4チームから7人のウイナーが誕生 混戦模様の2024年F1前半戦からタイトルの行方を占う
2024.08.09 デイリーコラム2024年シーズンのF1はサマーブレイクを迎え、8月25日に決勝レースが行われる第15戦オランダGPから残る10戦に突入する。前半の戦いぶりを振り返りながら、後半戦のポイントをまとめてみた。
リードして折り返したフェルスタッペン&レッドブルだが……
「またとないシーズンだった」
2023年の最終戦アブダビGPでこう語ったのは、3年連続でチャンピオンとなったマックス・フェルスタッペン。22戦して10連勝を含む19勝を記録し、表彰台には21回も登壇、ドライバーズランキング2位に終わったチームメイトのセルジオ・ペレスには290点もの大差を築いて他を圧倒 ── まさに“2度目はない”と思えるような、絶頂を極めたシーズンだった。
3月にバーレーンで開幕した2024年のF1は、先の第14戦ベルギーGPを終えて恒例のサマーブレイクに入った。チャンピオンシップをリードするのは、今年もフェルスタッペンとレッドブルだが、無敵を誇った前年とはまったく異なる様相を呈している。
【ドライバーズチャンピオンシップ】
<開幕戦から第14戦まで>
1位 マックス・フェルスタッペン 277点
2位 ランド・ノリス 199点
3位 シャルル・ルクレール 177点
4位 オスカー・ピアストリ 167点
5位 カルロス・サインツJr. 162点
6位 ルイス・ハミルトン 150点
7位 セルジオ・ペレス 131点
8位 ジョージ・ラッセル 116点
今季これまで7勝しているフェルスタッペンは、2位のノリスに対して78点ものリードを築いている。3回のスプリントを含めた残り10戦、1レースあたり8点ずつ縮めればノリスが逆転で初戴冠となる計算だ。もちろん不可能ではないが、ノリスの前には高いハードルが待ち構えていることは明らかだ。
しかし、2024年の後半10戦が凡戦の消化試合となるかといえば、そうはならないだろう。これまでの14戦のうち、前半と後半の7戦を比較すると、局面ごとに主役が交代しており、特に第8戦以降の7戦では、フェルスタッペンとレッドブルが明らかに劣勢に立たされているからだ。
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ライバルの攻勢を前に、王者の連覇に黄色信号?
【ドライバーズチャンピオンシップ】
<第8戦から第14戦まで>
1位 フェルスタッペン 116点
2位 ハミルトン 115点
3位 ピアストリ 114点
4位 ノリス 98点
5位 ラッセル 72点
6位 サインツJr. 69点
7位 ルクレール 64点
8位 ペレス 24点
上のとおり、5月の第8戦モナコGPから7月末の第14戦ベルギーGPの7戦を抜き出すと、フェルスタッペンとハミルトン、ピアストリまでが1点差で並ぶ接戦状態。シーズン序盤のレッドブルの対抗馬だったフェラーリのサインツJr.とルクレールが競争力を落とし、フェルスタッペンのチームメイトであるペレスに至ってはたった24点しか加算できずスランプに陥っている。
この戦力図の変化は、チーム同士のポイントを比較するとより如実にあらわれてくる。
【コンストラクターズチャンピオンシップ】
<開幕戦から第14戦まで>
1位 レッドブル・ホンダRBPT 408点
2位 マクラーレン・メルセデス 366点
3位 フェラーリ 345点
4位 メルセデス 266点
5位 アストンマーティン・メルセデス 73点
<第8戦から第14戦まで>
1位 マクラーレン 212点
2位 メルセデス 187点
3位 レッドブル 140点
4位 フェラーリ 133点
5位 アストンマーティン 29点
第8戦〜第14戦のダントツのトップスコアラーはマクラーレン。2番目に多くポイントを獲得したのはメルセデスで、レッドブルは3位に甘んじている。
年間ポイント数でも、マクラーレンに対するレッドブルのリードは42点しかなく、第6戦マイアミGPで最大115点もあった両チームのギャップは、シーズンが進むにつれてジリジリと縮まってきている。チャンピオチームがリードしてシーズンを折り返しているが、ライバルの攻勢を前に連覇に黄色信号がともり始めている。
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開幕からの5戦で4勝、好調な滑り出しを見せたレッドブル
F1でグラウンド・エフェクト・カーが復活して3年目の今季、これまでチャンピオンチームのレッドブルが有していた優位性は、ライバルとの開発競争のなかで徐々に失われていった。
レッドブルとフェルスタッペンのシーズン序盤は、好調な滑り出しを見せていた。開幕戦バーレーンGPから第5戦中国GPまでに2連勝を2回達成。ブレーキトラブルでリタイアした第3戦オーストラリアGPでもポールポジションを獲得しており、今年もフェルスタッペンが他を圧倒するかと思われた。またペレスも同時期に2位3回、3位1回と表彰台の常連となっていた。
盤石ともいえた王者の戦いにほころびが見えたのは第8戦モナコGP。フェルスタッペンは6番グリッドから6位と地味なレースを終えたのだが、これはレッドブルの宿痾(しゅくあ)ともいうべき問題に起因していた。極限まで空力効率を求めたレッドブルのマシンにとって、縁石への乗り上げやバンピーな路面は大の苦手とするところで、2023年シーズンの唯一の黒星であるシンガポールGPでも同じような問題に苦しんでいた。
しかしその後もレッドブルの調子は戻るどころか、急激に戦闘力を上げてきた「マクラーレンMCL38」からの激しい突き上げを食らうことになる。
シーズン開幕当初に帳尻を合わせられなかったマクラーレンは、第6戦マイアミGPで“Bスペック”といえるほどの大幅なマシンアップグレードを行い、レースではセーフティーカーのおかげもあったがノリスがうれしい初優勝を遂げた。ここからパパイヤオレンジのマシンは快進撃を続け、レッドブル&フェルスタッペンのアドバンテージを容赦なく削り取っていった。
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マクラーレン、42点差のレッドブルを捉えることはできるか?
勝負とは相対的な力の差により決まるものだ。ヨーロッパラウンドが始まると、挑戦者マクラーレンの強烈なパンチがさく裂し、チャンピオンのレッドブルがよろけだした。
第7戦エミリア・ロマーニャGPではフェルスタッペンが今季5勝目を飾るも、ノリスは0.725秒の僅差で2位。さらに第9戦カナダGP、第10戦スペインGPでもフェルスタッペン1位、ノリス2位と、チャレンジャーが追いかけ回し、チャンピオンがなんとか踏ん張るという展開が繰り返された。そして第11戦オーストリアGPでは、ついに拮抗(きっこう)する2人がコース上で交錯、接触するという事態に発展した。
当然レッドブルも「RB20」を改良し応戦するも戦況は好転していない。第13戦ハンガリーGPではボディーワークを大きく変えてきたものの、マクラーレンに1-2フィニッシュを許し、5位に終わったフェルスタッペンはチームへの無線でいら立ちを隠さなかった。
第14戦ベルギーGPでは、抜きやすいコースゆえにフェルスタッペンが戦略的なパワーユニット交換を敢行。10グリッド降格ペナルティーにより11番グリッドからスタートし、結果4位でチェッカードフラッグを受けた。同じく降格ペナルティーを受けた2023年は6位から優勝、2022年に至っては14番グリッドから表彰台の頂点に立ったことを考えると、レッドブルが相対的に戦闘力を落としていることがわかる。
マクラーレンの2024年は、長足の進歩を遂げたといっていい。2023年シーズンの14戦終了時点のポイントは111点。今季はそれを255点も上回る366点を稼ぎ出したことになる。10戦を残し42点先行している首位レッドブルとて、十分に射程圏内に捉えられるだろう。
マクラーレンは、ノリスとピアストリが切磋琢磨(せっさたくま)し、そろって上位に食い込むことで効率よく得点していることが強み。しかし問題がなかったわけではなく、最速のマシンでありながら、モナコGPではピアストリが予選で惜しくもポールを(そして優勝も)逃し、カナダGPではピットインのタイミングが遅れ、ノリスは勝てそうなレースを2位で終えた。シーズン後半戦では、こうしたドライバーのエラーやチームの戦略ミスをなくすことで、レッドブルを追い詰めたいところである。
一方でレッドブルは、マシンの劣勢を挽回するとともに、不調にあえぐペレスの復活を後押ししたいところ。来季以降の残留が決まっているメキシコ人ドライバーは、これまで特に予選での失敗が多く、少ない得点にとどまっている。フェルスタッペンのワンマンチームから脱却しない限り、マクラーレンとの戦いに勝つことはできないだろう。
なおマクラーレンの最後のコンストラクターズタイトルは1998年にまでさかのぼることになり、もし今年チームとしての栄冠を勝ち取れれば、21世紀初、通算では歴代2位タイの9回目となる。
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戦闘力が向上したフェラーリ、徐々にパフォーマンスを落とす
実に対照的なシーズンを送っているのは、フェラーリとメルセデスだ。
フェラーリの2023年型マシンは“ピーキー”で、速さは見せるもレースペースでは極度に安定感を欠いていた。この悪癖を治すべく、2024年型「SF-24」はより従順な性格を与えられ、そのかいあってレースペースも向上、タイヤにも優しくなりトータルな戦闘力は向上した。
第3戦オーストラリアGPでサインツJr.が優勝、第8戦モナコGPではルクレールが悲願の母国初Vと2勝したまではよかったのだが、しかし、そこから苦難の道が続くことになる。
レッドブルに追いつけ追い越せとマシンアップグレードを施してきたものの、第10戦スペインGPに持ち込んだ改良では、ダウンフォースの向上を図る一方でバウンシングをはじめとするドライバビリティーに問題が発生。第12戦イギリスGPでは、以前のバージョンに“ダウングレード”せざるを得ず、マシンパッケージの理解と熟成に努めざるを得なくなった。
その間、調子を上げてきたマクラーレンにコンストラクターズランキング2位の座を奪われ、またルクレールもドライバーズランキングでノリスに先を越され3位に転落。第14戦ベルギーGPでは、フェルスタッペンの降格によりルクレールがポールポジションについたものの、3位まで落ちてチェッカードフラッグを受けており、マシンのパッケージングの再確認が必要になっている。
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直近の4戦で3勝、“寝坊した”メルセデスの覚醒
フェラーリとは逆に、シーズン開幕にまるで寝坊したかのようなスロースタートを切ったのがメルセデスだった。
2023年は特に高速コーナーで予測不能な挙動を見せたリアエンドの問題に苦慮し、その解消のために2024年型「W15」では、マシン後部のダウンフォースをアップさせる必要があった。
今シーズンは、ダウンフォースを発生させるフロア下への整流を意識し、フロントウイングを精力的に改良。第8戦モナコGPで改良版のフロントウイングを装着すると、バランスの最適化と熟成が一気に進むことになった。
第9戦カナダGPでは、ラッセルがポール&今季初表彰台の3位、第10戦スペインGPではハミルトンが3位、さらに第11戦オーストリアGPでは、フェルスタッペンとノリスの接触もあって漁夫の利を得たラッセルが今季初優勝を果たした。
第12戦イギリスGPでは、母国ファンの前でハミルトンが57戦ぶりの勝利を挙げ、第14戦ベルギーGPではハミルトンが2勝目、ラッセルの失格がなければ1-2フィニッシュとなるところだった。
直近の4戦で3勝、夏休み前に最も調子を上げていたのはシルバーアローのチーム。序盤の出遅れがたたり、同じパワーユニットで戦うカスタマーのマクラーレンには100点もの差をつけられてランキング4位にいるが、レッドブルを交えたタイトル争いに影響を及ぼしかねない、侮れない存在であることは間違いないだろう。
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混戦から抜け出すためには
シーズン序盤はレッドブルがリードし、それをフェラーリが追いかける展開から、マシンアップグレードを的中させたマクラーレンが台頭し、夏になるとメルセデスが覚醒──2024年の前半戦は局面ごとに主役が変わり、強豪4チームから実に7人のウイナーが誕生した。昨シーズンの勝者がたった3人だったことを考えれば、まさに群雄割拠の時代に突入したことになる。
これはつまり、各陣営のマシンの熟成が進み、これまであった差がぐっと縮まったことを意味している。力がほぼ拮抗しているから、コース特性やアップグレードの成否、戦略やドライビングミスなど、ささいな違いやつまずきが結果として大きく響くことになるのだ。
進化(アップグレード)しないということは、停滞どころか後退を招くのがF1の世界。この混戦から抜け出すためには、コース上のみならず、し烈な開発競争でライバルを出し抜いていくしか方法はない。開発を継続させ、その方向性を見誤らず、なるべく多くのコースで安定した成績が残せるようマシンセッティングの幅(いわゆるウィンドウ)を広くし、予選やレースをミスなくこなすという、極めてまっとうな戦いができるか否かにかかってくる。
誰が勝つかわからない週末があと10回も続くというのだから、モータースポーツファンの冥利(みょうり)に尽きるというもの。史上最多の24戦が組まれる2024年シーズン、百戦錬磨のフェルスタッペンとレッドブルを倒さんとするチャレンジャーたちの一挙手一投足に刮目(かつもく)したい。
(文=柄谷悠人)
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柄谷 悠人
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