マツダの新時代を担う“攻め”のミドルサイズSUVのすべて
【徹底解説】新型マツダCX-60 2022.11.30 ニューモデルSHOWCASE マツダの「ラージ商品群」の第1弾として登場した新型SUV「CX-60」。その見どころは、FRベースのシャシーや直6エンジンがかなえる“走り”だけではない。優れた燃費に充実した装備、豊富なバリエーション等々、同車の魅力をさまざまな視点から徹底解説する。マツダの悲願と重要な使命を背負うニューモデル
2011年に発売された初代「CX-5」以降、全身を“スカイアクティブテクノロジー”でかためた新世代商品群で成功をおさめたマツダ。そのマツダが次の10年を見据えて用意したのが、“スモール商品群”と“ラージ商品群”と呼ばれる2つのアーキテクチャーだ。
前者は従来どおりの横置きFFベースで、日本では「マツダ3」や「CX-30」の土台となっている。対する後者=ラージ商品群の第1弾となるのが「CX-60」である。同アーキテクチャー最大の特徴といえば、エンジンを縦置きするFRベースのレイアウトであることだ。「ロードスター」や「RX-7」「RX-8」などといった専用設計のスポーツカーを例外とすれば、マツダ最後のFR乗用車は2000年に生産終了した「センティア」までさかのぼる。現在はFRそのものが減少の一途をたどっており、今の時代にあらためてFRレイアウトを白紙から復活させるとは、その存在が明らかになった瞬間に世界が驚いた。
もっとも、FRレイアウトは“人馬一体”の走りを追求したいマツダのエンジニア、そして“魂動デザイン”を掲げるマツダのデザイナーの双方にとっての悲願だった。すっきりしたステアリングフィールを実現するダブルウイッシュボーンをフロントに仕込むには、現実的にはエンジンは縦置きするしかない。また、「チーターが獲物をねらって力をため、飛びかかる一瞬」を表現したい魂動デザインは、ロングノーズで後ろ足=リアタイヤで蹴り出すFRでこそ整合するからだ。
というわけで、ラージ商品群1号車のCX-60は、ご覧のとおり全長4.7m強のDセグメントSUVである。ご承知のように、そこは世界的にもっとも活況を呈するセグメントだ。と同時に、多くの既納客を抱えるCX-5からの買い替え需要の受け皿……という明確な販売戦略上での役割も、CX-60がいち早く商品化された理由といえる。
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【ラインナップ】
仕様の数は実に23種類!
CX-60は2機種の純エンジン車と、それぞれのエンジンをベースとしたハイブリッド……という計4種のパワートレイン構成となる。
エンジンは新開発の3.3リッター直列6気筒ディーゼルが「XD」に、おなじみの2.5リッター4気筒ガソリンが「25S」に搭載される。さらに、前者のディーゼルエンジンに48Vマイルドハイブリッド機構(MHEV)を組み合わせたのが「XDハイブリッド」、後者のガソリンエンジンをベースとしたプラグインハイブリッドが「PHEV」である。駆動方式は純エンジン車にはFRと4WDがあるが、MHEVとPHEVは4WDのみだ。
基準グレードといえるのはXDハイブリッド以外に用意される「Sパッケージ」で、そこにレザーシートや大径ホイールを加えた上級グレードが「Lパッケージ」となる。さらにその上には、純エンジン車には「エクスクルーシブモード」、XDハイブリッドとPHEVには「エクスクルーシブモード」「エクスクルーシブスポーツ」があるが、これらは柔らかなナッパレザーシートを備えるのが最大の特徴だ。
それに加えてXDハイブリッドとPHEVには、最豪華グレードとして「プレミアムスポーツ」と「プレミアムモダン」が用意される。前者には特別なタンのナッパレザーシートが、後者には本木目パネルがあしらわれる。
また、これらのうちLパッケージは純エンジン車専用だったり、またディーゼル車には独自のベースグレード「XD」があったりと、グレードの設定はパワートレインごとに微妙に異なる。そんなこんなで、パワートレインとグレード、駆動方式を組み合わせたCX-60の仕様の選択肢は23種となっている。いずれにしても膨大だ。
【主要諸元】
グレード名 | 25S Sパッケージ |
25S Sパッケージ |
25S Lパッケージ |
25S Lパッケージ |
25S エクスクルーシブモード |
25S エクスクルーシブモード |
XD | XD | XD Sパッケージ |
XD Sパッケージ |
XD Lパッケージ |
XD Lパッケージ |
XD エクスクルーシブモード |
XD エクスクルーシブモード |
XDハイブリッド エクスクルーシブスポーツ |
XDハイブリッド エクスクルーシブモダン |
XDハイブリッド プレミアムスポーツ |
XDハイブリッド プレミアムモダン |
PHEV Sパッケージ |
PHEV エクスクルーシブスポーツ |
PHEV エクスクルーシブモダン |
PHEV プレミアムスポーツ |
PHEV プレミアムモダン |
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基本情報 | 新車価格 | 299万2000円 | 321万7500円 | 341万5500円 | 364万1000円 | 384万4500円 | 407万円 | 323万9500円 | 346万5000円 | 358万0500円 | 380万6000円 | 400万4000円 | 422万9500円 | 443万3000円 | 465万8500円 | 505万4500円 | 505万4500円 | 547万2500円 | 547万2500円 | 539万円 | 584万6500円 | 584万6500円 | 626万4500円 | 626万4500円 |
駆動方式 | FR | 4WD | FR | 4WD | FR | 4WD | FR | 4WD | FR | 4WD | FR | 4WD | FR | 4WD | 4WD | 4WD | 4WD | 4WD | 4WD | 4WD | 4WD | 4WD | 4WD | |
動力分類 | エンジン | エンジン | エンジン | エンジン | エンジン | エンジン | エンジン | エンジン | エンジン | エンジン | エンジン | エンジン | エンジン | マイルドハイブリッド | マイルドハイブリッド | マイルドハイブリッド | マイルドハイブリッド | マイルドハイブリッド | プラグインハイブリッド | プラグインハイブリッド | プラグインハイブリッド | プラグインハイブリッド | プラグインハイブリッド | |
トランスミッション | 8AT | 8AT | 8AT | 8AT | 8AT | 8AT | 8AT | 8AT | 8AT | 8AT | 8AT | 8AT | 8AT | 8AT | 8AT | 8AT | 8AT | 8AT | 8AT | 8AT | 8AT | 8AT | 8AT | |
乗車定員 | 5名 | 5名 | 5名 | 5名 | 5名 | 5名 | 5名 | 5名 | 5名 | 5名 | 5名 | 5名 | 5名 | 5名 | 5名 | 5名 | 5名 | 5名 | 5名 | 5名 | 5名 | 5名 | 5名 | |
WLTCモード燃費(km/リッター) | 14.2 | 13.1 | 14.1 | 13.0 | 14.1 | 13.0 | 19.8 | 18.5 | 19.8 | 18.5 | 19.8 | 18.5 | 19.6 | 18.3 | 21.1 | 21.1 | 21.0 | 21.0 | 14.6 | 14.6 | 14.6 | 14.6 | 14.6 | |
WLTCモード電力消費率(Wh/km) | 247 | 247 | 247 | 247 | 247 | |||||||||||||||||||
充電電力使用時走行距離 | 74km | 74km | 74km | 74km | 74km | |||||||||||||||||||
最小回転半径 | 5.4m | 5.4m | 5.4m | 5.4m | 5.4m | 5.4m | 5.4m | 5.4m | 5.4m | 5.4m | 5.4m | 5.4m | 5.4m | 5.4m | 5.4m | 5.4m | 5.4m | 5.4m | 5.4m | 5.4m | 5.4m | 5.4m | 5.4m | |
エンジン | 形式 | 直列4気筒DOHC | 直列4気筒DOHC | 直列4気筒DOHC | 直列4気筒DOHC | 直列4気筒DOHC | 直列4気筒DOHC | 直列6気筒DOHC | 直列6気筒DOHC | 直列6気筒DOHC | 直列6気筒DOHC | 直列6気筒DOHC | 直列6気筒DOHC | 直列6気筒DOHC | 直列6気筒DOHC | 直列6気筒DOHC | 直列6気筒DOHC | 直列6気筒DOHC | 直列6気筒DOHC | 直列4気筒DOHC | 直列4気筒DOHC | 直列4気筒DOHC | 直列4気筒DOHC | 直列4気筒DOHC |
排気量 | 2488cc | 2488cc | 2488cc | 2488cc | 2488cc | 2488cc | 3283cc | 3283cc | 3283cc | 3283cc | 3283cc | 3283cc | 3283cc | 3283cc | 3283cc | 3283cc | 3283cc | 3283cc | 2488cc | 2488cc | 2488cc | 2488cc | 2488cc | |
最高出力 (kW[PS]/rpm) | 188[138]/6000 | 188[138]/6000 | 188[138]/6000 | 188[138]/6000 | 188[138]/6000 | 188[138]/6000 | 170[231]/4000-4200 | 170[231]/4000-4200 | 170[231]/4000-4200 | 170[231]/4000-4200 | 170[231]/4000-4200 | 170[231]/4000-4200 | 170[231]/4000-4200 | 170[231]/4000-4200 | 187[254]/3750 | 187[254]/3750 | 187[254]/3750 | 187[254]/3750 | 138[188]/6000 | 138[188]/6000 | 138[188]/6000 | 138[188]/6000 | 138[188]/6000 | |
最高トルク (N・m[kgf・m]/rpm) | 250[25.5]/3000 | 250[25.5]/3000 | 250[25.5]/3000 | 250[25.5]/3000 | 250[25.5]/3000 | 250[25.5]/3000 | 500[51.0]/1500-3000 | 500[51.0]/1500-3000 | 500[51.0]/1500-3000 | 500[51.0]/1500-3000 | 500[51.0]/1500-3000 | 500[51.0]/1500-3000 | 500[51.0]/1500-3000 | 500[51.0]/1500-3000 | 550[56.1]/1500-2400 | 550[56.1]/1500-2400 | 550[56.1]/1500-2400 | 550[56.1]/1500-2400 | 250[25.5]/4000 | 250[25.5]/4000 | 250[25.5]/4000 | 250[25.5]/4000 | 250[25.5]/4000 | |
過給機 | なし | なし | なし | なし | なし | なし | ターボチャージャー | ターボチャージャー | ターボチャージャー | ターボチャージャー | ターボチャージャー | ターボチャージャー | ターボチャージャー | ターボチャージャー | ターボチャージャー | ターボチャージャー | ターボチャージャー | ターボチャージャー | なし | なし | なし | なし | なし | |
燃料 | レギュラー | レギュラー | レギュラー | レギュラー | レギュラー | レギュラー | ディーゼル | ディーゼル | ディーゼル | ディーゼル | ディーゼル | ディーゼル | ディーゼル | ディーゼル | ディーゼル | ディーゼル | ディーゼル | ディーゼル | レギュラー | レギュラー | レギュラー | レギュラー | レギュラー | |
モーター | 最高出力 (kW[PS]) | 12[16.3]/900 | 12[16.3]/900 | 12[16.3]/900 | 12[16.3]/900 | 129[175]/5500 | 129[175]/5500 | 129[175]/5500 | 129[175]/5500 | 129[175]/5500 | ||||||||||||||
最高トルク (N・m[kgf・m]) | 153[15.6]/200 | 153[15.6]/200 | 153[15.6]/200 | 153[15.6]/200 | 270[27.5]/400 | 270[27.5]/400 | 270[27.5]/400 | 270[27.5]/400 | 270[27.5]/400 | |||||||||||||||
電池 | 総電力量 | 17.8kW | 17.8kW | 17.8kW | 17.8kW | 17.8kW | ||||||||||||||||||
寸法・重量 | 全長 | 4740mm | 4740mm | 4740mm | 4740mm | 4740mm | 4740mm | 4740mm | 4740mm | 4740mm | 4740mm | 4740mm | 4740mm | 4740mm | 4740mm | 4740mm | 4740mm | 4740mm | 4740mm | 4740mm | 4740mm | 4740mm | 4740mm | 4740mm |
全幅 | 1890mm | 1890mm | 1890mm | 1890mm | 1890mm | 1890mm | 1890mm | 1890mm | 1890mm | 1890mm | 1890mm | 1890mm | 1890mm | 1890mm | 1890mm | 1890mm | 1890mm | 1890mm | 1890mm | 1890mm | 1890mm | 1890mm | 1890mm | |
全高 | 1685mm | 1685mm | 1685mm | 1685mm | 1685mm | 1685mm | 1685mm | 1685mm | 1685mm | 1685mm | 1685mm | 1685mm | 1685mm | 1685mm | 1685mm | 1685mm | 1685mm | 1685mm | 1685mm | 1685mm | 1685mm | 1685mm | 1685mm | |
ホイールベース | 2870mm | 2870mm | 2870mm | 2870mm | 2870mm | 2870mm | 2870mm | 2870mm | 2870mm | 2870mm | 2870mm | 2870mm | 2870mm | 2870mm | 2870mm | 2870mm | 2870mm | 2870mm | 2870mm | 2870mm | 2870mm | 2870mm | 2870mm | |
車両重量 | 1680kg | 1720kg | 1720kg | 1760kg | 1720kg | 1760kg | 1790kg | 1840kg | 1790kg | 1840kg | 1810kg | 1860kg | 1840kg | 1890kg | 1910kg | 1910kg | 1940kg | 1940kg | 2040kg | 2060kg | 2060kg | 2090kg | 2090kg | |
タイヤ | 前輪サイズ | 235/60R18 | 235/60R18 | 235/50R20 | 235/50R20 | 235/50R20 | 235/50R20 | 235/60R18 | 235/60R18 | 235/60R18 | 235/60R18 | 235/50R20 | 235/50R20 | 235/50R20 | 235/50R20 | 235/50R20 | 235/50R20 | 235/50R20 | 235/50R20 | 235/50R20 | 235/50R20 | 235/50R20 | 235/50R20 | 235/50R20 |
後輪サイズ | 235/60R18 | 235/60R18 | 235/50R20 | 235/50R20 | 235/50R20 | 235/50R20 | 235/60R18 | 235/60R18 | 235/60R18 | 235/60R18 | 235/50R20 | 235/50R20 | 235/50R20 | 235/50R20 | 235/50R20 | 235/50R20 | 235/50R20 | 235/50R20 | 235/50R20 | 235/50R20 | 235/50R20 | 235/50R20 | 235/50R20 |
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【パワートレイン/ドライブトレイン】
パワートレインは話題の直6ディーゼルを含む4種類
CX-60のパワートレインで最注目なのが、新開発の3.3リッターディーゼルターボエンジンだ。直列6気筒という形式からみても「プレミアムねらいか?」ととらえられがちだが、少なくとも技術的な意図はそうではないという。
従来の主力エンジンである2.2リッターディーゼルの後継として、時代に合わせた性能アップを果たしつつ燃費を大幅に向上させるために導き出されたのが、3.3リッターという排気量だった。「その排気量を無理なく成立させるための直列6気筒であり、その直列6気筒を積むなら現実的には縦置き以外の選択肢はなく、必然的にFRレイアウトに行き着いた」とは担当エンジニアの弁である。
その3.3リッターディーゼルのアウトプットは、2.2リッター比で最高出力が31PSアップの231PS、最大トルクが50N・mアップの500N・m。同時に燃費は純エンジン車のXDで18.3~19.8km/リッター(WLTCモード、以下同)を実現しており、これはCX-5の2.2リッターディーゼルと比較すると15%近くもの改善となる。さらにそのディーゼルには、最高出力16.3PS、最大トルク153N・mの発電機兼スターター兼アシストモーターを追加したMHEVのXDハイブリッドも用意される。その燃費は21.0~21.1km/リッターで、素のXDからさらに約15%の向上となっている。
もうひとつのガソリンエンジンは、先述のとおりおなじみの2.5リッター直4。「スカイアクティブX」ではない“通常エンジン”で、最高出力188PS、最大トルク250N・mを発生する。その純エンジンモデルである25Sの燃費は13.0~14.1km/リッター。ディーゼルと比較すると動力性能・燃費性能ともに少し物足りない感があるが、かわりに本体価格200万円台のグレードも用意されるなど、「価格設定が魅力のエントリーモデル」と位置づけられる。
CX-60で最上級となるのが、その2.5リッターガソリンエンジンと変速機の間に、最高出力175PS、最大トルク270N・mのモーターを搭載し、容量17.8kWhの電池を組み合わせたPHEVである。満充電にするとWLTCモードで74kmの電動走行ができるというから、日常的にはほぼ給油なしの生活も可能だ。
これらに組み合わせられる変速機は全車8段AT。これはマツダ自身による新開発で、本体は遊星ギアを使った一般的なトルクコンバーター式ATと同様だが、クラッチ部分をトルクコンバーターではなく、ロスが少なくダイレクトな電子制御湿式多板クラッチとしているのが特徴だ。また、マツダこだわりのドライビングポジションを実現すべく、乗車スペースに干渉しない非常にスリムな形状になっているのも印象的である。
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【ボディーサイズ/デザイン】
ディメンションが近いのはドイツの“あのクルマ”
CX-60のスリーサイズは4740×1890×1685mm。CX-5に対して全長で165mm、全幅で45mm大きく、全高が5mm低い。このように、全体にはCX-5よりひとまわり大きい。
他社も含めた既存のモデルと比較すると、4740mmの全長は「トヨタ・ハリアー」と同寸だが、全幅と全高はハリアーより大きく、実車はより存在感がある。2870mmというホイールベースも含めたすべてのディメンションでCX-60と近いプロポーションをもつのは、「BMW X3」だ。CX-60と最新のX3(の素グレード)を比較すると、全長で20mm、全高で10mmほどCX-60が大きいが、全幅は同じ。ホイールベースもCX-60が5mm長いだけだ。
エクステリアデザインはマツダがこれまで培ってきた“魂動デザイン”の最新版。魂動デザインはマツダ3からフェーズ2に移行しており、CX-60は堂々としたタフさのなかに魂動デザインの知性とエレガンスを織り込んだという“ノーブル・タフネス”をコンセプトとしている。
写真で見るとフロントマスクが垂直に切り立ったように見えるが、これはFRの特性を生かして、フロントオーバーハングをギリギリまで削り取ったためだ。また、リアタイヤ付近の力強いフェンダーの造形も、同じく後ろ足で地面を蹴る=後輪駆動のFRらしさを表現したものだという。
マツダといえば、「ソウルレッドクリスタルメタリック」「マシーングレープレミアム」など“匠塗=TAKUMINURI”を標榜する車体カラーも自慢だが、今回のCX-60に合わせて、その第3弾が用意された。それが「ロジウムホワイトプレミアムメタリック」である。マツダによると、「日本の美意識である引き算の美学や禅の世界の『無』から白を着想、マツダならではの質感表現として、マシーンの精巧なイメージを意識し、金属の緻密な輝度感にこだわ」ったという。
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【インテリア/荷室/装備】
マツダらしい上質感とオーソドックスな使用感
CX-60のインテリア空間はFRらしく、存在感のあるセンターコンソールが目につく。ドラポジもほどよくコンパクトにまとまっているが、足もとが狭苦しくないのはマツダのこだわりだ。全体に分割線を可能なかぎり排除したクリーンなデザインで、ていねいにレザーがあしらわれたダッシュボードや木目調パネル(最上級のプレミアムモダンのみ本木目)も、マツダらしく、競合車と比較しても質感が高い。
後席空間や荷室の使い勝手はCX-5に近い。全長やホイールベースはCX-60のほうが明確に大きいのだが、空間効率はエンジンを横置きするFFベースのCX-5にハッキリと分がある。たとえば後席を見ると、レッグルームは実質的に、全長もホイールベースも短いCX-5と同等といってよく、ヘッドルームはCX-5に一歩ゆずる。かわりにCX-60は座面高が上がっているので、見晴らしはいい。
荷室もスペック上はCX-5より65リッター拡大した570リッターをうたうが、実際の床寸法などに数値ほどの差はない。とはいえ、よくも悪くもオーソドックスで使いやすいのは事実だ。Lパッケージ以上のグレードには、バンパー下でキック動作するだけで開閉可能なハンズフリー機能付きの電動テールゲートが標準装備となる。
センターディスプレイは、Sパッケージ以下のグレードでは10.25インチ、それより上のグレードでは12.3インチ。25SではLパッケージでも10.25インチが標準となるが、素のXD以外のグレードなら12.3インチもオプションで選択可能である。ナビ機能は販売店オプションのSDカードを差し込むことで使えるようになるのはいつものマツダ流。ただしSDカードを追加しなくても、手持ちのスマホを接続すればApple CarPlayやAndroid Autoを通して車載画面でナビ機能(厳密にはスマホ内のナビアプリ)は使える。
オーディオにも、やはりマツダではおなじみのBOSEのサウンドシステムがエクスクルーシブ〇〇以上のグレードに標準で、SパッケージとLパッケージにオプションで用意される。ただし、現行のマツダ3からは「マツダハーモニックアコースティクス」と名づけられた標準仕様のオーディオも、マツダの自慢アイテムとなりつつある。標準のオーディオで満足できるか、やはりBOSEが欲しいのか、可能ならば試聴してから選ぶといいだろう。
【バイヤーズガイド】
“エコカー減税”も考慮すると「XD」がお買い得
CX-60は2022年6月22日に予約受注が開始された。当初は純ディーゼルのXDが最大の売れ筋になると見込まれていたが、同年9月にマツダが発表した受注内訳によると、最大人気はディーゼル+MHEVのXDハイブリッドで、全体の43%を占めている(XDは37%)。納車もその一番人気のXDハイブリッドが9月から開始され、続いてPHEVがこの2022年12月にスタートするという。ただし、XDの出荷については2023年1月中旬以降、25Sのそれは2022年1月下旬以降……と「商品のつくりこみ」を理由に当初の予定(2022年12月)から延期される旨の発表が、先日マツダから発表があった。
価格的には順当に、純ガソリンの25Sがもっとも安く、次いで純ディーゼルのXD、さらにXDハイブリッド、そしてPHEVが最上級である。ただ、PHEVに従来どおりの補助金(本年度は国から55万円、東京都ではプラス30万円)が出るとすると、実質価格はXDハイブリッドとほぼ横並び(か、PHEVのほうがわずかに安い)となるのが迷うところだ。また純ガソリン車の25Sエクスクルーシブモードなどは、格上のグレードと同じナッパレザーのシートを備えながら、2WDなら384万4500円。質感を考えると、買い得感は非常に高い。
ただ、もろもろのコストパフォーマンスを考えると、純エンジンのXDを核として検討するのが賢そうだ。本体価格は25Sより高めだが、環境性能割や重量税が非課税・免税になるので、購入時の諸費用が25Sより13~14万円安くなる。装備内容も含めて考えると、25SとXDの実質価格差は30万円台なかばといったところで、動力性能の高さや燃料代、将来的なリセールを総合的に考慮すると、やはりXDのコスパが好印象だ。
実際に買うなら、ADASがフルで標準装備となり、前後シートヒーターやレザーシートも付くXD Lパッケージが、内外の高級感も感じられる好バランスなグレードだと思う。同グレードの本体価格は2WDで400万4000円、4WDで422万9500円だ。
(文=佐野弘宗/写真=花村英典、向後一宏、webCG/編集=堀田剛資)
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佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。