ボルボC40リチャージ ツイン(後編)

2022.08.11 あの多田哲哉の自動車放談 ボルボを大いにリスペクトしている、エンジニアの多田哲哉さん。それでも初の量産型電気自動車(BEV)「C40リチャージ ツイン」には、首をかしげたくなる点がいくつかあるようで……。一体、どんなところが気になるのだろうか?

硬けりゃいいとは限らない

C40リチャージの速さについては文句なしと評した多田さんだが、操縦性や乗り心地については課題もあるという。

「正直言って、乗り味における質感というべき部分では、あまり感心できません。おそらくボディー剛性が高すぎるんだと思います。現在のBEVはほぼ例外なく、電池を床下に置いて、衝突しても危なくないように保護しています。そうするとフロアは必然的にガチガチに硬くなります。しかも重い。このクルマも2t以上(=2160kg)ありますから……」

「ボディー剛性は基本的に高いほうがいいとされていますが、無限に高い=硬いほどいいのかといえば、そうとも限りません。ボディー剛性の指標には“曲げ”や“ねじり”があります。特にねじり剛性については、実際には、ある程度しなやかにねじれなければならない部分もあります。ただ、きちんと必要な剛性を確保しながら、一方でしなやかに走らせるのは実は難しいんです」

「BEVは適当につくっても、取りあえずボディーが硬くなるので、そこそこは走るようになります(笑)。でも、そういう繊細な部分を突き詰めた形跡が、このクルマでは感じられません。前回の『メルセデスAMG GT53 4MATIC+』と比較しても、そうした部分の仕上がりには雲泥の差があります」

もちろんC40リチャージとAMG GT53には車格も価格もかなり差があるが、多田さんが指摘しているのはそういう次元の話ではない。いずれにしてもBEVは普及のスタート地点に立ったばかり。長い歴史のなかでも熟成され尽くした内燃機関のクルマの域に達するには、時間がかかるということだろう。

「どうしてもセンター付近だけがガチガチになってしまうBEV用プラットフォームで質感の高い走りを実現するにはどうすればいいのか……。これはボルボに限らず、今後BEVをつくる自動車メーカーが必ず直面する課題だと思います。それはサスペンションだけで解決する問題ではなく、クルマ全体の剛性バランスもあるし、タイヤも関係あるでしょう。おそらく操縦安定性担当のプロはすでに気づいているのでしょうが、プラットフォームやボディー設計の直接の担当者は、その前段階の衝突安全性を確保するのが精いっぱいで、まだ乗り味どころではないのでしょう」

 
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