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マツダの新時代を担う“攻め”のミドルサイズSUVのすべて

【徹底解説】新型マツダCX-60 2022.11.30 ニューモデルSHOWCASE 佐野 弘宗 マツダの「ラージ商品群」の第1弾として登場した新型SUV「CX-60」。その見どころは、FRベースのシャシーや直6エンジンがかなえる“走り”だけではない。優れた燃費に充実した装備、豊富なバリエーション等々、同車の魅力をさまざまな視点から徹底解説する。

マツダの悲願と重要な使命を背負うニューモデル

2011年に発売された初代「CX-5」以降、全身を“スカイアクティブテクノロジー”でかためた新世代商品群で成功をおさめたマツダ。そのマツダが次の10年を見据えて用意したのが、“スモール商品群”と“ラージ商品群”と呼ばれる2つのアーキテクチャーだ。

前者は従来どおりの横置きFFベースで、日本では「マツダ3」や「CX-30」の土台となっている。対する後者=ラージ商品群の第1弾となるのが「CX-60」である。同アーキテクチャー最大の特徴といえば、エンジンを縦置きするFRベースのレイアウトであることだ。「ロードスター」や「RX-7」「RX-8」などといった専用設計のスポーツカーを例外とすれば、マツダ最後のFR乗用車は2000年に生産終了した「センティア」までさかのぼる。現在はFRそのものが減少の一途をたどっており、今の時代にあらためてFRレイアウトを白紙から復活させるとは、その存在が明らかになった瞬間に世界が驚いた。

もっとも、FRレイアウトは“人馬一体”の走りを追求したいマツダのエンジニア、そして“魂動デザイン”を掲げるマツダのデザイナーの双方にとっての悲願だった。すっきりしたステアリングフィールを実現するダブルウイッシュボーンをフロントに仕込むには、現実的にはエンジンは縦置きするしかない。また、「チーターが獲物をねらって力をため、飛びかかる一瞬」を表現したい魂動デザインは、ロングノーズで後ろ足=リアタイヤで蹴り出すFRでこそ整合するからだ。

というわけで、ラージ商品群1号車のCX-60は、ご覧のとおり全長4.7m強のDセグメントSUVである。ご承知のように、そこは世界的にもっとも活況を呈するセグメントだ。と同時に、多くの既納客を抱えるCX-5からの買い替え需要の受け皿……という明確な販売戦略上での役割も、CX-60がいち早く商品化された理由といえる。

2022年秋に日本で発売された「CX-60」。価格帯は299万2000円から626万4500円と非常に幅広く、単なる高付加価値商品としてではなく、幅広いユーザーに訴求する主力車種としてマツダが考えていることが分かる。
2022年秋に日本で発売された「CX-60」。価格帯は299万2000円から626万4500円と非常に幅広く、単なる高付加価値商品としてではなく、幅広いユーザーに訴求する主力車種としてマツダが考えていることが分かる。拡大
「CX-60」に用いられるラージプラットフォーム。今どき珍しい、FRをベースとしたエンジン縦置きの構造となっており、新開発の直6エンジンともども注目を集めている。
「CX-60」に用いられるラージプラットフォーム。今どき珍しい、FRをベースとしたエンジン縦置きの構造となっており、新開発の直6エンジンともども注目を集めている。拡大
近年のマツダ車の例にもれず、インテリアの仕立てはていねいで上質。高級感とスポーティネスを併せ持つ「プレミアムスポーツ」や、日本人の美意識を表現したという「プレミアムモダン」(写真)など、独自のコンセプトを具現したグレードも用意している。(写真:花村英典)
近年のマツダ車の例にもれず、インテリアの仕立てはていねいで上質。高級感とスポーティネスを併せ持つ「プレミアムスポーツ」や、日本人の美意識を表現したという「プレミアムモダン」(写真)など、独自のコンセプトを具現したグレードも用意している。(写真:花村英典)拡大
マツダとしては久々となるFR系プラットフォームを採用した「CX-60」。今後はマーケットに応じて、「CX-70」「CX-80」「CX-90」と新型車を投入していくという。(写真:花村英典)
マツダとしては久々となるFR系プラットフォームを採用した「CX-60」。今後はマーケットに応じて、「CX-70」「CX-80」「CX-90」と新型車を投入していくという。(写真:花村英典)拡大
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【ラインナップ】
仕様の数は実に23種類!

CX-60は2機種の純エンジン車と、それぞれのエンジンをベースとしたハイブリッド……という計4種のパワートレイン構成となる。

エンジンは新開発の3.3リッター直列6気筒ディーゼルが「XD」に、おなじみの2.5リッター4気筒ガソリンが「25S」に搭載される。さらに、前者のディーゼルエンジンに48Vマイルドハイブリッド機構(MHEV)を組み合わせたのが「XDハイブリッド」、後者のガソリンエンジンをベースとしたプラグインハイブリッドが「PHEV」である。駆動方式は純エンジン車にはFRと4WDがあるが、MHEVとPHEVは4WDのみだ。

基準グレードといえるのはXDハイブリッド以外に用意される「Sパッケージ」で、そこにレザーシートや大径ホイールを加えた上級グレードが「Lパッケージ」となる。さらにその上には、純エンジン車には「エクスクルーシブモード」、XDハイブリッドとPHEVには「エクスクルーシブモード」「エクスクルーシブスポーツ」があるが、これらは柔らかなナッパレザーシートを備えるのが最大の特徴だ。

それに加えてXDハイブリッドとPHEVには、最豪華グレードとして「プレミアムスポーツ」と「プレミアムモダン」が用意される。前者には特別なタンのナッパレザーシートが、後者には本木目パネルがあしらわれる。

また、これらのうちLパッケージは純エンジン車専用だったり、またディーゼル車には独自のベースグレード「XD」があったりと、グレードの設定はパワートレインごとに微妙に異なる。そんなこんなで、パワートレインとグレード、駆動方式を組み合わせたCX-60の仕様の選択肢は23種となっている。いずれにしても膨大だ。

【主要諸元】

グレード名   25S
Sパッケージ
25S
Sパッケージ
25S
Lパッケージ
25S
Lパッケージ
25S
エクスクルーシブモード
25S
エクスクルーシブモード
XD XD XD
Sパッケージ
XD
Sパッケージ
XD
Lパッケージ
XD
Lパッケージ
XD
エクスクルーシブモード
XD
エクスクルーシブモード
XDハイブリッド
エクスクルーシブスポーツ
XDハイブリッド
エクスクルーシブモダン
XDハイブリッド
プレミアムスポーツ
XDハイブリッド
プレミアムモダン
PHEV
Sパッケージ
PHEV
エクスクルーシブスポーツ
PHEV
エクスクルーシブモダン
PHEV
プレミアムスポーツ
PHEV
プレミアムモダン
基本情報 新車価格 299万2000円 321万7500円 341万5500円 364万1000円 384万4500円 407万円 323万9500円 346万5000円 358万0500円 380万6000円 400万4000円 422万9500円 443万3000円 465万8500円 505万4500円 505万4500円 547万2500円 547万2500円 539万円 584万6500円 584万6500円 626万4500円 626万4500円
駆動方式 FR 4WD FR 4WD FR 4WD FR 4WD FR 4WD FR 4WD FR 4WD 4WD 4WD 4WD 4WD 4WD 4WD 4WD 4WD 4WD
動力分類 エンジン エンジン エンジン エンジン エンジン エンジン エンジン エンジン エンジン エンジン エンジン エンジン エンジン マイルドハイブリッド マイルドハイブリッド マイルドハイブリッド マイルドハイブリッド マイルドハイブリッド プラグインハイブリッド プラグインハイブリッド プラグインハイブリッド プラグインハイブリッド プラグインハイブリッド
トランスミッション 8AT 8AT 8AT 8AT 8AT 8AT 8AT 8AT 8AT 8AT 8AT 8AT 8AT 8AT 8AT 8AT 8AT 8AT 8AT 8AT 8AT 8AT 8AT
乗車定員 5名 5名 5名 5名 5名 5名 5名 5名 5名 5名 5名 5名 5名 5名 5名 5名 5名 5名 5名 5名 5名 5名 5名
WLTCモード燃費(km/リッター) 14.2 13.1 14.1 13.0 14.1 13.0 19.8 18.5 19.8 18.5 19.8 18.5 19.6 18.3 21.1 21.1 21.0 21.0 14.6 14.6 14.6 14.6 14.6
WLTCモード電力消費率(Wh/km)                                     247 247 247 247 247
充電電力使用時走行距離                                     74km 74km 74km 74km 74km
最小回転半径 5.4m 5.4m 5.4m 5.4m 5.4m 5.4m 5.4m 5.4m 5.4m 5.4m 5.4m 5.4m 5.4m 5.4m 5.4m 5.4m 5.4m 5.4m 5.4m 5.4m 5.4m 5.4m 5.4m
エンジン 形式 直列4気筒DOHC 直列4気筒DOHC 直列4気筒DOHC 直列4気筒DOHC 直列4気筒DOHC 直列4気筒DOHC 直列6気筒DOHC 直列6気筒DOHC 直列6気筒DOHC 直列6気筒DOHC 直列6気筒DOHC 直列6気筒DOHC 直列6気筒DOHC 直列6気筒DOHC 直列6気筒DOHC 直列6気筒DOHC 直列6気筒DOHC 直列6気筒DOHC 直列4気筒DOHC 直列4気筒DOHC 直列4気筒DOHC 直列4気筒DOHC 直列4気筒DOHC
排気量 2488cc 2488cc 2488cc 2488cc 2488cc 2488cc 3283cc 3283cc 3283cc 3283cc 3283cc 3283cc 3283cc 3283cc 3283cc 3283cc 3283cc 3283cc 2488cc 2488cc 2488cc 2488cc 2488cc
最高出力 (kW[PS]/rpm) 188[138]/6000 188[138]/6000 188[138]/6000 188[138]/6000 188[138]/6000 188[138]/6000 170[231]/4000-4200 170[231]/4000-4200 170[231]/4000-4200 170[231]/4000-4200 170[231]/4000-4200 170[231]/4000-4200 170[231]/4000-4200 170[231]/4000-4200 187[254]/3750 187[254]/3750 187[254]/3750 187[254]/3750 138[188]/6000 138[188]/6000 138[188]/6000 138[188]/6000 138[188]/6000
最高トルク (N・m[kgf・m]/rpm) 250[25.5]/3000 250[25.5]/3000 250[25.5]/3000 250[25.5]/3000 250[25.5]/3000 250[25.5]/3000 500[51.0]/1500-3000 500[51.0]/1500-3000 500[51.0]/1500-3000 500[51.0]/1500-3000 500[51.0]/1500-3000 500[51.0]/1500-3000 500[51.0]/1500-3000 500[51.0]/1500-3000 550[56.1]/1500-2400 550[56.1]/1500-2400 550[56.1]/1500-2400 550[56.1]/1500-2400 250[25.5]/4000 250[25.5]/4000 250[25.5]/4000 250[25.5]/4000 250[25.5]/4000
過給機 なし なし なし なし なし なし ターボチャージャー ターボチャージャー ターボチャージャー ターボチャージャー ターボチャージャー ターボチャージャー ターボチャージャー ターボチャージャー ターボチャージャー ターボチャージャー ターボチャージャー ターボチャージャー なし なし なし なし なし
燃料 レギュラー レギュラー レギュラー レギュラー レギュラー レギュラー ディーゼル ディーゼル ディーゼル ディーゼル ディーゼル ディーゼル ディーゼル ディーゼル ディーゼル ディーゼル ディーゼル ディーゼル レギュラー レギュラー レギュラー レギュラー レギュラー
モーター 最高出力 (kW[PS])                             12[16.3]/900 12[16.3]/900 12[16.3]/900 12[16.3]/900 129[175]/5500 129[175]/5500 129[175]/5500 129[175]/5500 129[175]/5500
最高トルク (N・m[kgf・m])                             153[15.6]/200 153[15.6]/200 153[15.6]/200 153[15.6]/200 270[27.5]/400 270[27.5]/400 270[27.5]/400 270[27.5]/400 270[27.5]/400
電池 総電力量                                     17.8kW 17.8kW 17.8kW 17.8kW 17.8kW
寸法・重量 全長 4740mm 4740mm 4740mm 4740mm 4740mm 4740mm 4740mm 4740mm 4740mm 4740mm 4740mm 4740mm 4740mm 4740mm 4740mm 4740mm 4740mm 4740mm 4740mm 4740mm 4740mm 4740mm 4740mm
全幅 1890mm 1890mm 1890mm 1890mm 1890mm 1890mm 1890mm 1890mm 1890mm 1890mm 1890mm 1890mm 1890mm 1890mm 1890mm 1890mm 1890mm 1890mm 1890mm 1890mm 1890mm 1890mm 1890mm
全高 1685mm 1685mm 1685mm 1685mm 1685mm 1685mm 1685mm 1685mm 1685mm 1685mm 1685mm 1685mm 1685mm 1685mm 1685mm 1685mm 1685mm 1685mm 1685mm 1685mm 1685mm 1685mm 1685mm
ホイールベース 2870mm 2870mm 2870mm 2870mm 2870mm 2870mm 2870mm 2870mm 2870mm 2870mm 2870mm 2870mm 2870mm 2870mm 2870mm 2870mm 2870mm 2870mm 2870mm 2870mm 2870mm 2870mm 2870mm
車両重量 1680kg 1720kg 1720kg 1760kg 1720kg 1760kg 1790kg 1840kg 1790kg 1840kg 1810kg 1860kg 1840kg 1890kg 1910kg 1910kg 1940kg 1940kg 2040kg 2060kg 2060kg 2090kg 2090kg
タイヤ 前輪サイズ 235/60R18 235/60R18 235/50R20 235/50R20 235/50R20 235/50R20 235/60R18 235/60R18 235/60R18 235/60R18 235/50R20 235/50R20 235/50R20 235/50R20 235/50R20 235/50R20 235/50R20 235/50R20 235/50R20 235/50R20 235/50R20 235/50R20 235/50R20
後輪サイズ 235/60R18 235/60R18 235/50R20 235/50R20 235/50R20 235/50R20 235/60R18 235/60R18 235/60R18 235/60R18 235/50R20 235/50R20 235/50R20 235/50R20 235/50R20 235/50R20 235/50R20 235/50R20 235/50R20 235/50R20 235/50R20 235/50R20 235/50R20
エントリーモデルとなる「25S Sパッケージ」だが、各所にクロームメッキ装飾が施されることから、外装に“廉価版”のイメージはない。ホイールはグレーメタリック塗装の18インチだ。
エントリーモデルとなる「25S Sパッケージ」だが、各所にクロームメッキ装飾が施されることから、外装に“廉価版”のイメージはない。ホイールはグレーメタリック塗装の18インチだ。拡大
「Sパッケージ」や「XD」に装備されるクロスシート。両グレードでは、ダッシュボードの装飾パネルは樹脂、ドアトリムは黒のクロスとなる。
「Sパッケージ」や「XD」に装備されるクロスシート。両グレードでは、ダッシュボードの装飾パネルは樹脂、ドアトリムは黒のクロスとなる。拡大
20インチホイールを装着した「XDエクスクルーシブモード」。「Lパッケージ」と「エクスクルーシブモード」については、外装に差異はない。
20インチホイールを装着した「XDエクスクルーシブモード」。「Lパッケージ」と「エクスクルーシブモード」については、外装に差異はない。拡大
シート表皮は「Lパッケージ」がレザー、「エクスクルーシブモード」がナッパレザー(写真)。シートカラーは、前者にはブラックとベージュ、後者にはブラックとグレージュが用意される。
シート表皮は「Lパッケージ」がレザー、「エクスクルーシブモード」がナッパレザー(写真)。シートカラーは、前者にはブラックとベージュ、後者にはブラックとグレージュが用意される。拡大
「エクスクルーシブスポーツ」と「プレミアムスポーツ」では、外装の各部がブラックアウトされ、ハニカムメッシュのグリルが装備される。写真は「XDハイブリッド プレミアムスポーツ」。
「エクスクルーシブスポーツ」と「プレミアムスポーツ」では、外装の各部がブラックアウトされ、ハニカムメッシュのグリルが装備される。写真は「XDハイブリッド プレミアムスポーツ」。拡大
「エクスクルーシブスポーツ」に装備されるナッパレザーシート。内装の仕様は「エクスクルーシブモード」と共通だが、内装色はブラックしか選択できない。(写真:向後一宏)
「エクスクルーシブスポーツ」に装備されるナッパレザーシート。内装の仕様は「エクスクルーシブモード」と共通だが、内装色はブラックしか選択できない。(写真:向後一宏)拡大
「プレミアムスポーツ」のシートはナッパレザーと合成皮革のコンビタイプ。内装色はタンで、マットブラックヘアラインの装飾が施される。
「プレミアムスポーツ」のシートはナッパレザーと合成皮革のコンビタイプ。内装色はタンで、マットブラックヘアラインの装飾が施される。拡大
「エクスクルーシブモダン」と「プレミアムモダン」の外装は基本的に共通。切削光輝加工とブラック塗装を組み合わせた20インチアルミホイールが目を引く。
「エクスクルーシブモダン」と「プレミアムモダン」の外装は基本的に共通。切削光輝加工とブラック塗装を組み合わせた20インチアルミホイールが目を引く。拡大
「プレミアムモダン」の内装色はピュアホワイトのみ。インテリアトリムは黒をまぶしたルーセントクロスと本杢(メープル)の組み合わせで、他車の上級グレードにはない、独自の趣を醸し出している。
「プレミアムモダン」の内装色はピュアホワイトのみ。インテリアトリムは黒をまぶしたルーセントクロスと本杢(メープル)の組み合わせで、他車の上級グレードにはない、独自の趣を醸し出している。拡大

【パワートレイン/ドライブトレイン】
パワートレインは話題の直6ディーゼルを含む4種類

CX-60のパワートレインで最注目なのが、新開発の3.3リッターディーゼルターボエンジンだ。直列6気筒という形式からみても「プレミアムねらいか?」ととらえられがちだが、少なくとも技術的な意図はそうではないという。

従来の主力エンジンである2.2リッターディーゼルの後継として、時代に合わせた性能アップを果たしつつ燃費を大幅に向上させるために導き出されたのが、3.3リッターという排気量だった。「その排気量を無理なく成立させるための直列6気筒であり、その直列6気筒を積むなら現実的には縦置き以外の選択肢はなく、必然的にFRレイアウトに行き着いた」とは担当エンジニアの弁である。

その3.3リッターディーゼルのアウトプットは、2.2リッター比で最高出力が31PSアップの231PS、最大トルクが50N・mアップの500N・m。同時に燃費は純エンジン車のXDで18.3~19.8km/リッター(WLTCモード、以下同)を実現しており、これはCX-5の2.2リッターディーゼルと比較すると15%近くもの改善となる。さらにそのディーゼルには、最高出力16.3PS、最大トルク153N・mの発電機兼スターター兼アシストモーターを追加したMHEVのXDハイブリッドも用意される。その燃費は21.0~21.1km/リッターで、素のXDからさらに約15%の向上となっている。

もうひとつのガソリンエンジンは、先述のとおりおなじみの2.5リッター直4。「スカイアクティブX」ではない“通常エンジン”で、最高出力188PS、最大トルク250N・mを発生する。その純エンジンモデルである25Sの燃費は13.0~14.1km/リッター。ディーゼルと比較すると動力性能・燃費性能ともに少し物足りない感があるが、かわりに本体価格200万円台のグレードも用意されるなど、「価格設定が魅力のエントリーモデル」と位置づけられる。

CX-60で最上級となるのが、その2.5リッターガソリンエンジンと変速機の間に、最高出力175PS、最大トルク270N・mのモーターを搭載し、容量17.8kWhの電池を組み合わせたPHEVである。満充電にするとWLTCモードで74kmの電動走行ができるというから、日常的にはほぼ給油なしの生活も可能だ。

これらに組み合わせられる変速機は全車8段AT。これはマツダ自身による新開発で、本体は遊星ギアを使った一般的なトルクコンバーター式ATと同様だが、クラッチ部分をトルクコンバーターではなく、ロスが少なくダイレクトな電子制御湿式多板クラッチとしているのが特徴だ。また、マツダこだわりのドライビングポジションを実現すべく、乗車スペースに干渉しない非常にスリムな形状になっているのも印象的である。

「XD」の3.3リッター直6ディーゼルターボエンジン。海外向けには直6のガソリンエンジンや「SKYACTIV-X」(火花点火制御圧縮着火エンジン)も用意されるが、日本への導入は見送られた。
「XD」の3.3リッター直6ディーゼルターボエンジン。海外向けには直6のガソリンエンジンや「SKYACTIV-X」(火花点火制御圧縮着火エンジン)も用意されるが、日本への導入は見送られた。拡大
MHEVの「XDハイブリッド」に搭載されるエンジンは、最高出力254PS、最大トルク550N・mと、「XD」のそれよりやや強力だ。
MHEVの「XDハイブリッド」に搭載されるエンジンは、最高出力254PS、最大トルク550N・mと、「XD」のそれよりやや強力だ。拡大
「PHEV」のパワーユニットは自然吸気の2.5リッターガソリンエンジンに最高出力175PSのモーターの組み合わせ。電池の容量は17.8kWhで、CHAdeMO規格の急速充電や、V2H、V2Lといった外部給電にも対応している。
「PHEV」のパワーユニットは自然吸気の2.5リッターガソリンエンジンに最高出力175PSのモーターの組み合わせ。電池の容量は17.8kWhで、CHAdeMO規格の急速充電や、V2H、V2Lといった外部給電にも対応している。拡大
トランスミッションには自社製の8段ATを採用。ユニットのコンパクト化とパワーパック全体のレイアウトの工夫により、乗員のフットスペースへの干渉を最小限に抑えた。
トランスミッションには自社製の8段ATを採用。ユニットのコンパクト化とパワーパック全体のレイアウトの工夫により、乗員のフットスペースへの干渉を最小限に抑えた。拡大
4WD車の駆動システムには、ジェイテクト製の電子制御カップリングを用いたフルタイム4WDを採用。状況に応じて4輪に最適な駆動力を配分するほか、電動パワートレイン搭載車では回生協調ブレーキと連携して前後の回生配分を最適化。エネルギー回収の効率向上に寄与している。
4WD車の駆動システムには、ジェイテクト製の電子制御カップリングを用いたフルタイム4WDを採用。状況に応じて4輪に最適な駆動力を配分するほか、電動パワートレイン搭載車では回生協調ブレーキと連携して前後の回生配分を最適化。エネルギー回収の効率向上に寄与している。拡大
ドライブモードは、FR車では「ノーマル」と「スポーツ」の2種類。加えて4WD車には「オフロード」モードが備わり、さらにディーゼルの4WD車と「PHEV」には「トーイング」モードが、PHEVには「EV」モードが設定される。
ドライブモードは、FR車では「ノーマル」と「スポーツ」の2種類。加えて4WD車には「オフロード」モードが備わり、さらにディーゼルの4WD車と「PHEV」には「トーイング」モードが、PHEVには「EV」モードが設定される。拡大

【ボディーサイズ/デザイン】
ディメンションが近いのはドイツの“あのクルマ”

CX-60のスリーサイズは4740×1890×1685mm。CX-5に対して全長で165mm、全幅で45mm大きく、全高が5mm低い。このように、全体にはCX-5よりひとまわり大きい。

他社も含めた既存のモデルと比較すると、4740mmの全長は「トヨタ・ハリアー」と同寸だが、全幅と全高はハリアーより大きく、実車はより存在感がある。2870mmというホイールベースも含めたすべてのディメンションでCX-60と近いプロポーションをもつのは、「BMW X3」だ。CX-60と最新のX3(の素グレード)を比較すると、全長で20mm、全高で10mmほどCX-60が大きいが、全幅は同じ。ホイールベースもCX-60が5mm長いだけだ。

エクステリアデザインはマツダがこれまで培ってきた“魂動デザイン”の最新版。魂動デザインはマツダ3からフェーズ2に移行しており、CX-60は堂々としたタフさのなかに魂動デザインの知性とエレガンスを織り込んだという“ノーブル・タフネス”をコンセプトとしている。

写真で見るとフロントマスクが垂直に切り立ったように見えるが、これはFRの特性を生かして、フロントオーバーハングをギリギリまで削り取ったためだ。また、リアタイヤ付近の力強いフェンダーの造形も、同じく後ろ足で地面を蹴る=後輪駆動のFRらしさを表現したものだという。

マツダといえば、「ソウルレッドクリスタルメタリック」「マシーングレープレミアム」など“匠塗=TAKUMINURI”を標榜する車体カラーも自慢だが、今回のCX-60に合わせて、その第3弾が用意された。それが「ロジウムホワイトプレミアムメタリック」である。マツダによると、「日本の美意識である引き算の美学や禅の世界の『無』から白を着想、マツダならではの質感表現として、マシーンの精巧なイメージを意識し、金属の緻密な輝度感にこだわ」ったという。

「CX-5」や「CX-8」とは一線を画す、厚みのある顔まわりが特徴の「CX-60」。グリルとヘッドランプをつなぐ装飾「シグネチャーウイング」には、ライティング機能が盛り込まれた。
「CX-5」や「CX-8」とは一線を画す、厚みのある顔まわりが特徴の「CX-60」。グリルとヘッドランプをつなぐ装飾「シグネチャーウイング」には、ライティング機能が盛り込まれた。拡大
FRベースであることを感じさせる、ロングノーズ・ショートデッキのサイドビュー。フロントフェンダーにはスポーツカーを思わせるサイドシグネチャーがあしらわれる。
FRベースであることを感じさせる、ロングノーズ・ショートデッキのサイドビュー。フロントフェンダーにはスポーツカーを思わせるサイドシグネチャーがあしらわれる。拡大
リアバンパーの左右下端に備わるエキゾーストガーニッシュは、実はダミー。基本はクロームメッキだが、「25S」ではグレードにかかわらずブラック塗装、「エクスクルーシブスポーツ」「プレミアムスポーツ」(写真)ではブラックメタリック塗装となる。
リアバンパーの左右下端に備わるエキゾーストガーニッシュは、実はダミー。基本はクロームメッキだが、「25S」ではグレードにかかわらずブラック塗装、「エクスクルーシブスポーツ」「プレミアムスポーツ」(写真)ではブラックメタリック塗装となる。拡大
ボディーカラーは、マツダ車ではおなじみの「ソウルレッドクリスタルメタリック」や、新色の「ロジウムホワイトプレミアムメタリック」(写真)など、全7色が用意されている。
ボディーカラーは、マツダ車ではおなじみの「ソウルレッドクリスタルメタリック」や、新色の「ロジウムホワイトプレミアムメタリック」(写真)など、全7色が用意されている。拡大
「XDエクスクルーシブモード」のインストゥルメントパネルまわり。メーターパネルは「XD」や純エンジン車の「Sパッケージ」および「25S Lパッケージ」では機械式の3眼メーター。その他のグレードでは、12.3インチのフル液晶ディスプレイとなる。
「XDエクスクルーシブモード」のインストゥルメントパネルまわり。メーターパネルは「XD」や純エンジン車の「Sパッケージ」および「25S Lパッケージ」では機械式の3眼メーター。その他のグレードでは、12.3インチのフル液晶ディスプレイとなる。拡大
インフォテインメントシステムはセンターコンソールのコントローラーで操作が可能。機械式のボタンとダイヤルの組み合わせはクラシックだが、それだけに使い方が分かりやすく、操作しやすい。(写真:向後一宏)
インフォテインメントシステムはセンターコンソールのコントローラーで操作が可能。機械式のボタンとダイヤルの組み合わせはクラシックだが、それだけに使い方が分かりやすく、操作しやすい。(写真:向後一宏)拡大
最近のマツダ車の例にもれず、運転環境は優秀で、自然なドライビングポジションがとれる。「25S Sパッケージ」と「XD」を除き、運転席にはメモリー機能付きの電動調整機構が装備される。
最近のマツダ車の例にもれず、運転環境は優秀で、自然なドライビングポジションがとれる。「25S Sパッケージ」と「XD」を除き、運転席にはメモリー機能付きの電動調整機構が装備される。拡大
乗車スペースについては、「CX-5」と比べて前後席ともにショルダールームのゆとりが増している。一方で、後席のレッグルームはCX-5と同等といった感じで、決して窮屈ではないが、堂々とした外観から想像されるほど広いわけでもない。
乗車スペースについては、「CX-5」と比べて前後席ともにショルダールームのゆとりが増している。一方で、後席のレッグルームはCX-5と同等といった感じで、決して窮屈ではないが、堂々とした外観から想像されるほど広いわけでもない。拡大
荷室容量は5人乗車時で570リッター。荷室長は975mm、最大荷室幅は1275mm、荷室高は817mmとなっている。
荷室容量は5人乗車時で570リッター。荷室長は975mm、最大荷室幅は1275mm、荷室高は817mmとなっている。拡大

【インテリア/荷室/装備】
マツダらしい上質感とオーソドックスな使用感

CX-60のインテリア空間はFRらしく、存在感のあるセンターコンソールが目につく。ドラポジもほどよくコンパクトにまとまっているが、足もとが狭苦しくないのはマツダのこだわりだ。全体に分割線を可能なかぎり排除したクリーンなデザインで、ていねいにレザーがあしらわれたダッシュボードや木目調パネル(最上級のプレミアムモダンのみ本木目)も、マツダらしく、競合車と比較しても質感が高い。

後席空間や荷室の使い勝手はCX-5に近い。全長やホイールベースはCX-60のほうが明確に大きいのだが、空間効率はエンジンを横置きするFFベースのCX-5にハッキリと分がある。たとえば後席を見ると、レッグルームは実質的に、全長もホイールベースも短いCX-5と同等といってよく、ヘッドルームはCX-5に一歩ゆずる。かわりにCX-60は座面高が上がっているので、見晴らしはいい。

荷室もスペック上はCX-5より65リッター拡大した570リッターをうたうが、実際の床寸法などに数値ほどの差はない。とはいえ、よくも悪くもオーソドックスで使いやすいのは事実だ。Lパッケージ以上のグレードには、バンパー下でキック動作するだけで開閉可能なハンズフリー機能付きの電動テールゲートが標準装備となる。

センターディスプレイは、Sパッケージ以下のグレードでは10.25インチ、それより上のグレードでは12.3インチ。25SではLパッケージでも10.25インチが標準となるが、素のXD以外のグレードなら12.3インチもオプションで選択可能である。ナビ機能は販売店オプションのSDカードを差し込むことで使えるようになるのはいつものマツダ流。ただしSDカードを追加しなくても、手持ちのスマホを接続すればApple CarPlayやAndroid Autoを通して車載画面でナビ機能(厳密にはスマホ内のナビアプリ)は使える。

オーディオにも、やはりマツダではおなじみのBOSEのサウンドシステムがエクスクルーシブ〇〇以上のグレードに標準で、SパッケージとLパッケージにオプションで用意される。ただし、現行のマツダ3からは「マツダハーモニックアコースティクス」と名づけられた標準仕様のオーディオも、マツダの自慢アイテムとなりつつある。標準のオーディオで満足できるか、やはりBOSEが欲しいのか、可能ならば試聴してから選ぶといいだろう。

【バイヤーズガイド】
“エコカー減税”も考慮すると「XD」がお買い得

CX-60は2022年6月22日に予約受注が開始された。当初は純ディーゼルのXDが最大の売れ筋になると見込まれていたが、同年9月にマツダが発表した受注内訳によると、最大人気はディーゼル+MHEVのXDハイブリッドで、全体の43%を占めている(XDは37%)。納車もその一番人気のXDハイブリッドが9月から開始され、続いてPHEVがこの2022年12月にスタートするという。ただし、XDの出荷については2023年1月中旬以降、25Sのそれは2022年1月下旬以降……と「商品のつくりこみ」を理由に当初の予定(2022年12月)から延期される旨の発表が、先日マツダから発表があった。

価格的には順当に、純ガソリンの25Sがもっとも安く、次いで純ディーゼルのXD、さらにXDハイブリッド、そしてPHEVが最上級である。ただ、PHEVに従来どおりの補助金(本年度は国から55万円、東京都ではプラス30万円)が出るとすると、実質価格はXDハイブリッドとほぼ横並び(か、PHEVのほうがわずかに安い)となるのが迷うところだ。また純ガソリン車の25Sエクスクルーシブモードなどは、格上のグレードと同じナッパレザーのシートを備えながら、2WDなら384万4500円。質感を考えると、買い得感は非常に高い。

ただ、もろもろのコストパフォーマンスを考えると、純エンジンのXDを核として検討するのが賢そうだ。本体価格は25Sより高めだが、環境性能割や重量税が非課税・免税になるので、購入時の諸費用が25Sより13~14万円安くなる。装備内容も含めて考えると、25SとXDの実質価格差は30万円台なかばといったところで、動力性能の高さや燃料代、将来的なリセールを総合的に考慮すると、やはりXDのコスパが好印象だ。

実際に買うなら、ADASがフルで標準装備となり、前後シートヒーターやレザーシートも付くXD Lパッケージが、内外の高級感も感じられる好バランスなグレードだと思う。同グレードの本体価格は2WDで400万4000円、4WDで422万9500円だ。

(文=佐野弘宗/写真=花村英典、向後一宏、webCG/編集=堀田剛資)

パワートレインについては今のところ「XDハイブリッド」が人気だが、ディーゼルエンジン+電動化ユニットの組み合わせはさすがに高額で、補助金の額によっては、購入費用が「PHEV」と“横並び”となる場合もある。
パワートレインについては今のところ「XDハイブリッド」が人気だが、ディーゼルエンジン+電動化ユニットの組み合わせはさすがに高額で、補助金の額によっては、購入費用が「PHEV」と“横並び”となる場合もある。拡大
「Sパッケージ」や「XD」などのグレードはお得感があるが、一部の快適装備だけでなく、車線維持支援機能や右直事故回避アシスト機能、交差点事故回避アシスト機能、渋滞時運転支援機能……といった予防安全・運転支援システムも非設定もしくはオプション扱いとなるので、注意が必要だ。
「Sパッケージ」や「XD」などのグレードはお得感があるが、一部の快適装備だけでなく、車線維持支援機能や右直事故回避アシスト機能、交差点事故回避アシスト機能、渋滞時運転支援機能……といった予防安全・運転支援システムも非設定もしくはオプション扱いとなるので、注意が必要だ。拡大
リアシートヒーターが装備されるのは「Lパッケージ」以上のグレードなので、ファミリーカーとして使う人にはやはり上位モデルがおすすめ。それらのグレードでは、全4個のUSBポートもType-AからType-Cにアップグレードされる(「XD」を除く下位グレードでもオプションで選択可能)。
リアシートヒーターが装備されるのは「Lパッケージ」以上のグレードなので、ファミリーカーとして使う人にはやはり上位モデルがおすすめ。それらのグレードでは、全4個のUSBポートもType-AからType-Cにアップグレードされる(「XD」を除く下位グレードでもオプションで選択可能)。拡大
装備のバランスやコストパフォーマンスを考慮すると、オススメは「XD Lパッケージ」(写真向かって左)だろう。
装備のバランスやコストパフォーマンスを考慮すると、オススメは「XD Lパッケージ」(写真向かって左)だろう。拡大
佐野 弘宗

佐野 弘宗

自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。

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