第758回:【Movie】イタリアでの販売がスタート 「アルファ・ロメオ・トナーレ」の内覧会に密着取材
2022.05.26 マッキナ あらモーダ!クールな新車×ほのぼのムードの妙
アルファ・ロメオのCセグメントSUV「トナーレ」が2022年5月、イタリア本国で発売された。それにともない、5月16日の月曜日、トスカーナ州の自動車販売店グループであるスコッティは、シエナ市のショールームで夕方から約70人の得意客を招待して内覧会を催した。
筆者がイタリアにやってきた1990年代末、こうした地元販売店による「アペリティーヴォ」と称する内覧会は、まだ頻繁に行われていた。いっぽう近年は、経費節減などで機会が明らかに減っていた。それだけに、今回は販売店がトナーレにかける意気込みが伝わってくる。
当日の展示車は1台。マイルドハイブリッドの1.5リッターガソリンターボモデル2種のうち、最高出力160PSの高性能版だった。仕様は5タイプのなかで最高級バージョンである「ヴェローチェ」である。関係者によれば、翌日は州内にある別の販売店グループに引き渡され、プラトとピサの街で同様に展示されるという。巡回展だ。試乗車のディストリビューションは後日である。
アルファ・ロメオにとって待望のCセグメントSUVということで、アルファ・ロメオおよびジープ販売主任のアレッシオ・カパンノーリ氏をはじめとしたスタッフの期待は大きい。動画は、準備段階である午前中からの密着リポートである。
イタリアでの価格は、ベースモデルである130PS版の「スーパー」が3万5500ユーロ(約477万円。付加価値税22%込み)から。ちなみにアウトストラーダ1号線“太陽の道”では、南部ポミリアーノ・ダルコ工場で完成したトナーレを運ぶ車両積載車を見かけるようになった。
この販売店では、ローンチ仕様である「エディツィオーネ スペチアーレ」なら6月に納車可能、それ以外の仕様は例のマイクロチップ不足の影響から、10月以降になる見込みだ。
18時。招待客たちが次々と訪れ始めた。営業所長のパオロさん自らがたいまつやレッドカーペット脇のキャンドルに点火する。
親の代からのアルフィスタ家族に続き、ウェブカタログを見た瞬間にひと目ぼれし、人生初のアルファ・ロメオとしてトナーレを予約してしまったグラフィックデザイナーがエピソードを披露してくれた。
さらにアウトデルタ時代、「GTV」でスパ・フランコルシャン24時間レースで総合4位に入賞するなど欧州各地で活躍したドライバー、アメリゴ・ビリアッツィさんも来場。ツナギ姿で往年のファンたちとの再会を楽しんでいた。
クールな新型車のお披露目なのに、昔ながらの、どこかほのぼのムードが漂う、イタリアの普通の街の内覧会に皆さんをお招きしよう。
【トナーレ内覧会 Part1】
【トナーレ内覧会 Part2】
(文=大矢アキオ<Akio Lorenzo OYA>/写真=Akio Lorenzo OYA/動画=大矢麻里<Mari OYA>、Akio Lorenzo OYA/編集=藤沢 勝)
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |

大矢 アキオ
Akio Lorenzo OYA 在イタリアジャーナリスト/コラムニスト。日本の音大でバイオリンを専攻、大学院で芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとしてシエナに在住。NHKのイタリア語およびフランス語テキストや、デザイン誌等で執筆活動を展開。NHK『ラジオ深夜便』では、24年間にわたってリポーターを務めている。『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり』(コスミック出版)など著書・訳書多数。近著は『シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー ベルトーニのデザイン活動の軌跡』(三樹書房)。イタリア自動車歴史協会会員。
-
第925回:やめよう! 「免許持ってないのかよ」ハラスメント 2025.8.28 イタリアでも進んでいるという、若者のクルマ&運転免許離れ。免許を持っていない彼らに対し、私たちはどう接するべきなのか? かの地に住むコラムニストの大矢アキオ氏が、「免許持ってないのかよ」とあざ笑う大人の悪習に物申す。
-
第924回:農園の初代「パンダ」に感じた、フィアットの進むべき道 2025.8.21 イタリア在住の大矢アキオが、シエナのワイナリーで元気に働く初代「フィアット・パンダ4×4」を発見。シンプルな構造とメンテナンスのしやすさから、今もかくしゃくと動き続けるその姿に、“自動車のあるべき姿”を思った。
-
第923回:エルコレ・スパーダ逝去 伝説のデザイナーの足跡を回顧する 2025.8.14 ザガートやI.DE.Aなどを渡り歩き、あまたの名車を輩出したデザイナーのエルコレ・スパーダ氏が逝去した。氏の作品を振り返るとともに、天才がセンスのおもむくままに筆を走らせられ、イタリアの量産車デザインが最後の輝きを放っていた時代に思いをはせた。
-
第922回:増殖したブランド・消えたブランド 2025年「太陽の道」の風景 2025.8.7 勢いの衰えぬ“パンディーナ”に、頭打ちの電気自動車。鮮明となりつつある、中国勢の勝ち組と負け組……。イタリア在住の大矢アキオが、アウトストラーダを往来するクルマを観察。そこから見えてきた、かの地の自動車事情をリポートする。
-
第921回:パワーユニット変更に翻弄されたクルマたち ――新型「フィアット500ハイブリッド」登場を機に 2025.7.31 電気自動車にエンジンを搭載!? 戦略の転換が生んだ新型「フィアット500ハイブリッド」は成功を得られるのか? イタリア在住の大矢アキオが、時代の都合で心臓部を置き換えた歴代車種の例を振り返り、“エンジン+MT”という逆張りな一台の未来を考察した。
-
NEW
谷口信輝の新車試乗――BMW X3 M50 xDrive編
2025.9.5webCG Movies世界的な人気車種となっている、BMWのSUV「X3」。その最新型を、レーシングドライバー谷口信輝はどう評価するのか? ワインディングロードを走らせた印象を語ってもらった。 -
NEW
アマゾンが自動車の開発をサポート? 深まるクルマとAIの関係性
2025.9.5デイリーコラムあのアマゾンがAI技術で自動車の開発やサービス提供をサポート? 急速なAIの進化は自動車開発の現場にどのような変化をもたらし、私たちの移動体験をどう変えていくのか? 日本の自動車メーカーの活用例も交えながら、クルマとAIの未来を考察する。 -
NEW
新型「ホンダ・プレリュード」発表イベントの会場から
2025.9.4画像・写真本田技研工業は2025年9月4日、新型「プレリュード」を同年9月5日に発売すると発表した。今回のモデルは6代目にあたり、実に24年ぶりの復活となる。東京・渋谷で行われた発表イベントの様子と車両を写真で紹介する。 -
新型「ホンダ・プレリュード」の登場で思い出す歴代モデルが駆け抜けた姿と時代
2025.9.4デイリーコラム24年ぶりにホンダの2ドアクーペ「プレリュード」が復活。ベテランカーマニアには懐かしく、Z世代には新鮮なその名前は、元祖デートカーの代名詞でもあった。昭和と平成の自動車史に大いなる足跡を残したプレリュードの歴史を振り返る。 -
ホンダ・プレリュード プロトタイプ(FF)【試乗記】
2025.9.4試乗記24年の時を経てついに登場した新型「ホンダ・プレリュード」。「シビック タイプR」のシャシーをショートホイールベース化し、そこに自慢の2リッターハイブリッドシステム「e:HEV」を組み合わせた2ドアクーペの走りを、クローズドコースから報告する。 -
第926回:フィアット初の電動三輪多目的車 その客を大切にせよ
2025.9.4マッキナ あらモーダ!ステランティスが新しい電動三輪車「フィアット・トリス」を発表。イタリアでデザインされ、モロッコで生産される新しいモビリティーが狙う、マーケットと顧客とは? イタリア在住の大矢アキオが、地中海の向こう側にある成長市場の重要性を語る。