DSやアルファの轍を踏むべからず! 名門ランチア復活へのちょっと過激な処方箋
2023.05.12 デイリーコラム2024年には早くも次世代モデルが登場
過日紹介したとおり(参照)、イタリアの名門、ランチアが復活しようとしている。それも2024年には第1号のモデルを出すというのだから、その駆け足ぶりにはびっくりだ。イタリア本国でさえ10年選手の「イプシロン」だけで食いつないでいる状態だったが、その裏ではステランティスがしぶとく施策を練っていたのだろう。ビジネス的に価値があると見込んでのことだろうが、それも含め、歴史ある表札を簡単には捨てない彼らの姿勢に拍手である。
それはさておき、こうなると気になるのが、新生ランチアがどのようなキャラクターとなるか。14を数えるステランティスのブランド群において、どういった位置におさまるかだ。コンセプトモデルの「Pu+Ra HPE」は、各時代の名車の要素をまぶした意匠のボディー(記者にはあんまりそうは見えないけど)に、イタリア家具の世界観に着想を得たインテリアを取り入れたものだという。また欧州からの報だと、復活第1号のモデルはコンパクトカーの新型「イプシロン」、次いで上級モデルの新型「ガンマ」が出てくるとのことだ。後者は「全長4.7mのスポーツバックサルーン」というから、Dセグメントに属する車種となるのだろう。
この指し手から思いますに、恐らく新生ランチアは、(ドイツ御三家のようなプレミアムブランドではなく)まずはかつてのように“小粋な上級ブランド”を目指すのではないか。輸入中古車メディア出身で、ちょっと前のランチアも記憶にある記者としては、うれしい話である。ゆくゆくは「テーマ8.32」みたいな、“らしさマシマシ”のモデルも復活するのかなぁ。たぶん買えないけど。
……なんて先走って期待と妄想を膨らませてしまったが、果たして読者諸兄姉と記者の間で、ランチアらしさとは共通のものなのだろうか? 世代を超えて、好むクルマの種類を超えて共有されるブランドイメージはあるのかしら?
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見る角度によって変わるランチアのイメージ
日本でランチアというと、多くの人は真っ先に世界ラリー選手権(WRC)で活躍した「ストラトス」や「037ラリー」「デルタ」などを思い浮かべるのだろう。が、それではランチアがスバルや三菱みたいなメーカーだったかといえば、さにあらず。荒野でかっ飛ぶラリーカーのイメージとは裏腹に、フツーの市販車は、なべて上品で落ち着いたキャラクターの持ち主だったと思う。しかし、それも今日に至るすべての時代に共通する文化ではなさそうだ。
関連書籍によると、創業者のヴィンチェンツォ・ランチアはかなりのレース好きで、また相当なハイテク主義者だったようだ。彼の手になるモデルには、モノコックボディーに前輪独立懸架、V型4気筒SOHCエンジン、トランスアクスル、空力ボディー……と、世界的にも革新的な技術が次々に投入されていった。『カーグラフィック』初代編集長、小林彰太郎氏が所有したという「ランチア・ラムダ」は、その最たる例だろう。モータースポーツにも積極的なブランドで、戦後にはミッレミリアやタルガフローリオなどで活躍。1954年から1955年にかけてはグランプリレースに挑戦し、メルセデス・ベンツとしのぎを削っていた。
こうして歴史をひも解くと、当時のイメージは、記者がランチアの存在を知った頃とはやはりずいぶん違っている。恐らくこの乖離(かいり)は、1970年代以降の変節が理由で、要するにランチアを買ったフィアットが、創業者とも縁のあるこのブランドを生き永らえさせるべく、頭をひねった結果だろう。上述のような理想主義的メーカーが、需要とのズレで窮地に陥るのはよくある話。ランチアもたびたび存続の危機にひんしており、1969年にはついにフィアットの傘下に。そしてグループ内のアッパーブランドとして存続することとなったのだ。
……熱心なファンの方には怒られそうだけど、これが記者の認識する、超おおざっぱなランチアの変遷である。
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わかりづらいブランドは受け入れられない
記者がランチアと聞いて想像するのは、やはりフィアットのアッパーブランド時代のランチア。イタリアの香り漂う、ちょっとハイソなクルマだった頃のランチアだ。そんなわけでコンセプトモデルのPu+Ra HPEについても、そのぶっ飛んだ外観より「このクルマではカッシーナに協力してもらいまして」というエピソードに、(カッシーナなんて、よく知りもしないくせに)「おお……」と感嘆してしまうわけだ。
が、これはあくまで記者の持つイメージであり、実際にランチア車を所有するファンのそれはまた違うと思う。さらに言えば、これからステランティスが狙うべき、まだランチアを知らない層に訴求するかもいささかビミョーだ。繊細妙味なさじ加減は、一見さんにはわかりづらすぎる。それでなくとも、“小粋な上級ブランド”というのは歴史的にかじ取りが難しい。かいわいをご覧あれ! ローバーやサーブの姿はすでになく、ボルボだって常にうまくいっているわけではない。同門のDSオートモビルズもアルファ・ロメオも羽振りのいい話は聞かないし、そもそも現状のランチア自身が、その難しさを示す好例だろう。
そうしたなかにあって、唯一これは成功といえるのが、ゼネラルモーターズのビュイックだ。もとは“シボレー以上、キャデラック未満”というビミョーなブランドの最たる例だったが、明確に中国市場を軸足とすることで復活を果たした。かの地における2022年の販売台数は64万4000台。コロナ前と比べればやや落ち着いた感はあるが、それでも同年の販売台数は米本国の6倍にもなる。
「ランチアを中国でEV専用ブランドとして復興させる」というのは、ずいぶん前に大矢アキオ氏も連載で述べていたことだが(参照)、正直なところ、それくらいのインパクトがないと新生ランチアを軌道に乗せるのはムズカシイのではないか。DSも似たような存在だけど、どうやら苦戦しているようだし、「フレンチがダメならイタリアンはいかが?」と指し手を変えるのもアリなのではと思う。
……まぁそうなったらそうなったで、偏屈なワタシはまた文句を言うんでしょうけどね!
(文=webCGほった<webCG”Happy”Hotta>/写真=ステランティス/編集=堀田剛資)
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堀田 剛資
猫とバイクと文庫本、そして東京多摩地区をこよなく愛するwebCG編集者。好きな言葉は反骨、嫌いな言葉は権威主義。今日もダッジとトライアンフで、奥多摩かいわいをお散歩する。
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