【F1 2023】第3戦オーストラリアGP続報:3度の赤旗中断、波乱のレースでレッドブル3連勝

2023.04.03 自動車ニュース bg
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F1第3戦オーストラリアGPを制したレッドブルのマックス・フェルスタッペン(写真中央)、2位でレースを終えたメルセデスのルイス・ハミルトン(同左端)、3位に入ったアストンマーティンのフェルナンド・アロンソ(同手前)。3人のチャンピオン経験者が表彰台に上がったのは2018年ハンガリーGP以来。またフェルスタッペンとハミルトンがポディウムを共にするのは34回目となり、これほどまで多くトップ3に名を連ねたペアは過去にいない。(Photo=Getty Images / Red Bull Content Pool)
F1第3戦オーストラリアGPを制したレッドブルのマックス・フェルスタッペン(写真中央)、2位でレースを終えたメルセデスのルイス・ハミルトン(同左端)、3位に入ったアストンマーティンのフェルナンド・アロンソ(同手前)。3人のチャンピオン経験者が表彰台に上がったのは2018年ハンガリーGP以来。またフェルスタッペンとハミルトンがポディウムを共にするのは34回目となり、これほどまで多くトップ3に名を連ねたペアは過去にいない。(Photo=Getty Images / Red Bull Content Pool)拡大

2023年4月2日、オーストラリアはメルボルンにあるアルバートパーク・サーキットで行われたF1世界選手権第3戦オーストラリアGP。クラッシュにセーフティーカー、そして3度の赤旗中断にゴール前の混乱――波乱に満ちたレースだったが、レッドブルとマックス・フェルスタッペンの強さは揺るがなかった。

スタート直後のターン1に進入するF1マシン。ポールシッターのフェルスタッペン(写真手前右)は、メルセデスのジョージ・ラッセル(同左)にトップを奪われると、ハミルトンにもかわされて3位に落ちた。(Photo=Getty Images / Red Bull Content Pool)
スタート直後のターン1に進入するF1マシン。ポールシッターのフェルスタッペン(写真手前右)は、メルセデスのジョージ・ラッセル(同左)にトップを奪われると、ハミルトンにもかわされて3位に落ちた。(Photo=Getty Images / Red Bull Content Pool)拡大
3度の赤旗中断もくぐり抜け、今シーズン2勝目を飾ったフェルスタッペン(写真)。今年2回目のポールポジションから、スタートでメルセデスの2台に抜かれ3位に落ちたものの、12周目にトップを奪還すると、抜群のレースペースで瞬く間にリードを広げた。彼にとってのオーストラリアGP初優勝は通算80回目の表彰台となり、アイルトン・セナの記録に肩を並べたことになる。チームメイトのセルジオ・ペレスは、予選でブレーキバランスの問題に苦しみコースアウト、最後尾。ピットレーンからスタートし、ファステストラップを記録しながら5位でゴールした。結果、チャンピオンシップでフェルスタッペンは69点を獲得、ペレスは15点差のランキング2位となった。(Photo=Getty Images / Red Bull Content Pool)
3度の赤旗中断もくぐり抜け、今シーズン2勝目を飾ったフェルスタッペン(写真)。今年2回目のポールポジションから、スタートでメルセデスの2台に抜かれ3位に落ちたものの、12周目にトップを奪還すると、抜群のレースペースで瞬く間にリードを広げた。彼にとってのオーストラリアGP初優勝は通算80回目の表彰台となり、アイルトン・セナの記録に肩を並べたことになる。チームメイトのセルジオ・ペレスは、予選でブレーキバランスの問題に苦しみコースアウト、最後尾。ピットレーンからスタートし、ファステストラップを記録しながら5位でゴールした。結果、チャンピオンシップでフェルスタッペンは69点を獲得、ペレスは15点差のランキング2位となった。(Photo=Getty Images / Red Bull Content Pool)拡大

「レッドブルRB19」のアドバンテージ

開幕戦バーレーンGP、第2戦サウジアラビアGPと2戦連続で1-2フィニッシュを飾ったレッドブルは、向かうところ敵なしなのか?

超高速ストリートコース、ジェッダでのサウジアラビアGPのレース後、「あんなに速いマシンは見たことがない」とレッドブルについて語ったのは、5位でフィニッシュしたメルセデスのルイス・ハミルトンだった。マックス・フェルスタッペンは15番グリッドから2位でフィニッシュしていたが、11周目にハミルトンをオーバーテイクした際のスピード差が、通常の倍近くとなる30km/h以上だったというから、ハミルトンならずともライバルはみな驚きを隠せなかった。そこで注目されたのが、レッドブルの「DRS」だ。

DRSこと「ドラッグ・リダクション・システム」は、リアウイングのフラップの間隔を電子制御により広げることで、文字どおり空気抵抗(ドラッグ)を一時的に減らし(リダクション)、ストレートなどで追い抜きをしやすくするシステムだ。空力の先鋭化により、前車の乱気流が影響してオーバーテイクが難しくなった昨今のF1マシンへの“応急処置的”な装置として、2011年からF1で採用されている。

「レッドブルRB19」のDRSが、ライバルのそれよりも大きな効果を発揮しているのではないか――かつてジョーダンF1チームのデザインなどを手がけたゲイリー・アンダーソンらが指摘したのは、リアウイングのみならず、その下の「ビームウイング」と呼ばれるエレメントと、フロア下の空気を引き抜いてダウンフォースを発生させる「ディフューザー」が一体となり、DRS効果を増大させているというものだった。真偽のほどはわからないが、レッドブルのチーフテクニカルオフィサーにして空力の奇才の異名を持つエイドリアン・ニューウェイなら、とことん追究しそうなテーマではありそうだ。

同じレギュレーションながら、異なる解釈やアプローチがあるというのが、F1マシン開発の醍醐味(だいごみ)。今季無敵を誇るレッドブルに対する、ライバルたちの反撃が待たれるところだ。

メルセデスのハミルトンは予選3位から2位フィニッシュ、今季の初表彰台とメルセデス最上位に上機嫌の様子だった。開幕戦での惨敗からマシンコンセプトを変える英断を下したメルセデス。改良型の「W14」は、早くても5月の第6戦エミリア・ロマーニャGPごろと見られているが、その前にオーストラリアGPでは予想以上の好調さを示したことになる。レース後、「レッドブルとのギャップを詰めることは難しいが、不可能ではない」と自信を取り戻したかのようなコメントを残していた。チームメイトのラッセルは、赤旗前にタイヤ交換を済ませてしまったことによりトップから大きく順位を落とし、挽回中にパワーユニットのトラブルでリタイアを喫した。(Photo=Mercedes)
メルセデスのハミルトンは予選3位から2位フィニッシュ、今季の初表彰台とメルセデス最上位に上機嫌の様子だった。開幕戦での惨敗からマシンコンセプトを変える英断を下したメルセデス。改良型の「W14」は、早くても5月の第6戦エミリア・ロマーニャGPごろと見られているが、その前にオーストラリアGPでは予想以上の好調さを示したことになる。レース後、「レッドブルとのギャップを詰めることは難しいが、不可能ではない」と自信を取り戻したかのようなコメントを残していた。チームメイトのラッセルは、赤旗前にタイヤ交換を済ませてしまったことによりトップから大きく順位を落とし、挽回中にパワーユニットのトラブルでリタイアを喫した。(Photo=Mercedes)拡大

フェルスタッペンがポール、自身も驚くメルセデス2-3

1年前のオーストラリアGPでは、フェラーリのシャルル・ルクレールが3戦2勝、力強い走りでポール・トゥ・ウィンを飾っていたが、今年の跳ね馬にはその勢いがなく、代わってメルセデス勢がレッドブルに迫った。

予選では雨が心配されたものの大きな天候の崩れはなく、フェルスタッペンが開幕戦に次ぐ今季2回目、通算22回目のポールポジションを獲得。チャンピオンシップを1点差で争っていたチームメイトのセルジオ・ペレスは、プラクティスから続くブレーキバランスの問題でコースアウト、ノータイムで最後尾となってしまい、レースではピットレーンスタートを選択した。

予選2位、3位がメルセデス勢だったことには当人たちも驚いた様子で、ジョージ・ラッセルはフロントロー、ハミルトンは3番グリッドから強敵レッドブルを追うことに。好調アストンマーティンのフェルナンド・アロンソが4位、その僚友ランス・ストロールも6位につけ、フェラーリはカルロス・サインツJr.5位、前年のウィナーであるルクレールは7位に沈んだ。

直線を得意とするウィリアムズは、アレクサンダー・アルボンが8位と健闘。アルピーヌのピエール・ガスリー9位、そしてハースのニコ・ヒュルケンベルグが10位からレースに臨むこととなった。

アストンマーティンのアロンソ(写真)は、3戦連続3位表彰台と、自身にとっては2013年以来となる快進撃を続けている。オーストラリアGPでは、予選4位からラッセルの脱落で3位にポジションアップ。その後は、2007年に共にマクラーレンに在籍しタイトルを争った元チームメイト、ハミルトンにプレッシャーをかけ続けたものの、2位の座を勝ち取ることはできなかった。ランス・ストロールは4位でフィニッシュしており、アストンマーティンは65点を集めてコンストラクターズランキング2位につけている。(Photo=Aston Martin)
アストンマーティンのアロンソ(写真)は、3戦連続3位表彰台と、自身にとっては2013年以来となる快進撃を続けている。オーストラリアGPでは、予選4位からラッセルの脱落で3位にポジションアップ。その後は、2007年に共にマクラーレンに在籍しタイトルを争った元チームメイト、ハミルトンにプレッシャーをかけ続けたものの、2位の座を勝ち取ることはできなかった。ランス・ストロールは4位でフィニッシュしており、アストンマーティンは65点を集めてコンストラクターズランキング2位につけている。(Photo=Aston Martin)拡大
数々のクラッシュやコースアウト、セーフティーカーや赤旗中断に見舞われた今年のオーストラリアGPで残念な結果に終わったのがアルピーヌ勢だった。ピエール・ガスリー(写真前)は、予選9位から5位を走行していたものの、2度目の赤旗中断の後の再スタートでグラベルに飛び出し、コースに戻ると僚友エステバン・オコンと接触してしまい、結果ガスリー13位、オコン14位とポイント獲得ならず。今年からフランスのチームでペアを組むことになったフランス人ドライバー、オコンとガスリーの間には不仲説がささやかれていたが、今回のクラッシュについてはお互い理解を示しており、むしろオコンは、再スタート後の他のドライバーの荒いドライビングを非難していた。(Photo=Alpine F1)
数々のクラッシュやコースアウト、セーフティーカーや赤旗中断に見舞われた今年のオーストラリアGPで残念な結果に終わったのがアルピーヌ勢だった。ピエール・ガスリー(写真前)は、予選9位から5位を走行していたものの、2度目の赤旗中断の後の再スタートでグラベルに飛び出し、コースに戻ると僚友エステバン・オコンと接触してしまい、結果ガスリー13位、オコン14位とポイント獲得ならず。今年からフランスのチームでペアを組むことになったフランス人ドライバー、オコンとガスリーの間には不仲説がささやかれていたが、今回のクラッシュについてはお互い理解を示しており、むしろオコンは、再スタート後の他のドライバーの荒いドライビングを非難していた。(Photo=Alpine F1)拡大

スタートでメルセデス1-2、赤旗後にフェルスタッペンが首位奪還

レースペースで勝てなければ、スタートで出し抜くしかない。そんなメルセデスの気迫を感じさせるスタートダッシュだった。ターン1でラッセルがトップを奪うと、程なくしてハミルトンも2位に上がり、フェルスタッペンは一気に3位へと落ちた。その後方では、ルクレールがストロールと当たってはじき出され、0周リタイアとなり、セーフティーカーが3周まで先導することとなった。

このレースは、過去最多となる3度の赤旗中断を挟むことになるのだが、そのうちの1回目は、58周レースの7周目、アルボンのウィリアムズが派手にクラッシュ、グラベルをコースにまき散らしたことをきっかけとしていた。当初は2度目のセーフティーカーが出て、これを機にメルセデスはラッセルをピットに呼び、ハミルトンをコースにとどめさせた。しかし程なくして赤旗が出されると、この判断はラッセルにとって不利に働くこととなってしまった。

中断を経ての順位は、ハミルトンが1位、フェルスタッペン2位、アロンソ3位、ストロール4位、ガスリー5位、ヒュルケンベルグ6位、そしてラッセルは7位にダウン。1周のフォーメーションラップを終え、10周目から2回目のスタンディングスタートが切られると、ハミルトンが首位をキープ、その後ろにフェルスタッペン、アロンソ、ガスリー、ラッセル、ストロールが続いた。

ハミルトン対フェルスタッペンの戦いは、しかし長くは続かなかった。12周目のストレートで、DRSを効かせたレッドブルが牙をむき、フェルスタッペンがトップを奪還すると、レッドブルは1ラップだけで2秒ものギャップを築いてしまい、折り返しとなる29周を終了した時点では、2位ハミルトンを7秒以上突き放すのだった。そしてハミルトンとアロンソによる2位争いは、1秒という僅差を挟んでの駆け引きが続けられた。

赤旗でポジションを落としたラッセルは、4位走行中の18周目にマシン後方から白煙と炎を上げてメインストレート上でストップ。メルセデスでの初リタイアを喫し、20周目までバーチャルセーフティーカーとなった。

アルファタウリの角田裕毅(写真)は、今季初入賞となる10位フィニッシュ。しかし、波乱多きレースを体現するような、アップ&ダウンの激しいレースとなった。予選では抜き打ちの車検につかまってしまい、予定どおりのアタックができず12位。レースではスタート後のセーフティーカー明けで10位、その後は8位までポジションを上げるも、フロアを改良したばかりの「AT04」のパフォーマンス不足に足を引っ張られ、ずるずるとポイント圏外に後退していった。2度目の赤旗中断後の再スタートでは、ライバルの混乱に乗じて5位までジャンプアップを果たすも、3度目の赤旗からの再開時には、レースコントロールから順位を戻すよう指示を受け11位に。サインツJr.が5秒加算ペナルティーを受けて降格すると、10位の座が転がり込んだというわけだった。レース後「複雑な心境」と語る角田だったが、過去2戦で11位とポイントまでなかなか手が届かなかっただけに、今回の入賞を前向きに捉えたいところだ。(Photo=Getty Images / Red Bull Content Pool)
 
アルファタウリの角田裕毅(写真)は、今季初入賞となる10位フィニッシュ。しかし、波乱多きレースを体現するような、アップ&ダウンの激しいレースとなった。予選では抜き打ちの車検につかまってしまい、予定どおりのアタックができず12位。レースではスタート後のセーフティーカー明けで10位、その後は8位までポジションを上げるも、フロアを改良したばかりの「AT04」のパフォーマンス不足に足を引っ張られ、ずるずるとポイント圏外に後退していった。2度目の赤旗中断後の再スタートでは、ライバルの混乱に乗じて5位までジャンプアップを果たすも、3度目の赤旗からの再開時には、レースコントロールから順位を戻すよう指示を受け11位に。サインツJr.が5秒加算ペナルティーを受けて降格すると、10位の座が転がり込んだというわけだった。レース後「複雑な心境」と語る角田だったが、過去2戦で11位とポイントまでなかなか手が届かなかっただけに、今回の入賞を前向きに捉えたいところだ。(Photo=Getty Images / Red Bull Content Pool)
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混乱の幕切れ、遺恨が残ったレース

2度目の赤旗は、ゴールが間近に迫った54周目、ハースのケビン・マグヌッセンがウォールにヒットしクラッシュしたことでもたらされた。そしてここでもセーフティーカー導入後に中断という判断が下された。

レースコントロールは、あくまで規定の58周を終わらすべく、再スタートの準備を進めた。残り2周の超短期決戦、最後にひとつでも順位を上げようとするドライバーがわれ先にとターン1になだれ込むことは容易に想像できたというもの。実際、この日3回目のスタンディングスタートが切られると、フェルスタッペンがトップ、ハミルトンが2位を守ったまではよかったが、3位アロンソはサインツJr.と接触、その後ろではオコンとガスリーのアルピーヌがクラッシュ、さらに接触やコースオフするマシンが続出し、これで3度目の赤旗中断となった。

結局、1周を残しての4度目のスタートはセーフティーカー先導のままチェッカードフラッグが振られた。混乱と波乱の幕切れとなったものの、ポディウムに上がった3人のチャンピオンはそれぞれのレースに満足した様子。フェルスタッペンはオーストラリアGP初優勝に喜び、2位ハミルトンは「レッドブルとの差は詰められる」と自信を取り戻し、3位アロンソは3戦連続のポディウムとアストンマーティンの3-4フィニッシュをたたえた。

しかし、混乱のあおりを受けたドライバーやチームには遺恨も残った。3度目のリスタート直後にチームメイトのガスリーと接触、14位となったオコンは、周囲のドライバーの無謀なドライビングを非難。また4位でゴールしながらアロンソとの接触により5秒加算ペナルティーを受け12位に落ちたサインツJr.は「ペナルティーは全く理解できない」と怒りをあらわにした。そしてハースは、レース後に暫定リザルトに対する正式な抗議を行った。詳細は明らかにされていないものの、最後のリスタート時におけるスターティングポジションを問題視しての抗議のようである。

4年前のオーストラリアGP直前に亡くなったF1ディレクター、チャーリー・ホワイティングがいなくなってからというもの、ルールをつかさどるFIA(国際自動車連盟)のレース運営には数々の問題が指摘されるようになった。2021年最終戦アブダビGPでのマイケル・マシによる“ルールの恣意(しい)的運用”はその最たるものだったといえるが、今回も赤旗やセーフティーカーの基準が恣意的に判断されなかったか、問題が後を引きそうである。

中国GPがキャンセルされたことで、次の第4戦アゼルバイジャンGPまでは1カ月近くのブランクができた。決勝は4月30日に行われる。

(文=bg)

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