“300”とはここが違う! 「トヨタ・ランドクルーザー“250”」はどんな人にオススメか?
2024.09.13 デイリーコラム乗ればわかる“つくり分け”の正当性
まだ記事は公開されていないのだが、先日webCG編集部では、「トヨタ・ランドクルーザー“250”」を試乗取材する機会を得た。で、なにを隠そうワタシがその担当編集を仰せつかったのだ。そうである。乗っちまったのである。ワタシもランクル“250”に! 既納の読者諸氏にはなんの自慢にもならんでしょうが(笑)。
そこで本稿では、お仕事で2泊3日ほどランクル“250”とお付き合いしたwebCG編集部員が、その心象を開陳したい。なにせこれで、“300”“250”“70”とランクル一族の運転席をコンプリート。小難しい話は後日公開の佐野弘宗氏の試乗記にお任せするとしても、いちランクルオタクとして、自身のランクルファミリー観をここに総括しておきたいのだ。読者の需要? そんなもん知らんがな。
さてさて。1年前の夏、東京・台場でランドクルーザー“250”が世界初公開された折、記者はそのイカした姿にワクワクを爆発させるいっぽうで、「……これ、“300”との相関関係はどーなってんの?」とモヤモヤした疑問を抱いた。車台は同じ「GA-F」で、寸法もほぼほぼ同じ。ただの“エンジン違い”をおおげさにも別モデルに仕立てたような印象があり、つくり分けの正当性を感じなかったのだ。旧来の意味でのライトデューティー系は、先代にあたる最終「プラド」で終わりなのかな? とも思った(参照)。
その心象は、今春の3兄弟合同オフロード試乗会でも変わらなかった。各車の悪路走破性は山田弘樹氏のインプレッションのとおりで(参照)、要するに“250”も十分以上のバケモノだった。そりゃ極限の領域では“300”のほうが強じんで悪路にも強いのだろうが、その差が表れるロケーションが、果たして日本の(あるいは世界的にも)使用シーンにそうそうあるか? だとしたら“300”と“250”をつくり分ける意義ってなに? デザインだけか??
……しかし、実際に乗ったら全然そんなことはなかった。こと運転感覚において、“300”と“250”はまったく違うクルマだったのだ。記者はここに、己が過ちを大いに謝罪したい。
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日常使いで感じられるフレンドリーな性格
あらためて、今回のランクル“250”との2泊3日を振り返ると、走行シーンは99%舗装路、しかも半分以上が市街地だった。“250”からしたら本領じゃないだろうが、日本在住の皆さまにとっては、ほとんどの移動シーンがこうしたシチュエーションだろう。そういう意味では、非常に有意義な時間を過ごせたわけだ。
で、かような疑似オーナー体験において、記者が“250”と“300”のなにに違いを感じたかというと、それは取り回しのしやすさ、せせこましい普段使いでの痛痒(つうよう)のなさである。といっても、“250”のほうが最小回転半径が小さかったとか、そういうわけではない(むしろ6.0m対5.9mで“250”のほうが大きい)。違いは威圧感とかわずらわしさとか、そういう数値じゃないところに表れた。
個人的に大きかったのがボンネットの圧迫感で、“300”はバルジが隆々と盛り上がっているうえに、鼻先を非常に遠くに感じる。見切り自体は良好だし「デッカいクルマを運転してるぜ!」という満足感はマシマシなのだが、武蔵野の狭小住宅に住まうひとやまいくらの民草としては、ハンドルを切るたびにまぁ大仰に感じたものだ。いっぽう、今回取材した“250”のボンネットはというと、そもそもフロントオーバーハングを切り詰めていることもあって、運転席からの景色にそこまでの圧迫感はない。大層なクルマを運転しているという感覚は薄く、日常のクルマとして気負いなく付き合える感じがした。
気負いなく付き合えるといえば、上述のようなシーンでの操舵感についても感覚は同じだ。なにせこちらは電動パワーステアリングで、言ってしまえば「普通のクルマ」。油圧式の“300”と比べれば(上位グレードには電動アクチュエーターも付いてるけどね)、操舵感は自然でモダンだ。むろん、その“自然さ”はコンピューターによる緻密なモーター制御で演出されたものなんだけど、それに慣れた現代人にとっては、やっぱりこれが「自然なステアフィール」というもの。普通のクルマから乗り換える御仁が、どちらに親近感を覚えるかといえば、やっぱり電パの“250”でしょう。
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3兄弟のどれもがスバラシイ!
加えて、交差点などにおける転舵時の頭の入りも、“250”のほうが軽い印象。このあたりは150~200kgという絶対的な重量差と、かたや排気量3リッター台のV6、こなた同2リッター台の直4というエンジンに起因する、「頭の重さ」によるものだろう。……と思っていたのだが、後日エンジニア氏とのオンライン面談で聞いたところ、「“250”では、足まわりもそのように走るよう調律しています」とのことだった。回頭の重さ/軽さは、開発者も意図して差別化していたようだ。
このほかにも、ミラー to ミラーの小ささ(約2120mmで実は150系プラドよりも狭い)による意外なすり抜け性のよさや、あとはデザインのモダンさなんてところも、“250”が日々の生活になじんで感じられた要因かもしれない。多分に個人的感想ではあるが、世間的には「クロカンっぽい」とされる“250”のデザインを、街なかでむしろモダンに感じたのはちょっとおもしろい体験だった。恐らくは“70”のような本物の武骨デザインではなく、「クロカン的に、ちゃんとデザインされたクルマ」だったからでしょう(悪い意味ではないですよ)。“300”よりキャラもの感も強く、そんなところも今風のクルマに感じられた。
……とまぁ、こうして振り返ってみると、なるほど“300”とは巧みにつくり分けられたものである。取材会では「“250”は『生活・実用』のためのランクル」との説明を眉に唾して聞いていたが、いざ乗ってみたらグゥの音も出ない。このクルマは過去のプラドを含めても、史上最高にジャパン・ベスト、日本の日常にもっとも寄り添うランドクルーザーとお見受けした。駐車場だけは、ちょっと困るけどね。
なお、「じゃあ“300”はなんなのさ?」と問われれば、記者としては「世界最強、無敵の大名籠」と答えたい。「男と生まれたからには、誰でも一生のうち一度は夢見る『地上最強の~』」という某漫画の名句に共感する御仁には、ぜひ挑んでいただきたいクロカンの頂だ。そして“70”はといえば……記者ごときが口にするのも無粋だが、今もなお極地で働く、クロスカントリー車の原点である(参照)。
この3兄弟がそろうなんて、日本はなんてカーマニアにとって恵まれた国なのだろう。お財布にゆとりのある御仁は、ぜひこれら3台と、ついでに「スズキ・ジムニー」もガレージに並べて、クロスカントリー車の世界観を完全網羅していただきたい。
(文=webCG堀田剛資<webCG”Happy”Hotta>/写真=向後一宏、郡大二郎、webCG/編集=堀田剛資)
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堀田 剛資
猫とバイクと文庫本、そして東京多摩地区をこよなく愛するwebCG編集者。好きな言葉は反骨、嫌いな言葉は権威主義。今日もダッジとトライアンフで、奥多摩かいわいをお散歩する。
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