世界戦略の展望は? アルファ・ロメオの電動化は? ステランティスのキーマンが“未来”を語る
2024.01.19 デイリーコラム時代はインド&アジアパシフィック!
去る2024年1月10日、ステランティスでインド・アジア太平洋地域のビジネスを統括するアシュワニ・ムッパサニCOOが来日し、同社のグローバル戦略に関する説明会が行われた。
あらためて紹介する……までもないことだが、ステランティスは米・欧14ものブランドを擁する世界第4位の巨大自動車グループである。それがなぜ、わざわざ日本で世界戦略の説明を? と問われれば、そのココロは新任COO(ムッパサニ氏は2023年11月に現職に就任)の任地巡察の一環だったご様子。とはいえ、最初の訪問地として日本が選ばれたことについては、変にひねくれず「日本への期待の表れ」と受け止めてもよさそうな雰囲気だった。まぁ、わざわざそんなことを気にするのは、性格の悪い記者だけかもしれないが。
プレゼンテーションは過去の発表(参照:その1、その2)のまとめ的な内容で、「2030年までに電気自動車(BEV)の販売比率を欧州で100%、米国で50%に高める」「ソフトウエアや知能化技術、自動運転技術など、車両のデジタル化を加速させる」「プラットフォームを“スモール”“ミディアム”“ラージ”“フレーム”の4種類に集約する」「利益率を25%高める」等々の目標を再確認。一方で、氏が統括するインド・アジア太平洋地域の現状と目標も語られた。同地域でのステランティスのシェアは今のところ5%だが、2030年までに75の新車種を投入し、それを20%まで高める。またBEVの販売比率を50%に引き上げる、というものだ。
今、インド・アジア太平洋地域は、中国の次にくる成長市場として世界中から熱視線を浴びている。GDPは15.3兆ドル(2022年)と、中国に比肩。人口は28億人と世界の35%を占め、今後も増加が見込まれている。もちろん自動車の生産・販売台数も、2030年まで右肩上がりの成長が予想される。
現在、ステランティスはマレーシアのクアラルンプールに同地域の本部を構え、インドやマレーシア、ベトナムに生産拠点を持ち、またインドには世界的なソフトウエアの開発センターも開設している。従業員数は地域全体で4500人ほどだが、上述の目標や経済環境を思えば、その体制は今後ますます増強されることだろう。
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柔軟な判断から透けて見える現実主義
ステランティスは2020年に誕生したばかりの自動車連合であり、カルロス・タバレスCEOの人となりもあってか、巨大グループなのにとにかくかじ取りが大胆で柔軟だ。最近では欧州自動車工業会をアッサリ脱退し、独自の委員会を旗揚げ。また広汽集団との合弁解消に生産工場の売却と、世界最大市場の中国でもその判断は実にドライだ。ムッパサニCOOも「政治的なお話はちょっと」としつつ、「私たちの哲学はシンプル。自分たちがコントロールできないのであれば、そこで商売はしない」とさっぱりしたものだった。一方で、その中国では新興EVメーカーである浙江零跑科技(リープモーターテクノロジー)の株式を取得し、提携を図ってもいるわけで、とにかく要るもの、要らないものの選別と資源投入の判断がわかりやすい。
こうした傾向は、みんな好きな(笑)EV戦略にも言えるもので、当初は「2030年までに欧州販売の70%以上、米国販売の40%以上をLEV(ローエミッションビークル)にしたい」と慎重だった目標は、既述のとおり2022年春に「欧で100%、米で50%をBEVにする」と上方修正。BEVの世界販売を500万台とする旨が語られた。ただし、日・欧・米の一部のメーカーのように、「いついつまでに全世界で100%BEV化する」とは明言しておらず、他の選択肢の排除にこだわる様子はない。
考えてみればそれも当然で、なにせ彼らは、世界130の国と地域でクルマを売るグローバル企業なのだ。現地の行政や交通事情、電気インフラを無視して、「BEV以外、全部やめます」なんて言えるはずがない。「需要が変われば戦略も変わる」(ムッパサニCOO)というのは、至極もっともな話だろう。そのドラスティックさに、過去には蒙昧(もうまい)な筆者も「……行き当たりばったりでは?」なんて思ったこともあるが(失礼!)、ステランティスの世界戦略は、非常に現実主義的なのだ。
一方で、「世界はわかった。日本はどうよ?」と話を振ると、「それについては打越さんに任せているので」とこれまた潔い回答。その打越 晋ステランティス ジャパン社長の話については、過去に紹介したとおりだが(参照)、ムッパサニCOOいわく「数を追うより顧客満足度を追求する」「集合住宅が多くBEVの普及が難しいのは知っている。BEVはインフラの普及を見ながら売っていく」とのこと。日本には日本の事情があることは理解しており、「パートナーにも収益を出してもらえること」を前提に、事業計画を構築していく様子だった。全国のステランティス販売店の皆さん、どうぞご安心を。
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アルファ・ロメオの未来を担う次世代商品群
また今回の説明会では、アルファ・ロメオブランドのジャン=フィリップ・インパラ―トCEOも登壇。同ブランドの将来計画が語られた。
まず2023年の振り返りだが、グローバルでは前年比+30%の約7万台を販売。ステランティスのなかでも特に収益を上げたブランドとなったという。また米J.D.パワーの顧客満足度調査でプレミアムブランドNo.1に輝くなど、その品質も大幅に向上。スーパースポーツ「33ストラダーレ」を無事に発表できたこともトピックで、インパラ―ト氏は「(33ストラダーレは)タバレスCEOにとっても重要なプロジェクトだった」「私もステランティスでわずか33台の特別なクルマをつくるという、特別な体験をさせてもらった」と語っている。
一方、今後については「計画をいかに正確にこなしていくか」が重要になると説明。2024年から2027年にかけての商品計画も語られた。それによると、2024年は既報のとおりコンパクトSUV「ミラノ」を発表(参照)。かつてなら「ミト」や「ジュリエッタ」を求めたオーナー層にオファーするクルマとのことで、ラインナップとしてはBEVとマイルドハイブリッド車が用意されるという。その出来は「ぜひハンドリングを楽しんで!」とのことで、インパラ―ト氏は自信満々だった。
次いで2025年には、Dセグメントに属するBEVを発表。こちらはグレードに応じて250~700kWの最高出力を発生する高性能モデルだ。高いパフォーマンスやハンドリングを楽しめるだけでなく、800Vの超急速充電にも対応しており、約18分でバッテリー残量を約80%まで回復できる能力を実現するとしている。
さらに2026年には、同じくDセグメントに属する「ジュリア」「ステルヴィオ」の後継モデルを発表。シャシーには大型BEV用プラットフォーム「ステララージ」を採用し、また新世代の電子プラットフォーム「ステラブレイン」も導入するとした。生産はイタリアのカッシーノ工場で行われる予定だ。
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突き進む全量BEV化の道
ここまででも十分に興味深い内容だが、注目すべきは2027年に発表予定のモデルだ。「アルファは必ず上を目指すべき」という言葉とともにインパラ―ト氏が語ったのは、「eジェット」の名のもとに進められる「恐らくEセグメントになる」という上級モデルの計画だった。このプロジェクトは「米・中で本気でクルマを売ろうと思ったら、Eセグメント以上のラインナップが必須」という理由からスタートしたもので、今まで以上にパフォーマンスの追求を念頭に置いたものとなるという。
これらの商品計画を見ればわかるとおり、そしてインパラ―ト氏も明言していたとおり、アルファ・ロメオは向こう数年で、今まで以上にプレミアム化、ハイパフォーマンス化し、そしてラインナップのBEV化が進められることになる。ブランドのBEV化はすでに発表済みのことだが、古参のファンのなかには「環境の変化で、ステランティスも考え直したのでは?」と希望を持っていた方もいることだろう。残念ながら(?)、彼らはアルファの全量BEV化へ向け、今後も突っ走っていくご様子。e-fuel(合成燃料)を使うエンジンの可能性についても、インパラ―ト氏は「量販車の動力源の解にはなり得ない」と否定的だった。
全体戦略ではラインナップの全量BEV化を掲げないステランティスが、アルファ・ロメオでは旗幟(きし)をはっきりさせている理由は、これが電気インフラの整った(とされる)先進諸国を主要マーケットとするプレミアムブランドだからだろう。加えてインパラ―ト氏によると、「(欧州における次期環境規制の)『ユーロ7』では、新エンジンの開発は実質不可能」「フランスで『クアドリフォリオ』を買おうと思ったら、1万ユーロも上納しなければいけない」とのこと。欧州メーカーが内燃機のハイパフォーマンスカーを開発し続けるのも、ユーザーがそれを購入するのも、現状では非現実的なことなのだ。これについてはメーカーにではなく、禁止的施策をとる欧州委員会や各国政府、青ナンバーの配布を締め上げる中国共産党などに文句を言うべきなのかもしれない。
いずれにせよ、アルファ・ロメオの新車ラインナップは2027年に全量BEV化されるという。インパラ―ト氏いわく「アルファにニセモノの音(サウンドジェネレーター)は似合わない」とのことなので、そのころのアルファは無音で粛々と速い、新幹線みたいなクルマになっているはずだ。読者諸兄姉の皆さまが、そんなアルファをどう受け止めるか。正直言うと、ちょっと怖い。
(文=webCG堀田剛資<webCG”Happy”Hotta>/写真=ステランティス ジャパン、webCG/編集=堀田剛資)
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堀田 剛資
猫とバイクと文庫本、そして東京多摩地区をこよなく愛するwebCG編集者。好きな言葉は反骨、嫌いな言葉は権威主義。今日もダッジとトライアンフで、奥多摩かいわいをお散歩する。
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