第723回:世界のカーマニアが注目 モントレーカーウイークの3大イベントを現地からリポート
2022.09.16 エディターから一言![]() |
米カリフォルニア州の高級リゾートとして知られるモントレーでは、8月中旬に大小いくつもの自動車関連イベントが開催され、全世界からカーマニアが集結する。2022年の開催イベントで、特に注目された3大イベントの模様を報告。
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コークスクリューを往年の名車が駆け上がる
サンフランシスコからなら、クルマで約3時間も走れば到着することができるモントレー。その街の名前は、カーマニアにとって特別な響きを持っている。なぜなら8月中旬の約1週間、このモントレーを中心に周囲の街では世界にその名を広く知られるカーイベントが毎日のように開催されるからだ。そのために現在では「モントレーカーウイーク」という言葉さえ一般的なものになりつつある。
この間に開催されるイベントは、オーナーズクラブイベントを含めれば軽く20を超えるに違いない。夜にはきらびやかなモデルが次々と落札されていくオークションの開催もある。そう、モントレーカーウイークは、早朝から深夜まで眠ることがない1週間といってもいいのだ。
モントレーカーウイークで最初に始まるメジャーイベントは、ウェザーテックレースウェイ・ラグナセカで開催される「ロレックス・モントレー・モータースポーツ・リユニオン」だ。ラグナセカは、18mの高低差を持つダウンヒルS字コーナーの“コークスクリュー”をはじめ、全長3602mのコース中に18のコーナーを持つテクニカルサーキット。1987年に現在のコースレイアウトとなった。ここでは今年、14グループに分けられたモデルが速さを競い合った。
そのなかでも今年のテーマとして選ばれたのは、来年が初回のラッジウイッドワース杯24時間耐久グランプリの開催から数えて記念すべき100年目となるルマン24時間レース。年代別に1923年から1955年までの参加モデルによる「ルマンセレブレーション」、1956年から1971年までの「ルマン」、1971年から1982年までの同じく「ルマン」、1981年から2005年までの「ルマンプロトタイプ」と4つのクラスが設けられ、それぞれで現役当時そのままの、熱いレースが展開された。
モータースポーツ・リユニオンは、順位そのものよりもレースの参加車両が本気の走りを見せてくれるからこそ楽しく、それが観衆を引きつけて離さないのだ。パドックには、ルマン24時間レースに参戦したモデルが展示される大型テントも立ち、そこでは近距離でじっくりと各車のディテールを楽しむこともできた。
今年のモータースポーツ・リユニオンでは、さらに面白いプログラムも用意されていた。スケジュールの関係で、残念ながらそれを実際に見ることはできなかったのだが、例のコークスクリューを含むコースの一部を使用したヒルクライムタイムアタックである。
通常のレースでは反時計回りでコークスクリューを下るのがラグナセカの見どころだが、初開催されたヒルクライムではコークスクリューを駆け上がる時計回りのコースでタイムを競う。参考までにこのヒルクライムを制したのは、1971年式の「ポルシェ908/3」。史上初の試みだったこのイベントは、その人気から来年も開催される予定だという。
今年のロレックス・モントレー・モータースポーツ・リユニオンへのエントリー台数はトータルで約400台。地元アメリカのゲストには、TRANS-AMやSCCAプロダクションカーといったカテゴリーも、やはり相当な人気があったようだ。
博物館級のモデルが並ぶ
8月19日の金曜日に足を運んだのは、モントレーの隣町、カーメルにあるペニンシュラグループのクエイルロッジである。そのゴルフコースを舞台に開催されるコンクールイベント、「ザ・クエイル・ア・モータースポーツ・ギャザリング」を訪ねるのが目的だ。
簡単に訪ねると書いてしまったが、このモータースポーツ・ギャザリングは、おそらくモントレーカーウイークのなかで入場するのが最も難しいイベントである。理由は入場者数を厳しく制限しているから。主催者に、落ち着いたゆとりある雰囲気のなかで、じっくりとクラッシックカーや最新モデルの姿を鑑賞してもらいたいという意図があるためだ。
そのぶん、入場料は高めだ。最低でも600ドル以上はする入場チケットは、しかし販売初日に完売するのが常で、それでもクエイルロッジを訪ねたければ、長いウエイティングリストに名を連ねるか、1万ドル以上するヘリコプターでの遊覧飛行付きチケットなど、さらに高額なチケットを狙うほかはないのが現実だ。
今年のモータースポーツ・ギャザリングの特集は、「BMW M」の50周年、「Miniクーパー」のすべて、そしてジャガーのルマン24時間レースでの初勝利から70年というものだった。
エントリーしたモデルはそれぞれに興味深く、とりわけジャガーのクラスでは「Cタイプ」や「Dタイプ」をはじめ、「XK120」「XK120コンペティション」「XK150 FHC」など、普段目にする機会などほとんどない博物館級のモデルが一堂に会している姿が圧巻だった。
それはBMW MやMiniに関しても同じこと。モータースポーツ・ギャザリングには第2次世界大戦前のスポーツカー、年代によって3つのクラスに分けられた同戦後のスポーツカー、そしてやはり戦後のレーシングカー、スーパーカー、グレートフェラーリなどのクラスが用意されるが、数えて19回目の開催となる今年のモータースポーツ・ギャザリングでベストオブショーの座に輝いたのは、1956年式のジャガーDタイプだった。
モータースポーツ・ギャザリングの会場は、主催者の狙いどおりに、ほかのイベントよりも静かで落ち着きのあるものだったが、時折ある一角に人だかりが生じる。それはスーパーカーやプレミアムカーブランドが、ここ数年このモータースポーツ・ギャザリングをニューモデル発表の場として活用しているためだ。そのなかには、これから市場へと新作を投入する新興勢力の姿も数多く見られた。
ここでニューモデルのワールドプレミアを行い、続く日曜日の「ペブルビーチ・コンクール・デレガンス」のコンセプトカーローン(コンセプトカーを展示することができるクラブハウス前のスペース。そもそもはペブルビーチ・ゴルフリンクスの練習グリーンである)で、さらに多くのゲストにその存在を知ってもらおうというのが、ここ最近目にするプロモーション戦略である。
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世界で最も格式の高いコンクールイベント
モントレーカーウイークの最後を飾るイベントは、世界屈指のコンクールイベントとして名高い、ペブルビーチ・コンクール・デレガンスだ。その第1回の開催は1950年のことというから、このコンクールがいかに長い伝統を誇るものであるのかは明らかなところだ。
会場となるのは、こちらもゴルフファンにとっては、一度はプレイしてみたいと夢見る名門コース、ペブルビーチ・ゴルフリンクスの18番ホール。ちなみにこのゴルフコースが営業を行わないのは、一年でコンクールデレガンスが行われるこの日のみ。コンクールの2日前に現地を訪れた時も、さまざまな準備は行われていたが、コース上ではゴルファーがいつものようにプレイを楽しんでいた。
なぜコンクールの行われる2日前、しかも早朝に会場を訪れたのか。それはコンクールデレガンスと同時に行われるペブルビーチ・ツアー・デレガンスを見るためだった。ペブルビーチ・ゴルフリンクスをスタートし、モントレー半島の風光明媚(めいび)なドライブコース、17マイルドライブを一周し、さらにフリーウェイの1号線を走り、再びスタート地点へと戻るこのツーリングは、実はコンクールにとっても重要なイベントで、それに参加したモデルには加点が与えられる仕組み。きちんと走行できることの証明なのだ。
メインイベントでもあるコンクールの朝は早い。夜明けとともにエントリーした各車は続々と18番ホールに姿を現し、いつの間にかクラスごとに整列する。今年のコンクールデレガンスには28のクラスがあり、V8とV12に分けられたリンカーン、同じく前期と後期に分けられたルマン100周年などがフィーチャーされていた。
自動車の専門家をはじめ、さまざまなジャンルのジャッジによって、それぞれのモデルのコンディションや優雅さ、あるいは技術的、歴史的な価値を競った後に決定される各賞は、オーナーにとっても、そしてもちろんそのクルマそのものにとっても大きな名誉となる。ちなみに今回ベストオブショーに選ばれたのは、1932年式の「デューセンバーグJフィゴーニスポーツ トルペード」。アメリカ車がペブルビーチ・コンクール・デレガンスでベストオブショーを受賞したのは2013年以来のことだが、これまでにデューセンバーグは6回、今年の受賞によって7回目の栄誉を手にしたことになる。
ペブルビーチの会場では、ほかにもさまざまなイベントが用意されていた。例えば、これから登場するモデルや最新のモデルを練習グリーン上に集めたコンセプトローンのコーナーでは、電動車時代の到来を知る何台ものコンセプトカーを目にすることができたし、フェラーリオーナーズクラブ・アメリカは、独自にフェラーリの75周年を祝するイベントを開催。ここでも多くのレアなモデルを目にすることができた。
注目のカーイベントがいくつも開催されるモントレーカーウイーク。カーマニアならば一生に一度は足を運び、その特別な空気を肌で感じてほしい。
(文=山崎元裕/写真=佐藤靖彦、ペブルビーチ・コンクール・デレガンス/編集=櫻井健一)
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山崎 元裕
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