第739回:レイアウトもパワーも衝撃的! ランボルギーニの次世代電動パワートレインに高ぶる
2023.03.07 エディターから一言 拡大 |
プラグインハイブリッド化が明言されている、ランボルギーニの次世代フラッグシップスーパースポーツ。そのパワートレインの全容は? イタリアの本社でキャッチした詳細情報をお届けする。
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ファンも驚くレイアウト転換
累計販売台数1.2万台超。異例の大ヒット作となったブランドフラッグシップ「アヴェンタドール」(LB834)の後継モデルがついに2023年3月末、ワールドプレミアを迎える。コードナンバーはLB744。車名は未公表だが昨年のうちに同社はいくつかの名前を海外市場で商標登録にかけている。おそらくはその中に真実があるはずだ。
新型の披露に先立つこと約1カ月前、本社のあるイタリアはサンタガータ・ボロネーゼにて、まずはパワートレインの概要がごくわずかなメディア関係者に披露された。新型フラッグシップはV12自然吸気エンジンのPHEV(プラグインハイブリッド車)になると以前から明らかにされており、それゆえ新型において誰もが気になっていたパートであろう。
そして……。サンタガータで見せられたLB744用パワートレインはわれわれの想像を超えて変化と革新に満ちていた。
パワートレインの概要を開発部門トップのルーベン・モールCTOが語り始めたとき、筆者は一瞬凍りついてしまった。「V12エンジンをこれまでとは180度逆に置く」。彼は確かにそう言ったからだ。その意味するところは古いランボルギーニファンにとって衝撃的でしかない。つまり、1970年代初頭に天才エンジニア、パオロ・スタンツァーニが生み出した“LPレイアウト”をひっくり返す、つまりは常識的なレイアウトへと戻す、と彼は言っているわけだ。
その革新性に自信満々
よく知られているように、V12エンジンとトランスミッションの縦置きにこだわったスタンツァーニはその巨大なパワートレインを常識的な配置、つまり前から順にエンジン→トランスミッションとはせずに、丸ごとひっくり返すことでロードカー搭載の可能性を切り開いた。
それはまさにV12パワートレインの市販車向け搭載におけるコペルニクス的転回となったのみならず、誰にもまねできないそのユニークなレイアウトゆえ、メカニズム・オリエンテッドに「カウンタック」という奇跡のスタイリングをマルチェロ・ガンディーニに描かせ、そしてそれがそのままランボルギーニのブランドイメージの源泉となっていくのであった。続くフラッグシップモデル「ディアブロ」「ムルシエラゴ」、そしてアヴェンタドールはすべて“カウンタックの発展系”である。ランボルギーニ=カウンタック、なのだ。
それを思い切ってやめた。モールCTOは続ける。センタートンネルにはバッテリーを置く、と。つまり、カウンタック的にはトランスミッションの定位置だった場所が大きくて重いリチウムイオンバッテリーの置き場として提供され、代わりにトランスミッションは小型で軽量、シャフト数に工夫を凝らした8段DCTを新たに自社で開発(生産はグラツィアーノ社)し、V12エンジンの後部、リアアクスル上に横置きした。電気モーターを真上に組み合わせて。
モールCTOはこのレイアウトが、新世代のフラッグシップをプラグインハイブリッド化し、なおかつその性能をアヴェンタドールより大幅に引き上げるために最も有効な解決策であったと主張する。以前のレイアウトに匹敵する革新性に満ちているとも自信たっぷりに断言した。ちなみに8段DCTそのものは「ウラカン」用7段DCTより軽く、そしてもちろん変速は速い。
アヴェンタドールよりどう猛で音楽的
ランボルギーニのフラッグシップモデルはLB744においてまさに一大画期を迎えたといっていい。
とはいえ安心してほしい。それ以外の点、例えばV12エンジンの素晴らしい咆哮(ほうこう)などはさらに進化させてきたという。ステファン・ヴィンケルマンCEOはプレゼンテーションの冒頭において「スーパースポーツ界においてもサステイナビリティーが今後最も重要な指標となるが、サウンドやパフォーマンスをおろそかにすることはない」と宣言した。
L545と呼ばれるV12エンジンは、180度置き方を変えるというのだから当然、完全なる新開発である。
排気量はこれまでと同じく6.5リッター。以前のアヴェンタドール用L539ユニットより17kgも軽い。最高出力はランボ史上最高の825PS/9250rpmで、9500rpmまで回るというから、聞いただけで今から踏むことが楽しみでしかない。最大トルクは725N・m/6750rpmだ。コンプレッションレシオは12.6:1とした(「アヴェンタドールLP780-4ウルティメ」用は11.8:1)。背後に電気モーターと一体となったDCTを置くため、必然的にエキゾーストは上方排気となる。そのサウンドはプレゼンテーション動画で聴いた限りアヴェンタドールよりどう猛で音楽的だった。
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システム最高出力は1000PSオーバー
エレクトリックパートについての報告で今回、許されたLB744についての情報公開第1弾を締めくくろう。フロントに2つ、リアに1つ、それぞれ電気モーターを備える(前者はYASA製オイル冷却アクシャルフラックス、後者はMAHLE製)。最高出力はそれぞれ150PS(110kW)で、最大トルクはフロントが各350N・m、リアが150N・mとなる。フロントの電気モーターはそれぞれが精密に制御され、動力源としてのみならずトルクベクタリングとしても働く。もちろんブレーキ回生もその重要な役割だ。リアモーターはスターターとジェネレーター、そしてもちろん駆動力にもなる。必要に応じてバッテリーを通じフロントモーターへ動力も供給するという。
ちなみにCFRPボディーのセンタートンネルに置かれたVALMET製高性能リチウムイオンバッテリー(出力密度4500W/kg)のサイズは、全長1500mm×全高301mm×全幅240mmで比較的小型だ。容量は3.8kWhというからEVとしての走行距離は10km+αあたりと少なめだろう(「フェラーリSF90ストラダーレ」では7.9kWhだった)。もちろん容量を増やせば長持ちするが、重量もかさむ。どうせ空になるなら走行中のリチャージ時間短縮を狙ったようで、なるほどモーターやエンジンを働かせながらの再満充電に要する時間はわずかに6分。またプラグイン充電の場合はフロントブートを“小さく開けて”行う。
電動走行は基本フロントモーターで行われる(FWDになる)が、場合によってはリアも駆動力を発する。完全なるEV 4WDとして走ることもできるというわけだ。リバース動作ももちろん電動だ。今や前後をつなぐ物理的なシャフトこそ失われたが、電気的ながらも4WDを継承した。これもまたディアブロ以来の伝統、そしてスタンツァーニがカウンタックの設計においてすでに理想としていた駆動方式の発展的継承というべきであろう。
ランボルギーニはこのまったく新しいパワートレインを持つフラッグシップモデルLB744をH PEV=High Performance Electrified Vehicleと呼ぶ。システム最高出力はなんと1015PS! パワーウェイトレシオは未公表(つまり重量は未発表)ながら、多少の重量増にもかかわらずアヴェンタドールのそれを大きく上回っているという。もちろん加速スペックは驚愕(きょうがく)の値となったようだ。0-100km/h=2.5秒は、もはやブガッティ級である。
(文=西川 淳/写真=アウトモビリ・ランボルギーニ/編集=関 顕也)

西川 淳
永遠のスーパーカー少年を自負する、京都在住の自動車ライター。精密機械工学部出身で、産業から経済、歴史、文化、工学まで俯瞰(ふかん)して自動車を眺めることを理想とする。得意なジャンルは、高額車やスポーツカー、輸入車、クラシックカーといった趣味の領域。
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