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BMW M2クーペ(FR/6MT)

アイドル再臨 2023.08.02 試乗記 高平 高輝 新型「BMW M2」はコンパクトボディーやFRなどの要点をきちんと守りつつ、内外装や走りの質感が先代モデルから大幅にアップしているから素晴らしい。今回の試乗車はマニア待望の6段MT仕様。果たしてその仕上がりは?
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後輪駆動です MTもあります

最近はどれもボディーサイズが大きすぎるんだよなあ、とか、やっぱり後輪駆動がいいとか、どうせならMTで乗りたいよなあ……、などなどいつも何かしらの難癖を見つけていたマニアックなエンスーの皆さんもこれなら文句なしでしょう。兄貴分と事実上同じ直6ツインターボを積んだ後輪駆動の新型M2には最初から8ATに加えて同価格で6MTもあります。これでもう買わない理由が見つけられないはず。さらに言えば、左右のエアインテークがちょっといかついけれど、あの巨大なグリルだけはどうにもなじめなくて、なんてボヤいていたオジサンたちにも受け入れてもらえるのではないだろうか。

電気自動車の「iシリーズ」を立て続けに投入するいっぽうで、こんな“ボーイズレーサー”的クーペをさらりと発売するのだから、やはり「駆けぬける歓(よろこ)び」を社是として掲げるのはだてではない。しかも2代目M2は「M2.9」(クーペゆえに「M3.9」か?)ぐらいに呼んでもいいのでは、と思えるほど兄貴分に迫る出来栄えで、さらに8ATに加えて最初から6MTモデルも用意されている。胸の奥でポッと火が付いたような気持ちになってきませんか?

現行型「1シリーズ」をFFハッチバックに生まれ変わらせた際には、「もはや駆動方式にこだわる人はいない」などと言っていたのに、2022年に国内発売された新型「2シリーズ クーペ」はこのセグメント唯一の後輪駆動の牙城を守った。今どき、フロントエンジン・リアドライブ方式もマルチシリンダーの内燃エンジンも貴重品である。おかげで次のM2はどうなってしまうんだろう? という、世の中のエンスーの心配は杞憂(きゆう)に終わり(買える買えないは別にして)、めでたく新型M2(2代目)のデリバリーが2023年4月から始まったのである。

日本だけでなくグローバルでも2023年4月に発売された新型「BMW M2クーペ」。6段MTと8段ATがラインナップされ、価格はどちらも958万円。
日本だけでなくグローバルでも2023年4月に発売された新型「BMW M2クーペ」。6段MTと8段ATがラインナップされ、価格はどちらも958万円。拡大
ボディーの全長は4580mm。1985年の初代「M3」と1973年の「2002ターボ」の伝統を受け継ぐ最もコンパクトなMモデルに位置づけられている。
ボディーの全長は4580mm。1985年の初代「M3」と1973年の「2002ターボ」の伝統を受け継ぐ最もコンパクトなMモデルに位置づけられている。拡大
タイヤサイズはフロントが19インチでリアが20インチ。全幅もトレッドもすべて兄貴分の「M4」と同寸となっている。
タイヤサイズはフロントが19インチでリアが20インチ。全幅もトレッドもすべて兄貴分の「M4」と同寸となっている。拡大
マフラーは左右2本ずつの4本出しだ。
マフラーは左右2本ずつの4本出しだ。拡大
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“ほぼ”肩を並べたか

2シリーズ クーペを除いてFWD化されたけがの功名といっては失礼ながら、新型M2はその構造の多くを「M3」「M4」と共有しているがゆえに、先代のような明確な“長幼の序”がなくなり、兄貴分の「M4クーペ」と“ほぼ”肩を並べたと言っていい。何しろ、ボンネットの下の補強ブレースも、その頑丈そうな梁(はり)を避けるようにしてみっちり詰まったM謹製S58型3リッター直6ツインターボも兄貴たちとほぼ同じ。パワースペックは460PS/6250rpm、550N・m/2650-5870rpmと、スタンダードM3の480PS/550N・mよりピークパワーだけは若干落ちるが、以前ほどの違いはない。さらに前275/35R19、後ろ285/30R20というタイヤサイズはM3/M4と同じ、全幅もM4と同一だ。ステアリングホイール左右に備わる2個の「Mボタン」、ADAS介入レベルを選べる「Mモード」やトラクションコントロールのレベルを選べる「Mトラクションコントロール」などの機能も兄貴分と変わりはない。ということは、全長がM4より225mm切り詰められただけのショートホイールベース仕様(ホイールベースは110mm短い)と考えたほうが正確かもしれない。

兄貴分が4WDメインに進化したのにM2は後輪駆動で大丈夫かと心配する人がいるかもしれないが、少なくとも公道上では簡単にブレークするようなテールハッピーなやんちゃな弟分ではない。実際にコーナー出口でグイグイと加速するトラクション性能と、ちょっと頑張ったぐらいでは眉さえ動かさないような抜群のスタビリティーは従来型とは格段に違う。先代で追い込んだときに垣間見た若干のラフな挙動や危うさはすっかり姿を消した。まさにステージが上がった感覚である。

キドニーグリルは最新のBMW車としては小ぶり。フロントマスクが個性的すぎるゆえに「M3/M4」を敬遠していた方もこれなら納得だろう。
キドニーグリルは最新のBMW車としては小ぶり。フロントマスクが個性的すぎるゆえに「M3/M4」を敬遠していた方もこれなら納得だろう。拡大
3リッター直6ツインターボエンジンは最高出力460PS/6250rpmと最大トルク550N・m/2650-5870rpmを発生。どこまでいっても滑らかな回転感はさすが。
3リッター直6ツインターボエンジンは最高出力460PS/6250rpmと最大トルク550N・m/2650-5870rpmを発生。どこまでいっても滑らかな回転感はさすが。拡大
ブラックのメリノレザーとカーボンのトリムはオプションの「Mレーストラックパッケージ」(204万5000円)によるもの。飾り気はないがレーシーな雰囲気に仕立てられる。
ブラックのメリノレザーとカーボンのトリムはオプションの「Mレーストラックパッケージ」(204万5000円)によるもの。飾り気はないがレーシーな雰囲気に仕立てられる。拡大
カーブドディスプレイはメーターパネルが12.3インチ(写真)でダッシュ中央のタッチスクリーンが14.9インチ。エンジンのレッドゾーンは7200rpmくらいから。
カーブドディスプレイはメーターパネルが12.3インチ(写真)でダッシュ中央のタッチスクリーンが14.9インチ。エンジンのレッドゾーンは7200rpmくらいから。拡大

あえてのMT、アリだと思います

さらに8AT(Mステップトロニック)に加えて6MT仕様も用意されているのが、マニアにはうれしいところ。この薄いブルー(Mザントフォールトブルー)のM2は6MTモデルである。もちろん今やカタログ上のモード燃費も加速データも8AT仕様が上回るのだけれど(0-100km/h加速は8ATが4.1秒、6MT車は4.3秒という)、あえてこだわりたい気持ちもよく分かる。MTを操って滑らかできめ細かいストレート6のパワーをじっくりと味わうのは他では得られない。先代より操作の際の手応えが増したシフトレバーはストロークがやや長めだが、古いファンには初代や2代目のM3をほうふつとさせるかもしれない。ちなみに回転数を合わせてくれるシフトアシストも備わる(オフにすることもできる)。

とはいえ、本体価格はどちらも“ボーイズ向け”とはとても言えない958万円で、日本仕様は右ハンドルのみの設定だが、こだわり派の人はMT車の場合ABCペダルが全体的に右にオフセットしていることに注意されたい。さらにオプションのカーボンシェルバケットシートを装着するとクラッチを踏む際に太ももとシートのサイサポート部分が干渉することもお伝えしておく。この試乗車には「Mレーストラックパッケージ」(204.5万円! カーボンルーフやMカーボンバケットシート、カーボントリムなど)が装着されていた。体にピタリとフィットするのはうれしいが、バケットシートのクッション前部中央の盛り上がった部分が、人によってはクラッチを踏むときに脚にあたるかもしれない。せっかくなら、やっぱりMTでしょ! と言う前に問題なくペダル操作できるかどうか要確認である。

6段MTモデルの車両重量は8段ATモデルよりも20kg軽い1710kg。「M4」のショートホイールベース版ともいうべき出自のため見た目よりも重量級だ。
6段MTモデルの車両重量は8段ATモデルよりも20kg軽い1710kg。「M4」のショートホイールベース版ともいうべき出自のため見た目よりも重量級だ。拡大
ストロークの長いシフトレバーは操作感が重め。パーキングブレーキは電動式。
ストロークの長いシフトレバーは操作感が重め。パーキングブレーキは電動式。拡大
「Mレーストラックパッケージ」に含まれているカーボンシェルバケットシート。ホールド性が高いうえに電動調整が可能だ。
「Mレーストラックパッケージ」に含まれているカーボンシェルバケットシート。ホールド性が高いうえに電動調整が可能だ。拡大
ABCペダルはおよそ一本分ずつ右にオフセットしている。クラッチペダルはカーボンシェルバケットシートの中央正面付近にある。
ABCペダルはおよそ一本分ずつ右にオフセットしている。クラッチペダルはカーボンシェルバケットシートの中央正面付近にある。拡大

極めつけの終(つい)の一台かも

横長のカーブドディスプレイが目立つインストゥルメントパネルもM3/M4と基本同じ。物理スイッチはご多分に漏れずだいぶ整理されたが、iDriveコントローラーは残されているのが個人的には大変うれしい。2人分のリアシートは、頭上は窮屈ながら背の低い人なら何とか使えるレベルだろう。ラゲッジルームは390リッターと十分な容量を持ち、さらにリアシートバックレストは3分割(40:20:40)可倒式でトランクスルーも備わるので見た目以上に実用的だ。巨大なタイヤを破綻なく抑える足まわりはもちろん強力に締め上げられているが、角がとがった突き上げはないので、家族の目も欺けるかもしれない。そう、これ一台で日常使用からトラックデーまでをカバーできるし、安くはないが本体価格もぎりぎり大台以下に収まっている。どうです? もう一度、6気筒FRをMTで。私なんぞは、胸の奥の小さな熾火(おきび)がどんどん大きくなっていくような気がする。

最後にもうひとつ、衝突警報や車線逸脱警報、エマージェンシーブレーキなどは備わるが、MT車はACCではなく昔ながらのクルーズコントロールとなる点も要注意である(AT車はストップ&ゴー付きACC)。若いころとは違って、すっかり怠惰になったオジサンには気になるかもしれないので念のため。

(文=高平高輝/写真=小林俊樹/編集=藤沢 勝)

「M2」はRWDのみの設定。「Mスポーツディファレンシャル」を標準装備するほか、トラクションコントロールの介入度合いの調整もできる。
「M2」はRWDのみの設定。「Mスポーツディファレンシャル」を標準装備するほか、トラクションコントロールの介入度合いの調整もできる。拡大
乗車定員は4人。さすがに閉所感はあるものの、大人でも小柄な人なら座れないことはないサイズだ。
乗車定員は4人。さすがに閉所感はあるものの、大人でも小柄な人なら座れないことはないサイズだ。拡大
トランクルームの容量は390リッター。後席の背もたれを3分割で倒せる。
トランクルームの容量は390リッター。後席の背もたれを3分割で倒せる。拡大

テスト車のデータ

BMW M2クーペ

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4580×1885×1410mm
ホイールベース:2745mm
車重:1710kg
駆動方式:FR
エンジン:3リッター直6 DOHC 24バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:460PS(338kW)/6250rpm
最大トルク:550N・m(56.1kgf・m)/2650-5870rpm
タイヤ:(前)275/35R19 100Y XL/(後)285/30R20 99Y XL(ミシュラン・パイロットスポーツ4 S)
燃費:9.9km/リッター(WLTCモード)
価格:958万円/テスト車:1167万3000円
オプション装備:ボディーカラー<Mザントフォールトブルー>(0円)/サンプロテクションガラス(4万8000円)/Mレーストラックパッケージ(204万5000円)

テスト車の年式:2023年型
テスト開始時の走行距離:3295km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:330.4km
使用燃料:48.1リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:6.8km/リッター(満タン法)/7.0km/リッター(車載燃費計計測値)

BMW M2クーペ
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