プジョー308 GT BlueHDi(FF/8AT)
メートル原器 フランスに帰る 2022.05.03 試乗記 プジョーのCセグメントハッチバック「308」がフルモデルチェンジ。もちろん新しくなったのは見た目だけでなく、9年ぶりの新型にふさわしく中身も長足の進歩を遂げている。1.5リッターディーゼルモデルの仕上がりをリポートする。どーんと大きくなった
新型308はロングルーフの伝統的なプロポーションはそのままに、最新プジョーならではの牙をかたどった「セイバー(=サーベル)」フェイスや最新の「i-Cockpit(コックピット)」を取り入れたのが特徴だ。プジョーは日本向けモデルの電動化にも熱心だが、プラットフォームが先代同様の「EMP2」であることからも想像できるように、新型308に用意される電動車は1.6リッターターボを核としたプラグインハイブリッドとなる。純粋な電気自動車は用意されない。
新型308の実車を前にして印象的なのは、車体サイズの拡大が顕著なことだ。ホイールベースが先代比で60mmのばされたうえで、全長で145mm、全幅で45mm拡大された結果、全長は4.42m、全幅は1.85mに達した。
競合車とならべなくとも、新型308がCセグメントとしては大柄であることは一目瞭然だ。日本で手に入るCセグメントハッチバックで全長4.4m超えといえば、高級車ブランドの「メルセデス・ベンツAクラス」のほかには、北米志向の強い「ホンダ・シビック」と「マツダ3」くらいしかない。……と書いていたら、数年前に「プジョーが北米再参入を検討」といったニュースが流れたことを思い出した。まあ、新型308がそれと関係あるかどうかは分からない。
シビックやマツダ3、Aクラスにしても全幅はギリギリ1.8m以下にとどめられるが、プジョーはそのボーダーラインもまるで意識していないかのようだ。1.85mという新型308の全幅は、Cセグとしては最大級である。ちなみに、現行Cセグハッチバックでもっとも小さいのは、全長4.3mを切り、全幅も1.79mの「フォルクスワーゲン・ゴルフ」である。今回の試乗中にも最新のゴルフ8と偶然に隣り合う瞬間があったのだが、新型308はその押し出しの強いフェイスデザインもあって、その体格差はセグメントちがいと錯覚するほどだった。
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質感アップが顕著なインテリア
新型308は車体サイズのみならず、インテリアの質感や居心地においても“格上げ感”が顕著だ。ダッシュボードに厚めのソフトパッドが使われるほか、写真の「GT」グレードは、そこにステッチ処理が施されて、一部にスエードが張られるなど、凝った意匠になっている。
センター画面は全グレードで10インチのカラーTFT液晶ディスプレイとなるが、GTではその下に「i-toggles(トグル)」と名づけられたショートカット用タッチパネルがあり、センター画面の機能を呼び出せるようになっている。この部分はより手ごろな「アリュール」グレードだと一般的なエアコンパネルになるのだが、センター画面はもともとタッチパネルなので機能的に困ることはとくにない。つまり、正直、今のところはアイデア先行感が否めない。
シフトセレクターは最新のプジョー/シトロエン/DS系で使われはじめたタイプで、かさばらず、しかも指先であつかいやすい設計は個人的にはスグレモノと思う。そんなシフトセレクターを抱えるセンターコンソールは、たっぷりした全幅を利した立派なものだ。その巨大なセンターコンソールと低いダッシュボードに囲まれた前席空間はまるでDセグあたりのサルーンを思わせるものがあり「新型『508』です」と紹介されれば、そのまま信じてしまうだろう。
新型308のインテリアには、日本のプジョー&シトロエン乗りが嫉妬するであろう新しいディテールがほかにも2つある。ひとつが右ハンドルでありながら、グローブボックスが日本の車検証も収納できる一般的な容量になったこと。そしてもうひとつがアダプティブクルーズコントロールの操作スイッチが、コラムから生えたツリータイプから、これまた一般的なステアリングスイッチとなり、操作性が格段に向上したことである。この2つは近年のプジョー&シトロエンに共通する弱点だった。
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静粛性も格段に向上
新型308の日本仕様には、先述のプラグインハイブリッドのほか、従来どおりの1.2リッターガソリンターボと1.5リッターディーゼルターボという2種類の純内燃機関モデルが用意される。今回試乗したのは、このうちのディーゼルだ。
1.5リッターという排気量は日本で販売されるCセグ用ディーゼルエンジンとしては小さめに思えるかもしれない。最高出力130PS/最大トルク300N・mというピーク性能は先代308のそれと変わっておらず、車重は100kg近く重くなっているのだが、絶対的には、GTと自称するグレードでも不足を感じないくらいにはパワフルだ。さすがにゴルフの2リッターよりおとなしいとはいえ、日本でお馴染みのマツダ3の1.8リッターと比較すると、最高出力は同じだが、最大トルクが大きい。そのうえ車重は軽く、変速機のギアも2段多い。実際、マツダ3よりは体感動力性能は活発である。
それ以上に感心するのが静粛性の高さだ。先代308のディーゼルでは、「スポーツ」モードにすると笑ってしまうほど豪快なサウンドを響かせたものだが、新型308ではあれほど分かりやすい演出はしなくなった。いや、そういう細かい話ではなく、キャビン内で聞こえるディーゼルサウンドは皆無とはいわないが、印象的なほど小さい。
ただ、新型308の静粛性で最大の美点はロードノイズの小ささである。写真のGTだけでなくタイヤサイズがおとなしくなるアリュールにも乗ってみたが、タイヤ銘柄が同じせいか、どちらも静かである。新型308は車体サイズや内装の質感表現でも、良くも悪くもCセグとは思えない仕上がりなのが特徴だが、この音環境がそこに加わることで、クルマ全体の格上げ感は、いよいよ明白である。
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乗り味もお見事!
乗り心地やハンドリングなど、シャシーの仕上がりは内装の質感や静粛性に輪をかけて素晴らしい。車体サイズの拡大とホイールベースの延伸がいい方向に効いているようで、高速道ではまるでシトロエンブランドの上級サルーン(これは筆者としては最上級のホメ言葉)のように滑らかに走る。しかも、シトロエンのように大きめの上下動を演出することなく、どこまでも吸いつくようなフラットライドを追求しているのがプジョーだ。高速を走る新型308の乗り心地は、いい意味で実寸以上に大きく重厚であり、シトロエン的な仕立てよりはっきりと現代的でもある。
例の極小径ステアリングホイールによる俊敏な操縦性も、いよいよ熟成きわまった感が強い。いかにも慣性マスの小さいステアリングを遠慮なしに振り回しても、フロントタイヤはぴたりと正確に追従しつつも、不自然に過敏に感じられることは皆無といっていい。こうしてステアリングだけは独特の俊敏性をもつのに対して、シャシーそのものはロングホイールベースならではの徹底した安定志向なのがまたプジョーである。この大きな手の平の上で遊ばせていただいてる感覚は、308や508といった上級プジョーに共通する心地よさである。
さらに、アシさばきも見事というほかない。路面タッチは18インチのGTでも柔らかい。ロール方向の動きは小さくはないのだが、そのおかげもあってステアリングやシートから伝わる接地感はじっとり濃厚そのものである。それでいてピッチング方向にはフラットで、しかもあらゆる挙動がほぼ一発で収束するので無駄な動きがない。あまりにベタな表現だが、いやホント、これは“ネコアシ”と表現するほかない。
308がここまで立派で重厚なクルマになると、いよいよ508は大変だな……とヒトゴトながらも心配になる。サイズ拡大には賛否両論あろうが、この内容で主力グレードが300万円台となると、ゴルフを筆頭とした競合車も冷や汗だろう。
(文=佐野弘宗/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
プジョー308 GT BlueHDi
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4420×1850×1475mm
ホイールベース:2680mm
車重:1420kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:130PS(96kW)/3750rpm
最大トルク:300N・m(30.6kgf・m)/1750rpm
タイヤ:(前)225/40R18 92Y/(後)225/40R18 92Y(ミシュラン・プライマシー4)
燃費:24.2km/リッター(WLTCモード)
価格:396万9000円/テスト車=397万9670円
オプション装備:ETC(1万0670円)
テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:1642km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(軽油)
参考燃費:--km/リッター

佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。