DS 3オペラBlueHDi(FF/8AT)
もっと話を聞かせてくれ 2024.06.24 試乗記 「DS 3」の最新モデルには対話型生成AIのChatGPTが搭載されている。世の中を変えるかもしれないなどとうたわれるテクノロジーだが、果たして自動車との相性はどうか。カーナビの設定を試したり、料理のレシピを聞いたりしてみた。『ナイトライダー』が現実に
DSオートモビルが、すべてのモデルにChatGPTを搭載すると発表した。これは、自動車ブランドとしては日本で初めての取り組みだという。というわけで早速、「DS 3オペラBlueHDi」をお借りして、ChatGPTを試してみた。
ご存じの方も多いように、ChatGPTとはOpenAI社が開発した対話型の生成AI(Artificial Intelligence)で、膨大なデータを学習することでさまざまな質問に迅速かつ的確に答えてくれるのが特徴だ。DSオートモビルの資料には、「ドライブで訪れる旅先の土地・歴史、あるいは夕食の献立やレシピを尋ねたり、何気なく思い浮かんだ疑問を質問したりすることが可能になり、ドライバーにとっての新たなパートナーとなります」とある。
DSオートモビルの各モデルはすでに、ボイスコントロール機能やコネクテッドナビゲーションを組み合わせた「DS IRIS(アイリス)システム」を装備している。ここにChatGPTを組み込むことで、音声による操作でカーナビや空調を設定するだけでなく、対話をする相棒になってくれるというのだ。前述したようにChatGPT自体はOpenAI社が開発したものだが、DSオートモビルは、音声認識のプラットフォームに米国シリコンバレーに本拠を構えるSoundHound AI社のものを用いているという。
こうした事前情報を知って、アメリカのドラマ『ナイトライダー』が現実のものになったということではないか、と胸アツになる。夢のスーパーカー「ナイト2000」に搭載された人工知能の「K.I.T.T.(キット)」は、ドライバーのマイケルに的を射たアドバイスを送り、時には熱くなりすぎるマイケルを諭し、そして時にはジョークを飛ばした。ついに、アレに乗る時代になったのか。ChatGPTとのドライブはどんなものになるのか、わくわくしながらDS 3オペラBlueHDiのドアを開ける。
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ChatGPTさまにお願いする
車載のChatGPTにまず期待することは、カーナビの目的地の設定だろう。「OK、IRIS」と呼びかけてChatGPTを起動、「海老名サービスエリアに行きたい」と伝えると、「YouTube」や一部のニュース番組で聞き慣れた女性のAI声(?)で、「分かりません」と冷たくあしらわれた。「K.I.T.T.」と違って、つれない。
もう一度試すと、今度は何百kmも離れた、佐賀県の海辺の街を表示して、こちらでいいかと確認を求められる。いえ、ここではありません。ChatGPT、もしかして目的地設定は苦手なのか。あるいはこちらの滑舌に問題があるのか。次に、「強羅花壇に行きたい」と伝えると、今度は一発で目的地に設定してくれた。ChatGPT、もしかすると高級志向なのか。
何度か試しているうちに、コツがつかめてくる。「OK、IRIS」と呼びかけてChatGPTが反応したら、まず「目的地設定」と伝える。すると「どちらに目的地を設定しますか?」と尋ねてくるので、そこでおもむろに目的地を伝えると、行きたかった場所を表示してくれる。ChatGPTを使いこなしているというよりも、ChatGPTさまにご公務をお願いしているというような気分になる。エラいのはChatGPTで、こちらは使わせていただいている身分だ。
ようやく目的地を設定できたら、次にお願いしたいのはラジオや音楽を聴くことだ。でも、これもうまくいかない。接続した「iPhone」の楽曲を呼び出してもらおうとするとラジオがかかり、まぁラジオでもいいかと思って「文化放送にして」とリクエストすると、今度は電源がオフになってしまった……。目的地設定と違って、オーディオ操作は最後までコツがつかめなかった。
正直に言って、目的地を設定したり音楽を聴いたりするだけだったら、「Apple CarPlay」を立ち上げて、Siriにお願いしたほうが圧倒的にスムーズだ。IRISよりSiriのほうが明らかに頼りになる。車載のChatGPT、まだ使えないな。と思いながらドライブしていると、別のところで本領を発揮してきた。
料理家としてのChatGPT
DSオートモビルの公式ウェブサイトに、こんな動画がアップされている。ドライバーがChatGPTにフランスのランスの街について尋ねると、懇切丁寧に解説してくれるのだ。試乗する前に見たこの動画を思い出して、御殿場の街について教えてくれと請うと、街の歴史、気候や地理的な特徴など、ここぞとばかりに詳しく説明してくれる。「水を得た魚のように」とか、「立て板に水」という表現は、こういう時に使うのだと思った。
そういえば公式の動画にマス料理のレシピもあったことを思い出し、「パンケーキのつくり方を教えて」と依頼すると、これまた詳細に、手取り足取り教えてくれる。残念なのは、こちらは運転中なので、どんなに細かく教えてもらってもメモがとれないということだ。
あと、webCG編集部の藤沢さんによると、カレーのレシピを尋ねたところ、「ルウを炒めた後に水を入れ」「最後にご飯を一緒に煮込みます」というフレーズがあったそうだ。「ルウとご飯を煮込むんかい!」とツッコミを入れたくなる。いずれにせよ、まんまChatGPTのレシピどおりにつくるのは危険かもしれない。
ただ、だからといって「ChatGPT使えねぇ」という気持ちにはならなかった。どんな質問にも一生懸命に応えてくれようとするあたり、K.I.T.T.のように優秀ではないけれど、ロボット三等兵みたいでちょっとかわいい。ドラえもんも、完全無欠のネコ型ロボットだったらあんなに人気は出なかっただろうと、どうでもいいことを考えた。
進化を見守りたい
結論として、現時点での車載ChatGPTは、ちょっとドジだけど愛嬌(あいきょう)のある話し相手、というものだった。役立つ機能というより、おもちゃっぽい。ま、黎明(れいめい)期のクルマだって便利な移動の道具として進化したわけではなく、やんごとなき人々が競走をするおもちゃとして高性能化したわけだから、楽しいおもちゃであることは大事なのかもしれない。
というわけで、真面目な話からくだらないことまで、いろいろと質問したくなる。「米津玄師と藤井 風、どっちが好き?」と尋ねると、「どちらも大変に人気のあるミュージシャンですが、音楽の好みは人によって違います」という無難な回答の後で、それぞれの代表曲を挙げながら2人の魅力を解説してくれる。
ただし、ChatGPTが挙げてくれた代表曲を聴かせてくれというリクエストには応えてくれないのだった……。リクエストの方法に、工夫の余地があるのかもしれませんが。
ちなみに取材の翌日、編集部の藤沢さんがあらためてカレーのレシピを尋ねたところ、水とルウを入れる順番が正しくなり、ご飯とルウは煮込まない手順になっていたそうなので、まだまだ進化の途上なのかもしれない。
最後になってしまったけれど、DS 3オペラBlueHDiについてふれると、久しぶりに乗って、こんなにいいクルマだったかと驚かされた。コンパクトな車体なのに、乗り心地とステアリングフィールには心地よい重みと湿り気がある。エンジンも低回転域からトルキーで滑らか。カッコ優先のおしゃれ着せ替え版ではなく、小さな高級車路線をしっかりと歩んでいると感じた。
DS 3もデビュー以来、地道ながら着実に進化しているのだった。
(文=サトータケシ/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
DS 3オペラBlueHDi
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4120×1790×1575mm
ホイールベース:2560mm
車重:1330kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:130PS(96kW)/3750rpm
最大トルク:300N・m(30.6kgf・m)/1750rpm
タイヤ:(前)215/55R18 99V/(後)215/55R18 99V(グッドイヤー・エフィシエントグリップ パフォーマンス2)
燃費:21.0km/リッター(WLTCモード)
価格:514万円/テスト車=528万6385円
オプション装備:メタリックペイント<グリラケ>(8万円) ※以下、販売店オプション ETC+取り付けユニット(1万7215円)/ドライブレコーダー(4万9170円)
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:8259km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:311.0km
使用燃料:19.4リッター(軽油)
参考燃費:16.0km/リッター(満タン法)/16.9km/リッター(車載燃費計計測値)

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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