トヨタ・ランドクルーザー“250”ZXプロトタイプ(4WD/8AT)/ランドクルーザー“250”ZX“ファーストエディション”プロトタイプ(4WD/8AT)
本物は色あせない 2024.05.08 試乗記 いよいよ登場した“第3のランクル”こと「トヨタ・ランドクルーザー“250”」。世界中の極地で活躍するランクルファミリーの、「新たな中核モデル」といううたい文句は本物か? 本格的なオフロードコースで、その実力を確かめた。「このコースを走るんですか?」
みんな大好き、ランドクルーザー。その3兄弟を、トヨタのお膝元にあるオフロードコース「さなげアドベンチャーフィールド」で試乗することができた。もちろんwebCGでは3台すべてをリポートする予定だが、今回はまず、一番新しいランドクルーザー“250”からご紹介させていただくことにする。
なんて前振りすると、「そんなこと言ったって、ランクル買えないじゃん!」という声が聞こえてきそうだ(参照)。そして内心では筆者も、同じように思っていたりする。いいなと思っても買えないモデルを紹介するのって、つらいよね。だけれど買える買えないの話は、ここではひとまず置いておきたい。なぜなら今回の舞台は超本格的なオフロードコースであり、実はそこに「買える買えない問題」の答えさえもが、隠されていたと筆者は感じたからである。
さなげアドベンチャーフィールドが初めてだった筆者は、とっても驚いた。特に前半コースには、「本気でここ登らせるつもり!?」と思わずこぼしたほど、強烈な岩場の急斜面が含まれていたからだ。聞けばそれでも通常よりは難易度を低めたコース設定にしているとのことだったが、それにしても「新車でランクル買って、こんなところ走るユーザー、いないでしょ!」と思った。
しかしトヨタの開発陣は、至って大真面目なのだ。この試乗会が公道でのオンロードドライブとならなかった背景には、試乗車を登録してナンバーを取得する時間がなかったという理由も裏にはあったようだが、「ランクルを理解してもらうには、まずはオフロード性能からだと思っていた」と真顔で力説するのである。
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オフロードでの洗練された走り
ということでまずはロック・モーグルのセクションを、角目の「ZX」で走った。モードは最初から「L4」(四駆のローレンジ)に設定されており、ちょっとアクセルを踏んだだけで、発進から2.8リッターの直列4気筒ディーゼルターボ「1GD」が“ヴァーン”とほえた。「マルチテレインセレクト」(MTS)のモードには「サンド」「マッド」「ロック」「ダート」「ディープスノー」とあるが、基本は「オート」。フロントスタビライザーは、「SDM」スイッチでフリーにしてあった。
強力なエンジンブレーキとフットブレーキを併用しながら、急な坂道をゆっくりと降りる。その乗り心地は砂漠のロールスならぬ荒れ地のレクサスといった高級感で、リアの編集部H君からも「乗り心地がすごくいい!」と歓喜の声が上がった。
肩慣らしのモーグルは、まったくもって危なげがない。対角線上の浮いた車輪にブレーキをかけて、接地輪のトラクションを稼ぐその制御は、ブレーキのかけ方がひときわ緻密だ。音にすると“グゴゴゴゴ……”(ブレーキをかける音)からの“ゴリゴリゴリ!”(トラクションがかかる様子)ではなく、“クココココ……”からの“グイグイグイッ!”といった具合に、スマートにこぶを乗り越えていく。
サスペンションストロークは、後日紹介する「ランドクルーザー“300”」と比べてしまうと、ちょっと短め。もっともアッチは「GRスポーツ」ということで専用のダンパーが装備されていて、フロントの1輪が700mm(!!)くらい持ち上がっても他の3輪が浮かないほどの超ロングストローク仕様だったというから、比べてしまうのは少しかわいそうかもしれない。“300”が絶対王者なら、“250”はハイスタンダードといった感じである。
もうひとつ感心したのは、ステアリングフィールだ。“250”はランクルとして初めて、電動パワーステアリング(EPS)を装備した。オフロードにおけるEPSのメリットは、路面からのキックバックを電動の反力制御で打ち消せることだ。つまり車体が岩を乗り越えて結構激しく揺れていても、ハンドルはぶれないからとても操作しやすい。正直これが油圧式に電動アシストを加えたランクル“300”(「VX」「ZX」「GRスポーツ」のみ)のパワステより優れているのかと聞かれたら、筆者の経験だと甲乙はつけられない。今後“300”がフルEPSになったとしたら、そのほうが効率的ということなのだろう。
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岩登りのセクションでは感動すら覚える
そして前半のハイライトとなる岩場の登坂斜面では、ランクルのすごさを思い知らされた。
助手席のエンジニア氏の指示にまるっと従い、1つ目の岩を乗り越える。ちょっと大きくない? と思ったら、案の定“ガッツーン!”と底を打った。ものすごく大きくて、とっても嫌な音だ。うぅ……もう、帰っていいですか?
しかし氏は、「大丈夫です、大丈夫」と、まったくそんなことを気にかけない。そのまま「あっちです」「ここを真っすぐ」とラインを指示して、最後の急斜面にたどり着いた。試乗車が何台も通って砂ぼこりを敷き詰めた岩肌はかなり滑りやすく、最初はあっけなくスタックした。……もう、運転代わってもらっていいですか?
少しバックして態勢を整え直し、再びトライ。
「ちょっと右に切って……上がったら(ステアリングを)真っすぐで。アクセル緩めないで、そのまま踏み続けてください」
こうした路面を無事に走り切るコツは、トラクションを途切れさせないことだ。アクセルを深すぎず、しかし浅すぎず踏み込んで、タイヤを少し滑らせ気味に保つ。するとブレーキが内輪をつまみ、MTSがモードを瞬時に切り替えまくり、“250”がグイグイ登っていく。思わず息を止めながら、右足に神経を全集中。スーパーローのギア比でも、2.8リッター直列4気筒ディーゼルターボは従順だ。
おぉ、おおぉ、おおおおぉ! 車内に響く雄たけびとともに、ランクル“250”は岩場を登り切った。このとき誓約書を出されたら、思わずハンコを押しただろう。そのくらい感動的な登頂だった。
ちなみに、こうした場面で「クロールコントロール」を使えば、アクセル操作が自動になる。勝手に進んでいくから、時に自分の意図とは反する動きもするが、ドライバーはステア操作に集中するだけで、この難しい岩場を効率的に登り切ることができる。
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進化を続けるラダーフレーム
後半ステージでは、林間コースを走った。ここで感じたのは、ランクル“250”の見切りの良さだ。“300”とラダーフレームを共用しながらも、スタビ位置の変更でフロントオーバーハングを切り詰め、同じくフロントバンパーの隅を削り取ったボディーは扱いやすい。ホイールベースは2850mmで“300”と同等、最小回転半径は6mと、実は“300”よりも10cm長いくらいなのだが、コックピットからの眺めはボンネットの両端がつかみやすく、フロントガラスの立ち具合もあわせて、心理的にも身軽に動ける感じがした。
筆者は今回の試乗で、遅ればせながらラダーフレームの魅力を知った。ラダーといえば頑丈だが、その他の面ではモノコックにかなわない。そんな漠然としたイメージが、ランクル“250”によって払拭(ふっしょく)された。
エンジニア氏いわく、ランクル“250”/“300”で使われる「GA-F」プラットフォームは、「おそらく同じサイズのモノコックより断然剛性が高い」という。ちなみに先代にあたる「ランドクルーザー プラド」(150系)と比較して、フレーム剛性で50%、車両全体としては30%の剛性アップを果たしている。そして上屋にかぶせたボディーとの結合も、まるでモノコックボディーのように一体感が高い。
「だったらみんな、ラダーフレームにすればいいじゃないか」と言われそうだが、少なくとも整った道を走る人々の日常生活だと、そこまでの強度やボディー剛性は必要ないわけだ。だったら効率的につくれるモノコックボディーのほうが、コストも抑えられるというわけである。
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時を経ても色あせない存在
またラダーフレームは、頑丈なぶんだけ車重が重くなる。これに対してトヨタは「非線形テーラードウェルドブランク」と呼ばれる技術を駆使して、フレーム断面の適所に、厚さの異なる超高張力鋼板を溶接しながら軽量化を推し進めている。しかしそれでもその車重は、最も軽量な2.7リッターガソリン仕様の「VX」で2240kgにもなる。ちなみにWLTCモード燃費は、このご時世にガソリン仕様で7.5km/リッター(とはいえレギュラー)、ディーゼルターボで11.0km/リッターにすぎない。
つまりランクルは、とってもカッコよくなったけどファッションSUVなんかじゃない。頑丈なクルマが必要な人たちのためにつくられていて、世界にはランクルを必要とする人たちが、まだまだたくさんいるのだ。
ちなみに、岩場でガッツリ打ちつけた下まわりをのぞくと、各部を接合するネジまわりには見事に鉄板のガードが設けられていた。あの程度の“ガツン”では、壊れるわけがないのである。
さて最後に肝心な「買える、買えない問題」だが、筆者は欲しいなら、トコトン待てばいいと思う。はやりものとしてランクルに乗りたいならそうも言ってられないだろうが、そのコンセプトを理解できる人には、時を経ようとランクルはランクルだからだ。実際、同じコースでプラドに乗っても、古さや制御の粗さを感じこそすれ、走りのタフさはまったく同じだった。ランクル“250”もマイナーチェンジしようが、もっと言えば代替わりしたとしても、その魅力と本質は揺るがない。だから本当に欲しいのであれば、しぶとく追い続ければいいのである。
(文=山田弘樹/写真=郡大二郎/編集=堀田剛資)
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テスト車のデータ
トヨタ・ランドクルーザー“250”ZXプロトタイプ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4925×1980×1935mm
ホイールベース:2850mm
車重:2410kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.8リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:204PS(150kW)/3000-3400rpm
最大トルク:500N・m(51.0kgf・m)/1600-2800rpm
タイヤ:(前)265/60R20 112H M+S/(後)265/60R20 112H M+S(ダンロップ・グラントレックPT22)
燃費:11.0km/リッター(WLTCモード)
価格:735万円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:63km
テスト形態:オフロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(軽油)
参考燃費:--km/リッター
トヨタ・ランドクルーザー“250”ZX“ファーストエディション”プロトタイプ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4925×1980×1935mm
ホイールベース:2850mm
車重:2410kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.8リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:204PS(150kW)/3000-3400rpm
最大トルク:500N・m(51.0kgf・m)/1600-2800rpm
タイヤ:(前)265/70R18 116S M+S/(後)265/70R18 116S M+S(ミシュランLTXトレイル)
燃費:11.0km/リッター(WLTCモード)
価格:785万円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:1173km
テスト形態:オフロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(軽油)
参考燃費:--km/リッター
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山田 弘樹
ワンメイクレースやスーパー耐久に参戦経験をもつ、実践派のモータージャーナリスト。動力性能や運動性能、およびそれに関連するメカニズムの批評を得意とする。愛車は1995年式「ポルシェ911カレラ」と1986年式の「トヨタ・スプリンター トレノ」(AE86)。
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