フォルクスワーゲン・トゥアレグV6(4WD/8AT)/ハイブリッド(4WD/8AT)【試乗記】
燃費以外の進化も大きい 2011.02.14 試乗記 フォルクスワーゲン・トゥアレグV6(4WD/8AT)/ハイブリッド(4WD/8AT)……694万4000円/921万1000円
新型「トゥアレグ」が日本上陸。大幅な軽量化が施され、ハイブリッドモデルも設定された2代目の実力を、オンロードで試した。
家は3軒、クルマは2代
ちまたでは「家は3軒建てるもの」とよくいわれる。3度建ててようやく満足のいく家ができる、という意味だ。クルマの場合も、ゼロからつくると、それがどんなに高い評価を得たとしても、やり残しや、やり過ぎ(!?)が見つかるわけで、「できれば2代続けて担当したいんですよ」という話を、名車と呼ばれるクルマの開発責任者に聞いたことがある。
「トゥアレグ」も、まさにそんなクルマなのだろう。ポルシェとともにプレミアムスポーツSUVの開発をゼロから始めたフォルクスワーゲンは、後発でありながら、マーケットでのポジションを確立することに成功している。それを支えたのが「スポーツカーにも匹敵するオンロード性能、本格的ラフロード性能、高級サルーンと同等の上質な乗り心地を高次元で融合させた“3 cars in 1”コンセプト」だとフォルクスワーゲンは言うが、これに加えて、フォルクスワーゲンらしい仕立ての良さや、ポルシェのスポーティなイメージも大いにプラスになったのは容易に想像できる。
そんな成功作のイメージを踏襲しながら、さらに上質なつくりと、時代にマッチした環境性能を付加することで完成形を目指したのが、この2代目トゥアレグということになるが、果たしてそのとおりの仕上がりを見せるのか? さっそくチェックするとしよう。
|
軽さがイイ!
新型トゥアレグには、3.6リッターV6を積む「トゥアレグV6」と、フォルクスワーゲン初のハイブリッド車となる「トゥアレグハイブリッド」の2モデルが用意される。まずは売れ筋のV6に試乗した。
フロントマスクこそ、最新のフォルクスワーゲン顔に一新されたが、シルエットだけでそれとわかる新型トゥアレグのエクステリア。一方、インテリアは、旧型の雰囲気を残しながらも、よりいっそう質感が高まり、フォルクスワーゲンのフラッグシップモデルにふさわしい上質さが、とても印象的だ。
|
居心地の良い運転席に浸る間もなくクルマを発進させると、すぐに旧型との違いを思い知らされた。出足からクルマの動きが軽快なのだ。走り出すと軽快感はさらに高まり、それでいて重厚かつ快適な乗り心地を示すあたりに、新型の進化を強く感じた。搭載されるV6エンジンは、最高出力280ps、最大トルク36.7kgmとスペックは旧型と同じだが、車両全体で70kgの軽量化が、軽快な動きや快適な乗り心地に効いているのは間違いない。試乗車にはオプションのエアサスペンションが装着されていたが、別の機会に試乗したノーマルサスペンションでも快適さに不満はなかった。
動力性能は、ボディが軽くなったことに加え、8速ATが組み合わされたおかげで、3.6リッターでも十分に速い。そのうえ、キャビンに侵入するノイズも低く抑えられるから、満足度は格段に高まった。アイドリングストップは再スタートのタイムラグが小さく、煩わしさとは無縁。あらゆる面で洗練さを増した2代目なのである。
|
ハイブリッドはパワフルだけど……
トゥアレグハイブリッドは新型の目玉というべきモデルだ。ノーズに収まるスーパーチャージャー付き3リッターV6は、アウディ「S4」や「S5カブリオレ」に搭載されるもので、これだけでもV8並みの性能を誇るのだから、さらにモーターでアシストされるとなると、さぞやその加速は凄いに違いない。
軽くアクセルを踏んで発進すると、トゥアレグハイブリッドはモーターの力だけでスルスルとスピードを上げていった。このスムーズさ、静かさはまさに感動モノだ。ある程度スピードに乗ると、主役はエンジンにバトンタッチ。低回転から太いトルクを発生する3.0 TSIは2340kgのヘビー級ボディをものともせず、スイスイと加速する。アクセルペダルを踏み込めば、V6をさらに上回る力強さが頼もしい。
巡航に入ってアクセルペダルに載せた右足を離すと、エンジンはギアボックスから切り離され、回転計の針はすとんとゼロに落ちて、惰力走行を始める。当然、このときのガソリン消費量はゼロで、エンジンブレーキでスピードが落ちることもない。これは燃費に効きそうだ。ふたたび加速しようと、右足に力を入れれば、すぐさまエンジンが再スタートするが、そのときのショックやタイムラグをドライバーが意識することはない。
そういう意味では非常に洗練されたシステムだと思う反面、物足りなさを覚えることも。通常の走行時にはアクセルペダルをほぼ全開にしないかぎり、モーターはエンジンをアシストすることがない。つまり、モーターの役目は発進時に燃費を稼ぐことと、走行時、または制動時にこれまで捨てられていたエネルギーを回収することなのだ。もちろん、そのおかげで13.8km/リッターの燃費(10・15モード)を実現するわけだが、もう少し積極的にモーターアシストを行ってほしいと思った。その代わりに、さらにコンパクトなエンジンを搭載するとか、いっそのこと、4気筒でトゥアレグを走らせるといったサプライズがあってもよかったのではないか? "2台目"のハイブリッドには、ぜひこのあたりを期待したい。
V6に比べて150kgも重いだけに、V6ほどの軽快感はなく、乗り心地が多少スポイルされるのも気になるところ。それでも十分な快適さを示すトゥアレグハイブリッドは、懐に余裕があり、社会への責任感の強い人に選んでほしいモデルだ。ちなみに私なら、安くてより快適なV6を選ぶだろうな。
(文=生方聡/写真=小林俊樹)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
-
スズキ・エブリイワゴンPZターボスペシャル ハイルーフ(MR/CVT)【試乗記】 2026.7.8 フロントマスクが変わったのはすぐにお気づきのことと思うが、実は最新の「スズキ・エブリイワゴン」は中身のレベルアップが著しい。内装デザインが刷新されたほか、アダプティブクルーズコントロールなどの軽バンらしからぬ装備も標準化されている。ワゴンの最上級グレードを試す。
-
ポルシェ911 GT3 S/C(RR/6MT)【海外試乗記】 2026.7.7 スポーツカーの水準器「ポルシェ911」に、新たなバリエーションの「GT3 S/C」が登場。サーキット直系の走りとオープンエアの爽快感は、私たちにどんな体験をもたらしてくれるのか? ポルシェのおひざ元である、ドイツのワインディングロードで確かめた。
-
日産リーフB5 X(FWD)【試乗記】 2026.7.6 先に登場した「B7」の容量78kWhに対して、少し控えめな容量55kWhの駆動用バッテリーを搭載する「日産リーフB5」。日常使いをシミュレートしながら、現実的な一充電走行距離や走り、使い勝手を、購入を真剣に検討するカスタマー目線でチェックした。
-
スズキ・ハスラー ハイブリッドX(FF/CVT)【試乗記】 2026.7.4 スズキの軽クロスオーバーモデル「ハスラー」のマイナーチェンジモデルが登場。愛らしいフロントマスクにお化粧直しが施されたほか、先進運転支援装備が一段と充実。さらに走行性能の強化も図るなど、そのメニューは盛りだくさんだ。「ハイブリッドX」グレードのFFモデルに試乗した。
-
スズキ・ジムニーシエラJC(4WD/4AT)【試乗記】 2026.7.3 俺の「ノマド」まだかな? とソワソワしている人が多いかもしれないが、実は既存の「ジムニー/ジムニー シエラ」もひっそりと進化を果たしている。とりわけ大きいのはアダプティブクルーズコントロール(ACC)の搭載だ。シエラの4段AT車でその仕上がりを試した。
-
NEW
ベンダ・ナポレオンボブ250(6MT)
2026.7.10JAIA輸入二輪車試乗会2026個性的なバイクがそろうJAIA輸入二輪車試乗会の会場でも、ひときわ強烈な存在感を放っていた「ベンダ・ナポレオンボブ250」。中国からやってきた250ccクラスのクルーザーには、他のこのセグメントのバイクにはない“こだわり”が存分に注ぎ込まれていた。 -
NEW
さらば青きe-BOXER! スバル・マイルドハイブリッドに贈る別れの言葉
2026.7.10デイリーコラムスバルのMHEVがついに販売終了に! 彼らが初めて手がけた電動化ユニットには、どんな特徴があり、どんな役割を果たしてきたのか? 派手な存在ではなかったけれど、13年にわたり頑張ってきたいぶし銀のパワートレインに、独自性を重んじるスバルの矜持を見た。 -
ホンダ・フィット
2026.7.9画像・写真本田技研工業は2026年7月9日、マイナーチェンジした「フィット」を発表した。2020年2月のデビューから6年。グレード体系の見直しや内外装のブラッシュアップなど多岐にわたる変更が行われた最新モデルを写真で詳しく紹介する。 -
第291回: あの衝撃的なラストシーンは2CVで撮影されていた!? 『ヌーヴェルヴァーグ』
2026.7.9読んでますカー、観てますカー1959年のパリで、ゴダールが『勝手にしやがれ』の撮影を開始。脚本もなく演出はその場で指示するという型破りのスタイルに、俳優もスタッフも困惑し現場は混乱を極める。はたして映画は無事に完成するのか……。 -
第969回:裏地に『大脱走』! ピッティ・イマージネ・ウオモと自動車模様
2026.7.9マッキナ あらモーダ!イタリアで開催された世界屈指の紳士モード見本市「ピッティ・イマージネ・ウオモ」を、現地在住の大矢アキオが取材。自動車にまつわるアパレルの最新トレンドを探り、新興ブランドのひたむきさと、老舗の刻んできた年輪に触れた。 -
第59回:待望の2代目「日産キックス」は「ヴェゼル」や「カローラ クロス」に勝てるのか!? 小沢コージが嗅ぎまわる
2026.7.9小沢コージの勢いまかせ!! リターンズ日産が満を持して「キックス」の新型を発表した。新世代の「e-POWER」を搭載したほか、各部の質感もデザインも先代モデルから大幅に進化しているが、大事なのはライバル車に勝てるかどうかだ。小沢コージが開発リーダーを直撃した。









