第777回:いつでもどこにでもがキーワード グッドイヤーのオールシーズンタイヤ「ベクター4シーズンズGEN-3」の実力を試す
2024.03.06 エディターから一言 拡大 |
季節や天候も関係なく、冬の雪道でも走行可能なタイヤとして近年注目を集めているオールシーズンタイヤ。そのパイオニアともいわれるグッドイヤーのトップモデル「ベクター4シーズンズGEN-3」を「スバル・レヴォーグ」に装着し、走りを確かめた。
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オールシーズンタイヤのパイオニア
サマータイヤと変わらない運用と、突然の雪でも走行できることがオールシーズンタイヤのメリット。ウインターシーズンを迎えるにあたって必須となるタイヤの履き替え作業や、外したタイヤの保管場所を確保する必要がないなど、そのアドバンテージは小さくない。特に、年に数回しか雪が降らない地域のドライバーから多くの支持を集め、「欧州でのシェアは2023年時点で20%に達しました」(日本グッドイヤー マーケティング部 部長 高木祐一郎氏)という。
欧州ではユーザーマインドの変化により、サマータイヤに代わりオールシーズンタイヤがシェアを伸ばしているとのことだが、日本ではどうか。
高木氏は「日本でのシェアはタイヤ市場全体の1%程度ですが、年々10%の成長を遂げており、今後もこの伸び率はキープされると考えています」という。つまり、今後もオールシーズンタイヤの市場は拡大するとメーカーサイドでは予想している。
それを裏づけるかのように、クロスオーバー系モデルの新車装着タイヤとしてオールシーズンタイヤを選択するメーカーも増えつつある。また、これまでオールシーズンタイヤを販売していなかったタイヤメーカーもこぞってオールシーズンタイヤをラインナップするようになった。2019年以降、多くのタイヤメーカーがオールシーズンタイヤ市場に本格参入し、日本でもオールシーズンタイヤの認知度は飛躍的に高まっている。グッドイヤーの社内調査では、約70%の人がオールシーズンタイヤがどんなものであるかをおおよそ理解しているという。
V字型のトレッドパターンを踏襲
現在に続くオールシーズンタイヤブームの立役者が、2009年に発売されたグッドイヤーの「ベクター4シーズンズ」であることは論をまたない。グッドイヤーは1977年に北米で初めてオールシーズンタイヤを販売。以来、日本でも地道にオールシーズンタイヤの訴求を行ってきた。ベクター4シーズンズは2016年に第2世代となる「ベクター4シーズンズ ハイブリッド」に、そして2022年にベクター4シーズンズGEN-3へと進化した。GEN-3は“Generation 3”、つまり、3代目を意味する。
今回スバル・レヴォーグに装着されたベクター4シーズンズGEN-3(以下GEN-3)は純正タイヤと同じ225/45R18サイズで、価格はオープン。GEN-3はルクセンブルクで設計・開発が行われ、ドイツ、フランス、ポーランド、スロベニアの欧州4拠点で製造される。サイドウォールの刻印を確認すると、レヴォーグに装着されていたのはスロベニア工場製であった。
GEN-3にはヨーロッパでウインタータイヤであることを示す“スノーフレークマーク”が刻まれており、高速道路等で冬用タイヤ規制に遭遇しても堂々と走行できる。方向性のある特徴的なV字型パターンはこれまでのベクター4シーズンズの流儀に沿ったもので、中央に向かって溝が細くなる「新Vシェイプドトレッド」やトレッドのセンター部分に設けられた大型のサイプが新しい。これらの新機軸が雪上のグリップ力を向上させ、ドライ路面走行時のロードノイズ低減を図っているという。
トレッド下部のプラットフォームにあたる部分とショルダーブロックを強化することでタイヤの変形を抑え、優れたハンドリング性能を実現したのもGEN-3のセリングポイントである。溝は底にいくほど幅が広くなる新しいデザインで、排水性を高めウエット性能を向上させたという。ベースをしっかり強固に設計したのも、欧州開発のこだわりだろうか。
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雨でも雪でも安心してステアリングを握れる
東京を出発した時点での天候は曇り空。いつ雨が降り出してもおかしくないどんよりとした空模様だった。走りだしてすぐ気づいたのは、うたい文句どおりに静粛性がかなり高いということだった。ずいぶん前のことになるが、愛車に初代ベクター4シーズンズを装着していた時期があり、それと比べるとずいぶん静かになったとしみじみ感じる。初代モデルは新品時こそサマータイヤと同等のロードノイズであったものの、マイレージを重ねるにつれボリュームが大きくなっていったことを思い出した。
都内を後に高速道路に乗ったと同時ぐらいに雨が降り始め、次第に雨脚が強くなってきた。先行する車両が巻き上げる水煙と、降りしきる雨によってワイパーはフル稼働。そんな完全なウエット路面でも直進安定性が損なわれないのは、GEN-3の特徴のひとつである。
2024年3月現在、オールシーズンタイヤにラベリング制度(転がり抵抗性能とウエットグリップ性能の等級分け)は適用されていないが、グッドイヤーの社内試験においてGEN-3は転がり抵抗性能が「A」、ウエットグリップ性能が「a」に該当することが確認されている。少し深めのわだちを通過する際であっても、今回はハンドルをとられて冷や汗をかくようなシーンには遭遇しなかった。独自のトレッドパターンは、排水性に大きく寄与していると想像できる。
オールシーズンタイヤといえば、つい「ドライ路面と同じように雪道も走れるのか」と尋ねがちだが、雨の日に安心してステアリングを握れることも重要だ。以前、報道関係者向けの試走イベントでベクター4シーズンズ ハイブリッドとGEN-3のウエットブレーキテストを行うことができた。70km/hからのフルブレーキングで制動距離を比べると、その結果は前者の制動距離が約19mだったのに対して、GEN-3は約18mと1m程度の差がついた。ちなみにスノーブレーキ性能についても、従来型比で5%向上しているという。
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多くの路面でいつもどおりに走れる
関越トンネルを抜けると雨は降っておらず、路面はドライだった。越後湯沢の街なかの幹線道路は完璧に除雪されており雪道の実力を試すことはできなかったが、ロードノイズが抑えられ直進安定性が高く乗り心地もいいので、片道200kmオーバーのロングドライブでもさほどストレスを感じなかったのは事実である。スバル自慢の4WDシステムが採用されるレヴォーグとのマッチングが良かったことも、疲労軽減に寄与していそうだ。
夜半過ぎから新潟県内でも雪が降り始め、翌朝はあたり一面が銀世界だった。昨日とは打って変わって雪国の趣である。消雪パイプが埋め込まれている路面はしっかりと雪が溶け水たまりになっていたが、そうでない道は車両通過の跡がわだちとして残る程度の積雪量だ。
そうした路面をGEN-3を履いたレヴォーグは、地元のスタッドレスタイヤ装着車であろう車両と変わらぬペースで走ることができた。急ハンドルや急ブレーキなど急のつく動作をしない、交通状況を予測しながら早めの操作を心がけるといった雪道運転のセオリーを守れば、スタッドレスタイヤ装着車の列に加わることができる。圧雪路では直進、コーナリングともに十分な安定感を発揮し、除雪されていない道であっても、雪の深ささえ見誤らなければ問題なく通過できた。たとえスタッドレスタイヤ装着車であっても、ボディー下部が埋まるような場所を通過することは難しいから、積雪量の判断、つまり行けそうかこれ以上は無理かといった判断は重要である。
オールシーズンタイヤと聞くと雪道走行が可能なことから、ついスタッドレスタイヤを本格的に必要としない地域向けの冬用タイヤの代替品と考えてしまうが、ドライ路面もウエット路面も、そして泥濘(でいねい)路や雪道など路面を問うことなくいつもどおりに走れる多様性を有したタイヤととらえるのが正しいかもしれない。行動範囲を広げてくれそうなオールシーズンタイヤは、標準装着タイヤが減った際の代替としても選択肢に挙がりそうだ。
(文=櫻井健一/写真=佐藤靖彦/編集=櫻井健一)
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櫻井 健一
webCG編集。漫画『サーキットの狼』が巻き起こしたスーパーカーブームをリアルタイムで体験。『湾岸ミッドナイト』で愛車のカスタマイズにのめり込み、『頭文字D』で走りに目覚める。当時愛読していたチューニングカー雑誌の編集者を志すが、なぜか輸入車専門誌の編集者を経て、2018年よりwebCG編集部に在籍。
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