フォーミュラEが日本に初上陸 東京で開催される公道レースの見どころは?
2024.03.11 デイリーコラム東京ビッグサイトを囲む市街地コース
フォーミュラEが日本にやってくる。「ABB FIAフォーミュラE世界選手権」は世界中の市街地を転戦するレースシリーズで、シーズン10となる2024年のカレンダーにフォーミュラE史上初めて、日本が開催地として組み込まれた。
TOKYO(東京)だ。全16戦中のラウンド5で「TOKYO E-PRIX(トーキョー・イープリ)」が開催される。3月29日(金)にフリープラクティス1、30日(土)にフリープラクティス2と予選、そして決勝レースというスケジュールだ。3本のストレートを高速コーナーとタイトなコーナーで結ぶ全長2.582kmの特設コースが、東京ビッグサイトを囲むように設定される。
2014年に始まったフォーミュラEは、FIA(国際自動車連盟)が統括するレースシリーズだ。2020-2021年のシーズン7から世界選手権に格上げされ、F1やWEC(世界耐久選手権)、WRC(世界ラリー選手権)と同格になった。フォーミュラEは、従来のレースシリーズのようにエンジンを搭載する車両ではなく電動モーター車、つまりEVで速さを競い合う。そのため、走行中に排ガスを出さず騒音も小さい。走行に必要な電気エネルギーは現地でバイオ燃料を使って発電し、まかなう。
東京都はCO2を排出しない環境先進都市「ゼロエミッション東京」の実現に向け、ゼロエミッションビークルの普及拡大に取り組んでいる。このアクションに弾みをつけると同時に東京の魅力を世界に発信し、国際的なプレゼンスを高める絶好の機会と捉え、フォーミュラE側の熱烈なラブコールに応えるかたちで東京大会が実現の運びとなった。フォーミュラE側にすれば世界に名だたる国際都市トーキョーがカレンダーに加わることでステータスが上がり、シリーズの発展につながると考えたわけだ。
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常設サーキットよりも近い位置で観戦できる
TOKYO E-PRIXにやってくるのは、Gen3(ジェンスリー)と呼ぶ第3世代の車両だ。カーボンモノコックをはじめシャシーのほとんどが共通部品に指定されており、競争領域を厳しく制限している。モノコック後部に内蔵するバッテリーも共通部品。パフォーマンスに大きな影響を及ばすバッテリーを競争領域にしてしまうと、単なるバッテリー開発競争になってしまうからだ。ボディーも全車共通。フロントウイングはダウンフォースを発生させるアイテムというより、スタイリング要素だ。
参戦するマニュファクチュアラーが開発可能なのは、規則でパワートレインに定義されるリアモーター、インバーター、ギアボックスである(参戦チームはマニュファクチュアラーからパワートレインを購入することも可能)。サスペンションアーム類をギアボックスにマウントする都合上、リアサスペンションのジオメトリーも狭い範囲内ではあるが、ある程度の設定自由度がある。パワートレインは効率を追求して設計・開発するのが王道だが、軽量・コンパクトに設計することも重要。前後重量配分や重心高に影響を与えるからだ。
リアのモーターは最高出力350kW(475PS)を発生。レースでの出力は300kW(408PS)に制限される。最高速は322km/hと発表されているが、あくまで計算上の数字で、コースのレイアウトやタイヤのグリップ力にも影響されるので、実際には270km/h程度である。それでも市街地コースを走るには十分に速いし、常設サーキットに比べて近い位置で観戦できるので、迫力は満点だ。それに、現地で観戦すると意外に迫力ある高周波音が耳に届くのを実感するだろう。
レーシングラインを外れた場所に設定されるアクティベーションゾーンを通過することでアタックモードを機能させることができ、その場合、最高出力を350kWに引き上げた状態で4分間走ることができる。アタックモードはレース中2回使用することが義務づけられる。悩ましいのは、レーシングラインを外れることでタイムをロスしてしまうことだ。パワーアップはうれしいが、後続が背後に迫っている場合は選択しづらい。誰がどのタイミングでアタックモードを使うかの駆け引きは、レースの見どころのひとつだ。
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日産が第3戦で今季初3位表彰台を獲得
Gen3はリアに加え、フロントにも回生専用のモーターを搭載しているのが特徴。最高出力は250kWで、インバーターと減速機構を一体化したユニットは共通部品に指定されている。リアモーターは回生側の出力をフルに発揮できるため、前後合わせて600kW(816PS)を発生。大きな回生能力を備えているため、リアは油圧ブレーキを持たない(必要がない)。レースを走り切るのに必要なエネルギーのうち約40%を回生で賄うというから、絶大な威力だ。
勝負を決める重要な要素はエネルギーマネジメントである。予選アタックのような全開走りを続けたらエネルギーが足りなくなる周回数が設定されるため、綿密なマネジメントが欠かせない。ドライバーはディスプレイに表示されるデータとピットからの指示を頼りに、最後まで走りきれるよう常にバッテリー残量のことを考えながら、少しでも前に出ようとオーバーテイクを仕掛け、迫り来る後続からのアタックを防がなければならない。
ゼロエミッションの知的ゲームをハイスピードで繰り広げているのが、フォーミュラEである。しかも、市街地で。シーズン10には日本の日産(チームの本拠地はフランス)に加え、ポルシェ、マセラティ、ジャガー、DSなど、11チーム22台が参戦。第3戦終了時点ではジャガーがランキングを一歩リードしている。日産は第3戦で今季初の3位表彰台を獲得し、調子が上向いた状態で母国イベントに臨む。
さて、TOKYO E-PRIXではどんなレースが繰り広げられるだろうか。見慣れた東京の風景をバックに走るフォーミュラEの姿をしっかり目に焼きつけたい。
(文=世良耕太/写真=Formula E、webCG/編集=櫻井健一)
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世良 耕太
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