MINIカントリーマンSE ALL4(4WD)
大きな一手 2024.11.19 試乗記 フルモデルチェンジで、名前もボディーサイズも大きく生まれ変わったSUV「MINIカントリーマン」。初設定された電気自動車の四輪駆動モデル「SE ALL4」をロングドライブに連れ出し、その特徴と本家「MINIクーパー」との違いをチェックした。電動モデルに注力
国内でネックとなっていた商標の問題が解消され、これまで用いられた「クロスオーバー」からついに本来の「カントリーマン」というグローバル名称へと変更がかなったのが、ここに紹介する新型である。
日本では2023年11月に、まず「次世代MINIの第1弾」というフレーズとともに4グレードすべてで異なるエンジンを搭載する内燃機関(ICE)仕様の予約受注がスタート。そして今回取り上げるのは、そんな純ICE車に遅れること3カ月余りで販売が開始された電気自動車(BEV)モデルだ。
最新世代のMINIにおける大きな特徴は、BEVが充実していること。このカントリーマンにも、シリーズの基幹バージョンというべきハッチバックモデルにもICE車とBEVが並列でラインナップされるのに加えて、「エースマン」と称するハッチバックモデルとカントリーマンの中間に位置するサイズが与えられた新型車も、BEV専用モデルとして登場している。
そうしたなかにあってカントリーマンがMINIにラインナップされる他のBEVと大きく異なるのは、そこに用いられるプラットフォームがEV専用に仕立てられたものではなく、ICE車のそれと共有するものであるということだ。
具体的に言えばプラットフォームはBMWの「X1」「X2」シリーズと同様のアイテムで、こうして両ブランドをまたぐ基本骨格の巧みなまでの共有が行われていることを知ると、かつてFFレイアウトとは疎遠であったBMWが1994年に英ローバーを傘下に収め、それを契機にMINIのブランドすべてを手に入れることに至った真の狙いをいまさらながら教えられる思いである。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
ブランド名と実車のギャップ
そうした史実に思いをはせつつテストドライブを行った今回のMINIカントリーマンは、最高出力204PSのモーターで前輪を駆動する「E」グレードと、前後にモーターを備え4輪をシステム最高出力306PSで駆動する「SE ALL4」グレードの2タイプが設定されるうちの後者。そんな実車を前にまず驚いてしまうのは、そのボディーの大きさである。
かつては実際に小さいことを示しつつ与えられた「Mini」の名も、今となってはそのサイズではなくセグメントのなかで飛び抜けたプレミアム感を売り物とするブランド全体を表す名称……と、アタマの中ではBMWのプロデュースに変わってから久しいそうしたコンセプトに納得しながらも、最新のカントリーマンを目の前にするとどうしても「大きい!」と、そんな正直な感想を隠せなくなる。
テスト車両のボディーが白系の膨張色「ナノクホワイト」であったことも、こうした印象を強く抱くことになったことと関係はありそう。けれども、全長×全幅×全高=4445×1845×1640mmという実際のボディー3サイズが、クロスオーバーを名乗っていた従来型と比較して全長で130mm、全幅で25mm、そして全高でも65mm大型化したことを踏まえても、多くの人がMINIというブランド名称から連想するであろうサイズ感よりも大柄になったこと、そしてブランド名と実車サイズのギャップがもたらす違和感は否定できないのではないだろうか。
ちなみに、こちらも20mm延びて2690mmとなったホイールベースは、プラットフォームを共有するBMWのX1やX2と同数値。さらに車両重量は2t超(!)の2020kgなので、そこにはWLTCモードで451kmという一充電走行距離を実現させるために積まれた容量66.5kWhの駆動用バッテリーの重さが効いていることは言うまでもない。ちなみにEグレードは同容量バッテリーで一充電走行距離が482kmとなる。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
価格もプレミアム
そんな(MINIらしくない)スペックを並べるこのモデルだが、そのかいあって(?)室内空間はさすがにゆったりとしている。
フル乗車の5人となると3人掛けのリアシートは左右方向に少々きついが、4人までであれば大人の長時間乗車にも不満ナシ。加えれば、アイポイントが高めでドアミラー上側からの抜けにも優れるので、ドライバー視線での取り回し性にたけていることは美点のひとつ。このあたりも含め、カントリーマンを「MINIのSUV」というフレーズで紹介してもいい。
それでは「4WDでもあることだしオフロードも得意とするのか?」と問われた場合に要注意なのが、最低地上高の数値だ。カントリーマンの最低地上高は、ローダウンサスペンションを採用する「ジョンクーパーワークス」グレードを除くICE車よりも30mm以上低くなってしまう171mm。一般的な車両と比べてもその数値は極端に小さいわけではないが、200mmをクリアするICE車に比べると、せっかくのSUVの得意科目がひとつそがれてしまったように思えるのは事実。
ちなみにICE車ともども全8色が用意されるボディーカラーのうち無償色は「メルティングシルバーIII」のみで、他の7色はいずれも9万6000円のエクストラコストを要するオプションの扱い。今回のテスト車はさらに、電動フロントシートやharman/kardon製HiFiラウドスピーカーシステムなどで構成される「Mパッケージ」や、「ジョンクーパーワークススポーツシート」とステアリングホイールヒーターなどをパッケージングした「フェイバードトリム」、そして標準仕様の225/55R18に対して245/45R19と幅も径もアップしたシューズなどと、総額70万円に迫るオプションアイテムも装備していた。
オプション群が豊富に用意されオーダーの時点でさまざまなカスタマイズが可能な一方で、あれもこれもと選択していくとオプションだけでたちまちビックリするような価格になってしまうというのも、プレミアムなブランドの「あるある」と受け取るべきか。
それにしてもテスト車の仕様で軽く700万円オーバーと聞くと、その高価さにやはりちょっとばかりの驚きは隠せない。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
クーパーとの走りの共通項は?
一方、インテリアには、このセグメント随一のプレミアムブランドという雰囲気がほとばしる。ダッシュボード中央部に置かれた丸型で巨大なタッチ機能付きOLEDディスプレイ「インタラクションユニット」はもとより、夜間に透過光を映し出すリサイクルテキスタイルで覆われたダッシュボードや、3本スポークに見えるうちの1本をストラップ状にしたステアリングホイール、ドライバー正面からメーターパネルを廃す代わりにレイアウトされたヘッドアップディスプレイなどなど、随所にプレミアム感を演出するアイデアが満載である。
韓国サムスンディスプレイがMINI専用に開発したというその大きなディスプレイの下には、パワーユニットのON/OFFやトグルスイッチ形状のATセレクター、オーディオ、ハザードランプなど、運転中に使用頻度の高い物理スイッチが「スイッチセンター」と称するスペースにまとめてレイアウトされている。このブランドが追い求めるシンプルなデザインを実現させながら、実際に扱いやすく、タッチ操作式に対して安全性の面でもアドバンテージのある操作性を両立させている点は好感が持てるものだった。
そんなカントリーマンで走り始めて感じた第一印象は「ステアリングの操作力がスッキリ軽い」ということだ。
実はこのモデルの直前に試乗した「クーパーSE」、すなわちBEVの3ドアハッチバックモデルとの比較になってしまった感も多分にあるが、それにしても「こうした軽やかさはちょっとMINIらしくないのでは……」と感じられたのもまた確か。
同時に、クーパーとは段違いでしなやかと表現したいフットワークテイストにも、一瞬困惑することに。19インチのオプションシューズを履いてなお、なかなかにフラット感の高いその乗り味には、率直なところクーパーとの共通項は見当たらないと報告したほうがよさそうだったからである。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
ゆとりあるパッケージングも魅力
と、ここまで記したところでふと思ったのは、そもそもカントリーマンを選ぼうという人はクーパーとの間に走りの共通項などは求めていないのではないか、ということだ。
なるほどどちらもMINIの一員であり、前出のインタラクションユニットなどでブランドとしての統一感はキープされているものの、パッケージングや居住空間の広がりなどは当然まったくの別もの。そのいずれにもそれぞれを支持する、異なる価値観の持ち主が存在するはずである。こうなると、そこで求められる走りのテイストも異なるステージ上にあるのは当然で、あえて両者に共通項を与える必要はないとも考えられそうだ。
であれば、前述のフットワークテイストはもとより、特有の静かで滑らかな加速感を筆頭とした電動パワーユニットとの親和性も、ハッチバックモデル以上に高そうと思えたのがこのカントリーマン。より広い居住空間やリアシートを使用時でも460リッターと余裕あるラゲッジスペースを内包したパッケージング、そしてそれらと走行テイストとのマッチングが、いよいよ符号して見えてくる。
ハッチバックモデルでは自身のショッピングリストに載らないけれど、こちらであればピタリとはまると感じるMINIのファンは少なくなさそう。そこにBEVという選択肢が加わったことで、さらに新たなるユーザー層を開拓する一手となりそうな新型MINIのバリエーションなのである。
(文=河村康彦/写真=花村英典/編集=櫻井健一/車両協力=BMWジャパン)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
MINIカントリーマンSE ALL4
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4445×1845×1640mm
ホイールベース:2690mm
車重:2020kg
駆動方式:FWD
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
フロントモーター最高出力:190PS(140kW)
フロントモーター最大トルク:247N・m(25.2kgf・m)
リアモーター最高出力:190PS(140kW)
リアモーター最大トルク:247N・m(25.2kgf・m)
システム最高出力:306PS(225kW)
システム最大トルク:494N・m(50.4kgf・m)
タイヤ:(前)245/45R19 102Y/(後)245/45R19 102Y(ハンコック・ヴェンタスS1エボ3)
交流電力量消費率:162Wh/km(WLTPモード)
一充電走行距離:451km(WLTPモード)
価格:662万円/テスト車=731万6000円
オプション装備:ボディーカラー<ナノクホワイト>(9万6000円)/インテリアカラー<べスキンダークぺトロール>(0円)/フェイバードトリム(22万6000円)/Mパッケージ(25万1000円)/19インチカレイドスポーク2トーン(12万3000円)
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:2233km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(6)/山岳路(3)
テスト距離:297.5km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:6.4km/kWh(車載電費計計測値)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
-
アウディQ3スポーツバックTFSIクワトロ150kWアドバンスト(4WD/7AT)【試乗記】 2026.6.30 アウディのコンパクトSUV「Q3」がフルモデルチェンジ。新しくなったのはすっかり押し出しの強くなったフロントマスクだけでなく、内装もすべて新設計。インフォテインメントや灯火類などにも最新のシステムを採用した意欲作だ。「スポーツバック」の4WDモデルの仕上がりをリポートする。
-
マクラーレンW1(MR/8AT)【海外試乗記】 2026.6.29 マクラーレンが、かつての「F1」や「P1」に続く“究極のロードゴーイングカー”として開発した、超高性能モデル「W1」。そのドライブフィールはどのようなものか? イタリアで試乗した西川 淳がリポートする。
-
ヒョンデ・ネッソ ラウンジ+(FWD)【試乗記】 2026.6.27 ヒョンデの水素燃料電池車「ネッソ」がフルモデルチェンジ。……といっても多くの方にはなじみがないかもしれないが、デザインが一気にモダンになったほか、満タンからの走行可能距離が25%近くも拡大するなど長足の進歩を果たしている。300km余りをドライブした。
-
アストンマーティンDBX S(4WD/9AT)【試乗記】 2026.6.24 「SUVの形をしたGT」こと「アストンマーティンDBX」が、さらに高性能な「DBX S」に進化。より機敏なフットワークと、よりパワフルなエンジンを得たハイパフォーマンスSUVは、どのような体験を提供してくれるのか? 飛ぶがごとく走る英国の巨獣の実力に触れた。
-
三菱トライトンGSR(4WD/6AT)【試乗記】 2026.6.23 三菱のピックアップトラック「トライトン」のマイナーチェンジモデルが登場。トヨタの新型「ハイラックス」を迎え撃つべく三菱は、シャシーを鍛え上げ、走行性能をさらなる高みへと引き上げている。400km余りをドライブした印象をリポートする。
-
NEW
レクサスRZ550e“Fスポーツ”(前編)
2026.7.2あの多田哲哉の自動車放談「ステアバイワイヤ」をはじめ、最新のテクノロジーが注がれた電気自動車「レクサスRZ550e“Fスポーツ”」。そのクルマづくりについて、トヨタでさまざまな車両の開発を取りまとめてきた多田哲哉さんが語る。 -
NEW
環境も走りも妥協しない ミシュランが目指す持続可能な次世代のビジョンを知る
2026.7.2デイリーコラム2030年までにタイヤのエネルギー効率を2020年比で10%改善し、2050年には100%持続可能なタイヤを実現することを目指すミシュラン。そのサステナビリティー戦略の基本的な考え方と、実現に向けたアプローチを探った。 -
NEW
第968回:初代「ルノー・トゥインゴ」は「フィアット500」と同じ旋風を起こせるか?
2026.7.2マッキナ あらモーダ!リバイバルデザインの新型「ルノー・トゥインゴ」がデビューしてはや3カ月。このクルマの登場により、オリジナルにあたる初代がネオヒストリックとして脚光を浴びることはあるのか? 「フィアット500」の例を振り返りつつ、欧州在住の大矢アキオが考察する。 -
NEW
第875回:キモは氷上性能! ダンロップの新しいスタッドレスタイヤ「ウインターマックス アイスプロ」を試す
2026.7.1エディターから一言違いは氷の上で表れる! ダンロップの新しいスタッドレスタイヤ「WINTER MAXX ICE-Pro(ウインターマックス アイスプロ)」に、冬の北海道で試乗。氷上性能を徹底的に追求したという新製品の、パフォーマンスの一端に触れた。 -
ホンダのビーチクリーン活動が20年の節目に 本田宗一郎が涙したというそのルーツとは?
2026.7.1デイリーコラムホンダが陰に日向にと活動を支えてきたビーチクリーン活動が2026年で20周年を迎えた。これ自体も素晴らしいが、実はホンダとともに活動を運営する団体の設立には、かの本田宗一郎氏の涙が関連しているというから興味深い。今から60年前の人間味あふれるストーリーを紹介する。 -
第118回:デザイン目線で大総括! 2026年上半期のニューモデル ―「マツダCX-5」「ホンダ・スーパーONE」編―
2026.7.1カーデザイン曼荼羅例年同様、さまざまなニューモデルが登場した2026年の上半期。クルマ好きの注目を集めた新型車の数々を、カーデザインの視点で振り返ってみよう。まずは、一見キープコンセプトに見える新型「マツダCX-5」と、古くて新しい「ホンダ・スーパーONE」から!





















