第43回:リアルかつ超理詰め! 小沢コージが「マツダ・アイコニックSP」が本当に出る! と勝手に確信したワケ
2023.11.08 小沢コージの勢いまかせ!! リターンズモビリティショーのナンバーワンビッグスター!?
想定外の盛り上がりをみせたジャパンモビリティショー。最初は「ついモーターショーって言っちゃう」とか「お笑いイベントなんていらない」とか、なにより「入場料3000円って高くね?」などと心配山盛りでしたが、平日に行ってみるとビックリするほどホームランな手応え。
早朝、国際展示場駅からお台場の東京ビッグサイトに向かうと、漂う人が多すぎて建物が蜃気楼(しんきろう)のピラミッドのように見えるからして(誇張ですw)。
人気の最大の要因は出展車のクオリティーの高さであり、今回の白眉(はくび)たるマツダの新コンセプトカー「アイコニックSP」でしょう! もちろんほかもデキはよいんですが。
まず誰が見てもそうとしか思えない超分かりやすいスーパーカーデザインがすてき。漠然とフェラーリとマクラーレンとロータスを足して3で割ったようというか、フロントミドシップだけどリアミドシップのようにも見えるというか、具体的にどこがどう似てるかはともかく、ある種のスーパーカースタイルの黄金比に満ち満ちております。美しさ、エロさ、バランスのよさ、ワイドさ、低さに曲線美。とにかくカッコよく、しかも小さくて日本人好み。
これを否定するのは和的な美人女優で言えば石原さとみやガッキーを否定するぐらいの勇気がいると思われます。それくらいの問答無用かつ典型的な味わい。
小沢的には「コレが『RX-7』の後継」などとはみじんも思えないくらいのスーパーカー度。
しかもそれを大衆プレミアムのマツダがつくったことが、ある種の価値破壊(もしや価格も)を生み、感動をもたらしていると思われます。
が、実は小沢が今回体験したのはありがたくもその先。開発担当の執行役員、佐賀尚人さんと話して分かったアイコニックSPの予想を超えるリアル度です。スペック、パワー、ロータリーの構成、サイズ感。聞けば聞くほど、絵に描いたモチじゃなくて本当につくろうとしてんな! 感バリバリ。無論、時代的に難しいんで障壁も高そうですが、「MX-30ロータリーEV」でつくった「8C」ロータリーもあるし、「ロードスター」の技術もある。あと4年後には出てきそうですよね? 佐賀さん(笑)?
佐賀さんとのリアルすぎる会話
小沢:あのぅ……超カッコいいですね。
佐賀:いいでしょ(笑)。
小沢:コレちょっと文句言えないくらいじゃないですか。これが気に入らないクルマ好きはほぼいないんじゃないかってレベル。
佐賀:マツダはいつの時代もスポーツカーを出してきたし、ファンの皆さんに助けられてきた。「コスモスポーツ」もセブンもそうだし、ロードスターもそう。今後もやはりわれわれとしてクルマって楽しいものだよね、ワクワクするものだよねっていうのをまず表現したかったんです。それを今持っているコンパクトスポーツカーの技術で表現するとこういうカタチになるかなと。
小沢:最初にティーザー写真で見たときは「新ロードスターか?」って思ったんですけど完全に裏切られました(笑)。
佐賀:これ全長4.18mぐらいでロードスターよりちょっと大きいんですね。やっぱり4.2mは切りたかったんです。2シータースポーツってそれくらいが真骨頂で、4.2mを超えると4座もできちゃうんですよ。なおかつ運転席はなるべく車両の中央にっていう。そこも意識してます。
小沢:マツダがつくりたいコンパクトスポーツを考えるとそのあたりの要件はおのずと決まると。
佐賀:あとはボンネットの低さですよね。今回はいわゆるMX-30ロータリーEVから派生させたカタチでやってますけど、エンジンを縦に積んでいることを想定してます。
小沢:縦置きするんですか? 発電用だから横に置こうがどっちでもいいんじゃ?
佐賀:そのとおり。ただ、コンパクトさを最大限に生かしつつ、なおかつスポーツカーは重量物をなるべく真ん中に置きたいじゃないですか。
小沢:いわゆる王道のフロントミドシップですね。まさしく文法どおりにいく。
佐賀:そうです。ある程度の技術想定をしながらこのデザインに入れることを今回やったんですね。
小沢:それから今ではイタリア人でもやらないみたいな、昔のピニンファリーナがデザインしたような、ある種の黄金律の塊のようなカタチが美しすぎて。アチラはリアミドシップですが、こちらはリアミドでもフロントミドでもどっちにも使えそうな美しさ!
佐賀:電動化時代になると空力が命になってくるんで、どれも同じようなカタチをしてくるんですよね。いわゆる円すい形というか。そういう時代でもあえて抑揚のあるボディーをつくることで、やっぱり見たときの美しさ、クルマ本来の美しさを表現できればと。
軽くなければ意味がない
小沢:以前の東京モーターショーで「RX-VISION」が出ましたが、あれじゃノーズが長すぎてロータリー積む必要ないじゃないか、という説もありましたが……。
佐賀:われわれとしてはどちらも否定するつもりはないんですが、より現実解を求めて、ある程度の技術のソリューションが入った状態で骨格をつくるとどうなるの? という考えでやってます。
小沢:アイコニックSPのほうがより現実的だと。
佐賀:しかもこのサイズで、パワーウェイトレシオでは4を切りたい。3.9ぐらいに持っていきたいんですよ。そうすると「ポルシェ911」(標準モデル)とかあのへんのカテゴリーに大体入ってくるんですよね。そうすると走っても楽しいし、機敏だし、そういうものをつくりたい。すると車重は最低限でも1.5tを切りたいし、電池だけでやるんじゃなくて、小型のロータリーも使いながらというのを想定して。
小沢:なるほど。これはある意味ピュアなBEVスポーツカーに対するアンチテーゼで、フルに電池を搭載するとどうしても重くてデカくなる。そこをロータリーのコンパクトさを生かして小さく軽くしようと。
佐賀:そうですそうです。
小沢:バッテリーも多少は載せますよね?
佐賀:載せますね。
小沢:半分ハイブリッドのプラグインハイブリッドになる可能性が?
佐賀:そういうこともスコープに入れてます。今はいろんなハイブリッド、いろんなシステムができているじゃないですか。その技術進化で、じゃあ電池と内燃機のバランスをどう持たせていくかっていうのが今後の課題にはなるんですけどね。
小沢:そこが最大のカギですね。ってことはつまりロードスターともかつてのピュアロータリーのRX-7ともまた違う、第3のマツダスポーツ?
佐賀:どうですかね(笑)。解釈はいろいろで、実はロードスターよりも座席間を縮めたり、センターになるべく重量物を配置したりすることを考えてます。なによりも大きくせず、コンパクトで軽快に走るというのが真骨頂なので。小さくするとどんどん軽くなるし、バッテリーも省ける。
小沢:とにかく今の電動化時代の、ある種マツダが理想を追い求めるロータリースポーツってことですね。
佐賀:そうですそうです(笑)。
聞けば聞くほど障害はあれど、本当に出てきそうな気がしてきたマツダ・アイコニックSP。ソイツが「RX-9」になるか、全然違う「MXロータリー」と名づけられるかは分かりませんが、ぜひ期待したい。ってか早く出してくれぃ~。
(文と写真=小沢コージ/編集=藤沢 勝)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
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