アウディQ7 3.0TFSI クワトロ(4WD/8AT)【試乗記】
あくまでセダンなSUV 2010.12.13 試乗記 アウディQ7 3.0TFSI クワトロ(4WD/8AT)……1003万2600円
ダウンサイジングコンセプトにのっとり、パワートレインを一新した「Q7」。クールな都会派SUVは、どう変わった?
泥とは無縁のスタイル
「アウディQ7」は、2005年のフランクフルトモーターショーで発表されたSUVである。ブランドの枠を超えた姉妹車「ポルシェ・カイエン」や「フォルクスワーゲン・トゥアレグ」がデビューしたのが2002年だから、ずいぶんと遅れての登場だ。北米で吹き荒れたSUVブームを追って投入されたモデルとしては、最後発の1台になる。
Q7は、「アウディ」が持つブランドイメージとの整合性に十分配慮され、
「エス・ユー・ブイって何?」「ああ、クロカンのことだよ」
……という、いささか乱暴な説明がそぐわない、いかにもアウディらしいクールなスタイルをまとったモデルだ。
スポーツ・ユーティリティ・ヴィークルにして、「生涯(!?)泥とは無縁だろう」と思わせるものがある。ただ、天地が厚いボディに要素がすくないデザインゆえか、ときに「うすらデカい……」と感じることがないわけではない。
実際、アウディQ7は大きい。5090mmの全長に1985mmの全幅は、ある種の覚悟を持って臨まないとなかなか保有には踏み切れない。ちなみに、新しいポルシェ・カイエンが4846mmと1939mm、SUVの雄たる「フォード・エクスプローラー」(まもなく旧型になる現行車)は4930mmと1870mmである。
都会ではいささか持てあまし気味のボディサイズだが、しかしこの手のクルマは、都会で乗らないと意味がない。
「さらりとスタイリッシュにやせ我慢できる貴方(あなた)に」。
そんなくだらないコピーもどきを胸に、今回の試乗車と対面すると、「アレ!?」とちょっと意外な気がした。
3リッターにダウンサイズ
全体に「ツルリ!」とした印象だったQ7が、なんだかデコラティブになっている。前後のバンパー下部からボディ底面にかけてアンダーカバーが付き、サイドシルの下には、前後ドアにわたってサイドステップが備わる。フェンダーは黒い樹脂でカバーされている。
車両価格772万円のテスト車「Q7 3.0TFSI クワトロ」には、新しいオプション「オフロードスタイリングパッケージ」(61万円)が装着されていたのだ。試乗車を前に、当初の、優等生がムリに悪ぶっているのを見るような居心地の悪さはすぐに消え去って、「これはこれで愛嬌(あいきょう)があっていいか」と思い直す。
デビューから5年。クールなSUVにも、わかりやすく目新しいテコ入れが必要なのだろう。そういえば、2005年のフランクフルトショーに先立つこと2年ほど前、デトロイトに展示されたコンセプトモデル、後のQ7を暗示する「パイクスピーク」も、けっこう派手だった記憶がある。
さて、日本でのQ7は、これまでの3.6リッターV6、4.2リッターV8の2本立てから、3リッターV6に1本化された。このFSIガソリン直噴エンジンには、スーパーチャージャーが装着される。272ps/4780-6500rpmの最高出力こそ、旧3.6リッターの280prm/6200rpmに及ばないが、そこは過給機付きエンジンである。40.8kgm/2150-4780rpmの最大トルクは、3.6リッターV6(36.7kgm/1500-5000rpm)と4.2リッターV8(44.9kgm/3500rpm)のほぼ中間に位置する数値だ。しかも、アウディの「ダウンサイジングコンセプト」にのっとった3リッターFSIのよさは、良好なアウトプットだけではない。
背の高い「A6」?
3リッタースーパーチャージドを搭載するQ7の10・15モード燃費は、8.6km/リッター。従来の3.6リッターモデルは7.6km/リッターだから、13%もの燃費向上を果たしたことになる。CO2排出量は270g/km。
環境性能のアップには、可変バルブタイミング機構をもつ6気筒エンジンのブラッシュアップや過給特性のチューニングもさることながら、新しいトランスミッションの採用も大きく貢献しているはずだ。6段ATが新しい8段ATにグレードアップし、エンジンをより効率よく使うことが可能になった。
また「エネルギーリカバリーシステム」と称して、ブレーキ時に発生するエネルギーの一部を電気エネルギーに変えて、蓄積する仕組みも採用された。加速時にオルタネーターの発電量を抑えてエンジンの負荷を多少なりとも低減し、燃費向上に生かそうとするものだ。
サイドステップを踏んで、アウディQ7のドライバーズシートへ。車内の眺めは、みごとに「アウディ」。モダンなデザインとウッドパネルの組み合わせが美しい。
スターターボタンを押して、2330kgのボディを3リッタースーパーチャージドで運ぶ。フラットな出力特性で、高速道路を淡々と、しかしハイスピードで走るのに最適だ。乗り心地は、こちらも「アウディ」な感じで、やや硬めでスポーティ。あたかも背の高い「A6」といった運転感覚。「それならA6でいいではないか」と思わないでもないが、それは人それぞれである。
Q7は、通常2列シートだが、オプションで3列シートの「7シーターパッケージ」が備わるから、「スタイリッシュな子だくさん家族(!?)」を目指すにはいい。「子供は車内を汚すし」「お隣の暴れん坊も乗せなきゃいけないし」「そういえばキャンプファイヤーの材料も運ばなきゃね」といったフレーズはあまりそぐわない、あくまでセダンなSUVである。やはり購入には、ある種の覚悟が必要だ。
(文=細川 進/写真=郡大二郎)

細川 進
-
BMW X1 sDrive20iオリジナル(FF/7AT)【試乗記】 2026.9.2 BMWのコンパクトSUV「X1」に新グレードの「オリジナル」が登場。走りの楽しさをはじめとしたBMWらしさをキープしつつ、装備の厳選によって価格抑制を図った新たなエントリーグレードだ。都市部におけるドライバビリティーとユーザービリティーをリポートする。
-
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】 2026.9.1 2020年のデビュー以来、間断なく進化を続けてきたコンパクトスポーツの「トヨタGRヤリス」。一般ユーザーの間ではもちろん、コンペティションの世界でもチューニングのかいわいでも光を放つ一台は、2026年モデルでどう進化したのか? その走りを報告する。
-
アウディQ3スポーツバックTFSIクワトロ150kWアドバンスト(4WD)【試乗記】 2026.8.31 フルモデルチェンジした「アウディQ3スポーツバック」に試乗。プラットフォームやパワートレインこそ従来型の改良版ではあるものの、内外装のデザインやインフォテインメント、効率性のすべてにおいて大幅な進化を遂げたという。その仕上がりやいかに。
-
トヨタbZ4XツーリングZ(4WD)【試乗記】 2026.8.29 「トヨタbZ4X」にワゴンのようなロングボディーを持つ「ツーリング」が登場。ただ長くなっただけではなく、今回試した4WDモデルではパワーもアップ。乗り味にも微妙な影響を及ぼしているから見逃せない。経路充電を試しつつ、370km余りをドライブした。
-
BMW 120オリジナル(FF/7AT)【試乗記】 2026.8.25 BMWの主要モデルに新グレードの「オリジナル」が設定された。位置づけとしては新たなエントリーグレードということになるが、BMWらしさを損なうことなく装備を厳選し、価格を抑えたのがポイントだという。「1シリーズ」の「120オリジナル」の仕上がりをリポートする。
-
NEW
北米産の800万円級SUV「トヨタ・ハイランダー」「日産ムラーノ」「ホンダ・パスポート」で一番“買い”なのはどれか?
2026.9.4デイリーコラム特例により国内導入されることになった北米生産のジャパニーズSUVは、3車種ともにサイズと価格帯が接近している。では、そのなかで最も“買い”なのは? それぞれの仕様を見比べてみた。 -
ホンダがコンセプトモデル「アキュラ・ネクセラ ビジョン」を発表 次世代デザインを読み解く
2026.9.3デイリーコラム本田技研工業の米国現地法人アメリカン・ホンダモーターが、アキュラブランドの次世代デザインを示すというコンセプトモデル「ネクセラ ビジョン」を初公開した。バタフライドアを採用するこのスポーツカーは、次世代アキュラの何を表現しているのか。 -
BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ(後編)
2026.9.3あの多田哲哉の自動車放談ワインディングロードで新型「BMW iX3」のステアリングを握った多田哲哉さんは、その走りに感心した様子。どんなところが優れているのか、トヨタのエンジニアの視点で語ってもらおう。 -
新型「三菱パジェロ」の外装・内装を写真でチェックする
2026.9.2画像・写真5年間のブランクを経て、三菱のフラッグシップSUV「パジェロ」がついに復活! 「グランドカリスマ -泰然自若-」をコンセプトにデザインされた本格クロスカントリーモデルは、どのような姿をしているのか? 内外装の詳細を、写真で紹介する。 -
復活の決め手はこっくりさん!? 新生「三菱パジェロ」誕生の経緯とその狙い
2026.9.2デイリーコラム5年間の沈黙を経て、ついに登場した新型「三菱パジェロ」。スリーダイヤモンドが誇る荒野のフラッグシップは、いかにして復活を遂げたのか? 開発の経緯や内外装デザインの詳細、パワートレインに見るクルマの“狙い”をリポートする。 -
第127回:新型BMW X5(後編) ―迷走するBMW 結局アナタは“ノイエクラッセ”でなにがしたかったの?―
2026.9.2カーデザイン曼荼羅その姿が明らかとなるや、賛否両論を巻き起こしている新型「BMW X5」。このクルマは既存のBMW製SUVとはなにがちがうのか? そもそもBMWは“ノイエクラッセ・デザイン”になにを託していたのか? カーデザインの識者と、迷走するBMWの明日を探った。





























