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アルファ・ロメオ・トナーレ(FF/7AT)

ひと味違うSUV 2022.05.12 試乗記 塩見 智 アルファ・ロメオからSUV第2弾となる「トナーレ」がデビュー。ブランド初の電動化モデルというだけでなく、乗用車としては世界初採用となる技術も織り込んだ意欲作だ。本国イタリアで開催された試乗会での印象をリポートする。

2027年にEV専業化するアルファ

アルファ・ロメオ・トナーレ ハイブリッドの試乗会はイタリア北部のコモ湖で開かれた。プレゼンテーションが行われたのは、湖畔で生まれ、電池を発明し、電圧の単位ボルトの語源にもなった物理学者のアレッサンドロ・ボルタの業績をたたえて建てられたボルティアーノ寺院。ブランド初の電動車を発表する場にふさわしいと考えたのだろう。そこら中に(狭いけど)走らせて楽しいワインディングロードがあるのも理由のひとつだろうが。

プレゼンテーションの席上、アルファ・ロメオのジャン=フィリップ・アンパラトCEOは、同ブランドがステランティスグループの電動化戦略の先兵を務める立場であることを強調した。今回登場したトナーレ ハイブリッドは、48V電源を用いたマイルドハイブリッド車(MHEV)であり、追ってプラグインハイブリッド車(PHEV)が追加される。2024年に登場予定のトナーレよりひと回り小さい新型SUVには電気自動車(EV)が設定される。さらに翌2025年にはEV専用車を発売し、2027年に全ラインナップをEVとするという、かねて語ってきたロードマップを繰り返した。

ジャガー・ランドローバーがジャガーを、BMWがMINIを、トヨタがレクサスをそれぞれEV専用ブランドとすることを表明したように、ステランティスはアルファ・ロメオを電動化の切り込み隊長に任命したのだ。アルファ・ロメオは第2次世界大戦前の直6や直8、戦後の直4からV12までのさまざまなガソリンエンジンをレーシングカーやスポーツカーに搭載し、輝かしい実績を残してきた。クリーンなコモンレール式ディーゼルエンジンを最初に量産化したのもアルファ・ロメオだ。それが数年後にはフルライン電動化を目指すというのだから恐れ入る。しかし考えてみれば同社の華々しい活躍を知る世代は順次免許証を返納する時期に入った。ちょうどよいのかもしれない。

2022年2月8日に世界初披露された「アルファ・ロメオ・トナーレ」。「ステルヴィオ」と同様に車名はアルプスを望む峠の名から取られている。
2022年2月8日に世界初披露された「アルファ・ロメオ・トナーレ」。「ステルヴィオ」と同様に車名はアルプスを望む峠の名から取られている。拡大
ボディーサイズは全長×全幅×全高=4528×1841×1601mm。「ステルヴィオ」よりも160mmほど短く、SUVの激戦区に投入される。
ボディーサイズは全長×全幅×全高=4528×1841×1601mm。「ステルヴィオ」よりも160mmほど短く、SUVの激戦区に投入される。拡大
LEDヘッドランプのデザインがかつての「159」などを想起させる。「ヴェローチェ」グレードでは盾形のフロントグリルがマットブラックで縁取られる。
LEDヘッドランプのデザインがかつての「159」などを想起させる。「ヴェローチェ」グレードでは盾形のフロントグリルがマットブラックで縁取られる。拡大
リアコンビランプは左右ひとつながりになっており、U字を3つ並べた内部デザインはヘッドランプと同じ。
リアコンビランプは左右ひとつながりになっており、U字を3つ並べた内部デザインはヘッドランプと同じ。拡大
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ありものでつくってもカッコいい

さてトナーレである。全長×全幅×全高=4528×1841×1601mm、ホイールベース2636mmと、「ステルヴィオ」よりひと回り小さい。エンジン横置きなのでステルヴィオとの技術的関連性は低く、旧FCAが「フィアット500X」やジープの「レネゲード」「コンパス」あたりに用いるコンパクトカー用の車台を電動対応させて開発したと思われる。

サイズ面では「MINIクロスオーバー」や「BMW X2」「アウディQ2」「メルセデス・ベンツGLA」あたりがライバルか。シルエットは典型的なコンパクトSUVのそれ。大径タイヤ&ホイールとフェンダーアーチのクラッディングによって天地の厚みを目立たなくする手法もよくあるパターンだ。

けれどもかつての「ブレラ」や「159」のような3連ヘッドランプを思わせるLEDヘッドランプユニットや同じモチーフのリアコンビランプ、5つの円を花びらのように配置するおなじみデザインのホイール、そしてもちろん盾形のフロントグリルといったいくつかのお約束ディテールによって、一目瞭然のアルファ・ロメオに仕上がっている。ありものでつくっても結局カッコいいのがアルファ・ロメオだ。

インテリアには、伝統的デザインに最新ユーザーインターフェイスを盛り込むデザイナーの努力が見て取れる。速度計とエンジン回転計にそれぞれ独立したカウルをかぶせるメーターナセルは健在だが、今やメーターは12.3インチのフル液晶だ。その隣の10.25インチのタッチスクリーンはトレンドにのっとって、あえてデザインに組み込まず、ただインパネにタブレットを固定するように配置される。ステアリングホイールに配置されたスターターボタンは、事情があって別々の道を進むものの、フェラーリと血がつながっていることを思い出させる。

サスペンションは前後ともにマクファーソンストラット式。「ヴェローチェ」グレードは電子制御式減衰力可変ダンパーを装備する。
サスペンションは前後ともにマクファーソンストラット式。「ヴェローチェ」グレードは電子制御式減衰力可変ダンパーを装備する。拡大
エアアウトレットや2つのメーターフードなど、円を効果的にレイアウトしたダッシュボード。センタースクリーンやエアコンの操作パネルはドライバーに向けて大胆に傾けられている。
エアアウトレットや2つのメーターフードなど、円を効果的にレイアウトしたダッシュボード。センタースクリーンやエアコンの操作パネルはドライバーに向けて大胆に傾けられている。拡大
12.3インチの液晶メーターを採用。写真は「ヘリテージ」と名づけられた表示パターンで、アルファ・ロメオの過去のアイコン的モデルにインスピレーションを得たというグラフィックが特徴。数字の向きがユニークだ。
12.3インチの液晶メーターを採用。写真は「ヘリテージ」と名づけられた表示パターンで、アルファ・ロメオの過去のアイコン的モデルにインスピレーションを得たというグラフィックが特徴。数字の向きがユニークだ。拡大
オープニング画面には迫力あるフロントマスクが表示される。
オープニング画面には迫力あるフロントマスクが表示される。拡大

“快適でスポーティー”は健在

1.5リッター直4ターボエンジンと7段DCTに、48V電源システムを用いたマイルドハイブリッドシステムが組み合わせられる。前輪駆動。エンジンは高価な可変ジオメトリーターボを用いた高効率追求型で、最高出力は160PS、最大トルクは240N・mを発生する。

モーターは同20PS、同55N・mだが、フルハイブリッドやプラグインハイブリッドのような大容量のモーターとバッテリーを搭載するわけではないので、電力による加速アシストは、発進から低速域に限り、ほんのりと行われるにとどまる。高回転まで回した際の体感的な力強さはエンジンスペックから想像するとおり。車両重量は1525kg。0-100km/hの加速性能が8.8秒というのはおとなしい部類に入る。パワフルではないが、痛痒(つうよう)はない。緩やかな発進であればモーターのみで走りだす。追って出るPHEVが“速いほう”を担うのだろう。

そう速くはないものの、凝った足まわりのつくり込みによって、マイルド電動アルファ・ロメオはきちんとアルファ・ロメオたり得ている。ステアリングのギア比は13.6:1と例によってクイックで、正確でキビキビとしたハンドリングを味わうことができる。足の硬さによるキビキビ感ではなく、クイックステアリングと電子制御デフによるトルクベクタリングシステムに由来するキビキビ感が、アルファ・ロメオの伝統的特徴のひとつである“快適なままスポーティーなハンドリング”をもたらしている。

上級グレード「ヴェローチェ」に備わる電子制御サスは、ハードとソフトの2種類の減衰力をドライバーが任意に選ぶことができるほか、ドライブモードの「アルファD.N.A.(ダイナミック/ナチュラル/オールウエザー)」と連動し、自動的に切り替わる。この電子制御サスとステアリングパドルが備わるという理由で、ヴェローチェをよりオススメしたい。限られたパワーをうまく使いたいクルマにこそパドルが必要だ。まだ価格が分からないのでなんとも言えないが。

可変ジオメトリーターボを採用した1.5リッター直4エンジンは最高出力160PSと最大トルク240N・mを発生。発進時などの限られた状況ではモーターのみでの走行も可能。
可変ジオメトリーターボを採用した1.5リッター直4エンジンは最高出力160PSと最大トルク240N・mを発生。発進時などの限られた状況ではモーターのみでの走行も可能。拡大
シートは横方向のストライプがクラシカルな印象をもたらす。表皮はレザー(写真)のほかアルカンターラなども設定される。
シートは横方向のストライプがクラシカルな印象をもたらす。表皮はレザー(写真)のほかアルカンターラなども設定される。拡大
リアシートは座面も背もたれもフラットなつくりだが、エアアウトレットはきちんと備わっている。
リアシートは座面も背もたれもフラットなつくりだが、エアアウトレットはきちんと備わっている。拡大
ラゲッジスペースの容量は500~1550リッター。後席の背もたれは40:60の分割可倒式。
ラゲッジスペースの容量は500~1550リッター。後席の背もたれは40:60の分割可倒式。拡大

“中古のアルファ”でも安心な時代に!?

先進運転支援システムや予防安全装備、それにインフォテインメントシステムはこのクラスとしてひと通りのものがそろっている。「Amazon Alexa」を使った会話によるコマンド入力は日本語にどの程度対応するかは分からない。「Apple CarPlay」および「Android Auto」はワイヤレス接続だ(日本でもそうなるとは断言できないが、まず大丈夫だろう)。スマホのワイヤレス充電もある。

新しさを感じさせるのは、乗用車として初めて「NFT(ノン・ファンジブル・トークン)」認証を採用したこと。NFTはコピーや偽造を防ぐデジタルデータ技術として注目を集めていて、トナーレではこのNFTを用いて車両データを管理できるようになった。

これによってクルマの残存価値を正確に証明できることにつながり、中古車価格を維持するのに役立つだろう。かつてアルファ・ロメオの中古車を買うという行為は大きなギャンブルに等しかった(!?)が、安心して選ぶことができるようになる日は近い。もう「沼にハマる」などと表現される行為ではなくなるのだ!

トナーレ ハイブリッドは2022年後半のどこかで日本導入を果たすはず。価格は未定。手ごろなサイズの実用的なSUVでありながら、どこからどう見てもアルファ・ロメオでしかない伊達(だて)なルックスが手に入るというのが、このクルマの真価だ。同じようなのがたくさんあって、どこのなんだか分からないコンパクトSUVがはびこるなか、オレのはひと味違うと感じたい人にオススメ。

(文=塩見 智/写真=ステランティス/編集=藤沢 勝)

マイルドハイブリッドの1.5リッターモデルは全車が前輪駆動となっており、4WDはプラグインハイブリッドモデルのみとなっている。
マイルドハイブリッドの1.5リッターモデルは全車が前輪駆動となっており、4WDはプラグインハイブリッドモデルのみとなっている。拡大
ホーンボタンの左下にスタート/ストップボタンを備えたステアリングホイール。「ヴェローチェ」には大型のアルミ製シフトパドルが備わる。
ホーンボタンの左下にスタート/ストップボタンを備えたステアリングホイール。「ヴェローチェ」には大型のアルミ製シフトパドルが備わる。拡大
「Android」をベースとした最新のオペレーティングシステムを採用。無線通信によるシステムのアップデート機能(OTA)も備えている。
「Android」をベースとした最新のオペレーティングシステムを採用。無線通信によるシステムのアップデート機能(OTA)も備えている。拡大
ドライブモード切り替え機能「アルファD.N.A.」のダイヤルはステアリングホイール右下にレイアウトされる。
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アルファ・ロメオ・トナーレ ヴェローチェ
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テスト車のデータ

アルファ・ロメオ・トナーレ ヴェローチェ

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4528×1841×1601mm
ホイールベース:2636mm
車重:1525kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
エンジン最高出力: 160PS(118kW)/5750rpm
エンジン最大トルク:240N・m(24.5kgf・m)/1500rpm
モーター最高出力:20PS(15kW)
モーター最大トルク:55N・m(5.6kgf・m)
タイヤ:(前)235/40R20/(後)235/40R20(ピレリPゼロ)
燃費:6.3リッター/100km(約15.9km/リッター、WLTPモード)
価格:--万円/テスト車=--円
オプション装備:--

テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

アルファ・ロメオ・トナーレTi
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アルファ・ロメオ・トナーレTi

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4528×1841×1601mm
ホイールベース:2636mm
車重:1525kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
エンジン最高出力: 160PS(118kW)/5750rpm
エンジン最大トルク:240N・m(24.5kgf・m)/1500rpm
モーター最高出力:20PS(15kW)
モーター最大トルク:55N・m(5.6kgf・m)
タイヤ:(前)235/40R20/(後)235/40R20(ピレリPゼロ)
燃費:6.3リッター/100km(約15.9km/リッター、WLTPモード)
価格:--万円/テスト車=--円
オプション装備:--

テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

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