車両の“マイナーチェンジ”について
2023.05.02 あの多田哲哉のクルマQ&Aクルマの仕様変更には、大がかりなマイナーチェンジと、ほとんどデザインだけ変えたようなマイナーチェンジがあるように思えます。そもそもマイチェンとは、いつ、どのように実施されるのですか? その際、ユーザーや販売店からのフィードバックは反映されるのでしょうか。個人的には、ユーザーの「こうあってほしい」という要望よりも、メーカーの都合で(デザインや装備、ラインナップなどが)決まっているように感じるのですが。
もともとマイチェンというのは、クルマのフルモデルチェンジのサイクルの中間くらいで、初期の不具合やお客さまからの不評点を改善する狙いで実施されていました。“もともと”というのは、だいたい2000年以前のイメージですね。
しかし、近年はどちらかというと、法規対応がマイチェンの主な目的になっています。特に安全や排ガス関係が顕著なのですが、クルマに関する規則がよく変わるからです。もちろんユーザーサイドからの不満点も、よほど問題があるようであればこの機会に対応しますが、通常は法規対応。もしくは、インフォテインメントシステムなど世の中の変化が速い電気的な機能・装備のキャッチアップですね。総じて、メーカー都合のほうが多くなっている、とはいえると思います。
一方、いわゆるデザインの小変更は、結局好き嫌いが分かれてしまい、あまり売り上げアップに貢献しないことも多い。わざわざデザインを変えるよりも、ボディーカラーの追加やシート表皮の変更のほうが効く、ということは多々あります。
もっとも、スポーツカーのような走行性能がウリのクルマは話が別で、毎年のように手を入れることが重要。機能性向上はもちろん、マメに改良することでメーカーの本気度がユーザーに伝わり、販売につながる、という面があります。

多田 哲哉
1957年生まれの自動車エンジニア。大学卒業後、コンピューターシステム開発のベンチャー企業を立ち上げた後、トヨタ自動車に入社(1987年)。ABSやWRカーのシャシー制御システム開発を経て、「bB」「パッソ」「ラクティス」の初代モデルなどを開発した。2011年には製品企画本部ZRチーフエンジニアに就任。富士重工業(現スバル)との共同開発でFRスポーツカー「86」を、BMWとの共同開発で「GRスープラ」を世に送り出した。トヨタ社内で最高ランクの運転資格を持つなど、ドライビングの腕前でも知られる。2021年1月に退職。