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初めての4WD! 初めてのハイブリッド! 初物尽くしの「シボレー・コルベットE-Ray」をキーマンが語る

2024.06.14 デイリーコラム 堀田 剛資
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目指したのは究極のGT

「シボレー・コルベット」の新たなハイパフォーマンスモデル「E-Ray」が、いよいよ日本に上陸。富士スピードウェイで行われたファンイベント「CHEVROLET FUN DAY 2024」で、実車が本邦初公開された。

伝統の6.2リッターV8エンジンで後輪を、先進の電動パワートレインで前輪を駆動するハイブリッドのコルベットは、どのようなマシンとなっているのか? 他のハイパフォーマンスモデルとのキャラクターの違いは? ゼネラルモーターズ・ジャパンの上原慶昭プロダクト&パブリックポリシー ディレクターに、詳しい話をうかがった。

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――コルベット史上初の4WD、初のハイブリッドということで、E-Rayは過去にないモデルとなっていると思います。まずは、これがどういうクルマなのかをあらためて説明してもらえますか? またコルベットのハイパフォーマンスモデルというと、すでに「Z06」があって、価格もそう離れていません(E-Ray:2350万円、Z06:2500万円)。両車にはどんな違いがあるのでしょう。

上原慶昭氏(以下、上原):端的に言うと、E-Rayについては「一番いいGTをつくろう」という狙いでつくられたクルマです。Z06はサーキットをガンガン走らせるためのモデルで、実際にレースカーである「C8.R」や「GT3」の公道版みたいなものなんですね。ですから、両車はちょっと狙いが違うんです。

E-Rayは電動四駆でパワーも上がっていて(システム最高出力664PS)、0-60mph(0-96km/h)加速も2.5秒と歴代コルベットで最速です。モーターの特性もあってアクセルレスポンスも速い。そうした特徴も持っているのですが、高負荷の状態でできるだけフロントの駆動を引き出して燃費を稼いだり、そういうこともしたりしています。

――プレゼンテーションのムービーでは、雪道も走っていましたね。オールラウンド性をアピールするコルベットというのも、このE-Rayが初めてな気がします。

いよいよ日本導入が発表された「シボレー・コルベットE-Ray」。最高出力は実に664PS、0-96km/h加速は歴代最速の2.5秒と公称されているが、実際にはどのようなマシンとなっているのだろうか?
いよいよ日本導入が発表された「シボレー・コルベットE-Ray」。最高出力は実に664PS、0-96km/h加速は歴代最速の2.5秒と公称されているが、実際にはどのようなマシンとなっているのだろうか?拡大
「コルベットE-Ray」は2024年6月1日開催の「CHEVROLET FUN DAY 2024」で日本初公開された。写真はコルベットE-Rayと、ゼネラルモーターズ・ジャパンの若松 格社長。
「コルベットE-Ray」は2024年6月1日開催の「CHEVROLET FUN DAY 2024」で日本初公開された。写真はコルベットE-Rayと、ゼネラルモーターズ・ジャパンの若松 格社長。拡大
会場には同じ「コルベット」のハイパフォーマンスモデル「Z06」の姿も。モータースポーツ直系の5.5リッターV8 DOHCエンジンを搭載した、“公道も走れるレースカー”だ。
会場には同じ「コルベット」のハイパフォーマンスモデル「Z06」の姿も。モータースポーツ直系の5.5リッターV8 DOHCエンジンを搭載した、“公道も走れるレースカー”だ。拡大
今回お話をうかがった、ゼネラルモーターズ・ジャパンの上原慶昭プロダクト&パブリックポリシー ディレクター。
今回お話をうかがった、ゼネラルモーターズ・ジャパンの上原慶昭プロダクト&パブリックポリシー ディレクター。拡大
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キモはフロントとリアの駆動制御

上原:開発では、例えば冬のカナダに持っていって、雪のトラックを走らせるということもしているんですね。コルベットなのに横を向いて、雪の上をラリーカーのようにドリフトしながら走る(笑)。そういう局面では、どれだけボディーが横を向いているかもセンシングしながら、前輪と後輪のトラクションを制御しています。

――そういった点、パワートレインの制御についても、もう少しお話をうかがいたいんですけど。

上原:フロントはモーター駆動なので、機械式の四駆と違ってフロントアクスルとリアアクスルに物理的なつながりはまったくありません。完全にソフトウエアでシンクロナイズさせてるんですね。どのような制御をしているかというと、先ほど述べたクルマの姿勢であるとか、車速、アクセル開度などを感知しながら、常に最適な駆動をフロントに与えるということをしてます。

――横方向の、いわゆるトルクベクタリングのような制御は?

上原:そういうことはしていないですね。あくまでフロントとリアの駆動力制御です。コーナーだからもう少しリア寄りにしようとか、これ以上横滑りしたらスピンするぞっていう場面で抑えたり、もしくはドライバーが「もっとくれ!」と欲する場合はグッとトラクションをかけたりとか。

――ドライブモードセレクターもE-Rayは独自ですよね?

上原:ほかのモデルにもある6つのモード(ツアー/ウェザー/スポーツ/レーストラック/マイモード/Zモード)に加えて、「シャトル」「ステルス」の2モードを追加しています。シャトルは、例えばガレージの中でちょっとクルマを動かすとか、そういったシーンを想定したモードで、このモードでは本当に電気でしか動きません。いっぽうのステルスモードは70km/h以下でのEV走行を可能にするもので、車速が70km/hを超えたり、ドライバーがアクセルを踏み込んだりするとエンジンがかかります。

モーターが駆動するのは前輪ですから、これらのモードではE-Rayは前輪駆動になります。そのほかのモードでは常時四駆です。

富士スピードウェイのピットレーンより、100%電動走行の「シャトル」モードで粛々とピットに移動する「コルベットE-Ray」。
富士スピードウェイのピットレーンより、100%電動走行の「シャトル」モードで粛々とピットに移動する「コルベットE-Ray」。拡大
「コルベットE-Ray」のインストゥルメントパネルまわり。日本仕様はもちろん右ハンドル。デジタルメーターやセンターディスプレイの表示も、しっかり日本語表記となっている。
「コルベットE-Ray」のインストゥルメントパネルまわり。日本仕様はもちろん右ハンドル。デジタルメーターやセンターディスプレイの表示も、しっかり日本語表記となっている。拡大
ロックフェラーセンターのアイスリンクにて、ドーナツターンを披露する「コルベットE-Ray」。
ロックフェラーセンターのアイスリンクにて、ドーナツターンを披露する「コルベットE-Ray」。拡大
4輪で雪を掻き、「コルベット」史上初の4WDであることをアピール。
4輪で雪を掻き、「コルベット」史上初の4WDであることをアピール。拡大
「コルベット」が全天候性をアピールするというのも、歴代初のことかもしれない。
「コルベット」が全天候性をアピールするというのも、歴代初のことかもしれない。拡大

機能性を犠牲にせずハイブリッド化できた理由

上原:いかがでしたか? 実車を見た感想は。

――電動化するにあたって、もっといろいろ犠牲になるんじゃないかと思っていました。フロントトランクがなくなるとか、右ハンドル仕様は用意できないとか。

上原:この8世代目のコルベット(以下、C8)は、最初からハイブリッド車の設定が想定されていましたからね。レーシングカーとかZ06などと一緒に。

――開発当初からE-Rayの設定を前提にクルマがつくられていたから、強引な設計変更をしないでも済んだわけですね。

上原:あと、コルベットならではの設計が有利に働いた部分もあります。コルベットって伝統的にクーペとコンバーチブルがあって、しかもクーペでも屋根は脱着式になっているじゃないですか。なので、屋根がない状態でもボディー剛性を成り立たせる、そういう設計になっているんですよ。FRだったC7までは、プロペラシャフトやエキゾーストを通すトンネルが車体の真ん中をドーンと縦貫していて、それで剛性を確保していました。いっぽうC8はミドシップなので、そういうものを前から後ろに通す必要はなかったんですけど、やっぱり剛性を確保するために、大きなセンタートンネルが設けられています。E-Rayではそれを活用して、車体の真ん中にバッテリーを積むことができました。なので荷室も乗車スペースも、あまり犠牲にせずに電動化することができたんです。

――フロントにはモーターも積まれていますが、前のトランクスペースはほかのモデルと一緒ですか?

上原:ほぼ一緒です。厳密には2リッターぐらい減っていますけど。E-Rayではパワートレインを電動化するうえで、クーリングシステムを2つ増やしているんです。ひとつはインバーターを冷やすもの、もうひとつはモーターを冷やすものですね。そのホースがフロントトランクの脇を通るので、そのぶんだけ、スペースを持っていかれてしまいました。

――実車を見ても全然気づきませんでした(笑)。

「CHEVROLET FUN DAY 2024」より、「コルベットE-Ray」のディテールを観察する来場者。
「CHEVROLET FUN DAY 2024」より、「コルベットE-Ray」のディテールを観察する来場者。拡大
屋根を取り外した状態の「コルベットE-Ray」。バッテリーはセンターコンソールおよびアームレストの下に搭載される。
屋根を取り外した状態の「コルベットE-Ray」。バッテリーはセンターコンソールおよびアームレストの下に搭載される。拡大
ハイブリッド化に際して犠牲となったのはフロントトランクの容量のみ。それもわずかに2リッターだ。
ハイブリッド化に際して犠牲となったのはフロントトランクの容量のみ。それもわずかに2リッターだ。拡大
フロントグリルからのぞくラジエーター。「コルベットE-Ray」では電動パワートレインの冷却のため、クーリングシステムが増設されている。
フロントグリルからのぞくラジエーター。「コルベットE-Ray」では電動パワートレインの冷却のため、クーリングシステムが増設されている。拡大
米国では今回日本に導入されるクーペに加え、「コンバーチブル」も用意。いずれはこちらの日本導入もあるかもしれない。
米国では今回日本に導入されるクーペに加え、「コンバーチブル」も用意。いずれはこちらの日本導入もあるかもしれない。拡大
「Z06」では、音量規制の関係でエキゾーストシステムの改変が必要となり、パワーダウンを余儀なくされたが、「E-Ray」ではそのようなことはなく、日本仕様でも米本国仕様と同等のパワーを発生するという。
「Z06」では、音量規制の関係でエキゾーストシステムの改変が必要となり、パワーダウンを余儀なくされたが、「E-Ray」ではそのようなことはなく、日本仕様でも米本国仕様と同等のパワーを発生するという。拡大
強力なカーボンセラミックブレーキが標準で採用される「コルベットE-Ray」。さらに日本仕様には、ミシュランのスポーツタイヤ「パイロットスポーツ4 S」や専用チューニングの磁性流体ダンパーも装備される。
強力なカーボンセラミックブレーキが標準で採用される「コルベットE-Ray」。さらに日本仕様には、ミシュランのスポーツタイヤ「パイロットスポーツ4 S」や専用チューニングの磁性流体ダンパーも装備される。拡大
日本仕様には、Boseのパフォーマンスオーディオやデータロガー、シートヒーター/ベンチレーションなどの装備に加え、表皮にカーボンとナッパレザーを用いた「GT2」シートや、マイクロファイバーとレザーのインテリアトリム、カーボン製のステアリングホイールなどを備えた最上級グレードの「3LZ」が導入される。
日本仕様には、Boseのパフォーマンスオーディオやデータロガー、シートヒーター/ベンチレーションなどの装備に加え、表皮にカーボンとナッパレザーを用いた「GT2」シートや、マイクロファイバーとレザーのインテリアトリム、カーボン製のステアリングホイールなどを備えた最上級グレードの「3LZ」が導入される。拡大
米国はもちろんのこと、世界的に人気が高まっている8代目「コルベット」。GMはボーリンググリーン工場の生産能力を大幅に強化し、バックオーダーの解消に努めている。
米国はもちろんのこと、世界的に人気が高まっている8代目「コルベット」。GMはボーリンググリーン工場の生産能力を大幅に強化し、バックオーダーの解消に努めている。拡大
日本では先行販売の15台が2024年第4四半期より、その他の車両は2025年より納車が開始されるという「コルベットE-Ray」。その走りに触れられる日が楽しみだ。
日本では先行販売の15台が2024年第4四半期より、その他の車両は2025年より納車が開始されるという「コルベットE-Ray」。その走りに触れられる日が楽しみだ。拡大

乗れば乗るほど面白い!

――日本に来るクルマの仕様は、アメリカのものとすべて一緒ですか? Z06のときは騒音規制の関係で、パワーダウンを強いられてしまいましたが……。(参照

上原:基本的には同じです。日本に持ってくるのは当然、全部右ハンドルになりますけど。装備グレードについては、アメリカではいくつかの仕様が選べるのですが、日本のものは最上級の「3LZ」にしました。

――日本仕様ではミシュランのスポーツタイヤとか、専用制御の電制ダンパーがセットになった「ZERパフォーマンスパッケージ」も標準装備ですよね。カーボンブレーキだって最初から付いているし。……最近の為替事情やライバル車種のお値段を思うと、「こりゃかなり頑張ったな」という印象なのですが。

上原:頑張らせていただきました(笑)。もともとZ06との兼ね合いもあるので、それを超えた価格設定をするのは難しかったのですが。

――日本では先行販売のE-Rayが年内に納車開始ですよね? 以前はずいぶんバックオーダーがあったと思うのですが、コルベットの納車待ちは解消されているんですか?

上原:ベースモデルはだいぶ解消されています。というのも、ボーリンググリーン(コルベットの組立工場)の生産体制を大幅に強化したんですよ。これまではだいたい年産3万台だったのですが、2023年は5万3000台以上を出荷できました。また日本仕様に関していえば、やはり右ハンドル車の生産に制約があったんですけど、それもずいぶん頑張ってもらって、数を増やしてもらいました。今はかなり供給がスムーズになっています。それでもZ06はお待たせしてしまっていますし、E-Rayについても「ではすぐに!」とはいかないのが心苦しいのですが。

――上原さんは、もう乗られたんですか?

上原:はい。2000kmぐらい乗ったんですけれども、乗れば乗るほど楽しさが感じられる、そういうクルマになっています。6.2リッターV8エンジンだけでも十分にパワーがあって面白いんですが、それに加えて、ものすごくうまくフロントのトルクを足してくれる。気持ちよくコーナーをダッ! と駆けると、うまくフロントのモーターがパワーを出してくれて、それが非常に絶妙な気持ちよさ与えてくれるんです。ぜひ皆さまにも、そういう走りをお試しいただきたいと思います。

(文=webCG堀田剛資<webCG”Happy”Hotta>/写真=webCG堀田剛資<webCG”Happy”Hotta>、ゼネラルモーターズ/編集=堀田剛資)

 
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堀田 剛資

堀田 剛資

猫とバイクと文庫本、そして東京多摩地区をこよなく愛するwebCG編集者。好きな言葉は反骨、嫌いな言葉は権威主義。今日もダッジとトライアンフで、奥多摩かいわいをお散歩する。

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