クルマの車名はどう決める?
2023.06.13 あの多田哲哉のクルマQ&A新しい名前で出てきたり、昔のモデル名が復活したり……。車名にもいろいろありますが、例えばトヨタでは、どのようにして決めるのですか?
例えば「カローラ」とか、代々続いているクルマの場合は“車名ありき”なので先に決まっているわけですが、まったくの新型車となると、意外と発売の直前まで定まらず、ギリギリになってバタバタ決めるというケースが多いです。
もっとも、“決めはじめ”というのは、商品の全容がわかって最初の試作車ができたあたりです。
クルマのイメージが見えてきたところで、まず営業サイドの車両担当チームが案を出してきます。売れそうだとか、お客さんが覚えやすいという根拠で3つ4つ車名の候補を考えてきて、次に、私のような製品の開発部隊が検討する。それと並行して、商標チェックですね。
実は、名前を探すよりも、この商標登録の確認=車名として使えるかどうかのチェックこそが重要で、大変な作業なのです。登録の状況は国によっても異なりますから、こちらではOKなのにあちらでは車名を変えなければ販売できない、ということもあり得ます。
いい名前・呼称というのは、だいたい世の中では商標登録が済んでいるというのが現実で、毎回苦労を強いられますね。

多田 哲哉
1957年生まれの自動車エンジニア。大学卒業後、コンピューターシステム開発のベンチャー企業を立ち上げた後、トヨタ自動車に入社(1987年)。ABSやWRカーのシャシー制御システム開発を経て、「bB」「パッソ」「ラクティス」の初代モデルなどを開発した。2011年には製品企画本部ZRチーフエンジニアに就任。富士重工業(現スバル)との共同開発でFRスポーツカー「86」を、BMWとの共同開発で「GRスープラ」を世に送り出した。トヨタ社内で最高ランクの運転資格を持つなど、ドライビングの腕前でも知られる。2021年1月に退職。