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スバル・クロストレック リミテッド(4WD/CVT)

自然体がいい 2023.06.14 試乗記 高平 高輝 スバルの「クロストレック」にはびっくりするような特徴があるわけではない。走らせても普通だ。だけど、それがいい。パワーはソコソコながら、がっしりとしたボディーや足まわりが生み出す安心感。これこそがスバリストを魅了してやまないポイントである。
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「XV」改め「クロストレック」

まことにスバルらしいまっとうなモデルチェンジといえるのではないか。新しいグリルデザインやホイールアーチカバーなど、以前よりもSUVらしいタフさ、たくましさを演出し、名称も「XV」からクロストレック(既に北米などで使われていたネーミングに統一)に改められたが、全体的にはキープコンセプトであり、ボディーサイズも従来型と事実上変わらない。全幅は1800mmと変わらず、2670mmのホイールベースや最低地上高200mmもこれまでどおりである。全高もシャークフィンアンテナやルーフレールを除けば1550mmと、これまた“立駐サイズ”を維持している。国内でも使いやすいコンパクトサイズをキープしている点を歓迎する向きも多いはずである。

さらに後述するようにパワートレインも従来どおりである。でもそれならマイナーチェンジじゃないの? という声も聞こえてきそうだが、実際は中身が大きく違う。「SGP(スバルグローバルプラットフォーム)」の最新版で、フルインナーフレーム構造、構造用接着剤の採用拡大、デュアルピニオンの電動パワーステアリング、電動ブレーキブースターなど、既に「レヴォーグ」などに採用されている最新の技術がすべて盛り込まれているのだ。せっかくのモデルチェンジならボディーも大きく見た目も派手に、という方向ではなく実質重視に抑えたのは新型クロストレックのポジショニングを考慮してのことだろう。

国内でも北米などと同じ名前で発売された新型「スバル・クロストレック」。今回の試乗車は上級グレード「リミテッド」の4WDモデルで、ラインナップのなかで一番高価なモデルだ。
国内でも北米などと同じ名前で発売された新型「スバル・クロストレック」。今回の試乗車は上級グレード「リミテッド」の4WDモデルで、ラインナップのなかで一番高価なモデルだ。拡大
ボディーの下部に大胆に使われたブラックの樹脂パーツが新型の特徴。ディンプル加工が施されており、汚れ落ちがよさそうだ。
ボディーの下部に大胆に使われたブラックの樹脂パーツが新型の特徴。ディンプル加工が施されており、汚れ落ちがよさそうだ。拡大
後ろ下がりのルーフラインで躍動感を表現。シャシーは先代と同じ「SGP」ながら、フルインナーフレーム構造などを取り入れた最新版だ。
後ろ下がりのルーフラインで躍動感を表現。シャシーは先代と同じ「SGP」ながら、フルインナーフレーム構造などを取り入れた最新版だ。拡大
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国内はハイブリッド「e-BOXER」のみ

「インプレッサ」の派生モデルとして2010年に発売された「インプレッサXV」から数えて4代目にあたる新型クロストレックのパワートレインは2リッターハイブリッドのみに絞られた(先代は1.6リッターガソリンもあり)。最高出力145PS/6000rpmと最大トルク188N・m/4000rpmを発生するFB20型2リッター水平対向直噴4気筒エンジンに、13.6PSと65N・mのモーターを組み合わせたハイブリッドシステムで、スバルが言うところの「e-BOXER」となる。

とはいえモーター出力は一般的なマイルドハイブリッドレベルであり、低負荷走行時には電動モーターだけで走行可能ゆえマイルドハイブリッドとはいえないものの、その範囲は限られている。注意深くじんわりと発進すれば20km/hぐらいまではモーター走行できるようだが、街なかでそんなことをしていると後続車に迷惑をかけてしまう。ほんのちょっとでも踏み込むと即エンジンが始動するのは従来どおりだが、これまでよりはモーター走行できる機会が増えたようだし、また再始動の際のショックも小さくなっている。ちなみに新型「プリウス」のフロントモーターの最高出力とトルクは113PSと206N・m、文字どおりけた違いであることが分かる。変速機は従来どおり「リニアトロニック」と称するCVTである。

クロストレックのラインナップは簡潔で、「ツーリング」と上級グレードの「リミテッド」の2種類のみ、ただしこれまでのXVにはなかったFWDモデルもそれぞれに用意されている。

パワートレインは最高出力145PSの2リッター水平対向自然吸気エンジンに同13.6PSのモーターを組み合わせた「e-BOXER」。わずかな時間ながらEV走行もできる。
パワートレインは最高出力145PSの2リッター水平対向自然吸気エンジンに同13.6PSのモーターを組み合わせた「e-BOXER」。わずかな時間ながらEV走行もできる。拡大
大型の縦型センタースクリーン(「ツーリング」ではオプション)が目を引くダッシュボードだが、メーターパネルやステアリングホイールなどのデザインはほとんど変わっていない。
大型の縦型センタースクリーン(「ツーリング」ではオプション)が目を引くダッシュボードだが、メーターパネルやステアリングホイールなどのデザインはほとんど変わっていない。拡大
縦型のセンターディスプレイのサイズは11.6インチ。ピッチ&ロール計やパワートレインの作動状況をくっきりと大きく映し出せる。
縦型のセンターディスプレイのサイズは11.6インチ。ピッチ&ロール計やパワートレインの作動状況をくっきりと大きく映し出せる。拡大

使い勝手は悪くない

新たに11.6インチの縦型ディスプレイ(「リミテッド」に標準)がダッシュ中央に据えられたインテリアは他のスバル車と同様。ただしメーターはアナログ式で中央にのみデジタルのインフォメーションディスプレイを備えるタイプだ。自慢の「アイサイト」は横断歩道を渡る歩行者などを検知する広角カメラを加えた3カメラ式にアップデートされている。前席シートヒーターやステアリングホイールヒーター、本革シートなどはリミテッドでもオプション設定だが、それはさておき相変わらずトリム類がビジネスライクというか、いささかやぼったい感じがする。

価格帯を考えれば致し方ないところでもあるが、例えばステアリングホイールの感触は本革とは思えないほど硬い手触りである。そのいっぽうでサイドウィンドウのモーターが閉まる直前にゆっくりになる可変式だったのにちょっとびっくり。今では「クラウン」にも採用されていない上級コンポーネントだから、他のスバル車も確認してみなければならない。

スバル自慢の先進運転支援システム「アイサイト」はステレオカメラから中央に広角の一眼を加えた3カメラ式に強化されている。
スバル自慢の先進運転支援システム「アイサイト」はステレオカメラから中央に広角の一眼を加えた3カメラ式に強化されている。拡大
本革シートはオプションで標準装備はトリコット表皮。「リミテッド」には電動調整機能が標準装備となる。
本革シートはオプションで標準装備はトリコット表皮。「リミテッド」には電動調整機能が標準装備となる。拡大
スノーブーツなどを履いていても乗り降りがしやすいよう、後席の座面の端がラウンドしている。
スノーブーツなどを履いていても乗り降りがしやすいよう、後席の座面の端がラウンドしている。拡大

気張らずに軽快に乗れる

モーターアシストは限られているものの、パワートレインの制御がさらに進化したのか、一般道でのドライバビリティーは上々である。細かなスピードコントロールが苦手なCVTとの組み合わせでも、ごく自然に軽快にスムーズに走ることができる。ピキピキ鋭いレスポンスを与えればいいってものでもない。こういうのがいいんだよ、と思わず声が漏れる。

ただし、上りの山道などではどうしても物足りなく感じるのが正直なところ。不満を覚えるほど非力ではないが、床まで踏んでも、まあこんなものかな、という程度に普通である。もっとも、下りになるとがぜん元気が出る。ピーキーではないが正確なステアリング、ソフトに感じても奥はタフで音を上げないサスペンションとしっかりしたボディーなど、SGP最新版の美点が明らかでまことに頼もしい。リニアに反応してくれるからこそ自信を持って踏むことができる。雑みの少ない乗り心地も好印象である。

でもね、と最後にはやはり燃費の話である。「e-BOXER」のバッジを誇らしげにつけている割には燃費が大したことないのが以前からの弱点だ。スバルファンからはそれを言わないでよ、という声が聞こえてきそうだが、今どきはちょっと物足りない。クロストレックのWLTCモード燃費は従来型よりは若干向上して15.8km/リッターとされているが、スバル車の場合はターボエンジンだろうがハイブリッドだろうが、実用燃費をならしてみるとだいたい10km/リッターというのが相場ではないだろうか。レギュラーガソリン仕様なのが救いといえばそうだが、この点はスバルの大きな課題として残されている。もうひとつラゲッジルーム容量が315リッターと従来型よりもわずかに小さくなっていることも留意点だ。それを気にしなければファミリーカーとしては出色と言ってもいいのではないだろうか。とはいえ、自分ならFWDでもいいか、いやいっそ純ガソリン車が残っている新型インプレッサでもいいか、と迷ってしまうのが本当のところである。

(文=高平高輝/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)

全9色と豊富なボディーカラーのラインナップを誇る。試乗車の「オアシスブルー」は3万3000円のオプションカラー。
全9色と豊富なボディーカラーのラインナップを誇る。試乗車の「オアシスブルー」は3万3000円のオプションカラー。拡大
変速機はスバル車ではおなじみのチェーン式CVT「リニアトロニック」。斜めにレイアウトされたカップホルダーは中身が取り出しやすい。
変速機はスバル車ではおなじみのチェーン式CVT「リニアトロニック」。斜めにレイアウトされたカップホルダーは中身が取り出しやすい。拡大
エアコンの操作パネルはセンターディスプレイに統合されているが、オプションのシートヒーターのスイッチはセンターコンソールに残されている。これは「ツーリング」でディスプレイは要らないが、シートヒーターは欲しいという要望に対応するためらしい。
エアコンの操作パネルはセンターディスプレイに統合されているが、オプションのシートヒーターのスイッチはセンターコンソールに残されている。これは「ツーリング」でディスプレイは要らないが、シートヒーターは欲しいという要望に対応するためらしい。拡大
荷室の容量は315リッター。先代モデルよりも25リッター小さくなった。
荷室の容量は315リッター。先代モデルよりも25リッター小さくなった。拡大
荷室のフロア下にはハイブリッドシステム用のバッテリーが積まれている。
荷室のフロア下にはハイブリッドシステム用のバッテリーが積まれている。拡大

テスト車のデータ

スバル・クロストレック リミテッド

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4480×1800×1580mm
ホイールベース:2670mm
車重:1620kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター水平対向4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:145PS(107kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:188N・m(19.2kgf・m)/4000rpm
モーター最高出力:13.6PS(10kW)
モーター最大トルク:65N・m(6.6kgf・m)
タイヤ:(前)225/55R18 98V M+S/(後)225/55R18 98V M+S(ファルケン・ジークスZE001A A/S)
燃費:15.8km/リッター(WLTCモード)
価格:328万9000円/テスト車=371万2500円
オプション装備:ボディーカラー<オアシスブルー>(3万3000円)/ルーフレール<ダークグレー塗装>(5万5000円)/ステアリングヒーター(1万6500円)/フロントシートヒーター(3万3000円)/ナビゲーション機能(8万8000円)/サンルーフ<電動チルト&スライド>(8万8000円)/本革シート<ブラック×グレー>(11万円)

テスト車の年式:2023年型
テスト開始時の走行距離:2113km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:249.2km
使用燃料:26.3リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:9.5km/リッター(満タン法)/9.9km/リッター(車載燃費計計測値)

スバル・クロストレック リミテッド
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