「スバル・スポーツモビリティー コンセプト」は世紀の駄作か それともスバルの輝ける未来か
2023.11.09 デイリーコラムスバルの目指す先を分析する
記念すべき第1回開催となったジャパンモビリティショー(以下、JMS)が盛況のうちに幕を閉じた(参照)。既報のとおり来場者数は111万2000人を数え、前回の東京モーターショー2019の来場者数130万0900人には及ばなかったが、クルマに限らずテーマをモビリティー全般に広げ、新しいコンテンツも展開。「ニッポンのクルマづくり」や「移動にかかわるビジネス」のポテンシャルを肌で感じることができたというのが個人的な印象だ。
そうしたなか、クルマ好きの自動車メディア関係者が何人か集まると、誰が言い出すとはなしに自然と「今回のJMSでどのコンセプトカーが一番良かった?」というような話題になる。クーペボディーの「マツダ・アイコニックSP」や「レクサスLF-ZC」「ダイハツ・ビジョン コペン」が仲間内でのいいね! を集めるなか、「これはもうダメだね」と、ほぼ満場一致で魅力がないとのやり玉に挙げられるモデルがある。EVのコンセプトモデル「SUBARU SPORT MOBILITY Concept(スバル・スポーツモビリティー コンセプト)」だ。
もっとも、筆者の半径100mぐらいの限られた非常に狭い交際範囲における勝手な評価なので、世間の意見と大きくずれている可能性はある。しかし、関係者の集まる席で試しに「スバル・スポーツモビリティー コンセプトに注目した」と言えば、どこかかわいそうな子を見るような目で「そうなんですか」と返される。
スバル・スポーツモビリティー コンセプトは、あくまでもデザインスタディーモデルとして発表された。もっと言えばエクステリアデザインのプロポーザルで、JMSでもインテリアはお披露目されていない。そしてもちろんこれがそのまま市販化されるわけではない。果たしてスバルは何を表現したかったのか。そしてその目的とは? スポーツモビリティー コンセプトのデザインから、スバルの目指す先を分析してみようというのが今回のテーマである。
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0次安全へのこだわりも
一見2ドアクーペのフォルムではあるものの、四隅で踏ん張るタイヤや極端に短い前後のオーバーハング、しっかり確保された最低地上高などから、オフロードもいけるクロスオーバーモデルであることがわかる。そのプロフィールからは、「ポルシェ911ダカール」や「ランボルギーニ・ウラカン ステラート」が連想される。EVということであれば、「ランボルギーニ・ランザドール」のほうが近いといえるかもしれない。
スポーツカーやGTの世界も背が低くワイドなモデル一辺倒から、それらしいフォルムでありながら高めの最低地上高を確保するという多様化の時代を迎えようとしていることがわかる。その流れはスポーツモデルのSUV化とも言えそうだが、とにかくSUVブームがメインストリームとなった現代では、車高の上がったスポーツカーもカッコイイと認識されつつある。
そうしたスポーツカーの“新種”と並べてみると、スポーツモビリティー コンセプトもがぜんフレッシュでスタイリッシュに見えてこないだろうか。全幅よりグッと内側に入ったキャノピー風のグラスエリアによってショルダー部が強調され、そのショルダー下に存在を主張する前後のフェンダーが配置される。前後フェンダーの間にあるドアのくびれがアクセントとなり、シンプルだが肉感的な魅力も覚える。ショルダー部がフラットで滑らかにボディーを取り囲むように構成されているのも見逃せないポイントだ。
ランボルギーニが得意とするフォージドカーボン風のコンポジット素材をむき出しで使用した前後パンパーやサイドシル、ホイール、デジタルサイドミラーはワイルドさと先進性をうまく表現している。それは、軽さと強さを有するというメッセージでもある。Bピラーだけが強調されるグラスエリアからは視界の良さ、つまり、スバルが最も腐心している0次安全へのこだわりが伝わってきて実に興味深い。
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フェンダーはクラッディングの進化版?
ヘキサゴングリルの中央にスプレッドウイングが配置されているスバルの顔ともいえるフロントフェイスではないことも注目のポイントだ。スバルは新しい顔をグリルというパーツではなく、レクサスの「スピンドルボディー」的に面全体で表現したいのかもしれない。この車両でいえば、ブルーのエアインテークの上で左右に広がるパネル形状である。たとえば、フロントフェンダーに向かって斜めに上がるデザインをウイング形状と見立てることはできないだろうか。グリル代わりとなる大型のエアインテークに入った空気は、走行時にボンネットから排出される。エンジンのないEVだからこその空力的アプローチも新しい。
そのエアインテーク上部の中央寄りに配置された2つのLEDのランプは、ラリーカーの補助灯をイメージしたというが、これが「鼻の穴のようでどうにも」という意見には賛同しそうになる。もっともランプ類で見るべきは、水平に配置されたLEDブレードの上下に備わる複数のLEDランプだ。これはリアコンビランプでも繰り返し使われているモチーフである。ヘッドランプ点灯時に白色のLEDが6つ並んでいるのは、スバルのエンブレムにもあるプレアデス星団=六連星を連想させる仕掛けだろうか。いずれにしても現行モデルと関連性のないこうした意匠は、灯火類でも新しいスバルデザインを模索している証拠とみていい。
そしてもう1つ。スバルの現行モデルに、クラッディングが多く用いられていることはご存じのとおりである。立体的なスポーツモビリティー コンセプトの前後フェンダーは、新世代モデルに用いられるクラッディングのプレビューであり、それは力強い骨格をイメージさせるカーボンのサイドシルと連動してタフなイメージをより印象づける……と、考えられはしないだろうか。原義とは異なるが、クラッディングを付け足すのではなく最初からボディーに組み込まれているようなイメージだ。
そうして観察を続けると、デザインアプローチ的な妄想は広がる。現行モデルのほとんどは、2013年から始まった「SUBARU VIZIV CONCEPT(スバル・ヴィジヴ コンセプト)」の流れをくんだものだった。そこから進化させ躍動感とソリッドな塊感が融合した次世代のスバルは、伝統の水平対向エンジンやシンメトリカルAWDに頼らずとも、つまり来るEV時代においてもデザインで勝負できるのではないか。コンセプトゆえに世間に問い、評判が芳しくなければ再考するということもあろうが、スポーツモビリティー コンセプトを「カッコ悪い」と一笑に付したオーディエンスを驚かせるようなニューモデルの登場を期待しています。
(文=櫻井健一/写真=スバル、webCG/編集=櫻井健一)
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櫻井 健一
webCG編集。漫画『サーキットの狼』が巻き起こしたスーパーカーブームをリアルタイムで体験。『湾岸ミッドナイト』で愛車のカスタマイズにのめり込み、『頭文字D』で走りに目覚める。当時愛読していたチューニングカー雑誌の編集者を志すが、なぜか輸入車専門誌の編集者を経て、2018年よりwebCG編集部に在籍。
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