マクラーレン・アルトゥーラ(MR/8AT)【海外試乗記】
変わらぬ気持ちよさ 2022.09.21 アウトビルトジャパン マクラーレンのプラグインハイブリッドモデル「アルトゥーラ」に試乗。ハイパフォーマンスとすぐれた環境性能の両立が図られた次世代型スーパースポーツの走りを、アウトビルトがリポートする。※この記事は「AUTO BILD JAPAN Web」より転載したものです。
プラグインハイブリッドでも俊敏に走れるか?
アルトゥーラは、マクラーレンにとっての“未来への道”である。マクラーレンは、ハイブリッド技術で未来へと走りだす。マクラーレンにとって電動化は省燃費技術であると同時に、より高いパフォーマンスを発揮するチャンスでもあるのだ。
メーカーが新しいプラグインスポーツカーを発表すると、最初は懐疑的になるものだ。プラグインハイブリッドモデルであっても思うように俊敏に走れるのか? 重くなりすぎてはいないか? と。
マラガ近郊のアスカリサーキットで、マクラーレンが新型プラグインハイブリッドスーパースポーツカー、アルトゥーラの初めての試乗会を催した際には、われわれはかなり好奇心をそそられた。スポーツの観点から賢明なアプローチをするメーカーを信頼できるとするならば、英ウォーキングを本拠地とするマクラーレンの開発者たちは間違いなく信頼に値する。そして乾燥重量1498kgのアルトゥーラは、スリムなボディーも魅力である。
名前について少々余談を。「Artura(アルトゥーラ)」とは「Art」と「Futura」のミックス、つまりアートとフューチャーの融合を目指して名づけられたものだ。
拡大 |
新しいモノコックは他のモデルのベースにもなる
アルトゥーラのコンセプトは? MCLA(マクラーレン・カーボンファイバー・ライトウェイト・アーキテクチャー)と呼ばれる全く新しいカーボンファイバー製モノコックで、将来的には他のモデルのベースにもなる予定だ。ハイブリッドではないモデルとかなり似ているが、1世代進んでいる。フロントとリアには、モノコックにボルトで接合されたアルミ製フレームアーキテクチャーがあり、その上にサスペンションが搭載されている。フロントはダブルウイッシュボーン、リアはマルチリンクアクスルである。
ハイブリッドドライブでかさむ重量に対しては、まず何らかの重量を取り除かなければならなかった。シャシーの重量は数kg減るものの、それでは電動コンポーネントの+130kgを補うにはもちろん足りていない。
拡大 |
最高出力95PSを発生する電動モーター
3リッターV6エンジンは、バンク角120度(V8は90度)、ツインターボを搭載した完全新開発のエンジンだ。これにより、エンジンは平たんになり、2台のスーパーチャージャーは、エンジン下面の外側ではなく、シリンダーバンク間のブロック上部の“ホットV”内に配置されるようになった。
これはデザイン的なメリットもあるが、エアの経路が短くなるため、よりすぐれたレスポンスが得られる。当然、このようなV6エンジンの全長はV8よりも4分の1ほど短く、そのぶん、内燃機関とトランスミッションの間に挟まれた最高出力95PSの電動モーターを搭載するスペースが生まれた。後者には物理的なリバースギアはなく、電動モーターを逆回転することで後退させるが、前進用のギアは8つ備えている。V6エンジン自体の重量はわずか160kgで、旧来のV8よりも50kgも軽い。
パワー面では、3リッターV6エンジン本体は585PSを発生し、システム最高出力は680PSとなる。最近630PSの3リッターエンジンを開発したマセラティや、同じく663PSのフェラーリのことを考慮すれば、まだまだ上のモデルが出てくる可能性もあるはずだ。
拡大 |
EV航続距離は31km
しかし、現在でも3.0秒で停止状態から100km/hまで加速し、最高速度は330km/hで走るという。0-200km/h、0-300km/hにはそれぞれ8.3秒、21.5秒で到達する。
マクラーレンは、88kWのバッテリーパックで31kmのEV航続距離が可能だとする。容量7.4kWhのバッテリーは、朝の楽しいブーストスタートとご近所への配慮のためのウィスパースタートのどちらにも使用可能だ。そして、130km/hで静かに滑走することができる。でも、そのためにここにあるわけではない。横方向のダイナミクスを体感したい。そのために、マクラーレンはピレリと共同で、走行データを内蔵チップで車載電子機器に直接送信する、特別な「Pゼロ」タイヤを開発したのだった。
その結果、アルトゥーラは一般用タイヤ、冬用タイヤ、スティッキーなコルサコンパウンドのいずれを装着しているかを即座に認識することができるのだ。
もうひとつ利点がある。測定はバルブではなく、トレッドで直接行われる。つまり、ブレーキの廃熱やリムによる誤差を最小限に抑えることができるのだ。コルサを装着して、上り下りのある高速コースを走ってみると、まるで「コルサがステアリングを握っている」かのようだった。
俊敏なフロントエンド、レスポンスの良いダイレクトな電動油圧式ステアリング、それがマクラーレンの得意とするところであり、ハイブリッドシステムであってもそれを変えることはない。
拡大 |
極めて調和のとれた、本能的な……
加速が速すぎて前車軸の重量が軽くなると、コーナーの立ち上がりでアンダーステアになる。しかし、ドライブのコンビネーションが全開になると、リアエンドは抑制された回転を始め、アルトゥーラはみだらに背中を突き出す。
電子デバイスの運転補助装置を完全にオフにすることはできないが、きめ細かくコントロールでき、簡単に調整できる。すべてが極めて調和的かつ本能的に機能している。ブレーキも同様で、耐フェード性の高いカーボンセラミック製にしてプレッシャーポイントを細かく調整でき、何度も高速ラップをしてもトラブルの兆候はない。そして、ステアリングの感触は、これ以上ないほど良いものだ。
室内はほぼ完璧なエルゴノミクスであり、特にシフトパドルの感触は素晴らしい。操作のクセも最適化されているそうだ。バケットシートは遠心力に対して頑強に抵抗するが、陸路の旅で腰が痛くなることはない。
アルトゥーラは、従来のマクラーレン車のように斜め上方に開くドアで車内にアクセスするが、狭い駐車スペースでの実用性を考慮し、ドアの開閉位置は若干車体に近くなっている。
注文受け付けは既に始まっており、最初の顧客には2022年7月に納車される予定だ。ドイツでの販売価格は23万0500ユーロ(約3230万円)からとなっていて、その点だけは購入を考慮する際にちょっと気おくれするかもしれない。
結論
マクラーレンがドライバーの感覚でプラグインテーマを実践して良かった。電力を追加して性能を向上させたが、その他は気持ちよく昔のままだ。相変わらず個性的で俊敏なレーサーだといえる。
(Text=Alexander Bernt/Photos=McLaren)
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4539×2080×1193mm
乾燥重量:1498kg
駆動方式:MR
エンジン:3リッターV6ツインターボ
システム最高出力:680PS(500kW)/7500rpm
システム最大トルク720N・m/2250rpm
トランク容量:150リッター
0-100km/h加速:3.0秒
最高速度:330km/h
平均燃費:21.7km/リッター
価格:23万0500ユーロ(約3230万円)から
記事提供:AUTO BILD JAPAN Web(アウトビルトジャパン)
拡大 |

AUTO BILD 編集部
世界最大級のクルマ情報サイトAUTO BILDの日本版。いち早い新車情報。高品質なオリジナル動画ビデオ満載。チューニングカー、ネオクラシックなど世界のクルマ情報は「アウトビルトジャパン」でゲット!
-
【ニュース】高性能を誇るBMWのラグジュアリーエステート「M5ツーリング」が復活! その魅力とは? 2024.9.6 高性能サルーン新型「BMW M5」に続き、そのワゴンバージョンたる新型「M5ツーリング」が登場。ユーティリティーからスリルまで幅広いニーズをパーフェクトに満たす“スーパーワゴン”とは、どんなクルマなのか?
-
MINIクーパーSE(FWD)【海外試乗記】 2024.8.21 電気自動車でも内燃機関車でも、常に「クーパー」と呼ばれるようになった新型MINIのハッチバック。価格にデザイン、パワーユニット、装備、そしてドライビングテストリポートと、新しくなったMINIクーパーの全情報をお届けする!
-
スズキ・スイフト(FF/5MT)【海外試乗記】 2024.8.20 世界で900万台以上が販売されてきた大人気モデル「スズキ・スイフト」。7代目となる新型は、海外でどのように評価されているのか? これまでの成功をさらに発展させることを目指し、スズキが投入した小さな巨人に、『AUTO BILD』のスタッフが試乗した。
-
スマート#1ピュア(RWD)/#1ブラバス(4WD)【海外試乗記】 2024.8.20 続々とラインナップを拡大している、スマートブランドのフル電動SUV「スマート#1」とはどんなクルマなのか? その価格とデザインからパワーユニット、イクイップメント、試乗した印象まで、すべての情報をお届けしよう。
-
【ニュース】電動ルノー・トゥインゴの最新情報 2024.8.15 ルノーの電気自動車(BEV)を手がける新会社アンペアが、2025年にコンパクトBEVとして「トゥインゴ」を復活させる。初代トゥインゴを想起させるデザインや価格、そしてパワーユニットまで、現時点でのすべての情報をお届けする。
-
NEW
ボルボのフラッグシップ電気自動車「EX90」が上陸 軌道修正された電動化戦略の今を探る
2026.8.13デイリーコラムボルボのフラッグシップ電気自動車(BEV)「EX90」と「ES90」が日本に上陸。2030年までに完全BEVブランドになるという目標は軌道修正したが、2040年までに温室効果ガス排出ゼロ企業を目指す方針に変わりはない。ボルボの電動化戦略の今を探る。 -
NEW
第974回:「民生用」と「軍用」をまたぐクルマたち――ルノーの最新戦術車両に思う
2026.8.13マッキナ あらモーダ!ルノーのクロスオーバーSUV「ラファール」がまさかの軍用車に? ルノーと軍需との第1次大戦にまでさかのぼるつながりと、彼らが今ふたたび防衛産業と距離を詰め始めた理由、世界的に見られる軍用と民生用の垣根を超えたクルマの歴史を、大矢アキオが解説する。 -
「スバルBRZ」が採用した「新しいシフトレバー構造」とは何か?
2026.8.12デイリーコラム2026年7月31日に発表された「スバルBRZ」の最新モデルでは6段MTへの「新しいシフトレバー構造」の採用がうたわれている。すでに熟成し切った技術のように思われるマニュアルトランスミッションだが、2026年にもなってどんな構造を取り入れたのだろうか。スバルに聞いてみた。 -
第124回:「日産エルグランド」と「メルセデス・ベンツVLE」(前編) ―絶対王者に戦いを挑む、次世代高級ミニバンのカーデザイン―
2026.8.12カーデザイン曼荼羅日産が新型「エルグランド」を発売し、海の向こうではメルセデス・ベンツが「VLE」を発表するなど、いまにわかに盛り上がりを見せている高級ミニバンのかいわい。新興勢力は王者「トヨタ・アルファード」の存在を超えられるのか? カーデザイン視点で考えた。 -
トヨタRAV4 Z(4WD/CVT)【試乗記】
2026.8.12試乗記トヨタの人気SUV「RAV4」が6代目へと進化。どれくらい人気なのかは本文をご覧いただきたいが、日本だけでなく約180もの国と地域で愛されているモデルゆえに、その仕上がりはとにかく手堅く、そして隙がない。街から高速道路、さらに山道まで走り回って、気になったのはわずか1カ所のみだった。 -
ネジやボルトの“締め付け”ひとつでクルマの乗り心地やハンドリングがよくなるって本当?
2026.8.11あの多田哲哉のクルマQ&A車体の組み上げに使われる、無数のネジやボルト。その締め方次第でよりよい走りを実現できるというのは本当なのか? トヨタでさまざまな車両を開発してきた多田哲哉さんに聞いてみた。


































