三菱eKクロスEV P(FWD)
クラスを超えた上質さ 2022.09.16 試乗記 三菱がリリースした軽規格の新型電気自動車(EV)「eKクロスEV」に試乗。日産との共同開発で生まれた軽EVの走りや日常的な使い勝手を確かめるため、信号の多い街なかや混雑する首都高に乗り入れてみた。果たしてその仕上がりやいかに。油断は大敵!?
取材当日、約束の場所に到着すると、編集部のSさんが困り果てていた。「バッテリーが残り3分の1で、あと40kmくらいしか走れません」と。
聞けば前日に試乗車を都内某所で引き取り、都内にある編集部まで移動。そのクルマをSさんが都内の自宅まで乗って帰り、当日の早朝、やはり都内の取材場所に乗りつけたのだという。
そう言われて車載コンピューターの数字を見ると、ここまでの走行距離は約60km。カタログでは180kmの航続距離をうたうが、油断すると100kmも走らないうちに、電欠を起こしてしまいそうだ。
通勤や通学で通い慣れた道など、走行距離が限られる使い方なら電欠の心配はあまりないだろう。しかし、いつもと違う道を走ったり、ちょっと寄り道したり、ふだんは一般道だけだが、たまたま高速道路を走らなければならない……などという場合には、早めに充電しておかないと、電欠とはいかないまでも、予定外の充電のために、思わぬタイムロスが発生するかもしれない。
今回は、このあとSさんが近くの充電スタンドを探し回ることになり、取材は1時間弱遅れの進行に。電欠は免れたが、久しぶりにEVならではの不安を味わうことになった。
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個性的なルックスと機能的な室内
充電から戻ったところで、eKクロスEVをあらためて眺めると、ひと目で三菱車とわかる個性的なフロントマスクに目を奪われる。このデザインは好き嫌いがはっきりと分かれるようで、フロントマスクだけで姉妹車である「日産サクラ」を選んだという話も耳にする。個人的には苦手なタイプだが(笑)、選択肢があるのは喜ばしいことだ。
ぺしゃっと閉まるドアが少し頼りないが、インテリアはガソリン車の「eKクロス」同様、カジュアルでシンプル。それでいてソフトパッドを配したダッシュボードなどにより、ちょっと上質さが加わる心地よい仕上がりだ。
全高1640mmと、人気のトールワゴンスタイルを採用するだけに、室内はあり余るほど広い。特に後席のスペースは、余裕たっぷりだ。ヘッドルームは言うまでもなく、ニールームに関しても、後席のスライドを一番前にしても足が組める広さが確保されている。床下にバッテリーを搭載するおかげで、ラゲッジスペースの収容力もなんら不満のないレベルだ。
インテリアのチェックがひととおり終わったところで、優しく体をホールドするシートに身を委ね、早速eKクロスEVを発進させる。
スムーズな加速はEVならでは
EVの魅力は、なんといっても発進からスムーズで余裕ある加速。それはこのeKクロスEVでも例外ではない。eKクロスEVには、通常の「NORMAL」に加えて、電費重視の「ECO」と、力強い走りを実現する「SPORT」という3つのドライブモードが用意されている。このうち、最も穏やかなECOを選んでも余裕があり、これがNORMALやSPORTになると、力強さを感じるほどだ。
エンジン車とは異なり、アクセルペダルの動きに即座に反応することや、大きくアクセルペダルを踏み込んだときに車内にノイズがあふれないのも、このクルマの良いところ。60km/hを超えたあたりから、少し加速が鈍ってくるが、高速道路の合流などでストレスを覚えることはなかった。
回生ブレーキを使った減速も慣れると便利だ。「イノベーティブペダルオペレーションモード」、日産流に言えば「eペダルステップ」を利用することで、アクセルペダルの踏み加減で加速も減速もほぼ思いのまま。車両を停止させることはもちろん、急ブレーキの場面ではブレーキペダルを操作する必要はあるが、ほとんどの場面においてアクセルペダルのコントロールだけで運転できるのはとても快適である。
乗り心地には気になるところも
パワートレインの印象がいいとクルマは上質に思えると日ごろから感じているが、そういう意味ではスムーズで力強いモーターが備わるeKクロスEVは、軽自動車の枠を超えた上質さを手に入れたと言っても過言ではない。
eKクロスEVの走りの部分でも、EV化にともなうメリットが感じられる。全高が高いトールワゴンスタイルの軽自動車では、乗り心地が落ち着かないクルマもあるが、床下に重量物のバッテリーを積むeKクロスEVでは、低重心化により十分落ち着いた動きを見せ、コーナリング時のロールも穏やかだ。
ただ、路面によっては荒れを拾いがちで、段差を越えたときのショックの遮断もいまひとつ。サスペンションがもう少ししなやかに動いてくれると、さらに上質な印象になるだけに、今後の改良に期待したい。
それでも軽自動車のなかでは間違いなくトップクラスの実力を誇るeKクロスEV。日常の短距離移動の足としては文句ない性能を持ち、補助金を受けたときの実質購入額がお手ごろとあって、市場の反応も予想以上だ。
しかし、サクラを含めて、あまりの人気に補助金が早期に終了するという話もある。そうなると、割高な軽EVの人気が持続するかは難しいところで、補助金の終了がeKクロスEVの人気に水を差さないことを願うばかりだ。
(文=生方 聡/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
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テスト車のデータ
三菱eKクロスEV P
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3395×1475×1670mm
ホイールベース:2495mm
車重:1080kg
駆動方式:FWD
モーター:交流同期電動機
最高出力:64PS(47kW)/2302-1万0455rpm
最大トルク:195N・m(19.9kgf・m)/0-2302rpm
タイヤ:(前)165/55R15 75V/(後)165/55R15 75V(ブリヂストン・エコピアEP150)
一充電走行距離:180km(WLTCモード)
交流電力量消費率:124Wh/km(WLTCモード)
価格:293万2600円/テスト車=336万6572円
オプション装備:ボディーカラー<ミストブルーパール/カッパーメタリック>(8万2500円)/先進安全快適パッケージ<デジタルルームミラー+マルチアラウンドモニター[移動物検知機能付き]+マイパイロットパーキング+マイパイロット+ステアリングスイッチ>(16万5000円)/プレミアムインテリアパッケージ<内装色[ライトグレー]+シート生地[合成皮革+ファブリック]>(5万5000円)/ルーフレール(2万7500円) ※以下、販売店オプション ドライブレコーダー<スタンドアローン>(4万7322円)/リアドライブレコーダー(3万0998円)/フロアマット(2万2352円)/三角表示板(3300円)
テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:1347km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(5)/高速道路(5)/山岳路(0)
テスト距離:121.1km
参考電力消費率:5.2km/kWh(車載電費計計測値)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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