ジープ・ラングラー アンリミテッド ルビコン(4WD/8AT)
荒れ地のような時代に 2024.05.25 試乗記 2018年のフルモデルチェンジから6年を経ての改良で、エントリーグレード復活&値下げを敢行! ジープの象徴である「ラングラー」のビッグチャレンジは、希少性の再発見と優位性の奪回につながるか? 試乗を通して考えてみた。ジープ伝統の7スロットグリルを意匠変更
2024年5月10日。オフロードが大好きなジープにしては珍しく、東京・渋谷のMIYASHITA PARK屋上の芝生ひろばで、“新型ラングラー”のプレス発表会が行われた(参照)。新型と銘打たれたものの、実質的な内容は2018年にフルモデルチェンジした現行型のマイナーチェンジ版と言っていい。
そんなわけで、まずは部分的な意匠や装備の変更点を、商品解説っぽくなるのをお断りして列記する。
最初にエクステリア。まずはジープの祖である「ウィリスMB」から引き継ぐ7スロットグリルをブラックテクスチャーに変更。ボディーパネルを切り欠いた、これまでとは異なる表情になった。次いでフロントフェンダー後方から伸びていたアンテナを廃し、フロントウィンドウに統合。オフロード走行時の小枝の引っ掛かりをなくす措置だという。またそのフロントウィンドウには、スマートフォンやPCなどに使われているコーニングの強化ガラス「ゴリラガラス」を採用した。
次にインテリア。一見して「デカい」と言わしめる新型12.3インチタッチスクリーンを全グレードで標準装備。「アンリミテッド サハラ」と「アンリミテッド ルビコン」のフロントシートに、ラングラーでは初の12ウェイパワーアジャスタブルシートを採用した。これは安全面に属するものだが、全グレードでフロントおよびリアにサイドカーテンエアバッグを標準装備。これもラングラーでは初の試みだという。
走行面では、アンリミテッド ルビコンに限り、フルフロートリアアクスルを搭載。車重にも耐える必要があった従来のセミフロート機構とは違い、リアアクスルにかかる負担が駆動トルクのみとなるので、最大けん引能力が向上するらしい。
販売グレードは、エントリーモデルとして設定された「アンリミテッド スポーツ」に、アンリミテッド サハラ、アンリミテッド ルビコンの3種。新型発売記念として、10台のみの「アンリテッド ルビコン ハイベロシティー」と、300台の「アンリミテッド サハラ ローンチエディション」の、2種の限定モデルも用意された(参照)。
気になるのは価格だが、実は今回の記事のキモとなる要素なので、もったいつけつつ後半でお伝えすることにする。
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“G”や“D”とは違う世界観
それにしても頭を抱えるのは、これがまっさらの新型ではないことだ。とはいえ生粋のラングラーファンにすれば、フロントグリルの意匠変更やアンテナの除去は賛否を語り合いたいポイントになるだろうし、横広になったモニターやサイドカーテンエアバッグの追加はねたましく思うところかもしれない。しかしファンではない者がなにを言えばいいのか……。
そんな悩みが起こり得ることを予知していたのか、webCG編集部は新型のアンリミテッド ルビコンの広報車をさっそく手配し、こちらがボヤく前に「いいから乗ってみろ!」とけしかけてきた。こういうときの編集者は極めて手際がいい。
先述のとおり、現行モデルのJL型へと発展したのは2018年。今回はそれから6年という、他車に比べればずいぶん時間をかけた改良なので、それ相応のインパクトを感じなくもない。だが、今もって忘れ難いのは、先代JK型から11年ぶりにフルモデルチェンジしたJL型に触れたときの衝撃だ。
圧倒的に使用頻度が高いオンロードで、その変貌を実感した。ラダーフレームを一新した成果だろう。それまでの、いかにもアメ車らしいおおらかな、言葉を換えれば多少心もとなかった直進性がぴしっと改まった。個人的には、「これでラングラーを次期候補車に入れていい」と思ったほど、その背筋の伸び方がうれしかった。また、ドアを含めボディーパネルの多くが着脱可能というアミューズメント性を誇りつつ、先代よりいくらか静粛性が高まったのも褒めるべきポイントだった。
そして、1987年のデビュー以来、ジープのラインナップで最も祖先の面影を残すラングラーの雰囲気を存分に保ちながら、確実な進化を遂げてみせたのがなにより素晴らしかった。
もはや必要とされていない証拠だろうけれど、タフな軍用車が源泉のクルマは絶滅の危機にひんしている。ドイツの“G”は高級路線を一直線。英国発の“D”も過去を捨てた。そんななかでラングラーだけは、元祖ウィリスの実用性を担保に趣味性を加えながら、唯一無二の存在感を醸し続けている。いやもちろん、JKからJLの進化をいかにたたえようと、ラングラーの乗用車としての性能は、GやDとは別次元の域にあるのだが、それとこれとは違う世界観を有している事実を忘れてはならない。
そんな思いが、久しぶりのラングラー試乗でよみがえった。フロントウィンドウの天地の短さからくる運転席のタイトさもミリタリー感に満ちていて、ちょっと懐かしかった。
ちなみに、今回の試乗車のアンリミテッド ルビコンは、オフロード向けの装備を目いっぱい詰め込み、専用17インチホイールにマッド&テレインタイヤを装着した、やる気がみなぎったモデルだ。「今回それすらも安くなった!」というフリで最後の章に突入する。
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最大のトピックはプライスダウン?
もったいつけた新型の価格を発表する。エントリーグレードとされたアンリミテッド スポーツは、800万円を切る799万円。その上のアンリミテッド サハラは、先代から31万円値引かれた839万円。最上級グレードのアンリミテッド ルビコンも905万円から16万円ダウンの889万円となった。
新型ラングラーでより若い層にリーチしたい。これがジープの新たな目標らしい。そのために価格を下げたというのは、涙ぐましい企業努力というほかにない。
世界的には資材不足等。国内的には著しい円安の影響で、あらゆる製品やサービスの値上がりが続いている。この流れによって、ラングラーが勢いを落としたのは紛れもない事実だ。たまたま見つけた2021年あたりのネット記事によると、2009年の国内のジープ販売台数は1010台。それ以降はひたすら右肩上がりで、2019年には1万3588台となり、10年間で約13.5倍に成長した経過に驚きを示していた。その今から数年前のラングラーの価格は、536万円から658万円だったらしい。
そうだったと感慨深くなる。高い安いは相対的なものだけれど、ラングラーはいつもそのくらいの価格帯に収まっていた。多面的な実用性、または類いまれな趣味性を有した輸入車でありながら、比較的手ごろな値段だったことはラングラーの魅力のひとつでもあった。
そんなかつての優位性が、今回の改良型登場に伴う価格改定で挽回できるかどうかはわからない。ただ、ジープのなかでもラングラーほどユニークなキャラクターを持つクルマがまれなのは事実。あるいはますます希少性が高まっていくかもしれない。その最中、さまざまな新機軸を追加したうえで値段を下げる意気込みを示したのが、おそらく今回最大のトピックになるだろう。前人未到のオフロードを得意とするラングラーが、この荒れ地のような時代にどう立ち向かっていくか見守りたいと思う。
(文=田村十七男/写真=荒川正幸/編集=堀田剛資)
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テスト車のデータ
ジープ・ラングラー アンリミテッド ルビコン
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4870×1930×1855mm
ホイールベース:3010mm
車重:2110kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:272PS(200kW)/5250rpm
最大トルク:400N・m(40.8kgf・m)/3000rpm
タイヤ:(前)LT255/75R17 111/108Q M+S/(後)LT255/75R17 111/108Q M+S(BFグッドリッチ・マッドテレインT/A KM2)
燃費:9.3km/リッター(WLTCモード)
価格:889万円/テスト車=930万7450円
オプション装備:オールウェザーフロアマット(5万0820円)/FEATURED PRODUCTS<桟ライダー フリップトップ[23万7600円]+フードカバー[1万9800円]+サイドバイザー[4万6200円]+ドリンクホルダー[4950円]+ステンレス製スカッフプレート[4万5980円]+マッドガード[1万2100円]>(36万6630円)
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:867km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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田村 十七男
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