クール」、中央列が「リラックス」の18インチホイール。「ビスポークビルド」ではこれら4本に加え、右列の17インチアルミホイールも選択できる。タイヤサイズは18インチ仕様が225/55R18、71インチ仕様が225/60R17だ。拡大

【ボディーサイズ/デザイン】
ロー&ワイドなデザインでカッコよさを追求

LBXのスリーサイズは全長×全幅×全高=4190×1825×1545mm、ホイールベースは2580mm。共通のDNAを持つヤリス クロスと比較すると、全長は同等で、全高は20mm低い。最大のちがいは全幅で、LBXはヤリス クロスよりじつに60mmも幅広い。つまり、LBXのディメンションは“超ワイド&ロー”で、さらにホイールベースはLBXが20mm長いので、オーバーハングも短い。低く、幅広く、低慣性マスの“素直にカッコいい”プロポーションといえる。

LBXの直接的なライバルとなる欧州コンパクトSUVと比較しても、LBXのショート&ワイドぶりは際立つ。たとえば、「フォルクスワーゲンTロック」は全幅がLBXと同寸だが、全長はLBXのほうが短い。アウディQ2より10mm短いのに、全幅は逆に30mmも広い。全長を全幅で割った約2.3という縦横比は、フランスのDS 3と同等だが、LBXはDS 3より全長・全幅は大きいのに、全高は低い。このように、LBXはライバルと比較しても、群をぬいてナイスプロポーションともいえる。

LBXのデザインはそんなナイスプロポーションを存分に生かして、安定した下半身にコンパクトなキャビンが乗っかった低重心スタンスを強調。とくに前後タイヤまわりに抑揚を持たせたコークボトル風のフェンダーは目を引く。さらに、リアは幅広さと低重心を強調する一文字ランプで引き締めている。いっぽう、フロントは最近のレクサス車に共通する車体とグリルが融合した「ユニファイドスピンドル」に加えて、レクサスの原点でもある「レゾリュートルック(毅然とした表情)」を表現する精悍なヘッドランプを採用している。

主要グレードとなるクールとリラックスで外板色のラインナップが異なるのは先述のとおり。両グレード共通の「ブラックマイカ」のほかは、クールでは比較的シックな色合いの2トーンカラー(ルーフはブラック)、リラックスでは鮮やかな赤色の「レッドスピネル」を含むモノトーンとなる。ビスポークビルドはさらに選択肢が豊富で、クールとリラックスで選べる色はすべて選択可能。専用色の「シルバーメタリック」や「パッショネイトイエロー」などを含め、モノトーン、ツートン合わせ17種類のカラーリングが用意される。

フロントまわりでは、グリルとボディーの縁をなくした「シームレスグリル」がひとつの特徴。このデザインには空気の整流効果もあり、空力特性の改善にも寄与しているという。
フロントまわりでは、グリルとボディーの縁をなくした「シームレスグリル」がひとつの特徴。このデザインには空気の整流効果もあり、空力特性の改善にも寄与しているという。拡大
サイドビューでは大径のタイヤ&ホイールや、立ち気味のAピラー、躍動感のあるキャラクターラインが特徴。ダイナミックな造形だが、空気抵抗の低減にも配慮がなされている。
サイドビューでは大径のタイヤ&ホイールや、立ち気味のAピラー、躍動感のあるキャラクターラインが特徴。ダイナミックな造形だが、空気抵抗の低減にも配慮がなされている。拡大
リアビューはわかりやすい台形で、スタンスのよさを表現。全幅は1825mmと、「トヨタ・ヤリス クロス」より60mmもワイドになった。
リアビューはわかりやすい台形で、スタンスのよさを表現。全幅は1825mmと、「トヨタ・ヤリス クロス」より60mmもワイドになった。拡大
豊富なカラーバリエーションも「LBX」の大きな魅力。左端の「ブラックマイカ」は全車で選択可能で、「リラックス」(左から2列目)および「クール」(同3列目)ではさらに5種類の色が選べる。これらに加え、「ビスポークビルド」には6種類(右端)のカラーリングが用意される。
豊富なカラーバリエーションも「LBX」の大きな魅力。左端の「ブラックマイカ」は全車で選択可能で、「リラックス」(左から2列目)および「クール」(同3列目)ではさらに5種類の色が選べる。これらに加え、「ビスポークビルド」には6種類(右端)のカラーリングが用意される。拡大

【インテリア/荷室/装備】
質感と運転環境にみるレクサスの矜持

LBXのインテリアは非常にシンプルで開放的な意匠だが、かわりにダッシュボードやドアトリム、アームレスト、センターコンソールにいたるまで、ていねいにレザーをあしらって“小さな高級車”であることを表現している。

クールとリラックスという2つのグレードは、主にインテリアの表皮素材で差別化される。前者が各所にスエード調(東レの「ウルトラスエード」)が張られたブラック&グレーの2トーン内装となっているのに対し、後者には「L tex」というスムーズな合成皮革があしらわれて、内装色も「ブラック」か明るい「サドルタン」から選べる。シート表皮はクールがセミアニリン本革とスエード調表皮のコンビ、リラックスがセミアリニン本革となる。前席のシート調整は、運転席が電動式、助手席が手動式(運転席8ウェイ、助手席6ウェイ)だ。

ドライビングポジションも独自に設計されており、共通プラットフォームのヤリス クロスに対して、前席の着座位置を下げると同時にステアリングホイールやペダルの角度を最適化。アクセルペダルもGA-Bプラットフォーム車で唯一にして、上級のレクサスと同様のオルガン式に改められている。後席についてはシートは厚めのクッションで立派だが、空間自体はミニマム。平均的な体格の成人が4人乗ることも可能だが、広々としているわけではなく、センターアームレストすら用意されない。

いっぽう、荷室は意外に広い。FF車は可動式デッキボードが備わり、ボードを取り去るか底面に落とし込むことで330リッターの容量を確保(デッキボードがない4WDは253リッター)。FFであれば60リッターの大型スーツケースを2個、横に積むことが可能だ。

先述のシート調整機構からもわかるとおり、シンプルなグレード構成もあって装備類はオプションに頼らずとも充実している。12.3インチの液晶メーターパネルに加えて、インパネセンターには9.8インチタッチディスプレイを搭載。ドアアウターハンドルは上級モデルと同じ「eラッチ」で、14色から自由に選べる「インテリアイルミパッケージ」も標準で装備される。

インストゥルメントパネルまわりは水平基調のすっきりとしたデザイン。操作系は9.8インチのタッチディスプレイなどでデジタル化されているが、オーディオの音量操作をダイヤルスイッチとするなど、使いやすさに配慮して機械式の部分も残されている。(写真:向後一宏)
インストゥルメントパネルまわりは水平基調のすっきりとしたデザイン。操作系は9.8インチのタッチディスプレイなどでデジタル化されているが、オーディオの音量操作をダイヤルスイッチとするなど、使いやすさに配慮して機械式の部分も残されている。(写真:向後一宏)拡大
セミアニリン本革とスエード調表皮が用いられた「クール」のシート。全グレードにおいて、前席にはシートヒーターが標準で装備される。調整機構については、運転席にはポジションメモリー機能および電動ランバーサポート付きのパワーシートが備わるのに対し、助手席にはオプションでも電動調整機構は用意されていない。
セミアニリン本革とスエード調表皮が用いられた「クール」のシート。全グレードにおいて、前席にはシートヒーターが標準で装備される。調整機構については、運転席にはポジションメモリー機能および電動ランバーサポート付きのパワーシートが備わるのに対し、助手席にはオプションでも電動調整機構は用意されていない。拡大
リアシートの居住性は必要十分といった感じ。乗り心地は意外と良好だが、いかんせん狭い。フロントセンターコンソールの背面には、後席用に2つのUSB Type-Cポートが備わる。
リアシートの居住性は必要十分といった感じ。乗り心地は意外と良好だが、いかんせん狭い。フロントセンターコンソールの背面には、後席用に2つのUSB Type-Cポートが備わる。拡大
荷室の仕様は、FF車(2段デッキボード未使用時)では容量:330リッター+2リッター(デッキ下収納容量分)、荷室長:723mm、荷室幅:839mm(最小)/1054mm(最大)、荷室高:569mm。4WD車では容量:253リッター+2リッター(デッキ下収納容量分)、荷室長:683mm、荷室幅:922mm(最小)/1054mm(最大)、荷室高:442mmとなっている。(容量はVDA計測値)
荷室の仕様は、FF車(2段デッキボード未使用時)では容量:330リッター+2リッター(デッキ下収納容量分)、荷室長:723mm、荷室幅:839mm(最小)/1054mm(最大)、荷室高:569mm。4WD車では容量:253リッター+2リッター(デッキ下収納容量分)、荷室長:683mm、荷室幅:922mm(最小)/1054mm(最大)、荷室高:442mmとなっている。(容量はVDA計測値)拡大

【バイヤーズガイド】
オプションの運転支援機能とオーディオは要チェック

発売当初に「オーダーメイドシステム」を大々的に打ち出したLBXだが、それが可能なピスポークビルドは、今のところ発売直後に100台限定の抽選販売がされただけ。状況を見ての受注再開も示唆されているが、この原稿を書いている2024年3月時点ではオーダーはできない。

というわけで、今はクールかリラックスという2つのグレードから選ぶしかない。先述のとおり、価格的にも装備的にも両グレードに上下はない。タイヤサイズその他の乗り味に関する部分も差異はなく、装備内容も基本的に同じだ。ちがいは外装部品の一部と、内装にあしらわれる表皮素材のみなので、ホイールデザインや外板色、内装色、そしてシートや内装の肌ざわりの好みで選べばいい。

もうひとつの選択肢は駆動方式だが、4WDは控えめなリアモーターによる電動式で、リアサスペンションこそFFがトーションビーム、4WDがダブルウイッシュボーンというちがいはあれど、オンロードでの操縦性や安定性に直接かかわるものではない。北国や雪国にお住まいでなければ、基本的にFFでよさそうだ。

先進運転支援システムも自動緊急ブレーキからアダプティブクルーズコントロール、車線維持機能、道路標識認識機能、そして日常からさりげなく支援する「プロアクティブドライビングアシスト」などが標準で備わる。渋滞時のハンズフリー運転などを実現するレクサスチームメイト・アドバンストドライブ(渋滞時支援)や、いわゆる自動駐車機能の「レクサスチームメイト・アドバンストパーク(リモート機能付き)+パーキングサポートブレーキ(周囲静止物)」は、必須とはいわないが、前者が9万0200円、後者が4万8400円という内容のわりに手ごろなオプション価格を知ると、ちょっとそそられる。

また、25万9100円の「“マークレビンソン”プレミアムサラウンドサウンドシステム」は、単純に高音質オーディオというだけでなく、クルマ自体の静粛性を高める「アクティブノイズコントロール」もセットでついてくることは知っておいたほうがいい。

(文=佐野弘宗/写真=トヨタ自動車、向後一宏、花村英典/編集=堀田剛資)

オーダーメイドシステムが魅力の上級グレード「ビスポークビルド」だが、今のところは発売当初に100台が限定販売されたのみ。一応カタログモデルではあるが、今はまだ受注は再開されていないようだ。
オーダーメイドシステムが魅力の上級グレード「ビスポークビルド」だが、今のところは発売当初に100台が限定販売されたのみ。一応カタログモデルではあるが、今はまだ受注は再開されていないようだ。拡大
今日では、スポーティーな走りのために積極的に後輪を駆動させる4WDシステムもあるが、「LBX」の電動4WDはいわゆる“生活四駆”の域を出ないもの。雪国在住の人でもなければ、積極的に選ぶ必要はないだろう。(写真:花村英典)
今日では、スポーティーな走りのために積極的に後輪を駆動させる4WDシステムもあるが、「LBX」の電動4WDはいわゆる“生活四駆”の域を出ないもの。雪国在住の人でもなければ、積極的に選ぶ必要はないだろう。(写真:花村英典)拡大
プレミアムブランドのモデルだけに機能・装備は充実しているが、「クール」と「リラックス」では、「レクサスチームメイト」や「“マークレビンソン”プレミアムサラウンドサウンドシステム」、ヘッドアップディスプレイ、アクセサリーコンセント、携帯端末用のワイヤレスチャージャーなどはオプションあつかいとなる。またドライブレコーダー(前方)は、「ビスポークビルド」を含めて全車でオプションあつかいである。
プレミアムブランドのモデルだけに機能・装備は充実しているが、「クール」と「リラックス」では、「レクサスチームメイト」や「“マークレビンソン”プレミアムサラウンドサウンドシステム」、ヘッドアップディスプレイ、アクセサリーコンセント、携帯端末用のワイヤレスチャージャーなどはオプションあつかいとなる。またドライブレコーダー(前方)は、「ビスポークビルド」を含めて全車でオプションあつかいである。拡大
実質的に「ビスポークビルド」を注文できない現状では、購入の候補は「クール」「リラックス」に絞られる。降雪地以外にお住まいの方は、4WDは不要。後は、必要なオプションを選んでいけばいいだろう。(写真:向後一宏)
実質的に「ビスポークビルド」を注文できない現状では、購入の候補は「クール」「リラックス」に絞られる。降雪地以外にお住まいの方は、4WDは不要。後は、必要なオプションを選んでいけばいいだろう。(写真:向後一宏)拡大
佐野 弘宗

佐野 弘宗

自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。

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  • 【徹底解説】新型レクサスRX 2023.8.9 レクサスのクロスオーバーモデルのなかでも、最上位に位置する「RX」。2022年に登場した新型は、先代からどう進化し、ライバルに対してどんなアドバンテージをもっているのか? レクサスの屋台骨を支える一台を、装備や燃費、価格など、多角的な見地で徹底解剖!
  • 【徹底解説】新型 三菱デリカミニ 2023.7.4 デビューとともに話題沸騰中の、新型軽スーパーハイトワゴン「三菱デリカミニ」。人気の源にもなっているかわいらしいデザインのほかに、このクルマにはどんな魅力が宿っているのか? 装備の充実度や使い勝手、気になる燃費性能など、多角的な視点で徹底解剖する。
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