BMW R1300GS(6MT)
頂点のその先へ 2023.11.18 試乗記 BMWが誇るアドベンチャーバイクの王者が「R1300GS」に進化。車体もエンジンもサスペンションも、すべてが刷新されたニューモデルはどのような走りを身につけているのか? スペイン・マラガで試乗し、その実力を確かめた。次の10年を見据えて
BMWというブランドではもちろん、アドベンチャーバイクというセグメントでも“GS”が支柱的な存在となって久しい。上位モデルは2013年に従来型が登場し、2018年秋には可変バルブリフト&タイミング機構を搭載する「R1250GS」シリーズが登場。「BMWシフトカム」エンジンがもたらすドライバビリティーのよさもあって、10年のモデルライフを経ても走りの鮮度と販売面での人気は下がっていない。そんななか、2023年9月下旬にBMWは新型モデルR1300GSを発表した。
あれから1カ月。スペイン・マラガで開催されるメディアテストに向かった。BMWにとっておよそ10年間隔で開かれるその一大行事に、興味津々(しんしん)なのである。
まずは新型、R1300GSの特徴を見ていこう。開発者が目指したのは車体が大型化する傾向を徹底的に抑え、アジリティーを上げていくことだった。本国仕様での比較になるが、R1250GSよりも新型は走行可能な状態で12㎏の減量が施され、車体パッケージもスリム化。現行型と比較して「押し出し」の部分が薄まっているのがわかる。
過去のモデルサイクルに照らせば、新型はこれからの10年に向けつくられている。厳しくなる環境規制にも対応しつつ、車体パッケージを刷新する。これはどこか特定の部位を小型化して達成したのではなく、ありとあらゆる部分を見つめ直した結果だ。
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エンジンもフレームも全面刷新
まずエンジン。単体で3.9kg減量された新型エンジンは、全長を短縮化するためクランクシャフト直下のケース内にトランスミッションをレイアウトした。シリンダー位置が高く見えるのは間違いなくこのためだろう。
先代はシリンダー前側に冷却フィンを設け、水冷に加え積極的に空冷効果も得ていたが、新作では冷却方式は空/水冷としつつもフィンを大幅に簡略化。シリンダーそのものが細身になった。ボア×ストロークは106.5×73.0mmと、ボアは4mm拡大、ストロークは3mm短縮され、圧縮比は0.8高い13.3:1へ。排気量は1300ccに拡大している。前後長を短縮したこのユニットの恩恵で、車体下部に大容量の排気コレクターを配置でき、管長、消音といったエンジン特性に関わる重要な部分も刷新。車体側部に配置するサイレンサーの小型化、慣性重量の削減もしてみせた。
車体面の変化も大きい。これまでは一体型のパイプフレームを採用していたが、新型のそれは楕円(だえん)状に成形した鋼板をメインチューブに用い、Cの字形状の鋼板パーツでスイングアームピボットまわりを構成。アルミダイカスト製の別体リアフレームを使うことで、スペース効率と剛性バランスを高いものとしながら、外皮に影響しないコンパクトな内部構成を可能にしている。
同時に、従来どおりテレレバーと呼ばれるAアームを持つフロント懸架方式を採用しながら、その支持剛性や作動性を向上させた「EVOテレレバー」を採用している。また短くなったエンジン全長に合わせて伸ばされたリアスイングアームや、その内部に収まるドライブシャフトの継ぎ手部分とユニバーサルジョイントの大型化により、走行時における上下方向の可動負荷を低減している点も特徴だ。
加えて、停止の直前に30mm車高を下げて足つき性を向上させる「アダプティブビークルハイトコントロール」の装備も見逃せない。BMWのものは電気的に油圧によるイニシャルプリロードを調整する構造で、その動作は素早く滑らかなのが特徴だ。再スタート後に車高が自動復帰することは言うまでもない。
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ハンドリングは正確無比
またがってみる。ポジションはGSそのもの。コンパクト化されたフロントまわりにより、直近の路面状況も視認でき大きな安心感がある。重心位置に集まった重量物の恩恵で、サイドスタンドから起こしただけで、減じた車両重量以上の運動性が想起される。エンジン単体とリチウムイオンバッテリーなどを含むドライブトレインで6.5kg減量し、その他各部でもグラム単位の軽量化がなされていることに加え、マフラーの小型化、短く切り上げたテール等、ライダーから遠い部分がコンパクトになっていることも乗り味に大きな違いをもたらすに違いない。
エンジンを始動すると乾いた排気音が耳に届いた。少し重くなったように感じるクラッチレバーを離すと、押し出し感をことさら主張することもなく動き出す。低速時の安定感に隙はなく、それでいて1250のような重厚さもない。驚いたのはハンドリングの軽さだ。まるで前後17インチのバイクのようなレスポンスで左右に舵角があたる。作動性を向上させたフロントまわりの恩恵がここに表れている。
市街地を抜け、ワインディングロードに入ってその印象は確信に変わる。極めて正確に思い描いたラインをトレースするR1300GSには、一切の“弛(たる)み”のような部分がない。ブレーキは制動力の立ち上がりが、従来モデルより軽いレバー操作力から得られる。
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オンでもオフでも感じられる進化
次第にペースを上げる。トルクの打ち出しから速度を乗せるタイプだった1250と比較すると、1300のそれは3000rpmあたりから始まるトルクバンドに入ってさえいれば、アクセルの強弱にリニアに反応。操作によっては、それこそ前輪をわずかに路面から浮かせ、雄たけびを上げるように増速する。それでもハンドリングの正確性は保たれ、ライダーは不安に包まれることがない。左右への切り返しもタイヤの接地点を軸に一体感が途切れない。
高速道路では自慢のアクティブクルーズコントロール(ACC)を味わう。もうフツーのクルコンには戻れない快適さだ。正直、これだけでも買い換えの動機に十分である。そして追い越し加速を試みれば、ここでも怒涛(どとう)の世界をGSが体験させてくれた。
これだけの舗装路性能だ。多少ダート性能が減じていても文句を言うまい。そう思って挑んだダートセクションだったが、それはまったくの杞憂(きゆう)で、1250GSに対して劣る部分はまるでなく、ハンドリングの正確性、軽快さ、そしてコントロールする楽しさまで大いに増している。恐るべしBMW。自らの傑作を打ち破るこの新作、王者にスキなしだったのである。
(文=松井 勉/写真=BMWモトラッド/編集=堀田剛資)
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2210×1000×1405(ウインドスクリーン:ロー)mm
ホイールベース:1520mm
シート高:850mm
重量:237kg(DIN空車時)/250kg(日本国内国土交通省届出値)
エンジン:1300cc 空/水冷4ストローク水平対向2気筒 DOHC 4バルブ(1気筒あたり)
最高出力:145PS(107kW)/7750rpm
最大トルク:149N・m(15.2kgm)/6500rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:20.83km/リッター(WMTCモード)
価格:284万3000円

松井 勉
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