ミツオカ・ビュート ストーリー15LX(FF/CVT)
語り継がれるストーリー 2023.10.23 試乗記 富山の個性派ミツオカのコンパクトカー「ビュート」がフルモデルチェンジ。ベースモデルの変更という大ナタが振るわれた新型は、新たに「ビュート ストーリー」を名乗る。果たしてドライブした印象はどんなものか。ミツオカを知るきっかけ
私がミツオカを知ったのは、まだ自動車メディアの仕事をする前のことで、「ラ・セード」が発売されたのがきっかけである。当時、私は大ヒットしたS13型の「日産シルビア」に乗っていたのだが、それをベースにクラシカルなエクステリアに仕立て上げたのがラ・セードだった。かなり目立つデザインだっただけに、たまに街なかで見かけると視線を奪われてしまったが、ドアとドアハンドルがシルビアのままだったから、どこか憎めない存在だった。
その後、ミツオカは1993年に「日産マーチ」をベースに初代ビュートを誕生させる。「ジャガー・マーク2」をほうふつとさせる丸みを帯びたボディーに丸目のヘッドライト、ハート型のラジエーターグリルなど、愛嬌(あいきょう)のあるデザインが人気を呼び、ラ・セードよりもはるかに多くのビュートを街で見かけるようになった。その後、ミツオカはベース車両のモデルチェンジに合わせてビュートを進化させる一方で「ガリュー」に「ヒミコ」、そしてオリジナルの「ゼロワン」「オロチ」を生み出している。最近では、アメリカンSUVスタイルの「バディ」が話題を集めているのはご存じのとおりだ。
ちなみにビュートの名前が「美・遊・人(び・ゆう・と)」を意味しているのは、原稿を書いているいま知ったが、遊び心のあるつくり手と、個性的な美を受け入れるユーザーが、このクルマを支えてきたということになる。
30年目の大改革
さて、ビュート ストーリーは、初代の誕生から30年後に登場した4代目である。メジャーな自動車メーカーでも30年続くモデルは珍しいだけに、ビュートシリーズが継続して販売されているだけでも正直すごいと思う。
最新型に進化するにあたって、これまでとは大きく変わったところが2つある。1つがベース車両。初代から3代目まではマーチを利用していたが、ご存じのとおり、タイで生産されていたマーチの輸入が2022年で終了したため、代わりに「トヨタ・ヤリス」が素材車として選ばれることになった。
そしてもう1つがボディー形状。これまでのビュートは3ボックスのセダンスタイルだった。ハッチバックのマーチに独立したトランクを追加することで、ジャガー・マーク2のようなデザインに仕立て上げていたのだ。それに対して新型はヤリスと同じハッチバックとしている。フロントマスクこそ先代のイメージを残しているものの、サイドビューやリアビューが大きく変わったことから、名前がビュート ストーリーに改められることになった。
実は3代目ビュートの時代にも、ハッチバック版の「ビュートなでしこ」が存在しており、4代目はその流れをくんでいるということになる。
個性的なフロントマスクは健在
駐車場にたたずむビュート ストーリーは、他のクルマとは明らかに異なる個性を放っていた。なかでもフロントマスクは、ビュートシリーズを知る人にはすぐにそれと分かるデザインに仕上がっていて、どこかホッとするところが、このクルマの魅力だろう。
その一方で、時代に合わせた進化も見られる。丸い大きなヘッドライトはLEDタイプになり、ハート型のラジエーターグリルにはミリ波レーダーの存在を示すカバーが施されている。グリルのすぐ脇にデイタイムランニングライトが点灯するのも、いまどきのクルマらしいところだ。
それに比べて、横からの眺めにはあまり“ビュート感”がない。ノッチバックからハッチバックに変更されているので致し方ないところだ。フロントフェンダーからリアドアにかけて弧を描くように配置されるメッキモールがアクセントだが、取って付けたような印象なのが惜しいところ。メッキセンターキャップが装着されるスチールホイールは標準装備。これならオプションのアルミホイールを選ばなくてもよさそうだ。
室内をのぞくとビビッドなモスグリーンの専用レザー(合皮)シートと、それに合わせたインストゥルメントパネルが目に飛び込んでくる。これらはオプションということだが、このクルマに乗るならこれくらいの演出はほしいだろう。残念なのはステアリングホイールやシフトレバーがウレタンという点で、ぜひともステッチ付きの革巻きを用意してほしいと思う。
ソツのない走り
今回試乗したのは、「15LX」というグレードで、1.5リッターの直列3気筒エンジンにCVTを組み合わせた仕様。駆動方式はFFである。
パワートレインや走行にまつわる部分に関しては、特にミツオカの手が入っているわけではなく、当然走りはヤリスそのもの。それだけに、走行性能にはソツがない。1.5リッターエンジンは3気筒特有の振動やノイズはあるものの、十分に活発な加速を見せるし、タイヤの硬さはあるものの乗り心地はマイルドで、高速走行時のフラット感もまずまずのレベルである。
ベースが現行型のヤリスだけに、1.5リッターとCVTの組み合わせ以外にも、1リッターエンジンやハイブリッドシステムが用意され、FFに加えて4WDが選べるなど、乗り手の好みに合わせて選べるのもうれしい。プリクラッシュセーフティーやレーントレーシングアシスト、レーダークルーズコントロールが用意されるのも見逃せない。
とはいえ、「ヤリスがベースだから買う」という人は少ないはずで、「あのスタイルに一目ぼれ」というのが一番の購入動機だろう。セダンからハッチバックに変わったことで、先代までの優雅さが多少薄れたものの、コンパクトカーでも個性的なデザインを楽しみたいという人がいるかぎり、このビュートシリーズは続いていくのだろう。
(文=生方 聡/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝)
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テスト車のデータ
ミツオカ・ビュート ストーリー15LX
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4090×1695×1500mm
ホイールベース:2550mm
車重:1050kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直3 DOHC 16バルブ
トランスミッション:CVT
最高出力:120PS(88kW)/6600rpm
最大トルク:145N・m(14.8kgf・m)/4800-5200rpm
タイヤ:(前)175/70R14 84S/(後)175/70R14 84S(ブリヂストン・エコピアEP150)
燃費:--km/リッター
価格:369万6000円/テスト車=451万3300円
オプション装備:ボディーカラー<ピスタチオカーキ>(35万2000円)/専用レザーシート<全席合成皮革・パイピング+ステッチ付き>+運転席&助手席シートバックポケット(38万2800円)/専用加飾パネルセット<インストゥルメントパネル1カ所+パワーウィンドウスイッチパネル2カ所>(8万2500円)
テスト車の年式:2020年型
テスト開始時の走行距離:53km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(7)/山岳路(0)
テスト距離:178.0km
使用燃料:10.9リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:16.3km/リッター(満タン法)/18.2km/リッター(車載燃費計計測値)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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