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オーダー前に要チェック! 5ドア/3ドアの「ジムニー」を並べて比べてわかったこと

2024.08.19 デイリーコラム 工藤 貴宏
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長さ以外にも何かが違う

2024年7月にインドネシアの首都ジャカルタ近郊で開催された「ガイキンド・インドネシア国際オートショー」に出かけてきました。

急激に中国ブランドの参入が増えてきているとはいえ、インドネシアは日本車比率が高い国。会場内では主要日本メーカーが広いブースを展開している……というと、訪れたことがない日本人には意外に思えるでしょうが、東南アジアのモーターショーはだいたいそんな感じです。

スズキもそうした日本メーカーのひとつで、会場内には国内投入が予告されているSUV「フロンクス」と共用部分が多い新型「バレーノ」などと並んで、「ジムニー」が展示されていました。

それにしても驚くのは展示されているジムニーの数ですよ。新型バレーノはたった1台だけなのに、ジムニーはなんと4台も展示。理由は「かの地でも注目車種だから」ってことなのでしょうけれど、3ドア版だけでなく当然のように5ドア版まであるのは、その正規導入がまだかなわない日本人としてはうらやましい限りですね。

せっかくの機会だから、日本では(並行輸入車を除き)見ることができない5ドアロングのジムニーをしっかりチェックしてみようじゃないか。3ドアと5ドアが並んでいるから、比べてみるのに好都合だし。というわけで、筆者は3ドアと5ドアのジムニーを比べてみました。

外観は5ドアだと単に車体が長いだけでなく、顔つきもちょっと違う。グリルがメッキで飾られて、3ドアよりも高級な感じだ。ほんのちょっとだけだけど。

そして運転席に乗り込む。コックピットに違いはない……と思いきや、なんとなく違う気がする。一体どこが違うのか?

ガイキンド・インドネシア国際オートショーのスズキブースに展示された2タイプの「スズキ・ジムニー」。
ガイキンド・インドネシア国際オートショーのスズキブースに展示された2タイプの「スズキ・ジムニー」。拡大
日本でまだ正規販売されていない「ジムニー5ドア」は、2023年6月にインドで発表・発売された。写真の赤いボディーカラーも日本市場の「ジムニー/ジムニーシエラ」には設定がない。
日本でまだ正規販売されていない「ジムニー5ドア」は、2023年6月にインドで発表・発売された。写真の赤いボディーカラーも日本市場の「ジムニー/ジムニーシエラ」には設定がない。拡大
「ジムニー5ドア」のグリルは、3ドア車(写真奥)に装着されているフラットブラックのものとは異なり、ツヤのあるグレーで塗られたうえ、メッキでドレスアップされている。
「ジムニー5ドア」のグリルは、3ドア車(写真奥)に装着されているフラットブラックのものとは異なり、ツヤのあるグレーで塗られたうえ、メッキでドレスアップされている。拡大
3ドア車よりもホイールベースが340mm延長された「ジムニー5ドア」。見るからに「長い」という印象だが、絶対的には全長3985mmとコンパクト。
3ドア車よりもホイールベースが340mm延長された「ジムニー5ドア」。見るからに「長い」という印象だが、絶対的には全長3985mmとコンパクト。拡大
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乗り降りしやすいのは確かだが……

違いは、センターコンソールのスイッチ。センターコンソールにパワーウィンドウスイッチのない3ドアと違い、5ドアはセンターコンソールに後席用のパワーウィンドウスイッチが追加されているのです。

いっぽうで衝撃だったのは、3ドアにはないリアドアを開けて乗り込んだ後席。ホイールベースが3ドアに対して340mmも広がっているのだから、相当ゆったりしていると思うじゃないですか。……でも実際に座ってみると、あれれ……そうでもない。後者の膝まわりスペースは“こぶしひとつ分”くらいしか広がっていないんです。感覚的には「確かに3ドアよりは広いですけどね……」くらい。どうなってるの?

今か今かと5ドアの国内投入を待っている人にはちょっと言いにくいけれど、5ドアといっても後席居住性が大きく跳ね上がっているかといえばそうではない。それは、今のうちに知っておいたほうがいいかもです。まあ、リアドアがあるおかげで後席の乗り降りは3ドアに対して格段にしやすいけどね。

ホイールベースが340mmも広がっているのに、なぜ後席足元はそこまで拡大していないのか? その理由はシンプル。後輪に対するリアシートの取り付け位置が、5ドアは3ドアに比べて大きく前進しているからです。

どうしてそんなパッケージングになっているのか?

それは荷室容量を拡大するため。5ドアの荷室の奥行きは、3ドアに比べて明確に広いのです。ジムニーは3ドアでも5ドアでもリアオーバーハングの長さは変わらないので、もし後輪に対するリアシート取り付け位置が3ドアと5ドアで変わらなければ「後席は広いけれど、荷室は3ドアと変わらない。正直結構狭い」というパッケージングになるでしょう。でもジムニー5ドアはそれを選ばず“後席拡大はわずかにとどめ荷室を広げる”という道を選んだというわけでした。

ちなみにそんな3ドアと5ドアのパッケージングのつくり分けは、SUV界隈(かいわい)では珍しいことではないらしい。例えば現行の「ディフェンダー」も、3ドアの「ディフェンダー90」(ホイールベース2585mm)と5ドアの「ディフェンダー110」(同3020mm)を比べると、前者は後輪に対する2列目位置は後ろになっている(5ドアに匹敵するほどの足元空間がある)。いっぽうで3ドアの荷室奥行きは減っていて、荷室は5ドアのほうが広く確保されているのです。

コックピット周辺のデザインは、根本的には変わらない。写真は「ジムニー5ドア」のAT車のもの。
コックピット周辺のデザインは、根本的には変わらない。写真は「ジムニー5ドア」のAT車のもの。拡大
「ジムニー」の3ドアになくて5ドアにあるのは、後席用窓の開閉スイッチ(写真中央)。センターコンソールに集約されている。
「ジムニー」の3ドアになくて5ドアにあるのは、後席用窓の開閉スイッチ(写真中央)。センターコンソールに集約されている。拡大
「ジムニー5ドア」(写真)と3ドア車の後席におけるニールームの実質的な差は、こぶしひとつ分ほど。340mmというホイールベースの差からするとわずかである。
「ジムニー5ドア」(写真)と3ドア車の後席におけるニールームの実質的な差は、こぶしひとつ分ほど。340mmというホイールベースの差からするとわずかである。拡大
ラゲッジスペースには大きな差ができている。写真は5ドア車のもので、平均的なファミリーカーと同程度の空間が確保されている。
ラゲッジスペースには大きな差ができている。写真は5ドア車のもので、平均的なファミリーカーと同程度の空間が確保されている。拡大
こちらは3ドア車の荷室。バッグ類を縦置きする程度の奥行きしかないため。4人乗車でキャンプ道具もさまざま積んで……という使い方は難しい。
こちらは3ドア車の荷室。バッグ類を縦置きする程度の奥行きしかないため。4人乗車でキャンプ道具もさまざま積んで……という使い方は難しい。拡大

日産方式で売ればいい

というわけでジムニーの5ドアも「後席の広さ」を求めて選ぶとちょっと話が違っちゃうかも(3ドアよりは広いけれど)。それよりも後席における乗降性とか、荷室の広さを期待しておくとちょうどいい存在といえそうです。あ、後席は座面が厚いなどシート自体のつくりが違っていて、座り心地は5ドアのほうがいいですね。

ところでインドネシアでのジムニー5ドアの価格は4億6500万ルピアからで、日本円に換算すれば約430万円。いっぽう3ドアは4億4740万ルピアからで、約415万円。意外に価格差がないのは、5ドアがインド製(ASEANとインドの自由貿易協定で関税が抑えられる)なのに対して3ドアはインド製よりも関税が高い日本製だからでしょう。

5ドアといえばやっぱり気になるのは日本での販売予定。スズキは「5ドアを日本で売ることにハード的な問題はないが、なかなか納期が短くならず3ドアをたくさんのお客さまにお待たせしている状況で、5ドアを追加するのは難しい」というスタンスを通している。広報部によると「日本向けジムニーの生産量を当初の約2倍にまで拡大して対応しているのですが、それでも納車待ちの列へ新たに並んでくださるお客さまが多いのでなかなか納期が短くならない」とのこと。

でも、そんなことを言っていたらいつまでも5ドアを追加できないので、日産が「フェアレディZ NISMO」追加時に「すでに『フェアレディZ』をオーダーして納車待ちのお客さまは、NISMOへの変更もできますよ」とやったように、「すでにジムニーをお待ちいただいているお客さまは、5ドアに変更できますよ」として5ドアを追加すればいいのに……と筆者は思うのだけれど、聡明(そうめい)な読者諸兄におかれましては、どう思われますか?

(文と写真=工藤貴宏/編集=関 顕也)

「ジムニー」の5ドア(写真)と3ドアの後席では、ニールームだけでなく座面の形状も異なる。
「ジムニー」の5ドア(写真)と3ドアの後席では、ニールームだけでなく座面の形状も異なる。拡大
「ジムニー5ドア」の後席前方の空間。座面の先端は台座部分よりも前にせり出している。
「ジムニー5ドア」の後席前方の空間。座面の先端は台座部分よりも前にせり出している。拡大
3ドアモデルの後席の足元。座面は台座部分よりも奥まっている。
3ドアモデルの後席の足元。座面は台座部分よりも奥まっている。拡大
「ジムニー5ドア」は、東南アジアのほか中南米、アフリカなどの地域で販売されている。日本では2024年8月中旬現在、並行輸入車の入手は可能となっている。
「ジムニー5ドア」は、東南アジアのほか中南米、アフリカなどの地域で販売されている。日本では2024年8月中旬現在、並行輸入車の入手は可能となっている。拡大
工藤 貴宏

工藤 貴宏

物心ついた頃からクルマ好きとなり、小学生の頃には自動車雑誌を読み始め、大学在学中に自動車雑誌編集部でアルバイトを開始。その後、バイト先の編集部に就職したのち編集プロダクションを経て、気が付けばフリーランスの自動車ライターに。別の言い方をすればプロのクルマ好きってとこでしょうか。現在の所有車両は「スズキ・ソリオ」「マツダCX-60」、そして「ホンダS660」。実用車からスポーツカーまで幅広く大好きです。

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